独り立ちを強いられたドラゴン、生き延びるために配信者の前でお腹見せゴロンしたら伝説になったようです。   作:名無しのレイ

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第33話 魔術師ギルトから来た魔術師

 マンティコアとの激戦を潜り抜けたエルたちは、傷を癒してもらったとはいえ、これ以上の探索は危険だと判断。そのまま転移魔術で最上階へと戻っていった。

 傷も毒もなくなったとはいえ、そのまま迷宮探索をするほど無謀ではない。

 まずは、ゆっくり休もうと最上部へと戻っていったのだ。

 

「はいらっしゃいらっしゃい!」

 

「そこの冒険者たち回復アイテムはどうだい!」

 

 最上階はすっかり冒険者相手の食糧店、アイテムショップなどが出来上がりつつあり、賑わいを増していた。

 エルが認めた途端どんどん冒険者たちを顧客にするための簡易的な店がどんどん出来てきたのだ。冒険者たちにしても迷宮内部で食料確保できる安全地帯があるのは非常にありがたい。エルとしても、近くに店があれば小型すればすぐ食べれる&色々な味わいのある食事ができるということでありがたい。

 簡単に言えば、すぐ近くにコンビニや外食店ができたようなものだ。これで喜ばない現代人はいないだろう。

 最上部に戻ってきたエルたちに対して、アヤは慌てて出迎えてくる。彼女からしても、商売相手の竜が大怪我を負ったとなると彼女にとっても困るのだろう。

 念のため、治癒ポーションなどを持ってきたが、傷もなしで生き生きとしている彼を見て、思わずほっとした彼女は、ほかのローブを纏った女性を引き連れながらエルに対して話しかけてくる。

 

 「と、言うわけで、さすがにあれほどの魔晶石を金に変えるのは難しいので、魔術師ギルドの方を頼ったのですが……。」

 

「どこですか!魔晶石はどこですかー!!あんなに芸術的で純度の高い結晶が生まれるなんて!!これはまさに奇跡ですよ!!」

 

 ふんすふんすとローブ姿に杖を手にした金髪をツインテールにした、胸が平坦な尻尾と翼を生やした竜人の女性。

 見た目こそ魔術師ではあるが、テンションはインドア派の魔術師とは思えないほどの若い女性。しかも魔術師にしては珍しく竜人である。

 恐らく、そのためにこんな辺境にまで飛ばされてきたのだろうが、その目はとてもそうとは思えないほど爛々と輝いていた。

 

「ああ、竜様、こちらは魔術師ギルドから来た魔術師の一人である……。」

 

「初めまして!アヴリルといいます!よろしくお願いします!お金は支払いますので、ぜひ魔晶石を見せていただきたいです!!」

 

 お、おう、と目をキラキラさせて詰め寄ってくる彼女に対して、流石にエルは押されてしまう。基本的に陰の人間(人間ではない)としては、こういった押せ押せの陽の人間を見ると、うぐぁ~!!と消滅しそうになってしまう。

 ともあれ、ゴーストドラゴンを倒して獲得した巨大な魔晶石を彼女を見せる。恐らく、これは大迷宮から溢れる魔力が自動的に収束・蓄積して作られた魔晶石なのだろう。多分、探せばあちこちに自然発生しているものと思われる。これほど巨大なものは少ないだろうが。

 

「ほ……ほぁあああっ!!ほああああっ!!!」

 

 彼女はその魔晶石を見た瞬間、白目をむいて卒倒し、そのままバタンと後ろに倒れこんだ。彼女にとっては、それほどの衝撃的な代物だったらしい。

 しかし、いきなりやってきて奇声を上げられて倒られてもこちらとしても困ってしまう。慌てたアヤは何とか彼女の意識を取り戻させる。

 

「す……凄まじいです!これほど純度の高い魔晶石がこれほど巨大になっているとは!!これなら大都市の魔力供給を十年は維持できるでしょうね!うまく行えば国家規模の魔力供給を維持できるでしょう!人口や魔力消費量にもよりますが……。」

 

 なるほど。いうなれば火力発電所……いや、原子力発電炉(しかも放射線を発しないクリーンエネルギー)といったところか。

 そんなものがぽーんとその辺に転がっていればそりゃ魔術師的には腰を抜かすだろう。恐らくは、この巨大な魔晶石は、大迷宮の溢れ出る魔力が自然と収束、結晶化して作成されたものだろう。

 エルの直観ではあるが、恐らくこのクラスはそれこそ大迷宮内部にコロコロ転がっているだろう。上手くすればさらに巨大な、国家一つや二つを平気で賄えるクラスの魔晶石も存在しているだろう。

 

 なるほど、アヤが大迷宮に拘るだけである。ここのリソースを全て発掘することができれば、それこそ人類社会に飛躍的な発展がもたされるだろう。

 それは、産業革命など比べ物にならないほどの革命だ。それは人類に大いなる恩恵を齎すに違いない。だが、それは人類だけの論理だ。

 そんな事を行い始めたら大迷宮の魔力リソースを全て回収した後で、廃鉱山としてポイと捨てるのが人類だ。

 それを行わなさないためにも、エルが大迷宮の権利を獲得する必要があるのである。

 

「あ、あのぅ……。こ、これを魔術師ギルドでいただけないでしょうか?

 いえ、これから発生する魔晶石は小ぶりでも魔術師ギルドに販売させていただければ……。これだけ質のいい魔晶石ならば質のいい魔導具、魔導エンジンを大量に作ることができます!そうすれば産業革命待ったなしです!!

 ましてや、都市機能を賄えるほどの魔力を有している巨大な魔晶石は、魔術師ギルドにとって代えがたいものです!!なにとぞどうか……。」

 

「ち、ちょっと勝手に何割り込んできているんですか!!勝手に(こちらの利権に)割り込んでこないでください!!というか勝手なこと言うな!!」

 

 すったもんだとエルの意向もあり、結果財宝は冒険者ギルドで、魔晶石は魔術ギルドの分野と決定され、大型の魔晶石は辺境伯領主へ。

 小型の魔晶石はアヴリルへと販売されることになった。その代わり、魔晶石を魔術師ギルドに販売する代わりに、魔導エンジンなど様々な魔道具などを格安でこちらに流してほしい、という契約になった。

 

「よっしゃ~!!小ぶりですがめっちゃ質のいい魔晶石ゲット!やりました~!」

 

 そんな風に喜んでいる彼女は微笑ましいが、厄介な人間しか集まらないんじゃないのここ?という顔になってしまうエルであった。

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