透き通るような世界観にいちゃいけないタイプのクリーチャーに成ったけど今日も元気に擬態する 作:食卓の英雄
新生活が始まって色々と忙しく、書く時間がない上、ちょっと推敲しすぎたせいでめっちゃ遅筆になってしまった……。
ホントならアニメ化に乗じて漁ってくる人を集めるつもりだったのに……。
おいおい…これ幕間全部書くまでどのくらいかかるんだ…。
再び戦端を切った戦いは、今度は移動しながら行われた。
ネルとリアンが廊下を駆け回り、アカネとアスナがその後ろから援護射撃をお見舞いする。
二人はほぼ同じ速度で狭い通路内を駆け抜け、時に追い越し、立ち止まり、壁を蹴り、体術を使って攻防を繰り広げていた。
「ッの野郎…!」
「そこだな」
端から見ていると、互いに一進一退の攻防に見えるも、誰よりもネル自身がその差を痛感していた。
ネルは全力で飛ばした戦闘だというのに、相対するリアンはまだ速度に余裕を持って対応している。何より、今も素早いが、あの時の最大速度には及ばない。
自身の全速力で、やっと追われる側の相手と互角。そのことに苛立ちと負けん気を更に奮い立たせるも、目まぐるしく状況は移り変わる。
壁面を蹴るように走り、銃撃と同時に飛び上がるネル。高速の攻めに対して、リアンは壁に脚をつき急静動。あまりの速度を一度に受け止めたせいで壁が割れるが、そのままネルが上空を通過する。
ネルは舌打ち、そのまま背後の二人へ向けて駆けるリアンへとUターン。追い縋るネルには目もくれず、アスナとアカネは迎え撃たんと各々のスタイルで交戦する。
「こちらに来ましたか…!」
「撃つよ!」
アカネは一歩引いてサイレントソリューションを正確に構え、アスナはそのままぶつかる様に前進。弾幕で顔を狙って視界を遮りつつ脇をスライディングで駆け抜けながら決して狙いは外さない。
並の相手ならば、双方反対に動き、警戒の孔を穿つような二人へ正確に射撃を撃ち込むのは困難であっただろうが、リアンはそれを力業でカバーした。
両者が別れた時点でミニドラコは正面のアカネに向け、素早く走るアスナへは中腕に装備したクリスヴェクターをばら撒いて動きを抑制する。
「きゃ!」
「いったいっ!」
怯んだ。
が、背後からはネルが追っている。リアンは鬼のような気迫を背後から感じ取ると、アスナへの追撃は諦めアカネに全銃口を向ける。
「このっ…!」
「無駄ダ!」
顔を歪ませながら、アカネが咄嗟に取り出したC4爆弾を投げる。が、それは銃弾すら見切るリアンにとっては遅すぎた。
難なく躱すと、そのまま無防備な肉体に銃撃を放つ――――ことなく背後からの爆発にたたらを踏む。
「何ッ」
「いつまでも無視してんじゃねえぞ!!」
振り返ると、そこには何かを蹴り抜いた姿勢で着地するネルの姿。その姿勢、背に直撃した爆発。
「
「当然!」
歯を剥き出しに笑ったネルが答える。今のは至極単純。アカネが放ち、リアンが躱した爆弾をそのままネルが背中へと蹴り入れたというだけだ。
その力加減は基より、咄嗟にその判断をし、恐れることなく叩きつける様は成る程。ミレニアム最強の名を冠するに相応しいものだろう。
そして、今の一瞬で動きが停止したリアンに対して、彼女たちの行動は早かった。ネルを支点に、通路を挟み込み銃撃を叩き込む二人と、その真っ只中に於いても獰猛にリアンに対して立ち向かうネル。
「オラオラどうしたぁっ!!」
「鬱陶しイ!」
アスナとアカネが挟んだことを尻目に確認すると、今まで大雑把な動きだったネルの行動が変化する。
全速力で駆けていた勢いはそのままに、地面で何度もステップを踏み、ジグザグと稲妻のような軌跡を描きながら、辛うじて腕の届かない範囲を維持して包囲網を組み上げた。
(こいつの間合いは危険だ。接近戦じゃあたしに敵う奴はいねぇと思ってたが、
小難しいことを考えるのを好まないネルが、しかして対抗するために自分なりに考えた戦法。互角に立ち回るだけなら兎も角、彼我の耐久力とスタミナ、筋力。どれもが上回られている状況では、これまでの戦い方では通じないと思ったのだ。
が、対するリアンも
地を駆け回るネルに対して、瓦礫の一つを蹴り出す。ネルは容易く躱すが、真の狙いはその背後。
「うわっ!?」
撃ち出されたコンクリート片はアスナの構えたアサルトライフルの銃口を跳ね上げ、その狙いを狂わせる。
逸れた銃弾は、足元を狙っていたこともあってネルの背中へ。
信頼していたが故に、予想外の衝撃に一瞬気を取られ、速度を緩めた。
「隙あり」
「おっ…!?」
次の瞬間、ネルの頭が背後へ揺れる。超至近距離から放たれた散弾が額に当たり、勢いで姿勢を崩す。
お陰で完全に止まったネルをそのまま振り上げた右脚で蹴り飛ばす。
「がっ…!?」
「リーダー!!」
「ネル先輩!?」
くの字に折れ曲がったネルの体は背後へ真っ直ぐに飛んでいく。そのまま吹き飛ばされるかと思えば、空中で身体を捻り、手をつき滑りながら着地する。派手に吹き飛ばされたように見えたが、地面から足を離していたお陰で威力が分散し、体へのダメージは比較的抑えられた。
地面についても尚跳ね、それでも着地の衝撃だけは吸収したネルは、視線を戻すと目を見開く。
そこには、右手にMG42、左手にミニドラコを携え、引き金に指をかけるリアンの姿があった。
「まずっ!」
咄嗟に身を翻して隣接した部屋へと飛び退く。既にアスナとアカネも同じ部屋へと身を投げ出していた。
ズガガガガガガガガッッッ!!!
狭い通路内を二種の銃撃音が満たす。
距離を取った相手を纏めて一網打尽に出来る制圧射撃を回避したネル達。しかしこの部屋は出入り口を除いて何処にも繫がっていない袋小路。
「ちっ、他の場所はねえか」
「ですが、ここならば来る方向も制限されてます」
ならばむしろ、土煙の立ち込める廊下へ出るのではなく、こちらを仕留めにやって来るリアンを迎え撃とうと構えて、異音に気づく。
「?―――っ!?」
異音の出所に目を向けたネルの眼の前で、壁が爆ぜる。
爆弾での強行突破か?
そう疑問符を浮かべたのも僅か一瞬。瓦礫を吹き飛ばしながら見えたのは、黒い巨躯。
「んなっ」
この中で唯一異音に気づいていたネルは兎も角、二人の注意は廊下へと向いていた。故に、突発的な事象に反応できない。
「がっ!?」
ネルは恐ろしいほどの反射神経でリアンに対して銃弾を飛ばすも、視界に広がったのは押し寄せる壁。
リアンは壁を貫いた勢いを欠片も緩めず、くり抜いた壁を盾の様に構えて突進したのだ。
「ネル先輩!! 壁ごと貫いて…!?」
ようやく反応したのは、ネルが壁に挟まれた後のこと。
「このっ、ヤロッ…!」
咄嗟に腕を組んで防御したはいいものの、瓦礫を挟んでいるため視界も大幅に遮られている。加えて、この姿勢からでは瓦礫を挟んで向こうにいるリアンを撃つ事ができない。
蹴りを入れようにも、悲しいことに圧倒的にリーチが足りない。
更に悪いことは。リアンの腕には尚空きがあるということだ。ネルの挟まれた瓦礫の縁から、短機関銃が二丁とミニドラコが顔をのぞかせる。
精度はまるでないが、この距離ならば関係ない。
「クッッッッソがぁぁっ………!!!」
全身全霊で圧し潰さんとするそれに抵抗しつつ、甘んじて銃弾はその身で受ける。いかにタフネスのあるネルとて、サンドイッチにしようとする力に耐えつつ、至近距離からでの高火力の一斉掃射は耐え難いらしい。
「っ、もう!さっきから撃ってるのに!」
「ネル先輩を離してください!」
アスナとアカネもこの隙を狙わないほど馬鹿ではない。むしろその手を離させんと銃撃を続けるも、それすら無視してリアンはネルへの攻めの手を止めない。
これは不味いと思ったのか、アカネが決断する。
「ネル先輩!」
背に腹は代えられないと、手持ちの爆弾を複数個足元に滑り込ませ、即座に起爆。
ネルの身体とリアンの腕が浮き上がると同時に、瓦礫も粉砕され、その爆発でできた隙を逃さずネルが離脱。
追おうとするリアンの顔にフルオートで射撃を叩き込みながら、もう一度廊下へと駆け出す。
アスナも続き、最後のダメ押しとばかりに室内に全ての爆弾を放棄すると離脱と同時に起爆。
爆炎を背後に、先の銃撃で銃創まみれの廊下を駆ける。
今の爆発で部屋はボロボロだが、それでやられる程度ならば、前回の崩落で既に落ちている。
むしろ直ぐに追いかけてこないことへの疑念と、これまでの信頼から、立ち止まるほうが危険だと判断したのだ。
そしてその感覚は正しい。狙撃地点にいたカリンから無線が入る。
『リーダー、下だ!下の階で並走してる!』
「狙えるか?」
『できる。けど決定打にはならない』
「十分だ」
その言葉と同時に放たれた一筋の線。正確無比な射撃は、走るリアンの頭部へと吸い込まれていき――――。
ゴッ、と鈍い音を立ててマスクに弾かれた。
『っしまった、マスクに防がれ――いや、効いてるのか?』
カリンの言葉通り、狙撃は顔につけていたマスクによって直撃は阻まれた。しかし、リアンの反応はあたった箇所を咄嗟に庇い、減速したのだ。
「へっ、丁度いい!」
その報せを聞くや否や、ネルは窓に足をかけて身を投げ出した。
飛び散る硝子片。廃墟の街並みが視界いっぱいに広がるが、ネルは窓縁へと手をかけて下の階へと突入した。
「おらおらどうしたぁっ!!」
突入した先にいたリアンが驚いたのか硬直したことを確認すると、そのまま蹴りつけ至近距離での乱射を浴びせる。
互いに背後へ飛び退った頃には、二人も合流し、再び状況はリセットされる。
いや、互いに生傷が増えているものの、ネルの目は爛々と好戦的に輝いており、リアンの顔は変わらず無表情。けれど狙撃を警戒しているのか左手がフリーになって構えられている。
「そんなに狙撃が怖いかよ」
「…あア、今のは危なかった。折角のトレードマークが破壊される所ダッた」
「ちっ、つまんねえ冗談だな」
「……冗談のツモりはなかったのだが。しかしそうだな。うん。あれほどの狙撃をされたのは、片手で数える程しか無い。流石はC&C…。ミレニアム最強の武装集団だけアル…」
「はっ、まだまだこれからだろ」
「ええと、私は既に爆薬も使いきってしまったのですが………」
「私もまだまだいけるよー!」
傷を負って尚、高揚するネル。アカネはそれに対して消極的なものの、戦闘を続けることに異論はない。
故にこそ、リアンもその戦意に応える。これまでよりもかなりの低姿勢になり、計六個の銃口がこちらに向けられる。
じり、と砂利を踏むような音の後、猛スピードで廊下を駆け回り始めた。ジグザグと不規則に、それでも欠片も速度を緩めず、壁すら加速のための足場としながら迫る。
「ようやくその気になりやがったな!」
「援護します」
迎え撃つべく、ネルは全速力でリアンへと向かう。こちらの銃撃は避けられ、時に防がれる。だが、それは相手も同じことだ。
ネルの瞬間的な加速からの跳躍。両の手のツイン・ドラゴンは常に切らすことなく銃弾を吐き続け、しかしながらリアンは壁を連続で蹴りつけて回避。浮き上がった体を追撃しようとして、それを読んでいたネルに伸ばした腕へ集中砲火を食らう。
ネルが着地すると同時、その足を刈るべく地に手を付けての前掃腿。が、これもネルは躱す。背を曝け出したリアンへと更に接近しようとして、不意の衝撃に足をすくわれる。
(なっ…!?)
回る視界の中、咄嗟に見れば、リアンの背から伸びる腕が、刈払った足に追従するようにして円月を描いている。
同じ軌道で放たれたソレが、二段構えに襲いかかったのだ。
そして当然、それを狙っていた本人が視線を外していることなどあり得ない。視界に収められていることを認識し、慌てて姿勢を制御して受けに回る。
「ふッ…!」
「うおおぉぉぉぉぉぉぉっっ…!!?」
払った脚が急停止し、跳ね上がるように宙に浮かんだネルの体を跳ね飛ばす。地を転がり、何とか起き上がった瞬間に放たれる射撃。これを受け、離された距離を取り戻そうとネルも再び疾駆する。
アスナ達と撃ち合っていたリアンの背後を取り、瓦礫を投げつけるが、それも空中で撃ち落とされる。
「スカしてんじゃねえ!」
絶え間なく続く乾いた銃声が廊下を支配する。リアンの多種多様な銃弾による一斉掃射はなかなかに厄介だが、すべての腕を使っている以上、欠点も目立つ。
リアンの弾幕が途切れる。咄嗟に複腕のショットガン二丁を地に落とし、懐からクリスヴェクターのマガジンを取り出している。
「っ切れたな!」
武器としているのは銃弾。それは当然、弾切れが発生し、リロードするまでは発射することができない。そしてリロードにも少なからず隙が出来る。況して、それが銃種の異なり、両の手で扱う以上の量ならばどうだろうか。
それは、並の相手以上の隙を晒すことと同義だ。
その合図に気づいた3人は、近接攻撃には注意しながら一斉に攻勢へと移る。アカネは自身の火力が足りないと見てリロードの妨害をするべく手元を狙い、アスナは地を滑りながら目元へと射撃。
そして一番の火力であるネルが距離を詰め、喉元へ向けて掃射する。
三位一体の攻撃。中央のリアンが取った行動は、脅威の順に潰すことだ。
ネルの攻撃をコートを翻して受け止め、返す刀でコートに包めて投げ飛ばす。コートに付属している重量物だけでも50kgは容易く越えている。勢いを殺され、挙げ句リアンの身長に合わせた代物なのでネルには大きすぎる。
機動力と視界を潰したネルの次は、遊撃を続けるアスナ………ではなくリロードの妨害に専念するアカネだ。
「っ、こっちですか…!」
アカネは口走り、咄嗟に下がりながら引き金を引き続けるが、不規則な軌道と、手の動きを見たリアンには当たらない。
その援護にとアスナも背後から撃ちまくるが、それも中腕からの射撃でままならない。
「くっ……!」
懐まで潜り込まれたら終わりだ。そう認識していながら、妨害は叶わない。走り込むリアンが更なる加速をしようとした瞬間、遠方からの重い銃声が届き窓ガラスが粉砕される。
『当たった…!』
カリンの援護射撃だ。次の行動へと移る瞬間を狙われては、流石に隙を生むだろうと考えての精密射撃。
それは寸分狂いなく、先ほど効果の見えた顎先へと向けられていた。
『んなっ―――!?』
「止まらな―――」
が、一瞬の狙撃にも動じず進み続けた。見れば、顔の横に構えていた左手の甲。グローブの一部に穴が空き、そこから煙が微かに立ち昇る。
「腕が良いな。全く同じ箇所を狙うと思ッタよ」
動き回る相手の、更に狙った箇所に狙撃するのは困難だ。だが、最初の狙撃とC&Cという組織を信頼していたが故に、一度リアクションを取ってしまった箇所に当てると確信していたのだ。
そして、逆に隙を晒してしまったアカネは、咄嗟に拳銃を撃とうと狙いをつけるが、一度加速を許してしまったからには最早手遅れだ。
「っっ……!!?」
拳銃を構えた腕の内側に腕を通し、発射の瞬間に手首で動かしてずらす。離れた手をそのまま蛇のように巻き付け、関節を極めた瞬間に足を掬う。
上半身に気を配っていたアカネは軽々と押し倒され、衝撃に目をつぶった一瞬で両の腕を抑えられていることを知覚する。
瞳を開ければ、そこには顔の前にグロスフスMG42が構えられていた。
「あ、あら……」
自身の未来を悟ったアカネが乾いた笑いをあげると同時、電動ノコギリの異名を持つそれが火を吹いた。毎分1500発を誇るそれを無抵抗のまま至近距離で受け、尚も立ち上がるタフネスはアカネには備わっていなかったのだった。
リアンにも苦手なことはあります。
銃撃戦と恋愛相談です
先生の台詞にゲーム本編のように「“”」はいる?
-
先生と一目で分かるからあった方がいい
-
別にゲームテキストでもないのでなくていい