「話にならんな」
調査を進めてため息を着く。
門前払いもそうだが、何やらきな臭い。
危ない組織の匂いがぷんぷんする。
新たに組織を作る方がいいかもしれないが、妨害も怖かった。
ひとまず潜入のために教師資格を取ることにした。勿論、資金稼ぎもしているが、メンバー集めが芳しくない。見えないとなれば、組織も個人も全く相手にしてくれないのだ。これでは駄目だ。
学校に通いつつ、霊力の関係のない組織として力を着ける事とした。
透明スーツの特許を取ることで、政府にもパイプを作る。
勿論、傑の、というより霊能者のサポートも続けている。
噂の収集とプレコグによる情報提供のサポートだ。体を鍛えてもいる。
地道な行動が目を結び、大人の霊能力者の信頼は得られなかったものの、見えない両親にもてあまされた子供のメンバーも増えてきた。
新生バベルの設立である。
霊障のある建物を浄化し、売るという仕事も始めた。
大変だが、やりがいのある仕事だ。
そんな折、遂に東京都立呪術高等専門学校から、アプローチがあった。
即座に使者は告げた。
「これが見えるか」
「私に霊能力はなくてね。見える見えないが、そんなに重要かね?」
「まず見えなくて話にならん」
これだ。取りつく島もない。
「ならばお帰り願おうか」
「貴様のいう霊能者の子供達と話したい」
「まずは責任者であり保護者である私と話すのが筋ではないかね」
「見えぬものは話にならん」
「対話すらできない者に大事な子供達を会わせられるはずがないだろう」
「強情な」
「意味がわからないんだが?」
「このままでは子供達が呪詛師として秘匿死刑となるぞ」
「事情も話さず、一方的に死刑と言われてもな。ただ子供達に手を出すなら警察に通報する」
「やってみよ。無駄だ」
「とにかく、お引き取り願おう」
そうして強引に手を取り、サイコメトリする。
呪術師、呪霊、呪術界、呪詛師、秘匿死刑……。
非術師への蔑視、そして、子供達を利用しようとする心。
私は即座に彼の所属する組織に見切りをつけた。
国の宝たる霊能者の子供達に対して、なんたる蔑視。
所詮一般出だと? バカな!
少なくとも、このままでは子供達は預けられない。しかし、完全に断ると秘匿死刑になる。ならば。
「ああ、そうだ。霊能者の資格試験があるようなら、それの取得はさせるつもりだよ。フリーの霊能者はいないわけではない。そうだろう? それなら秘匿死刑にもならないはずだ」
「狸が……!」
そういうことで、子供達に4級の資格を取らせる。
4級でいいと言ったのに、何故か傑に寄越した証明書に書かれていたのは2級だった。それからパタっと音沙汰がないと思ったら、急に依頼を山ほど持ってきた。
あまり国家権力に反発も出来ないから、きっちり精査した後で仕事を振っていく。
「局長、私、学校行きたい」
「傑……しかし、学校は」
「局長の言いたい事もわかるけど、学校に行けば悟、未来で私を殺してくれる親友になるんだろう?」
「私は傑を殺されたくない」
「私もだよ。でも、殺されてもいいっていうような、そんな人に会える機会なんて、人の人生で二度とないと思う。まだ悟とは数えるほどしか話してないけど、すごくいい子なんだ、悟。私は悟と友達になりたい」
「傑……」
「……お願い」
「誓ってほしい。生きる事を諦めないと」
「はい、局長」
私は心配だ。傑の未来は推定確度6以上。
どうあっても、その未来に収束してしまうのだ。
派手になったり仲間が増えたりなどと差はあるが、悲劇を起こす未来も五条悟に殺される未来も乗っ取られる未来も変わらない。
傑にはいっていないが、私も殺される未来が圧倒的に増えた。
恐らくは、強大な敵が傑を狙っているのではないかと思う。
やはり潜入は絶対条件だな……。
私は、傑と同時に赴任することに成功した。
「初めまして! 数学を教える桐壺だ。よろしくお願いする」
「……」
「……」
「きょ、局長!? よろしくお願いします、局長♡」
つまらなそうに無視をする二人、そしていい子な傑。
「はあああああああああ!? 傑知り合いなの、こいつ? 非術師じゃん!」
「何ハートマークつけてんの? そういうタイプじゃなかったろ。きしょっ」
「うるさいな、いつも通りだろ!」
「「いつも通り!?」」
級友は驚愕しているようだが、いつも通りである。
私の前のザ・チルドレンと同じだ。人は愛と友好で接していれば愛と友好で返してくれるのだ。
「さて、授業を始めるぞ。数学は何かと普段の生活でも役に立つからな。最低限のことは覚えておこう」
「はい、局長♡」
「うわああああああ傑が壊れた!!!」
「局長ってなんだよ」
「呪霊を祓う仕事の企業でバベルってとこの社長だよ。皆局長って呼んでるけど。私も将来そこに就職するんだ」
「だってこいつ非術師じゃん!」
悟は私を指さして、必死に指摘する。まず、その意識から変えねばならないのだが、今はまだ時期ではない。呪術界の改革を成し遂げられた未来はまだ見えていない。まあ、未来は変わる。私は諦めない。
「シビリアンコントロールだよ、悟。組織の運営の上で重要なのは力ではないのさ」
「じゃあなんだよ、重要なもの! 見えないなんて問題外だろ!」
「それはこれから、君が見定めていけばいいさ」
傑が、校舎を壊したという話を聞いて、私は駆けつけた。
「局長……っ」
傑はげっという顔をする。
「うおおおおおおおおん!!! 無事で良かったあああああああ! 成長期なんだから仕方ないな!!!」
「いや、仕方なくはないかな……?」
当人の傑がツッコミを入れる。反省しているならよし!
「桐壺先生っ 成長期だから仕方ないなどという話ではないだろう、校舎が破壊されているんだぞ!?」
「ええい五月蝿い! 傑は日本の宝なんだ! 怒られてぐれてしまったら大変だろう!」
「うるさっ!? 甘やかすのも問題だろう!」
「傑が日本の宝ってなんで?」
「呪術師の子供たちはこれからの日本の未来を担う宝だ。そうではないかね?」
「じゃあ、俺も?」
「私も?」
「もちろんだ! 君達の健やかな成長が日本に光を齎すのだ!!!」
悟と硝子が自らを指さしてくる。
「健やかな成長には叱ってくれる大人が必要だ!」
「傑はちゃんと反省している! その小さな胸を痛めているのだ!」
「ウケるww 傑、小さな胸だってよ」
「あの、桐壺局長、私、ちゃんと怒られるよ……」
「えらい! 偉いぞー傑!!!」
しかし、皆本がいないと中々大変だ。
夜蛾先生が叱ってくれる大人で、だいぶ助かる。飴の役割に専念できるのだからな。たまには鞭にもならねばならないが。叱るというのはとても胸が痛むものだ。叱る方も叱られる方も。
それはともかくとして、補助監督にもしっかりいかに子供達がいい子か刷り込まねばな! 余裕のなさは傑達への扱いの雑さを生む。
なんとか非術師でできる仕事は非術師に回すようにもしたいが……。
まずは私自身が仕事を手伝う所からだな。