透き通るような世界観にいちゃいけないタイプのクリーチャーに成ったけど今日も元気に擬態する   作:食卓の英雄

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前回の前書きで色々と並べて嫌なお気持ちにさせてしまい申し訳ありませんでした…。
あれは私の作品以外も見てほしいという思いとこれがそんなに人気なのかと驚いた末のものです。あと、最後の一文を隠すための罠でもありました。

お気に入りはもうすくで8000を突破、投票者数も850件を超え、嬉しい限りです。っていうかヤバい。眠い。どっかおかしくなってるかもしれない…。
今回ようやく事態が動きます!


第23話 遊星リアンの忙しない日常:その2

 

 時が経つのは早いもので、仕事先の斡旋や事業展開での指示、その他開発や研究に勤しんでいたらいつの間にか一週間以上が経過していた。

 

 ……早くない?一睡もしてないから理論上他の人の倍は時間あると思うんだけどな…。

 

 まあ、その分色々と進んだものは進んだけどさ。

 

 まずは期日の迫っている調理班への確認として、基本的な調理技術を見たり、食材や器具の扱い、及びそれぞれの工夫やクオリティの維持など、給食部で必要とされると思う能力の確認。流石にあれ程の量を完璧にカバーできるほどではないが、基本的な調理技術は上々。最上級でこそないが、余程特殊なものでもなければ一通りのことは出来るだろう。直ぐにでも実戦投入が出来る人員が10人程。一人で全ての工程を終わらせるのは難しいが、補佐としてサポート出来る腕を持つのが25人。

 

 計35人の追加戦力を給食部に派遣することが可能だ。必要とあらば、俺や一人暮らしでちょっとした手伝いが出来る程度の子たちもいる。

 

 顔合わせではフウカ嬢にも認められ、第6食堂以外にも配置して同時並行で調理予定だ。食料品会社の方でも食料はキープしている。イカの身の在庫がすごいがきっと然りげ無く消費してくれるに違いない。

 

 というわけで、本格的に入り込む前に万魔殿にも人員とその証拠としての許可証の発布をお願いした。生徒からの評判ではそもそも活動してることすら知られていなかったり、現議長の名前すら知らない生徒も少なくなかったため不安だったが、今回対応してくれた棗イロハ議員はやや気だるげだったものの、要件を伝えるとあっさりと承認してもらえた。

 ……いいのか?自分で言うのも何だけど、もしこれがゲヘナの給食に毒でも混入させて壊滅させるつもりとかだったらどうしたんだ。

 

 んで、最近はもう誤魔化しきれなくなってきたのか、各自治区での暴動や違法銃器の流れがすごいらしい。虎の子のSRTも本格的に解体され、ヴァルキューレに転入させられているらしいが、ヴァルキューレも最近のゴタゴタが多すぎて全然回れていない。

 それで、ただでさえ無法なブラックマーケットの治安の方だが、実の所少しだけ治安は上がっているのだ。

 

 意外に思うかもしれないけど、よく考えてみれば各場所の治安悪化の原因は連邦生徒会長失踪。サンクトゥムタワー責任者不在における行政制御権の喪失によるもの。それで各自治区からの要請や行政を見きれなくなり、解消できないままに膨らんでしまっているのが現在の他自治区なのだが……。

 

 これで分かったと思うけど、最初っから連邦生徒会の影響が及んでいないブラックマーケットは連邦生徒会長がいなくなったところで何も変わらない。むしろ、最近は俺やU.B.C.S.のみんな。会社のサポートのために色々してるからか治安が良くなった様にも思う。

 ぶっちゃけ、他自治区に流れてる違法火器はブラックマーケットから流れたり、治安悪化に乗じて幅を広げに行ったりしてるせいでもあるが。

 

 治外法権の方が治安がいいとかとんだ皮肉だよ。

 

 連邦生徒会も頑張ってない訳じゃないんだろうけど、一人いない程度でここまで悪化しちゃうと、普段何やってたんだ?と思っちゃうよね。制御権とかは100%引き継ぎしてないやつのせいだけどさ。

 

 まあ、それに関しては代案的に“先生”を招集して“シャーレ”とかいうのを設立することで回復出来るみたいだけど……。正直個人にそういう全権渡すのって不安すぎない?連邦生徒会長は何もかも一人で出来るから他の人員も個人で十分だろうとか思ってないよね?だとしたらお前ピンチヒッター的ポジションで普段は引っ込んでろと思うんだけど。

 

 現に俺はほら?起業当初とかはともかく今は割と責任的には重いけど誰でも出来る仕事が多いし?自分がやりたい、進めたいことくらいしか自分からしてないし?

 

 って、言うのは簡単だけどあっちもあっちで忙しいだろうしな。自重しよ。それはそれとしてヤジは飛ばすが。

 

 んで?カニ道楽ちゃんは武器庫から携帯型巡航ミサイルを持ち出してクラーケンに発射。触手で掴まれ効果なし。船が捕らえられるも、途中でモササウルスが乱入。辛うじて難を逃れる。

 

 何やってんだあいつ。っていうかモササウルス普通に報告すんなよ。流しかけたけどこっちでも普通に絶滅種だったぞおい。

 

 はい。後はトラブルもなく概ね順調、と。……普通、こんなトラブルないんだけどね。流石キヴォトス…。ここで商品一筋で成り上がった企業には尊敬の意しかない。

 

 この辺りが業務連絡ね。

 

 早急に対応するべき所もなさそうだし、このまま搬送は出来そうだな。

 

 そう、搬送。

 

 俺は今、恐るべき速度で完工した研究所に向かって、実験体のバッタや研究資材を積んだトラックを走らせている。トラックはあらゆるネットを廃し、最近とうとう襲われなくなった社章をつけており、一応下手な銃撃でも荷物に衝撃が伝わらないようにはなってる。

 

 これくらいは自分でやらなきゃね。っていうか他にあんまり任せられない内容っていうか。

 

 そんなわけで、何事もなく建設地である住宅街の外れから更に離れた砂漠の一角にトラックを止める。………めっちゃ砂噛むな。次は専用車でも用意するか。

 

 荷台を直接外せるように改造しているため、そのままトラックごと研究棟に搬送。余計な負荷がかからない内に計器や器具を部屋に運び、別で用意していた特殊保護施設に今いるバッタを放す。

 

 この特殊なルームは研究を終えたり実験後のバッタを出来る限り本来の生息環境に寄せて飼育できるようにした檻。厚さ10cmのガラス、数枚の保護層を挟んで見れるこのエリアはバッタの繁殖と生活を目的にしたもの。というより施設の殆どはこれ。どっちかというと増やすのが目的だし。

 

 因みにこれ、縦10✕横10✕高さ3.5mの直方体になっている部屋が2階3階地下とこれでもかと敷き詰められている。

 一つの部屋に大量に纏めても管理できないし、何より問題が起こった場合その区画。ビオトープとしよう。ビオトープ毎に区切って原因究明を目指せるからだ。変化の良し悪しに関わらずそういうのはやるべき。

 あと、緊急時であろうとビオトープに繋がる隙間は開かないようにしている。開けるなら、扉の前に来て手動しかない。リスペクト元のように無秩序にばら撒いたり有害な物質をつけたまま放流するわけにもいかないからね。

 

 一応俺の意思一つで体組織を崩壊させながら塵にする改良は出来たので満足。塵は肥料になるから死体も活用できてお得。

 研究済みのを第1ビオトープへ離し、この環境下での変化などを見てから本格的に増やす予定だ。

 

 あ、ちゃんと餌は考えてるぞ。砂漠でも育つミントの類を区画内で増やせるようにしておいた。……ミントは区画外には生えないように周囲の環境を徹底的に隔離したし、仮にそれ以上伸びることがあっても臭いが強いから気づけるし、根から根絶できる用意もある。

 

 はい、正直こいつら俺の細胞のせいで俺ほどではないが燃費がいい*1。とはいえ、流石に大量の群れとなるとわからないからな。備えておいて悪いことなど早々ないのだよ。

 

「…ン?おや、今日だったか?」

 

 ここで、あえて放していたこちらにいない偵察バッタに興味深い情報が届く。エルフ耳黒長髪眼鏡っ娘のリン行政官が、今日中に例の“先生”が訪れるという話をしていたのだ。

 

 噂をすればなんとやら。動向が気になったその日にあちらから来るとは。先生の噂自体はあるらしいが、今はまだ正式に発表されていないため、現時点でこれを知っているのは俺と連邦生徒会の生徒たちだけだろう。ふふ、やはり機械より生命の方が怪しまれないな。

 

 因みに、どうやってあの高層ビルのような連邦生徒会本部にバッタを紛れ込ませたのかと言うと、適当な所で虫かごに入れて放置である。危険物や怪しいドローンならともかく、放置しても特に害のない虫が一匹。年頃の女子には気持ち悪く映ったとしても、こうして虫かごに入れられているという安心と、逃がす面倒臭さ、そして誰かのものであれば逃がしても要らぬ顰蹙を買うからだ。

 現にこうして不思議に思われ、時には遠巻きにされながらも、こんな虫一匹に警戒して情報を秘匿するなんて考えはない。個人情報はできるだけ削除してるけど、こういう情報は何よりも早く届く。

 

 にしてもそうか。そろそろ例の先生が来るのか。なら今日はD.U.に張ろうかな。

 

 取り敢えず、アビドスサバクトビバッタ……アビドスバッタでいい?を操って30匹前後を2匹ずつ15のビオトープに住まわせる。

 調整機能を使って、部屋の湿度を上げ、ついでに今あるだけの餌を安置して全体に繁殖可能指令を出す。

 

 これで、しばらくは個体数を増やすことも出来るだろう。纏まった数を用意するには時間がかかるが、まあ作業途中に増やせばそれなりにはなるだろうか。

 

 まあいいや。今はとにかくD.U.区に急ぐ。バッタから伝わる情報はあくまで情報であって、そういう事実としか俺には分からない。直接人当たりや顔、雰囲気を見るには直の方がいい。

 

 万が一にも脱走が起きないように全ての隔壁を閉じ、ようやくアビドスを発った。

 

 待ってろよ外から来た“先生”…!絶対その面拝んでやるからな……!

 

 

 

――――…

 

 

 

 

 その日、連邦生徒会本部には他自治区から複数の生徒が集まり、窓口にて様々な疑問と言葉を投げかけていた。

 

 それは、各々の学園における治安悪化において、その深刻さと、この異常な事態に顔を見せるべき連邦生徒会からの説明がない。この異常な治安の悪化は一体どういうことかと、一部の生徒が問いただしに来ていたのだ。

 

 ミレニアムサイエンススクールセミナー会計の早瀬ユウカ。トリニティ総合学園、正義実現委員会副委員長の羽川ハスミ。同じくトリニティ、自警団所属の守月スズミ。そしてゲヘナ学園風紀委員の火宮チナツなど、3大校の中でもそれなりに影響力のある位置の人物までもがわざわざ訪れるほど。

 

 現着した先生をそっと誘導し、面倒を避けようとした七神リンは、しかしてその4人に捕捉された。

 

 その被害や状況、現状への説明を要求する彼女らに対して、リンが抱いた感情は苛立ち。本人としては(これから先生への説明などやることがあるのですが)といった風にため息をつきながら現状説明――連邦生徒会長の失踪や先生の着任――をしていく。

 

 その最中、先生が着任する筈の外郭地区にて不良たちがとある人物の手によって扇動され、連邦生徒会への不満を顕に暴動を引き起こしているとの事だった。

 

 こうして、度重なるトラブルに襲われた七神リンは、その場に居た4人を連れだし、先生を無事シャーレに着任させるべく、不良たちの鎮圧、及びシャーレ奪還作戦に挑むのであった。

 

 外から来た大人。先生は4人に的確な戦闘指揮を行い、戦えない身でありながら戦局を動かしていく。そして、いかに集まったとはいえ扇動されただけの不良。

 満を持して登場した戦車も、このままでは時間の問題だろう。確かな実力を持つ彼女達に指揮官が加われば、敗北も必至。主導者であり最高戦力の人物はいつの間にか姿を消し、確固たる意志もなく暴れまわる不良生徒たちが敵う道理などなかったのだ。

 

 そして、それを遠方から眺める影が一つ。

 

 そう、リアンだ。約2km先のビルの上からその騒動の流れや先生達の活躍を観察しており、興味深そうに唸っている。

 

 尚、ここについたのは先生達が不良と接敵した瞬間であるため、かなりギリギリの駆け込み上映である。

 

 と、状況を完璧に俯瞰できるリアンからしても、先生に従っている生徒たちの動きはいい。キヴォトスでは個人の武力差が激しいものの、それを更に活かすかのような的確な指示と戦術は、異なる学園で初めての共闘相手である筈の彼女達を纏め上げ、一つの群とさせていた。

 

 いや、傍目から見ていたからこそ驚いたと言うべきか。少なくとも、ここキヴォトスに来た初日でこのようなことが出来る人物なのだな。とも思ったが…。

 

 しかし、その間もリアンは見逃していない。この暴動の主導者たる七囚人、狐坂ワカモが戦闘離脱と共にシャーレの内部へ侵入していく様子を。

 

 とはいえ、ここまでしっかり出来ていた先生たち。ならば心配はないかと監視をやめようとして、先生一人のみで入っていく事実を目にして驚愕した。

 

(待て待て待てぇーい!今中にいるぞ!?誰もついてかないの!?中に潜んでる考えはないのか!?)

 

 本当に誰もついて行っていないことに驚き、慌てて一人入っていく先生の後を追う。

 しかし、流石に2kmは遠い。このままでは、着任当初からスプラッタな光景が出来上がってしまう。未だ人望や性格、実績などは確認できていないものの、流石に初日に紅い花を咲かせるわけにも行くまい。

 

 と、意気揚々と出陣したが、その直後にワカモは顔を真っ赤にして乙女の顔で逃走。この「やれやれ…」ムーブは無意味と化した。

 

 出鼻を挫かれながらも、やらなくていいならいいかと割り切り、取り敢えず見たいものを見れたと満足して帰っていくリアンなのであった。

 

 そして、その帰路にて自身が見て感じたことを心中で並べ立てていく。

 

(“先生”ね…。キヴォトスの住民と違って、人間の外見の男。声は意外と落ち着きがあり、優しげな顔立ちだ。凄いイケメンってわけでもないけど、むしろギラついてなくて先生としてはいいのかもしれないな。

 にしても、全権を担う連邦生徒会長が失踪、託した相手はヘイローを持たない人型唯一の大人。見目麗しく強靭な少女たちに囲まれる中、先生として役割を期待されている人物。直接的な力こそないものの指揮能力は的確で、変に際どくない衣服に整っているものの没個性的な見た目)

 

 

 そして、こう思った。

 

 

―――まるでソシャゲの主人公みたいだなぁ*2

 

 

 

*1
リアンが数ヶ月寝ず働き続ける間、食事で得たエネルギーは合計してカロリーメイト2.3本くらいである

*2
大正解である




『安心安全蝗害スターターキット』
遺伝子改良、及び改造されたアビドスサバクトビバッタ。
基本的に意思一つで制御され、余計な被害になりかねない繁殖、常識の範囲を超えた食事などは許可が出なければ出来ない様になっている。
リアンの細胞の影響で非常に低燃費で、肉体の維持に必要な食料は三ヶ月分で自身の体重と同じだけの植物(約2g)。
絶対的な支配下に置かれ、様々な行動決定権を完全にリアンに委ねられている。要はリアンが死んだり、いらなくなればそのまま全滅させられる。
遺体は塵になれば土壌を回復させるための肥料となり、いざとなれば共食いもやむなしと思っている。

ちなみに、リアンは知りませんがこの改造で繁殖機能が強化されております。

対策委員会編が終わったら幕間を書こうと思います。選ばれなかったものは作中や前書き、後書きでサラッと乗せます。因みに全部を選ぶと本編が遅れますがちゃんと読めます

  • C&Cリベンジ!
  • ツルギとのデート回
  • カニー・クッターと近所のヌシ
  • 全部!
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