透き通るような世界観にいちゃいけないタイプのクリーチャーに成ったけど今日も元気に擬態する 作:食卓の英雄
あと☆10の評価バーがオレンジ1色に染まりました!
そして前回で950を超えたと思った☆9も、いつの間にか970に。これも皆様のご愛顧あってのものです。
かんしゃあ〜。
うれしみ。
前回の前書きのヒント、ほぼほぼ答えになりますが、1973と2019のストラ、は戻すとストリウムです。
よく創作で用いられる表現として、強者同士の相対には可視化できるほどの気迫があると評されたりすることがある。
強者と強者、その力や規模を表すための表現であり、あくまで創作上の目に見えないイメージである。
しかし、今は一触即発の空気に紛れて肌を刺すような緊張が補習授業部を襲っていた。
異なる反応を取っているのは、どこか悲しみを携えた表情で見守る先生とナギサだけだ。
ミカの気迫を一言で言い表すのなら、圧倒的な暴力。美甘ネルのように荒々しさの中に燃え滾る意志を携えるでもなく、剣先ツルギのように計算された威圧でもない。
それらよりも稚拙で、しかしてぐちゃぐちゃの感情が入り混じった様に発露するそれは、それ以上に異様な空気を醸し出している。
対するリアンはと言えば、恐ろしいほどに何もない。いや、何か得体のしれない気迫自体はある。だが、そうであるにも関わらず、あまりに薄い。何か大きなものが蠢いているように感じられるのに、まるでそれが見えない。
足元に暗く深い海が広がっているような、どこまでも続く宇宙を見たような、危機を感じるそれはないにも関わらず、言いようのない不安に襲われる感覚だ。
それが直接向けられているわけでもないのに、アズサ達は自然と己の愛銃の存在を確かめるように握り直していた。
一時の静寂。
リアンは何かに気づいたように耳に手を当てる。
「…何?これ以上足止め出来ない?今良いところなんだ。保たせろ。それがお前の仕事だろう。…………え、ブラック企業っぽい?………じゃあナシで。せめてあと5、いや3分は通すな。お前なら簡単な筈だ。直ぐに片付く」
「……何の話してるか分からないけどさ。都合が悪いってことかな?それに、たった3分でどうにか出来るなんて思ってるの?」
どうやら自身を目の前にして他のことに気を取られ、あまつさえ短時間で倒すと言っているのだから、舐められていると感じたのだろう。より語気を強めて怒りを露わにする。
その膨れ上がった気迫にも動じずに懐に入れた手を軽く弄びながらリアンは軽く言い放った。
「気にするな。こっちの話だ。……何、3分もあれば世界を救えるんだ。自暴自棄になった少女一人鎮圧するのに十分過ぎる時間だとは思わないか?」
「あははっ、冗談は態度だけにしてよねっ」
「その言葉はそっくりそのままお返ししようカ」
瞬間、ミカが抜いたランチェスター短機関銃が火を吹いた。
ミカの愛銃、名はQuis ut Deus。元は普遍的なトリニティ製のサブマシンガンを、彼女が装飾したものだ。
しかし量産品と侮るなかれ。よく使用者が異なればその力は変わるとあるが、キヴォトスにおいてはそれが銃にも適用される。
十把一絡の雑兵が放つライフル銃よりも、聖園ミカの放つサブマシンガンの方が火力が高い。そんなことが起こり得るのだ。
勿論、破壊規模や範囲などはその限りではないかもしれないが、何かしらのブーストは掛かっているのだろう。
そんな掃射を目にしてリアンが取ったのは、回避でも防御でもなく、迎撃であった。
「…ゼェァッ!」
両手に構えた湾曲した角刃。目にも留まらぬ速さで振り抜いたそれでもって発射された弾丸を斬り伏せる。
「……は?」
誰もが一度は目にするのは創作的表現であり、けれども誰一人として実現するなどとは考えない近接武器による弾丸の迎撃。
目の前で行われた異常に聖園ミカの思考が白く染まる。
「それは悪手だぞ」
瞬間、激進する黒い影に銃撃を向けるも、やはりそれも防がれる。否、流石に駆けながらでは全てを防ぐことは出来ないのか、ばらけた弾が身体を穿つが、止まらない。
露出した頭部や重心といった部位は確実に防ぎ、それ以外は防爆防弾コートで威力を軽減。持ち前の耐久力と相まって、強引に突破される。
迫る影に反応が間に合わず、けれど間合いに入ったと見るやその類まれな剛腕を繰り出すミカ。咄嗟に繰り出したながらも、並の生徒であれば昏倒せしめる一撃は、しかして伸び切る前に容易に受け止められた。
「…っ!!」
それを自覚するよりも早く、警鐘を鳴らす本能に従ってサブマシンガンを見ずに放つ。
確かな手応えと共に、コートで隠れていない胸部へと吸い込まれ、力が緩んだ隙に背後へと飛ぶ。
「甘イッ!」
浮かんだ身体は刈りやすい。低空を薙ぎ払う脚撃がミカの着地先へと吸い込まれる。
常ならば、抵抗もできぬままに足を払われていたであろう一撃。しかしてミカは己の翼をはためかせ、一瞬の滞空。
タイミングをずらして足払いをやり過ごし、勢いそのままに背を向けているリアンへと照準を合わせた所で、視界が翻った黒いコートに覆われる。
(もう、うっとおし――っ?)
視界が開けたその瞬間、側面から迫る一撃を咄嗟に防ぐ。
「痛っっ…!」
右足で薙いだリアンがそれを支点に左で回し蹴りを浴びせたのだ。顎狙いのそれを左腕で守ったものの、その衝撃は彼女がこれまでに食らった銃撃の比にならない程に重く、鋭い。
思わず浮きかける身体を制止して、床を滑るようにして衝撃を逃がしていく。
「……勘がいイな」
「……痛いんだけど?女の子の顔にあんな蹴り入れようとするなんてさぁ、頭大丈夫なのかな?」
「…さあな。正常な頭ナら俺はとックに自害でもしてイル。……何より、それを言うならそっちの方だろう」
「―――っ」
背筋に冷たいものが走る。それと同時に、烈火の如き怒りの感情が湧き上がる。それは誰にも触れられたくない、ミカ自身無意識に感じている矛盾を、第三者に無遠慮に暴かれたと感じているからに他ならない。
どこか余裕を失ったかのような表情で、ミカはより冷徹に、容赦のない銃撃を開始した。
銃撃と銃撃の応酬。リアンが動き回り、的を絞らせぬままに翻弄し、視線の逸れた合間を縫うように一撃を見舞う。
リアンの動きと、薄暗い体育館という環境はうまく噛み合っていた。影から影へと飛び移りながら撹乱し。月明かりに身体を晒し、視線を引きつけての銃撃。慣性を振り切るかの如き挙動はこれらの技術も組み合わさって狙いが定まらない。
ならばと、先ほどの会話から踏まえて先生たちを狙うような挙動を見せれば、必ず隙を突いてくる。
「ああもう!やりにくい!」
ミカの口から出るのは自身の劣勢を実感させる言葉のみ。
ここに至るまで、様々な要因を見つけては、それらを排してきた。正義実現委員会、その他のティーパーティー。
……そして、補習授業部と先生。
後者には予想外の動きに驚かされたし、何よりまだ彼女達は健在だ。
それ即ち、殆ど失敗状態に追い込まれているにも関わらず、当初の目的である彼女達の排除はおろか、戦闘状態にすら持ち込まれないままに今に至る。
ナギサの雇った護衛。全くの部外者の癖に、やたら強い。
牽制の射撃は動きを鈍らせることすらできず、本命の強打は恐ろしいほどの勘と精度で避けるか弾かれる。それに向こうの一撃も馬鹿にならない威力をしている。
弾の威力からすれば、真っ当な撃ち合いならば制することが出来たであろう。しかし、リアンはそれを技と準備で補ってくる。
近接を避けても、確実にこちらの体力と集中力を奪いに来ている。
そして動きに精彩を欠けば銃弾よりも痛い近接格闘に持ち込まれる。
翻弄するような動きから駆け迫るリアンへと、下手な攻撃は無意味と判断し、カウンターを狙う。サブマシンガンによる弾幕で行動を制限し、多少の被弾は覚悟の上で拳を振るった。
「っ…!」
が、不発。
ミカの動きを読んでいたかのごとく、リアンは滑り込みながら拳を躱す。
あの巨体が視界から消え失せたことに一瞬の困惑。
のち、背後に回られたことを理解したミカは咄嗟に振り返るが、踏み出した足裏に硬い感触を覚えた。
(――?……衝撃手榴弾っ!)
リアンがすれ違いざまに足元へと落としたそれを見やったミカの額に汗が浮かぶ。
幸いにも、早期に気づくことが出来た。今落とされたタイプの手榴弾はピンを抜いて起爆までに4秒。
迫る姿を見逃すまいと注視していたミカは、それがすれ違いざまに抜かれたものだと分かった。
そして、振り返った視界の端では、スライディングの姿勢のまま背を向けるリアン。
刹那にも満たない間にそれらの情報を纏めたミカは、ならばとリアンの方向へと蹴り飛ばさんとする。まだ起爆には至らない。相手はまだ立ち直れていない。一瞬の判断のお陰で蹴り飛ばすにはまだ猶予が――。
「ボン」
乾いた発砲音。音の出処はリアンの足。その踵部にあるホルスターに収められた拳銃が火を吹いた。
スライディング後の姿勢なのだから、当然その狙いも低くなる。
足か?床か?それとも苦し紛れの足掻きか。
その何れでもない。放たれたたった一発の拳銃弾は、ミカであれば牽制にもならない威力しか無かった。
しかし、手榴弾はその限りではない。信管を避けた一発が直撃。爆発。
これには堪らずミカの体は宙空へと投げ出される。
砲弾や爆弾が直撃しようとも耐えることのできる程の強靭な肉体を持つ生徒達と言えど、その重量は並の人間とそう変わらない。無論、踏ん張ったり堪えたりするのであれば別だが、こうして不安定な足場で真下から衝撃を受けては、身が投げ出されるのは当然の結果だった。
(やばっ、次が――!)
一瞬遅れて、己の体が浮き上がったと理解するやいなや、追撃が来るだろうと予測を立てた。
(っ来た!)
読み通り、爆炎の中を切り裂いて飛びかかる黒い影。
姿勢が安定しているのならば翼で多少の行動は出来たが、今回は爆風に煽られ、空力は働きそうにない。回避は困難だ。
そして、必中の一撃を狙っていたのならばまんまと乗った今、確実にこれまで以上の攻撃が来る。
瞬間、背筋が凍るほどの強烈な殺気。
(迎撃……は無理!)
当然、リアンもそこは警戒しているのか、重要箇所は確実に覆っている。
故に、ミカはせめて急所を守ろうと腕を交差して衝撃に備える。
「っ!?」
しかし、リアンの拳はミカの思いに反して、顔の横合いをすり抜けていく。
ミカが身を捩って躱したのではない。ならば何故?ただ単純に目算を誤った訳では無いはず。
そう考えたミカが視線で追うと、暗がりで分かりにくいが、通り過ぎようとする腕の外側が鈍く光る。
停滞して見える世界の中で、今にも迫らんとするそれの正体を悟る。
リアンが先刻の戦いで頭部から離し、近接、投擲武器として用いていた角剣。それが腕の外側に鰭のように装着されていた。
つまり、拳が逸れたのは、この腕刃の分のリーチの差。
直線的な拳に備えていたミカにとっては青天の霹靂だ。顔の横を通り抜けたのだから、自然とその腕刃の位置も測り知れるというもの。
―――首だ。
(あ、私死んだかも)
どこか客観的に、そして冷静に悟る。
スローモーションの景色の中、これまでの激情が嘘のように消え淡々とその事実を認識していた。
キヴォトスの生徒にとって、真の意味で死を覚悟する攻撃というものは少ない。死にそう、というのもあくまでその強烈さを比喩的に表したもの。
身の危険を覚えることはあっても、死を覚悟する事態はそう頻発するものではない。
身体的なダメージに強くとも、切り裂かれ、血を流しすぎてしまえば比較的容易に死に至る。失血の致死量も、外の世界の人間に比べれば多い方にはなるが、それでも人間という肉袋に収まる血の量は限られている。
何より、投擲しただけで銃器を切断するほどの切れ味を持つ刃だ。あの化け物じみた膂力でそれが振るわれると考えれば、柔い首の皮など容易く貫通するに違いない。
(死ぬ、死ぬの?私が?血がびゅーって噴き出して失血死?…嫌だなぁ…。痛そうだなぁ…。血がなくなるってどんな感じ?貧血とは違うのかな?……きっと、辛いよね。苦しいよね)
今際の際に思い浮かぶのは、己のせいで死んでしまった親友の姿。
(……自業自得、だよね。セイアちゃんも、最期の時はこんな感じだったのかな?…ううん。元々体が弱かった上に、突然押しかけてきたんだもの。……それも、目の前の人とは違って、銃で少しずつ命を削られていった)
どうしようもなく間違ったまま、それで引き返す道も手段も覚悟もない。そんな自分が嫌になって。ずっと自分自身でも激情の中でやけを起こしていたようにも思う。
(………これが、私の罰。親友を殺して、あげくに残ったナギちゃん、トリニティを滅茶苦茶にしようとした私の―――)
思えば、目の前のそれは全身が黒衣に光のない目。まるで処刑人のような出で立ちである。ならば湾曲した腕の刃は罪人の首を刈り奪る鎌か。
少し視線を逸らせば、そこには青い顔をした、最後に残った親友の姿が。
(バイバイ、ナギちゃん。…それと先生。あっちでセイアちゃんに謝ってくる)
諦めたような、それでいてどこか解放されたような面持ちで、ミカは命を刈り取るそれを受け入れた。
――
すっかり静けさを取り戻した夜の校舎では、嫌に大きく聞こえた気がした。
やっぱりこいつ悪い大人なんだぁ!!
それと、ネルパイは何話か使ってたのにミカ早ない?という感想もあるかと思いますので言っておきます。
まず、時間制限があり、かつこれが訓練でも何でもないこと、相手側の情報なども鑑みた上で、ミカ単体でタイマンといえ状況のため、早めに済みました。
ついでに言うと、今このタイミングのミカが一番弱いです。状態で表すと、
普通のミカ>エデン4章の道連れメンタルミカ>3章時点のミカ
くらいです。
何も適当こいてるとかじゃなくて、メンタルとか考えた結果です。3章は殆ど虚勢で、生きてるって分かるやほっとして連行されたりするくらいには疲れてます。
4章の方がメンタルは追い込まれてるけど、その分暴走状態故の鑑みなさと攻撃性の分強いです。
尚、別に怒りで能力値が変わるわけではないので、多分なんのデバフもない普通のミカが最強です。
あと、気づかれた方も多いかと思いますが、リアンは大きく足払い→避けた相手への追撃を好んで使います。
この巨体と脚力から飛んでくる足払い。これで当たるならいいし、避ける実力者なら空中に浮いた無防備な身体に一撃当てられるからです。
まあ、この技術使うのって擬態時で非殺傷時だけなんですけどね。
先生の台詞にゲーム本編のように「“”」はいる?
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先生と一目で分かるからあった方がいい
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別にゲームテキストでもないのでなくていい