透き通るような世界観にいちゃいけないタイプのクリーチャーに成ったけど今日も元気に擬態する 作:食卓の英雄
今日のリアンちゃんの服装はバイオ5のウェスカーが着てる感じのやつです。
あの麻薬組織の依頼から更に数日。俺は依頼に奔走していた。ブラックマーケットに用がある一般の方の護衛に始まり、暴徒の鎮圧、あとは電化製品の修理などだ。
あ、あと、あの時の7人がお礼と護衛を兼ねて食事にも行った。でも俺ちびちびしか食えないからほぼほぼ見てるだけだったよ…。いや、あれだけぼろぼろだった彼女達が普通に食事を楽しめている光景が見れて安心したけどさ。やっぱ気を使わせちゃった。
それで、依頼は数だけはこなしたためそれなりの金にはなる。なるけど、流石に家具一式すべて揃えるとあんまり余裕もない。何か大口の依頼でもあればいいんだけども…。あるいは、高額で売れる何かがあればなぁ…。
だがしかし、依頼は片っ端からこなしたせいで働き口が減った他のブラックマーケットに住んでる生徒が困ってるらしい。
元々生活に困っている彼女たちを押しのけてまで荒稼ぎするのも忍びないし、非道だろう。なので、今日から数日は何でも屋は休業だ。
ちなみに俺のせいで働き口が減った恨みで襲いかかってきた生徒を制圧して聞いてみると、泣きながら週3日は休んで欲しいと懇願された。あっちは自分の近くで条件のいい仕事を取るのに必死なのに、俺がいては話にならないらしい。
……まあ、俺もいくら金が欲しいからといっても精を出しすぎた。ブラック企業も真っ青な活動記録になっている。……うーむ、俺の感覚ではそこまでか…?と疑問に思うが、俺の頭ではおかしいと判断している。この体特有の感覚のせいか。
正直週3日の休業は取り過ぎだと思うので、彼女達の活動時間から少しずらした依頼を取ることにしよう。
まあ、いい機会だ。俺も少し名を挙げて独立するのに固執していたせいで休み時を失っていた節がある。そもそも俺は文明的な生活や趣味に没頭したいがために金を稼いでいるのだった。これでは手段と目的が逆転してしまっている。
うん。だから、取り敢えず今日は後先のことを考えずに街に繰り出してみようと思う。
そうだな…。一先ず趣味に没頭するための道具でも買おうかな…。キャンバスと絵の具などのセット一式に、テレビも必要だな。あとはゲームをいくらか買って…。銃器もコレクションしたいし…。もういっそ開発しようか。ああ、それに俺の肉体の研究もしておいたほうがいいかも…。となると色々と試薬とかもあったほうがいいな。
ちょっとやりたいことが多すぎるな。今まで仕事しかしてこなかった弊害か。
まあ、その辺りは追々だ。取り敢えず手に入りやすい代物から見に行くとしよう。何、別に買わなくても今後の予定を立てるだけでも十分だしな。ウィンドウショッピングってやつ。
――――…
はい、というわけで大人買いを敢行したリアンです。
いや、ちゃんと貯金には手を出してない。ただちょっと品質のいいものを、と色々拘って買ったから財布の中身がすっからかんなだけ。断じて浪費したわけじゃない。使うもん。
あー、でもやっぱ金が足りない…。くそぅ、もうちょっと資金に余裕ないかなー。現実は非情だ…。異世界ものだと大体大物賞金首を捕まえたり、モンスターの素材とかで一攫千金できるのに……。もっとこう、誰が取っても文句ない場所とかあればなぁ…。
ブラックマーケットの銀行……。いやいや、流石に他所に迷惑がかかる。まあ怪しいから俺は預けてないけど。
やっぱり地道に稼ぐしか無いか…。
そう割り切り、今回は諦めた品物を見送る。余った小銭でパックのカフェオレを買うと、耳よりな情報が入ってきた。
通行人が話していたそれは、このキヴォトスにおける“オーパーツ”に関してのこと。何でもそれはそれは貴重で高額なものばかりらしく、微細な欠片や破損したものでもそれなりの価格になり、状態が良くなるごとに値段が3倍、4倍、5倍と上がっていくほどとのこと。完全なオーパーツなんかは出すべきところに出せば一つあたり約50万クレジットでやり取りされるとかなんとか。加えて今は出回るオーパーツの量が減っているらしく、高騰しているとのこと。
乗るしかない、このビッグウェーブに!
というわけで、今はミレニアム郊外の廃墟に来ている。
ここは連邦生徒会が出入りを制限しているらしく、色々な噂が立っているが、その中の一つが、ここの廃墟の中にはロボットが徘徊していて、オーパーツが使われている…。というもの。
一応ここは誰の管理下に置かれてるわけでもないため、持っていっても大丈夫だろう、という判断から。
あ、でも透明化はしていくよ。そんな風に立ち入り禁止区域なら監視カメラとか絶対あるじゃん。本当に隠密活動なため武器はなし。
こっそり廃墟に忍びこみ、その荒廃したディストピア感を……いや、俺が初めて来た場所もこんな感じだった。懐かしっ。
まあ、そんな風に思いながらどんどん奥へ進んでいくと、前方からガシャガシャという音が聞こえてくる。
先の道から現れたのは、放棄されて久しいはずの廃墟を徘徊する謎の機械。確かに、あんな噂が流れるのも納得の有り様だ。
とはいえまだ入口からそう離れていない箇所。ここは無視して先へ進む。ダンジョンとかでも奥のほうがいいもの手に入るしね。
念のため天井を歩いてて良かったわ。音のなる武器は置いてきたし、バレる心配も無いぜ。
ただやっぱ広いからちょっとは走るけどね。それで音がなって不審がられても、相手が機械である以上レーダーに映らないものに射撃も出来ない。いやぁ、相性最悪過ぎてごめんね。でも俺オーパーツ欲しいからさ。
「……もうこの辺りでいいか」
取り敢えず廃墟の中央へ、深く地下へと走り回り、そしていくつものロボット達が徘徊しているフロアまで辿り着く。そこにはロボット以外の機械的な反応はないから、今から素材回収を開始する。
そのオーパーツの入手方法はよく分からんが…ゲーム的に見れば倒せばいいと相場が決まっている。
なので、壁を伝って地面へと降り、背を向けているロボットの胸を刺し貫く。へっ、量産型ロボ程度俺の手刀には敵わんのだ。
理由もわからず破壊されたロボットへと他のロボも反応するが、遅い。既にその時には他のロボの首を力ずくでねじ切る。
そんな風にステルスしたままでフィジカル暗殺拳でロボ達に無双すると、色々と調べていたオーパーツらしきものが出てくるわ出てくるわ。
えーと、何々、アンティキティラ装置にニムルドレンズ、エーテルにヴォルフスエックと古代の電池。あ、ちゃんと等級ごとの精度は決まってるっぽいね。
今回は最低ランクのものも多かったけど、これも数売れば馬鹿に出来ない金額になる。それに、最も状態のいい完全なものこそ無かったけど、それに準ずるランクのものも出てきた。
これはやるしかないね。
ぶっちゃけ休日なのに戦ってるけどこれは趣味だからオッケー。さらに奥へ進んで、色んな機械をぶっ壊してやる。噂によると入った人にすら無差別に襲いかかるようなものらしいし情は無用。
どんどん下層へと降りていくと、ロボに出会う頻度も上がっていく。その度に警備が厳重になっていると思う。まあ俺にとってはもうこいつらはお金にしか見えないんだけど。ボッコボコにぶちのめして行くたびに入手出来るオーパーツの等級を確認する。
っていうか、やっぱ地下に謎のロボとかロマンだよな…。こういうのって、創作だとダンジョンだったり敵対勢力のアジトだったりするし。
……地下施設、欲しいな。趣味のものとかを置くスペースとしても使えるだろうし、一通りのことを終えたら作ってみようと思う。
いや、それにしても完全なオーパーツは中々出ない。まあまだここ来て4時間くらいしか経ってないけど。
そもそもこの場合のオーパーツって何なんだろうか。俺の知ってる定義だとその時代に見合わない技術による不可解な工芸品とかそういうのだ。奇しくも、この世界でも知られているオーパーツは俺も知っているものが多い。中には根拠のない都市伝説レベルとして扱われていた代物も、この世界ではみなオーパーツだ。
……この地下施設を彷徨うロボに、そこから取れるオーパーツ。もしかして、昔のキヴォトスに暮らしていた何者かが扱っていた過去の技術とか? うわー、神秘とかあるし普通にありそう。後で調べてみよ。
っていうかアンティキティラ装置とかは発見された場所が由来なのにこれはどうなんだろう? この世界にもアンティキティラ島あるの?
まさか異世界サンドイッチ問題をこんな形で味わうとは思わなかった。
と、そんな風に歩いていると、施設の天井が崩れた部分から陽の光が差し込むと同時、見えた緑色に目を奪われる。
「……苔?」
不思議に思い跳んで*1地上に出てみると、そこは複数のビル群や道路まで、苔に覆われている状態だった。入口周辺からでは見えなかったけど、範囲はかなり広くその高さも伺える。
よく管理にされていない建物を植物が覆っているのは見るけど、高層ビルの類で、しかもこれほど広いのは珍しいと思う。それに、そういう場合は大体ツル植物が壁面を這っているのが大半。でも他に見える街路樹なんかは普通で、それらしい植物も見えない中、ここまで苔に覆われてるってなると……。
ここ、もしかして暫くの間水没してたな。
これまでいた謎のロボ軍団を突破した先だと考えると、視界に映る町並みは都会そのものといった感じで、立ち並ぶ高層ビルだけでなく、煉瓦造のアパートや道路標識、店までがその面影を残したまま沈黙していた。
所々がボロボロ、苔と瓦礫あふれる街並み。かつての繁栄と衰退。人の手のなくなった崩壊した現代都市に芽吹く草木。……浪漫だな。わかるでしょ、なんかこう、神秘的というか幻想的な感じがしてならない。
天高くから日光が射し、明るく映し出されるコンクリートの無機質さと光を浴び輝く苔。倒壊と自然の力によりシンメトリーのないコンストラクション。明暗別れる都市を捉え方次第でどうにも見せる、今を生きる生命とかつて栄えた構造物。ベストマッチだ。
キャンバスでもあればこの場に陣取って光の加減によって変わりゆく偶然の隆盛を絵にしたい所存。
惜しいけど、せめて写真に撮っておこう。
……しまった。音が出るからステルスに不向きってスマホは事務所に置いてきたんだった…。
………まあ、いいか。今度改めてくればいい。そうだな。早朝も深夜もどちらもいい画になりそうだ。
こんな神秘的な光景が広がっているとは、キヴォトスの秘境も中々いいものだ…。後はちょっとした観光気分で廃墟の街並みを瞳に映しながら歩いていると………。
(ん? ……何か、来てるな)
この表層ではあまりロボに遭遇しなかったから透明化していなかったけど、それで察知されたかな。
まあ、特に問題はない。それに、どうせならこのまま戦ってみるのもヨシ。ここまで来れば流石に意味もなく監視とかもないだろうし、何よりこれまでずっと暗殺で仕留めてたからちょっと体を動かしたかった気分だった。
一先ず、この前のネルとの戦闘で学んだこととか反省点を実践してみようかな。
そう思い迎え撃つ準備をすると、すぐにそれは姿を現した。
一見した感想は、見たことのないタイプのロボ、だということだ。
これまでに何度か破壊したゴリアテよりも大型で、見た目は四足の多脚戦車。ぱっと見の武装は2基の機関砲とミサイルポッドらしき背部の機関。
そして何より、その戦車にはヘイローが浮かんでいた。
これには驚いた。キヴォトスの常識ではヘイローがあるのは生徒だけ、というのが当然。同じ住人であるオートマタや獣人は決して持っていないもの。俺のこれだってただの擬態だ。
そして感じる威圧感も相応。少なくともこれまでに蹴散らしてきたロボよりも遥かに格上の存在だ。
ヘイローといい、特徴的な造形といい、この廃墟のロボ達のボス的な存在なのかもしれない。
何はともあれ、だ。向こうも既にこっちを敵視している以上、こっそり逃げるのも何だか違う。
よし、どれだけ戦えるか、存分にやってみようじゃないか。
―――これはリアンの預かり知らぬ話ではあるが、この多脚戦車はある存在によって在り方を変えたものだ。
遠い昔、キヴォトスの旧都心廃墟で行われていた「神の存在を証明、分析し、新たな神を創り出す方法」を研究していた組織によって作り出された対・絶対者自律型分析システム。
やがて都市は破壊され、研究所は水に沈み、研究の実在すら忘れられるほどの年月が流れた時、誰もいない廃墟でそのAIは宣言した。
「Q.E.D.」と。
証明、分析、再現の過程を経て新たなる神は到来した。
己の神命を予言する10人の預言者と
彼の者の神性を証明する過程は間違いなく
自らを「音にならない聖なる十の言葉」と呼称する者。
それこそが
今ここに、侵入者を阻む役割を持つそれは初めに感化された存在。「最もきらびやかに輝く至高の王冠」の異名を持つ第一の
超常現象VS超常現象
ファイッ!
急なリアンちゃんの芸術家的な感性に「お前そんな風に感じる感性とか持ってたんだな…」と思われる読者の方もいらっしゃると思われますが、この子計算よりもロマンと感性に従って生きてるので強ちイメ損ではないんですよね…。
対策委員会編が終わったら幕間を書こうと思います。選ばれなかったものは作中や前書き、後書きでサラッと乗せます。因みに全部を選ぶと本編が遅れますがちゃんと読めます
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