「私、殺されるの……!?」
当然だが、傑くんは不安そうな顔をした。
「そもそも、傑くんは狙われているのでは」
湊くんも心配そうに言う。私もそう思う。
「うむ。私達はもっとよく呪術界について知った方がいいようだ。学校にも手のものを潜り込ませよう。もっとも、まだ大分先のことになるがね。ひとまずは呪霊集めに専念しよう」
「「はい、局長……!」」
「それにしても、可愛い傑を実験台にしようとは、何者かはわからんが度し難い……!」
「相手の情報は、何か情報は得られないのですか?」
「呪霊は私には見えないからね……。ただ、傑の記憶まで奪われてしまっていたようだ。それを利用して悟くんを罠に嵌めたようだね」
「そんな……局長、じゃあ、私、悟に会わないほうがいいのかな」
私は、傑の前にしゃがみ込んで視線を合わせた。
「傑くん。言っていただろう? 一生に一度、出会えるかどうかもわからない友達が欲しいと」
「うん……」
「ならば、私は全力でその望みを叶えるサポートをする!!! 悟くんも救う! 傑くんも救う! 何、私が以前戦った未来と比べたら、こんなもの、些細な事だ! 未来を変えるぞ、傑くん!」
「う、うん!!」
「敵は、君と悟くんの友情を利用しようとしている。ということは、悟くんと仲良くするのは邪魔されないはずだ。悟くんに色々呪霊の情報や常識を習いなさい。ただし、それを報告する際は呪術規定の秘密に気をつけなさい」
「局長に触ればいいんだよね?」
「そうだ。もっとも、思春期になったら触らせてくれなくなるかもしれんがな!」
「私は局長怖くないよ?」
「大人になればわかる! お年頃の子供は難しいのだよ、はっはっは!」
「今の私も複雑だよ!」
「そうだね」
湊くんは笑って頭を撫でる。それに満足そうに微笑む傑くん。
この笑顔が偽物とならないようにしなくてはならない。
それにしても、秘密の条項……邪魔だな。
秘密にすれば、大体の攻撃するものからは身を守る事はできるだろう。
しかし、庇うものも庇えなくなってしまうし、戦うこともできなくなってしまうという面もあるのだ。
うちの子達の頑張りはもっともっともーーーーーーーーっと褒められ讃えられるべきである!!!
呪術界と相対していく予感を胸に抱きつつ、私は教師や補助監督として潜り込めそうなメンバーの選定・教育の準備に入った。
「悟! 局長が、呪霊集めしていいって。手伝ってよ」
「今度は局長来させないから! 大丈夫!!」
「一級呪霊!? いっぱい弾丸撃ってくるやつ? 行く行く!!」
傑くんは嬉しそうに電話をする。
「い、一級は厳しいんじゃないか……!? 危ない真似は……!!!」
「傑くん!? それはちょっと冒険しすぎなんじゃ……!」
「局長、悟くんを信じましょう」
「ええい、日本の宝である傑くんと悟くんに何かあってもいいのか! 心配をしろ、心配をぉー!」
「あんた、傑くんを鍛えるって言ったばかりだろ!?」
「え? 局長の事は全然気にしないで! うん、じゃあ明日ね!!」
そして、傑くんは受話器を置いた。
「今度は邪魔しないでね、局長!! そうだ、明日の為に護衛の武人さんに訓練つけてもらおう〜」
「私は? 私は!? うおおおおおおん 傑くんに反抗期がぁぁぁぁ!」
「しっかりしてください、局長!」
『局長、湊さん。ごめんなさい。猿は生かしちゃダメだから……』
傑くんが泣いている。
そして、私達は不可視の弾丸に貫かれた。
場面が変わる。路地裏、しゃがんだ傑、片腕、その前に立つ悟くん。
『どうして、傑……!』
『君が終わらせにきてくれるって、信じてたよ』
『どうして、お前、そんなに嬉しそうなんだよ……!』
『あの日から、ずっと夢見てたんだ。自分で終わらせる勇気もなくてさ。ごめんね、悟』
『傑……!!! わかんねぇよ。何もかもわかんねぇよ……!』
そして、場面は変わる。
『傑……!?』
『久しいね、悟』
頭に傷跡のある傑くんに驚き、箱に閉じ込められる悟くん。
あ、明日倒す呪霊に私達が殺されている!?
そして未来が戻っている!? これは一歩戻ってもう一度進んだと考えるべきか……!
翌日。準備万端な傑くんが、湊くんに手を握られて、嬉しそうに笑った。
「行ってきます!!」
「うおおおおおおん!! 傑くぅぅぅぅん!!!!」
「いい加減にしろ!!」
「はいはい、局長仕事しますよ!!」
湊くんと武人くんに怒られ、私は傑くんに行った。
「しっかり呪霊を捕まえておいで」
「はい!」
私たちを殺す予定の呪霊をな。
傑くんが、無事に帰る事はわかっているので、私は泣く泣く見送った。
いや、でも。あんな可哀想な死に方より、悟くんに殺される未来に戻ったのだから、傑くんにはプラスだ。そうだ、傑くんが直接殺される事はおそらくなくなったのだ。
ならば、一歩前進だな!!
私は切り替えて、次なる作戦を練ることにしたのだった。
直、傑くんと悟くんは帰りにクレープを一緒に食べたそうだ。
二人の心からの笑顔、プライスレス。