約束の0時、その数分前。5人は橋の麓に集まっていた。目的はただ一つ。4枚目・・・・彼女達にとっては2枚目のカード回収である。
時間は刻一刻と迫っていく。3分前、2分前・・・・1分前。
イリヤと美遊は転身し、この場にいる全員を鏡面界へと送る魔法陣を展開する。そして、0時。6人は一斉に鏡面界へと
5分後。
鏡面界ではなく通常界にて、やけに疲弊した5人の姿があった。その体は身を守る手段がないため全力で守られていた翔を除き、全員がボロボロである。
『いや〜、ものの見事に完敗でしたね。歴史的大敗です!』
いつものような軽い口調ではあるものの、実際はかなりボロボロとなっているルビー。心なしか、いつもより覇気がない。
「な、何だったのよあれ・・・」
「ちょっとどういうことですの!?カレイドの魔法少女は無敵なのではなくて!?」
『私に当たるのはお辞めください、ルヴィア様』
これでもかとサファイアを横に引っ張るルヴィア。そこに、ルビーが突進する。
『ルビーサミング!』
「メガッ!?」
・・・眼球に。
「レ、レディの眼球になんてことを・・!?」
『サファイアちゃんをいじめる人は許しませんよ〜!!』
とは言っているが、仮に同じことをイリヤや美遊が行ったとしてもここまでもことはしないだろう。やはり凛とルヴィアには厳しいらしい。
『それに!魔法少女が無敵だなんて、慢心もいいところです!!』
「ごめん、私もちょっと思ってた・・・」
「うん」
『確かに大抵の相手なら圧倒できる性能は持っていますが、それでも相性というものがあります』
「で、その相性最悪なのが・・・・・あれってことね」
・・・・・・・・・・・・・・・
鏡面界に
「何、あれ・・・」
「魔法陣だなぁ・・・・それにしてもあの量・・・・」
『どうやら敵さんは、すでに戦闘準備万端だったみたいですね〜』
同時に、数多の魔法陣から一斉放射される魔力弾。ルビーとサファイアは魔術障壁を最大まで展開し、それを防ぐ。が・・・・。
「い・・・痛い!!そして熱い!!何コレ!?」
「なんでランクAの障壁が突破されるのよ!!」
『あっれ〜?おっかしいですね〜』
魔力障壁は突破される結果となった。完全な直撃よりはマシであろうが、それでもダメージは免れなかった。
「翔!あなたは大丈夫!?」
「いや、ちょっと危なかったよ!?イリヤが前に立ってなかったらヤバかった!!」
「そんな人を盾みたいに〜!!」
「最大出力・・・
そんな中ですぐさま反撃行動に出る美遊。出せる最大力の魔力弾を英霊に向けて放つ。
しかし、その魔力弾は英霊の前に展開された障壁によって弾かれた。
「弾かれた!?」
「あれは・・・・魔力指向制御平面!?まさかこれほどの規模で・・・!!」
その障壁が何なのか、それを理解した凛とルヴィアは驚愕したが、間も無く5人を竜巻が包み込み始める。
「た、竜巻!?」
「まずっ、閉じ込められた!!」
『あ、イリヤさん!上を見てください!!』
「上?」
ルビーに言われ上空を見るイリヤ。釣られて他の面々も上空を見て、そして目にする。英霊が展開する巨大な魔法陣を。
「こ、これって・・・・」
「もしかして、Dieピンチ?」
「見たい・・・」
「悠長に話してる場合か〜!!!」
「撤退!撤退ですわ!!!!」
これは無理だと判断するや否やすぐさま撤退を決意する。こうしている間にも、魔法陣は刻一刻とその輝きを増していく。
『反射路形成!!』
「早く早く早く!!!」
『境界回廊一部反転!!』
瞬間、魔法陣の輝きを最高潮に達し、強大な一撃が放たれる。
「早く〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
こうして、何とかギリギリのところで鏡面界からの脱出に成功した一同。ひとまず英霊の来られないところまで退避したことで、心に多少の落ち着きが戻ってくる。
「まるで要塞でしたわ・・あんなの反則ですわよ!」
『もう魔術の域を超えてましたね。そりゃ障壁で相殺し切れないわけです!』
「痛かったよ・・・」
「イリヤ、大丈夫?」
『あれは現在のどの系統にも属さない呪文と魔法陣でした。おそらく失われた神代の魔術と思われます』
魔術が現代以上に身近なものであった時、神代の時代。その魔術は現代よりも強力な魔術を扱う。ルビーとサファイアの障壁を突破されたのも、もはや当然とも言えた。
「あの魔力反射平面も問題だわ。あれがある限りこっちの攻撃が届かない・・!」
『攻撃陣も反射平面も座標固定型のようですので、魔法陣の上まで飛んでいければ戦えると思いますが・・・』
「とは言ってもねぇ・・・・練習も無しにいきなり飛ぶなんて・・・・」
「あそっか、飛んじゃえば良かったんだね」
「イリヤいいな〜、飛べて」
魔法陣の上まで飛ぶ。確かにそれ事態はルビーとサファイアがいれば不可能ではない。が、当然簡単なものではない。体を空中に浮かせる、言葉にすることは簡単でも実際に行うにはより強固なイメージが必要となる。凛とルヴィアの二人も、実際に飛べるようになるには一日の訓練を要した。魔術師である自分達でさえそうだったのだ、一般人であるイリヤや美遊が一朝一夕で飛べるようになるわけがない。
そんな凛の考えを裏切るように、イリヤはごく自然と飛び始めた。それはもうプカプカと。まさかの事態に驚愕を顕にする凛とルヴィア。
「ちょっと!?何でいきなり飛べてるのよ!!」
『すごいですよイリヤさん!!高度な飛行をこんなにサラッと!!』
「え、こんなにすごいことなの、これ?」
自分の行った行動の凄まじさをまるで理解していないイリヤ。彼女の足元では凛たちは何をそんな驚いているのだろうと、不思議そうに首を傾げる翔の姿も。
「私とルヴィアだって丸一日訓練してようやく飛べるようになったのよ!?」
「強固で具体的なイメージが浮くことすら難しいのに・・・一体どうして・・・!?」
「どうしてって・・・・ねぇ?」
「うん・・・魔法少女って、飛ぶものでしょ?」
「「な、なんて頼もしい思い込み!!!!」」
特に理屈なんてものは考えていない、ただそうであると思っていたからこその飛行。常日頃から魔法少女アニメを嗜んでいる少女のイメージ力を舐めるものではない。
「くっ、こうしてはいられませんわ、美遊!!あなたも今すぐ飛んで見せなさい!!」
対抗心を燃やすルヴィア。イリヤに出来るのだから同年代の美遊にも出来ない道理はないはずである。しかし・・・・。
「人は・・・・飛べません」
「な、なんて夢のない子供・・・!!」
美遊には物事を理論的に考える節がある。そんな彼女に空を飛べなんていう非論理的なことは言われたからで出来るようになるものではない。
「そんな考えだから飛べないのですわ!!来なさい!明日までに飛べるよう特訓ですわ!!」
「あう・・・」
美遊の首根っこを掴みこの場を立ち去るルヴィア。その後ろ姿を呆然と見送るイリヤ達。
何はともあれ、本日のカード回収は失敗、これ以上はどうすることも出来ないので、本日は解散することとなった。幸いにも明日は休日、時間はある。凛が作戦を考える間に特訓でもしておこうと、イリヤは心の中で決意する。