透き通るような世界観にいちゃいけないタイプのクリーチャーに成ったけど今日も元気に擬態する   作:食卓の英雄

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忙しくて全然書けなかった…。許せサスケ

リアンちゃん一口メモ

・酒は好きだったけどこの体になってから酔えないので今はそんなに好きじゃない。口元があれでグラスやジョッキで飲む飲み物自体を出来るだけ避けているので余計に。
・煙草は吸う方だったが生徒と関わるので吸っていない。それに、キヴォトスの住民自体犬猫やらロボやらで煙で悪影響でそうなのばっか。


幕間 とあるモブの心情

 

 

 その日は、いつもみたいにしみったれた一日の筈だった。

 

 あたしらブラックマーケット住みのチンピラなんて、どれもしょうもない奴らの集まりだ。そりゃ当然、あたしらはあたしらなりの流儀も主張も生き様も持っちゃいるんだが、他の奴らはそんなもん気にもしねえ。

 

 ここ、ブラックマーケットはあらゆる行政委員会ですら管理の届かない無法地帯。当然他所に犯罪がバレたりすりゃとっちめに来るのもいるけど、それでもこの場所じゃありふれ過ぎた犯罪の一つ。もちろん他所の自治区にも犯罪を行ってるやつはいるが、ここじゃそれが更に顕著だ。

 他所で起こった様な犯罪はこっちじゃ当たり前。どころか当然のように違法品や盗品なんかも扱ってる。勿論それだけじゃなくて正規の手続きが面倒でやむを得ずここに流れ着いた商品なんかもあるだろうが、そんなもんみんなわかってる。

 

 ブラックマーケットには他所の自治区からも訪れるやつが多いが、その大半は普通の手段じゃ手に入りにくい代物を欲しがってるやつばかり。逆に、ここで暮らしてるやつは殆どがワケアリってことよ。

 

 犯罪で生計立ててる奴や、この街の規模や商品に目をつけてビジネスを取り付けに来るどこぞの企業。住む所を無くした失業者やホームレス。そして、あたしらみたいに学校を退学になった元生徒たち。

 

 そんな奴らが、自然と溜まって出来た都市がブラックマーケット。

 今日も今日とて、つるんでる不良*1連中と駄弁ってたその時だ。あ?内容?そりゃどこぞの区画でどんな店が出来てた、どこでこういう品が出されてた…とか、常に移り変わるブラックマーケットの情報交換や整理みたいなもんだよ。

 

 ブラックマーケットで何の後ろ盾もないあたしらが生き残るには群れなきゃいけない。

 退学になったあたしらは学校預かりの口座や振り込み先は疎か、学生の身分すらねえ。要は学校が保証してくれる身分がねえってことで、マトモな仕事には就けねえ。強けりゃもっと方法もあるんだろうが、そうじゃないからブラックマーケットに住んでるんだけどよ。ただの不良ならまだ生きる分くらい何とでもなる。

 

 そんな身元がはっきりしないもんだから、受けられるのはバイトや正規の手続きの踏まれてない仕事ばっかりだ。そしてこんな境遇の奴に報酬を渋る雇い主も、ここじゃそう珍しくはねえ。

 後ろ盾の学校も組織もないから、契約を無視されてもこっちは泣き寝入りするしか出来ない。

 

 それでも何とか稼ぎを得ることは出来るが、余裕なんてこれっぽっちもねえ。ただでさえ安い日雇いバイトのその日暮らし、満足に給料が払われるかも分からない仕事を吟味して取り合う日常。

 

 少ない稼ぎを取り合う集団の中に、丸ごと荒らすようなやつがいれば、気に食わないのも当然のことだろう。

 

 

 

―――…

 

 

 

 その日は、やけに仕事の募集が少ない日だった。

 いや、その日だけじゃねえ。あたしらが受けない類の依頼*2は少し前からすげぇ早さでなくなっていた。

 そうやって、いつもなら沢山ある依頼から、少しでも良さそうな仕事を吟味できたが、今日に限っちゃあんまり募集がないもんだから、つるんでる連中が取るだけでも苦労した。

 何とか残ってる中では好条件を選んだつもりだけど、それでもいつもなら第3候補くらいのバイトだ。

 

 それでもないよかマシだってくらいだったのに、いざ終わってみれば依頼主からは報酬の減額だ。それも「不眠蟲(インセクニア)はもっと早くこちらに損害もなかった」って理由だ。

 

 苛々しながら合流すれば、他も似たような感じになってるらしい。それに、バイトの募集が減った理由もその不眠蟲ってやつの仕業らしい。

 

 朝昼夜、休まず常にどっかで仕事をしていて、どれも達成させては次の仕事に取り掛かる何でも屋。こっちの情報網で少しくらいは聞いてたが、まさかこっちの方まで仕事をしてるとは思ってなかった。

 

 

 その時は、ムカつく程度で済んでた。

 

 

 だけど、日を追う毎に少なくなる依頼。やっとのことで漕ぎ着けたバイトも端金。終いには集団の中からバイトが取れない奴が何人か出始めてきて、限界を迎えた。

 

 

『そいつがどうしても休まず仕事を奪ってくなら、痛い目見て貰って仕事が出来ねえ体になればいい。復帰したとしても、それで立場を弁えるだろう』と。

 

 不眠蟲の情報を集めるのは簡単だった。いつも何かしらやってどこかで発見されてるから、時間制の仕事をやっている間に仲間と経路を確認して待ち伏せした。

 

 そいつは足首まで伸びる黒いコートに黒の手袋、シューズ、上下ともに黒の服装と、全身黒尽くめで口元には金属のフェイスマスク。高身長も相まって目立つ奴だった。現に、他の住民も珍しく注目している。

 

 見たところ、銃は持ってない。コートの内側に隠してる可能性はあるが……。それでも、咄嗟に出せるのなんて拳銃が精々、ここじゃ騒ぎを聞きつけて加勢に来る治安部隊なんて期待は出来ねえ。ここで武装もせずに護衛もつけない。そんなもんは襲ってくださいと言ってるようなもんだ。

 

 あたしらはそいつに狙いをつけて路地から続々と姿を現して取り囲んだ。

 

 恨みつらみを込めて全員で襲いかかったけど、はっきり言って強すぎた。

 こっちをあからさまに警戒させて、遠距離にいたスナイパーの不意打ちから始める算段だった。だというのに、突然首を曲げたかと思えば同時にコンクリートに銃創が刻まれる。

 

 一瞬何が起こったか分からなかった。それは、あたし以外も同じだったらしい。遅れて気づいたのは、視線すら向けてない狙撃をまるで来るとわかっていたかのように避けたこと。

 「は?」と声が漏れる間もなく次弾。今度はその黒い革手袋を閃かせ、次の瞬間その手から潰れた弾丸がこぼれ落ちる。

 

「嘘ぉ…?」

 

 今のだけで完全に呑まれた。それまで呆然としていたあたしらも、相手が動き出せば咄嗟に構えて乱射するも速い。潜り込まれた前線が一瞬で抜かれて崩壊した。そのくせこっちの銃を奪ったり、逆にそれぞれの配置を利用して同士討ちまでさせられた。これは駄目だと認識した瞬間、横合いから吹き飛んできた仲間にぶち当たって気絶した。

 

 気がつけば、事は終わっていた。あたしらは全員ぶちのめされて、出来たことと言えば服にちょっとの汚れをつけられた程度。それも手で払えば消えてしまうようなのだけ。

 

 クソ、こんな強いのかよ。…もう関わんねえ。

 

 そう決意する。ここで生きてくには強者に敵対しないことが肝心だ。何か目的があるならともかく、無闇に喧嘩をふっかけていいやつと悪いやつがいる。

 カツアゲなら金持ってそうで強くなさそうな奴。ある程度なら数を集めりゃ簡単に行くが、この戦力差は無理だ。痛い目を見たなら利口に下がらなきゃ、後ろ盾のないあたしらは搾取されるだけになっちまう。学園でツッパリしてた頃とはワケが違う。弱みを見せりゃ、ここの幹部共が足元見てふんだくってくるんだ。向ける牙も削られてくもんさ。

 

 そうして、早く去れと思いながら気絶したフリを続ける。幸い、位置的には他の連中に埋もれる形でヘイローも隠れてる。こんな木端、強いやつが気にかけるはずも―――

 

「――――そこの、起きてるだろ」

「ヒュッ」

 

 薄目で伺えば、そのハイライトのない漆黒の瞳と目が合う。完全にバレてる。漏れた息が存在を助長し、最早しらをきることも出来やしない。

 

「……まあ、イい。最初に言っテいたが、襲ってキた理由は?」

 

 瞬きすらせずこちらだけを見る闇のような視線と有無を言わせぬその圧は、これまで見た何よりも凄まじい圧を感じさせた。

 前に見た正義実現委員会の委員長みたいなイカれた暴力とは違う。ゲヘナのヒナみたいな冷徹さすらない。本当にただの反応としての、無機質な眼力に背筋が粟立ち、逸れることのない視線に屈してしまった。

 

 そこからのことは覚えていない。半狂乱になりながら、襲った理由とか、最近の情勢や噂、不眠蟲による仕事の減少とかを言って、休みの日くらいつくれと言ったような気もする。

 

 それで、色々と吐き出した後、ヤツは「……そうか」と言ってあたしに何もせず去っていった。

 

 正直よく分からなかったが、とにかく助かったのは確かだ。

 

 何とか逃げ延びてその翌日。何とその日には不眠蟲が働いている様子が確認出来なかったらしい。

 たった一日が何だと思うだろうけど、ずっと話題に上がってた不眠蟲のことなもんだから情報が回ってくるのも早かった。

 更に時が経っても不眠蟲の姿はなく、まさか本当にあの時の言葉を聞いてくれたのかと。そう思った更に翌日。つまりは今日だ。

 

「――――仕事の、依頼だ。金に困って、いるだろう」

 

 路地裏で駄弁ってるあたしらの前に突然現れて、こう宣った。

 

 表通りから差す微かな光が、こいつの威圧感を更に引き出した。あたしは関わらないと言ったが、まさかわざわざあたしらを探し出すだなんて、思ってもいなかった。

 

 出された条件と仕事内容を確認して、更に目を疑った。地下室の増設? そんなもの、こいつくらいの金と知名度があればどうとでも依頼できる。しかも、一度襲いかかってきたような相手に拠点を知らせるどころか、内部に招き入れる。どういうことだか全く分からなかった。

 

 それに、条件も理不尽じゃない。それどころかブラックマーケットとして考えれば破格の条件だ。一度ブチのめしたから、安く労働力を買いたいってことでもない。余計に意図が読めない。

 

「そうだ。断ってもいいガ……。決シて、他に情報を漏らさナいでくれよ」

 

 あの時と同じ目つきでこちらを見据えてヤツは言う。

 

 消すつもりだ…! 地下の誰とも知らない場所に誘い込み、反抗的なやつを消していく。直接スカウトに来たのも証拠を残さないため。そしてこの言葉。断った時点でロクな目に遭わない。

 

 他の連中もそれは悟ったのだろう。泣きそうな顔で、ただただ頷くことしか出来なかった。

 その後も何だかんだと言っていたが、初めて感じる濃密な死神の足音に上の空。

 

 話が終わりヤツの背が見えなくなった後でも、暫くはその方向に顔を向けていたと思う。

 

 ……憂鬱な気分だった。今までも明日が来なけりゃいいと思った日もあるが、これはその比じゃない。

 

 バッくれて逃げようかという意見も出たけど、この広く無秩序なブラックマーケットで、数いる不良の中からあたしらを見つけたこと。それはいつでも捕捉できるというパフォーマンスで、逃げたとしても追跡出来るという暗示なのではないかとも思った。

 

 結局、逃げたとしてもどんな目に遭うか分からなかったもので、自然とその意見は下火になっていった。

 

 夜。みんなで集まって、ちょっといつもより贅沢をした。

 

 あたしらの立場は弱い。保護する学校もなければ、いなくなって誰かが惜しむような生き方をしてきたわけでもない。そこらにいる不良という背景の一つ。例え消えても、誰も気にしないし、自然と別のなにかに置き換わっている。

 

 その日、全員で大声を上げて泣いた。

 

 翌日、起き上がる気力すらなかったけど、時間に間に合わなくなるので出向くと、あたしらを含めて丁度50人くらいの不良児や元生徒達が集まっており、それぞれにドリルやつるはし、ヘルメット等が支給されていた。

 

「「「えぇ…」」」

 

 あれ。マジだったのか。いや、そんな筈はと思い、近くのやつに話を聞いたけど、そいつは生活に困ってた時に相談したら、バイトとしてこれを紹介してもらったとのことらしい。

 

 ……何だ、そういうことか。なら、大丈夫か? そう気が緩んだ所で、案内された地下室の入口に息を呑む。

 

 だって、そうだろ? 普通一軒家に地下室を作りたいって言われたら、広くても2階や3階程度だと思うだろ。岩肌剥き出しの、底が見えない程深く深く暗い地下への孔。

 

 階段でも梯子でもなく、鉄でできた柵に囲われた、ゴンドラのようなもので真下に降りていく。時々照明が通り過ぎるが、それでも緩和できないほどの距離があった。100mは降った頃だろう。変わり映えしなかった石壁が奥に伸びている。

 配られた資料によるとここを基点として横や地下へ更に通路や部屋を伸ばしていくらしい。

 

 スケールはでかいが、意外と普通…。いやいや、そんな筈はない。100m地下の横合いの通路なんて、余程のことでもない限り露呈しない。それにこれだけ広げるんだ。きっと生き埋めとかの危険なことが「……資料通りに掘れば、崩落の危険性は無い。ある程度の余裕は持っているカラ、多少ずれても安心しろ」ちゃんと計算されてるのか…。

 

 その真意を推し測る前に、定刻が来たとのことで作業が始まってしまった。ヤツは既に上に戻ってしまい、他の連中も作業を始めてしまった。そうして、あたしは纏まらない思考のまま計画書通りに道を掘り進めるのであった。

 

 

 そして暫く。昼の休憩時間を知らせるタイマーが鳴る。昼は向こう持ちとのことだったが、この人数だ。雇用期間や給料を考えれば、カロリーバーやらおにぎり、惣菜パンとかがいいとこか?

 

 そう思いながらゴンドラ(仮称)に揺られていると、地上に近づくにつれて芳ばしい香りが広がってくる。肉体労働をした疲れた体に、その香りは毒だ。所々から腹の虫が鳴る音が聞こえてくる。一体何だ…?何があるんだ…?

 

 口内に満ちる涎を飲み干し、フラフラと食事処と題されていた事務所裏の建物に入る。

 

 すると、そこには人数分の椅子と、テーブルに乗せられた昼飯があった。そしてみんなが驚く。漂ってきていた香りの正体。それは全員分用意されている鰻丼のタレによるものだったからだ。

 全員分のうな重。それも、コスト削減のために量を減らしたものでも、代用品のイワシでもない本物の鰻丼。程よく焼け照りつけるようなうなぎに、タレのたっぷりかかったほかほかのご飯。誰もが唖然とし、でも我慢など出来るはずもなくがっついた。

 

 甘辛いタレの味が疲れた体に染み渡る。優しい甘さのご飯と合わせて頬張った鰻はふわふわなのに肉厚食感で、前にコンビニで買った鰻とはとても同じものだとは思えないほどの食べごたえがあった。

 

 夢中で箸を進め、いつの間にか丼には米の一粒すら残っていなかった。あまりの美味しさに時間を忘れてしまっていた。結構ボリュームはあったと思うが、その旨さにもの足りなく思ってしまった所で、声が響く。

 

「……各自、おかわりハある。欲しい者は並んデよそうトいい。ひつまぶしにするなら出汁もある」

 

 いつの間にいたのか、不眠蟲が呼びかけると、ワッと洪水のように向かっていく。呆気にとられ出遅れ、しまったと並び直した。

 

 そして、気づいた。この用意の良さと量から、明らかに店で買ったような物ではない。どころか、裏口から新たに持ってこられた鰻は焼き立ての証であるかのように湯気が立ち、てらてらと輝くタレの色を反射していた。

 

 もしかして、これ全部用意したのか。

 

 そう思わず声に出すと、さも当然のように「そうだが」と返ってきた。

 

 結局あたしはお代わりでひつまぶしにして食べ終え、しめのデザートまで平らげた。その後、精力もついたので午後の作業は一際効率が上がったのだった。

 

 午前の部のあたしらが終わって、午後の部のやつらとの交代の時間がやってきた。結局やりきってしまった。最初っから指示が細かく決められていたからか、ペースも早い方だったと思う。

 

 ………それにしても、美味かった。

 

 これで、給料まで出るなら…。いやいや、何かと難癖つけて減らされるのがオチに決まってる。あたしは騙されない。騙されないぞ…。

 

 

 …………ま、まあ、あと少しくらい、行ってみてもいいかもな……。

 

 

*1
既に退学している人物に対して用いるのは不適だが

*2
この子達が受けるのは基本単純な肉体労働や傭兵など。特殊な技術があったら落ちぶれてない





Q.何故うなぎを?
A.作者がテレビで見て美味しそうだった&疲労時にも良く栄養もあるので

Q.どのくらい上手いの?
A.少なくとも美食研究会からお墨付きがもらえる程度には

遊星画集、今日の1枚

『どこまでも青い空』

真っ赤に塗りたくられた空の絵。下の街並みは多くの色で異色の存在感を放っているが、青色だけは使用されていない。どこかおどろおどろしい雰囲気の黒い太陽が浮かび、謎の光の線が所々に差し掛かる。
リアン自体の複数の視覚機能を持っており、その中から人類の色覚を抜いた場合の景色をごちゃまぜにして書いたもの。正確にはこう見えている訳では無いが、絵としてわかりやすく纏めてある。
解釈次第で、この空は青にも白にもなるのだ

対策委員会編が終わったら幕間を書こうと思います。選ばれなかったものは作中や前書き、後書きでサラッと乗せます。因みに全部を選ぶと本編が遅れますがちゃんと読めます

  • C&Cリベンジ!
  • ツルギとのデート回
  • カニー・クッターと近所のヌシ
  • 全部!
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