独り立ちを強いられたドラゴン、生き延びるために配信者の前でお腹見せゴロンしたら伝説になったようです。   作:名無しのレイ

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第43話 ドラゴンスケイルと巨大魔晶石

 スプリガンを何とか倒したエルだが、さすがにスプリガンの拳を何発も食らって、内部にダメージを食らったらしい。

 恐る恐る宝物を数個回収してみるが、今度はスプリガンは出現しない。

 あのストーンサークルを破壊したのが功を奏した形だ。

 ともあれ、スプリガンが再出現しないのを見て、エルははぁ、と安心したようにため息をつく。

 

『はー、偉い目にあった……。ともあれ、宝物を全部回収できてよかった。

 この宝物は俺たち三人に公平に分けよう。この宝物はそちらに渡すから好きにしていいよ。』

 

「竜様、大丈夫ですか?」

 

 スプリガンの打撃を受けた部分をペロペロと舐めてみるが、やはり打ち身のような形になっている状態では、自然治癒を待つより回復魔術などをかけてもらった方がいいだろう。そう判断した彼は宝物を回収して、最上階へ帰還する準備を開始する。

 打ち身程度ではあるが、油断しないほうがいいだろう、という彼の判断である。

 

『はーいってー。竜鱗があるから外は大丈夫でも中にダメージ食らったからなぁ。

 これ回復魔術で治るんだろうか。まあとりあえず頼んでみるかぁ……。』

 

 帰還魔法で最上階に戻ってきたエルは魔術師であるアヴリルを呼んできて、《大治癒》で自分の体を癒す。

 やはり鱗下の皮膚には打ち身があったらしい。それが治癒されるのはいいが、その治癒の影響で彼の打ち身が負った場所に痒みが生じてしまう。

 

『痒い……!かゆかゆ!』

 

 《大治癒》の魔術により、打ち身が治っていくが、それは彼の体に痒みをもたらしてしまう。思わず掻くと、そこから鱗もろとも皮膚がペリペリとめくられ、新しい皮膚と鱗が再生しているのがわかる。爬虫類の鱗は、皮膚が細胞として死んだものが硬化されたものである。そして、治癒魔術でその下の皮膚が活性化されたことにより、外側の古い角質層が剥がれる……つまり脱皮の状態になってしまったのだ。ペリペリと皮と鱗が剥がれていくが、それによって打ち身の傷も治ったのでこちらとしては問題はない。

 だが、その脱皮した自分の皮を見て、エルはとあることをふと思いつく。

 

『そうだ!この皮を使ってドラゴンスケイルを作ればいいんや!』

 

 それに気づいたエルは、ドワーフたちにこの皮を渡し、そこにある竜鱗を使用して、ドラゴンスケイルを三つ作り上げる。

 このうちの二つはレイアとユリアの二人に与え、あとの一つは辺境伯ルーシアへと送るように手配する。

 権力者であるルーシアに対して媚びを売るということと、純粋に彼女が死なれては困るということである。

 さらに、自らの仲間であり同胞とも言える二人の防御力を上げるのは当然だろう。

 重い金属ではないドラゴンスケイルならば、魔法戦士やスカウトである彼女たちでも装備できる。そして、そのできたドラゴンスケイルを辺境伯の元へ送り届ける役目は、アヴリルがそのまま引き受ける形になった。

 

 

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「よーし、運び込めー!!慎重に行うんだぞー!!」

 

 辺境伯領へと運び込まれた巨大魔晶石は、魔術師たちの手で特殊に用意された地下室へと運び込まれ、魔力を引き出すための魔道具を装備されていく。

 これにより、街自体に魔力の網が展開され、各家庭でも金さえ払えば好き勝手に魔力を使い、魔導エンジンなどを使用することができる。いうなれば、街にクリーンエネルギーで動く発電所ができたようなものである。それだけのエネルギーがあれば、さらに大きな発展が見込めるというものだ。

 そして、一番大事なことは、これによって城壁都市全体に大規模な結界を展開する事ができるということである。

 それを確認するために、わざわざ魔術師ギルドに属する彼女までここに来てもらっているのだから。

 

「よし、これで城壁を覆える魔術結界は展開できるはず……だな?」

 

「はいですよ~。これだけの魔術量ならば、魔術砲台なども撃つ事ができます。もちろんお買い上げいただいたらの話ですが……。」

 

「ふむ、普通の砲台と魔術砲台と何が違うのかメリットはあるのかね?」

 

「普通の砲台は大量の火薬や砲弾などを必要し、それが切れればもう撃てませんが、魔術砲台は固定制ではある代わりに、魔晶石と地脈から魔力を引き出して弾丸を構築して打ち出すことができます!そのため、数百発撃っても事実上弾丸切れは存在しません!!」

 

 なるほど、とルーシアはローブを纏ったアヴリルの言葉に頷く。

 通常の城壁都市でも対空防御としての結界構築はできるが、それも魔力の関係上ほんの僅かでしかない。

 竜やら空を飛ぶ怪物やら飛行部隊など存在するこの世界では、空爆などを防ぐための大規模結界は大都市では通常のものとなっている。

 だが、それだけの大魔力を賄うだけのエネルギー源はどの都市でも悩み所なのである。それをカバーできれば様子見の中立派をこちらに引き込めるのではないか?というのがルーシアの考えである。

 

「なるほど。個人的な考えですが……バンバン見つかりそうな気がしますね!!

 あの大迷宮は、魔術師からしてみれば、まさに無尽蔵の魔力リソースそのものですから。あれだけの魔力量があれば、人類社会の技術革命すら可能でしょうね!まあ、もっとも竜族がただではすまさないでしょうが……。」

 

 無尽蔵の魔力供給……そうでなくとも、大量の魔晶石さえあれば、それを元にして大量の魔導エンジンを作成することができる。そうすれば、現在は非常に高価な魔導エンジンが格安になり、だれでも購入できるようになる。

 それが達成されれば、産業革命を起こすことすら不可能ではないだろう。ふむ、とルーシアは顎に手を当てながら考え込む。

 

「ともあれ、大迷宮から巨大な魔晶石が見つかったら竜様を説得してこちらに渡してもらって、それを元に中立派をこちらに引き込むべきだろうが……。」

 

「ああっずるいですよ!!まず真っ先に我々がもらうんです!そうすれば魔術師たちも大規模にこちらに引き込めるはずです!!あれほどの大魔力があれば好きなだけ魔術実験やりたい放題ですから~!魔術師は喉から手が出るほどほしいはずです!!」

 

 縋りついてくるアヴリルに対して、流石にええいやかましい、という顔になるルーシアだったが、それでも貴重な魔術師の一人である彼女を無碍にはできない。

 魔術師たちには、魔導エンジンや魔導装置、様々な効果を持った霊薬など色々な物を生み出せる技術者である。そういった魔術師たちはこちらの保守派としては一人でも多くほしいのが本音だ。

 

「とりあえず……。そちらは竜様が欲しがっていた土浄化や水浄化の魔導機械を作り上げて奉納しなさい。そうすれば向こうも喜ぶだろう。目に見えない毒をばらまかれるのはもっとも嫌なことだからな。」

 

その言葉に、アヴリルは頷いた。

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