透き通るような世界観にいちゃいけないタイプのクリーチャーに成ったけど今日も元気に擬態する 作:食卓の英雄
「皆さん、こちらを見てください」
ある日、長い銀髪を携えた丁寧な口調の少女が、卓上に1枚のチラシを差し出した。
彼女を囲んでいた3人の少女たちの注目が向き、その
「「「海鮮小屋
それはとある店の出している広報用のものだった。とはいえ、周囲の少女たちにとっては聞き馴染みのない店名だ。知らない飲食店の方が多いというのが当然だが、眼の前の少女が用いて尚、誰一人として噂すら知らないということも珍しい。
「海鮮小屋、珍しいですね〜。見る限り、お魚に貝類、カニなど種類は豊富ですが…」
「わぁ〜、これって高級な食材だよね!今度はここに行くの?」
「でも、やっぱりこんな料理ってすごく高いんじゃないの?」
口々に感想を連ねる少女たち。
上から順に、金髪の長髪に下に伸びる角を持っているのが鰐淵アカリ。薄い銅色の髪に大変発育の良い体をしている少女が獅子堂イズミ。そして赤髪で、この中で最も細く小柄な少女が赤司ジュンコ。
そして最後、美しい銀髪に白い肌。美しい容姿とその言葉遣い、そこはかとなく漂う気品は、まさしくお嬢様という印象が目立つ楚々とした少女――黒舘ハルナを会長とした彼女たち4人は、ゲヘナでも
……実は正式に認められた部活ではないのだが。
何を隠そう、この美食研究会とは、その名の通りに様々な美食を探求しているのだが……。その方法が苛烈にして過激。ある時は質に対して過剰な値段をぼったくる店を爆破。またある時は礼儀のなっていない傲慢な高級料理店を爆破。そしてまたある時は他自治区の悪質な飲食店を周囲を巻き込んで爆破。
と、美食に熱を求める余り、その基準に達しないものや悪辣な店を爆破しまくっており、ゲヘナにおいてテロリスト集団として恐れられているのだ。
とはいえ、彼女たちも無差別に爆破をするわけではなく、誠実に営んでいる料亭であったり、値段と質が見合っていたり、はたまた純粋に美味しく、それでいて良識ある店などについては絶賛し、それが周囲からは一定のステータスになっている、ということは確かであるのだが。
まあそれはそれとして爆破しまくるのは駄目だよね。というわけで。
そんな彼女達が見ているのは、ある辺境の地にぽつんと建てられた海鮮小屋だ。どうやら、今度はこちらが目をつけられているらしい。
「ふふ、心配は不要ですジュンコさん。確かに普段食べているものに比べて割高なのは承知しておりますが……見てください」
「あら?かなりお値段が安いですね」
「ほんとだ!前に私が食べようとした高級なお店よりも全然やすーい!」
「……すごいけど、それって何かあるんじゃないの?」
「ええ。まず、漁港からすぐ近くにあるお店であり、同じグループが経営しているので、入荷はタダなんだそうです。……漁の成果と出荷状況によって在庫が変動するという不安定さこそありますが、常設メニューもありますので」
チラシから飛べるサイトをスマートフォンで眺めていると、その理由や店の事情がいくらか公開されている。中には水揚げ後の魚介の写真も含まれており、エプロンを着た少女とマグロを持ち上げた少女が笑顔で写っているものも確認できた。
しかし、とアカリが腑に落ちないような顔で尋ねる。
「でも、それだけでこんなに安くなるんでしょうか?ここに写っているお魚達は、どれもかなり値が張りそうですよ?」
「そこなのですアカリさん」
ハルナがよくぞ聞いてくれた!という様に説明を始める。
「実は、これには理由があるのです。ホームページの社長の言葉にあるのですが、こちらの小屋は余った人員への仕事の分配と、ここを通して経営と手際を学んで欲しいという理由があることから、殆どの負担を元会社が担っておりまして、お店自体の負担が殆どありませんの。それに、使われる食材の殆どが出荷するにはキリの悪い量である余りであったり、市場には出せないものの品質には問題のないもの。いわゆるワケあり品だから、ということでして、お安くしあがっているとのことです。……まあ、これほどの辺境ですので、土地代が安いことや、人の集まる場所、ということでもないことも含まれているのですが…」
と、まあ調べてみれば分かる程度のことではあるものの、納得は出来た。それと同時に、ハルナがここまで予め調べてから提案するというのも珍しいなと思ったのも確かだ。
いつもであれば、唐突に目的地を告げて移動を開始するというのも珍しくはなく、事前に店名と料理が分かれば御の字。下手をすれば何もわからないままついていく日だってあった。
「ええ、それなのですが…。こちらの土地は凍土に程近い海岸です。…その、相応しいシチュエーション以前に、凍えていては折角の海の幸の味も軽減してしまいます。ですので、これから4人で風にも強い防寒着などを買いに行きましょう、という提案ですわ」
「わあ、ショッピングですね!意外と食事以外ではあまりやっていませんので、私はいいと思いますよ?」
「うーん、分かった!私も寒くて食べられないのは嫌だし…」
「でもいいの?そんなもの買ってたら、いくら安いとはいえバイト代じゃ足りないんじゃないの?」
乗り気のアカリとイズミ。しかしジュンコだけは納得はしていても、折角の高級魚介を楽しめるかもしれないのに、懐事情から満足に食べられなくなる可能性を懸念していた。
が、ここまで長々と説明したからには、それも想定内。
「こちら、会員の方であれば割引が効くようでして、50%の割引価格になります」
「半額じゃん!!……あれ、でも会員割なんでしょ?私達にいないわよ?」
「ええ、ですのでこれから会いに行きますわ。こちら、会員証と本人確認が出来れば可能とのことですので」
「???社員の人を探して譲ってもらうの?」
「…そういうことですね☆」
「何々どういうこと!?」と置いてけぼりを食らっているジュンコに、ハルナは妖艶な表情で告げた。
「直ぐに分かりますわ」
―――……
「で、もうこの際縛ったことは見逃してあげるから理由を説明してもらえる?」
所変わって食堂の一角。そこには既に簀巻きにされたフウカがすべてを諦めた目で捕えられており、周囲からの目も多少同情の混ざったものが含まれているものの、基本的には助けようとはしていない。巻き込まれるのは嫌なのである。
この美食研究会による給食部の
今回はフウカが目当てだったので、特に抵抗せず身柄を明け渡すことで穏当?に終わった。
むしろ最近は給食へのケチつけは人数の増加により頻度は落ち、フウカの誘拐目的の方がメインになりつつある。しかも目的を妨害すれば、そこはゲヘナ学園の指折りのテロリスト集団。結構な被害を出してくる。
ので、今では協力者であるはずの社員達ですら積極的に差し出すようになっている。
結果的にそちらの方が被害が少なく済むというのは、フウカには酷な話だろうが。
そんな訳で、フウカをあっさり引き渡した後も食堂は普段通りの業務が出来ており、拘束による厨房の機能停止を避けられたと喜ぶべきか、自身が見捨てられたことを嘆けばよいのやら。
フウカは、最早どうにもならないことを悟っていた。だからこそ、どうせ誘拐されるなら、せめて目的だけでも聞き出そうとしているのだ。何も分からず誘拐されるよりは万倍マシということだ。因みにその考えが十分に今の環境に毒されていることにはまだ気づいていない。
「フウカさん、まずはこちらをご覧ください」
そう言って、縛られたフウカにも見えやすく差し出されたのは、先程4人で見つめていたチラシ。
海鮮小屋GEBURAHのチラシには、基本的な情報が記されており、その質と扱う食材に目を剥き、次にその価格に驚き、最後に周辺に市街地は疎か人類の生活圏の建物が皆無なカスみたいな立地に瞠目する。
まあ、ハッキリ言って稼ぐ気が欠片もない店なので当然だ。漁での収入を踏まえると余裕で賄える程度ではあるが、こちらの店自体は普通に赤字である。
むしろ、だからこそお眼鏡にかかったと見るべきか。過剰なほど安くはなく、その理由もはっきりとしている。ならば、怪しまずに行くのが美食探求というもの。
フウカも言わんとすることは分かったのか、チラシと値段などを見て、再び疑問を呈する。
「こちら場所が場所なものでして、防寒着を新たにして参りたいのですが、やはりこれだけの海の幸。資金に余裕を持たせたいということもあり……。会員割が適用されているので、よろしければ私たちと共に来ていただけると嬉しいのですが」
「よろしければって言葉は強制じゃないってことは知ってる?……っていうかあの会社って、こんなこともしてたんだ」
「おや、ご存知なかったのですか?殆ど社員の方にしか配られていない会員証をお持ちですのに」
「うっ…いや、これは給食用の費用が安くなるからって契約を勧められて…」
「う〜ん…それって囲われてますよね☆」
「言わないでぇ!!?薄々気づいてるんだから!でもそうしないとそもそもの借金が膨れ上がって返せなくなっちゃうの!」
フウカの嘆きに、着実に囲い込んでいる状況が垣間見える。尚、リアンは本人が嫌がるならこの投資を完全に割り切って応援するつもりではある。よかったね。多分責任感的にそうはならないけど。
「まあまあ、それよりも蟹とか帆立とか、海の高級食材が食べられるのよ!早く行かないと数量限定のものも売り切れちゃう!」
「えっ、そうなの!?早くコートとか買ってから行こうよ!」
こうしてのんびりと話している現状に、逸る気持ちでジュンコとイズミが急かす。しかし、ハルナは一言で切り捨てた。
「今日は行きませんよ?」
「え?」
「あれだけ説明したのに!?ど、どうしたのハルナ。こんなこと、滅多にないのに…。どうしたの?変なもの食べた?」
「…何気に失礼ですわね。いえ、ただ今から防寒着を選び、移動するとなると時間がかかりまして…。流石に営業時間内には間に合いますが、余裕もなくなってしまいますので。折角の機会、余裕のある態度で迎えなければ、それは美食への冒涜ですわ」
まあ、言わんとすることは分からなくもない。だが、てっきり直ぐにでも出発するものだと思っていた彼女たちにとっては拍子抜けだ。
「ええ〜っ!?もう魚介の口になってたのにおあずけ!!?それは酷くない!?」
「そんなあ〜!」
「ふふ、私は最初から分かってましたけどね」
嘆く二人に、アカリはニコニコと余裕の笑み。どうやらその時刻表を見た時点でそのことは察していたらしい。
「それなら何で私は縛られてるのよ…」
そして当然、既に捕まっているフウカも疑問を呈する。何せ、会員割目当てに捕まえられたのにも関わらず、実行は明日だというのだ。何故捕まったのか。
尋ねると、ハルナはなんてことの無いように言葉を紡いだ。
「ええ、これから防寒着を買いに行くので、フウカさんもご一緒にと思いまして」
「……拒否権は?」
「ありませんわ。拒否しても、明日のフウカさんが寒さに凍えることになりますわね」
どうせ今断った所で、明日誘拐に来るのは変わらない。フウカは頭を働かせる。ハッキリ言って、こうして犯行予告をされているからには、明日にでも風紀委員長に頼んで*1守ってもらうことも出来るが、この店も今限定でやっているわけではない。
明日を凌いでも、いつかリベンジに攫われる日が先送りになるだけだろうという嫌な信頼があった。
ならばもう、この際まだ余計なことをしない内にのってやる方がいいのではないかと思い至る。それに、新鮮な海の幸をふんだんに扱っている飲食店に興味があるのもまた事実。
「……はあ、しょうがないわね。分かったわよ。行くから、大人しくついていくから給食部(主にジュリ)には手を出さないで」
「あ、あら?何だかあっさり…」
「なんだか映画の主人公みたいですね〜☆」
「私達が敵の絵面なんだけど!?」
こうして、ゲヘナは今日も当たり前の1日が始まった。今日のこの襲撃も、いつもと同じか、或いは穏便に収まった程度の些細なことでしかない。
しかし、この美食研究会+αが、後にキヴォトスでも滅多にない事件に陰ながら巻き込まれることになるとは、誰一人として想像していなかった。
ちなみに、ハルナがフウカをわざわざ誘った理由は折角の機会を親しい人(本人基準)と共有したいという思いによるものらしい。
なんと今回美食sideだけで終了……!なんとまだカルキノスについて触れられてさえいないのである……!
口調、あってるのか?分からん……
ククク…地道に評価も増えてきていますね。このままであれば来月中には1万人を突破は確実か…
先生の台詞にゲーム本編のように「“”」はいる?
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先生と一目で分かるからあった方がいい
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別にゲームテキストでもないのでなくていい