華麗なるひこうポケモン使い(自称)   作:もけ山ぴろりろ

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4話

キルクスタウン、白き雪に埋もれる極寒の街。

ダリアがホームとするゲイルタウンとは正反対ともいっていいほどの環境の違うこの地に位置する巨大スタジアム。

ポケモンたちをダイマックスさせるパワースポットが高まる地の上に設置された、ゲイルタウンには立つことはありえないこのガラルのトレーナーにとっての聖地は今、熱く熱く燃え上がっている。

キルクスの入江の氷すらも溶かすほどに、彼らは熱狂する。

 

厚く氷と雪で閉ざされたこの地にて、その寒さすら拭い去るバトルの第一戦が繰り広げられるというのだから、ポケモンバトルのファンたちも、そうでないものたちも一応に浮き足立つ。

今日この日を持って、ガラルの選ばれたトップトレーナーたちが、築き上げたポケモンたちとの絆をぶつけ削りあう長く短い戦いの幕が切って落とされるのだ。

 

ガラルポケモンリーグ。

他地方のジムリーグと違い、ガラルリーグは興業に寄った運営を為されている。

町を任され、時にはガラルの治安維持を任されることもある、まさしく花形、ヒーロー、トップトレーナーが鎬を削る煌めくド派手な鉄火場。

長く続くシーズンにおける第1週。

まずは総当たり戦。

ここでまず白星黒星を稼いで押しつけ己が戦績をため、次に似た戦績のものたちとの蹴落とし合いの予選トーナメント。

そうして、トーナメントを制した上位8組がその年のメジャーリーグ選手として扱われ、我らが最強チャンピオン、ガラルの英雄、無敗のダンデへのチャレンジ権をかけた本戦へと駒を進めることができる。

俗にいう、ジムチャレンジを取り仕切るのもこの上位8組のメジャーリーグ。

 

ダリアが所属し、代表を務めるひこうジムは長年このメジャーリーグへと進むことがなかった。マイナー落ち、という俗語がある程度にはマイナーリーグに対するイメージは明るくない。

少なくともメジャーの彼らと比べれば知名度はがくりと下がり、ジムを通して還元される街への支援金も一気に額が変わる。

ゆえに、だからこそ、今年こそは。

 

 

 

歓声が鈍い。

一つ幕が張られた向こうで限界ギリギリまで膨らまされた水風船が張り詰めているかのような気配を感じる。専用控室のベンチのうえで項垂れるように腰を落としたダリアはじっと床を睨みつけながら、息を吸う。

身に纏うのはスカイブルーを基調とした、ひこうジムユニフォーム。

ゲイルタウンの子どもたちやタクシー運転手のおやっさんたちには散々似合わないと擦られた、鮮やかな青空模様のシャツ。その背に背負うのは283の番号。

 

人々の熱狂の渦が伝わるけれど、それでもまだ熱に浮かされたかのように届ききらないこの場所特有の緊張感。このスタジアムに集まった彼ら彼女らのほとんどが、マクワの勝利を願い、自分の敗北を祈る残酷な観客だという実感。どこまでもどこまでも自分を追い込んでいくアウェー感。

吐き出したくなるほどの猶予のなさは、頭を掻きむしりたくなるような焦燥は、逃げ出したくなるほどの喉の渇きは、窮鼠にのみ与えられた特権だ。そう、これは特権なのだ。

かたかたと震える手は武者震いで、頭の中を渦巻く失敗体験はこの後に控えた試合をやらかさぬための知恵を早回しに違いない。

 

 

 

息を吸う。

 

息を止める。

 

呼吸をせずに吸い込んだ息だけを意識すれば、どくどくと緊張と興奮で高鳴る心臓の音が遠くに聞こえてくる。それはまるで高い高い山へと登りつづけるときの、ふらふらふらとした息苦しさによく似ていて。

 

ガタガタ。

腰に下げたモンスターボールがまるでなにか講義をするかのように大きく左右に揺れるのを見て思わず、息を吐き出して

 

「ふは」

 

笑ってしまった。

 

「俺よりやる気満々じゃん、頼むぜプテラ。今ぐらいはおとなしくボールの中にいててくれ」

 

さて、いつまでもうだうだしてても仕方がない。

ベンチに置いた黒に程近い濃紺のジャケットに手を伸ばし、それを羽織る。胸元と背中にはガラル交通のロゴが。今ダリアが背負うべきものの証が、283の背番号を覆い隠す。

癖の強い黒髪を押さえつけるようにして遮光レンズを兼ねた分厚いパイロットゴーグルを額に引っ掛けたダリアは、ようやくしてベンチから立ち上がり、バトルコートを目指した。

 

「さあ、ひこうポケモンの底力、理解らせてやろうぜ」

 

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暗い暗い選手用入場口を進むほどに、膨らみ切った歓声が爆発する時を今か今かと待ち侘びる感覚を覚える。

そうして、一歩。

ダリアの重たいエンジニアブーツがバトルコートの硬い地を踏み締めた瞬間、観客たちの声は、思いは、願いは、一気に爆発して、広がった。

 

甲高い声。

黄色い声援。

男たちの吠えるような歓声。

数多の声にかき消されんと響くマクワコール。

さすがはキルクス、マクワのホームグラウンド。メロンとそのホームを二分すると言ってもファンクラブさえある男の応援ともなると、一味も二味と違うものだ。

いいなー、あれ俺にもくれよ…。

自分の応援団がまさか自分の知覚できないアンダーグラウンドなネットの方に形成されているとはつゆ知れず、マクワへ飛び交う黄色い声たちに辟易としながら、向かい側から悠々と歩いてくる彼を見据える。

歩みに合わせて揺れる洒落た金髪、目元を隠す洒落たスポーツサングラス、この厳しい気候に住んでいるからなのか少しだけふくよかな体。

前シーズン、いわなだれでボコボコにしてくださった若き、年下の、いわジムのジムリーダーにダリアは向かい合う。

 

「今シーズン、どうなるかと思っていましたが初戦があなたでよかった」

 

「聞きたかねーけど、どういう意味だ?」

 

「あなたが相手なら僕は十分、僕のポケモンたちの強さをアピールする闘いができますから」

 

不敵に笑うマクワ。

引き攣った笑みを浮かべるダリア。

両者の挨拶はどこまでも対照的で、それはお互いに背を向け、トレーナーの指定位置につくまでも

 

「おまえ、覚悟しとけよ」

 

「ぜひ、覚悟させてみてくださいよ!」

 

続いていた。

 

▼いわジム ジムリーダー の マクワ が しょうぶ を しかけてきた !!

 

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