Fate/ Geats Cross   作:蛇廻

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第七話

時刻は深夜0時。昨夜と同じ橋の麓、そこに美遊や翔達五人は集まっている。向かう先はこの場所の鏡面界、そこにいるキャスターのカードの回収だ。すでに昨夜の戦闘の反省から対処法を見出した上での戦闘になるのは間違いないが、如何せん、まだ経験が足りない。

 

「・・・変身」

 

だからこそ、彼もまたその場に向かうのだ。ただ一人、少女を守るためだけに。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

鏡面界、その空は昨夜の時と同様、いやそれ以上の魔法陣で埋め尽くされていた。そのため求められるのは速攻勝負である。

 

『昨日と同様、敵は上空です!攻撃が来る前に飛びますよ、イリヤさん!!』

 

「うん!」

 

『行けますか、美遊様?』

 

「大丈夫」

 

イリヤは空を飛び、そして美遊は空を跳んで空中戦に挑む。どうやら美遊は限定的に魔力を足場にすることで、空中を跳ぶ術を身に付けたらしい。イリヤの飛び方とは違う方法だが、彼女のやり方を見つけたようだ。

 

彼女たちはそのまま魔法陣のさらに上へと向かう。魔法陣はすでに張られている魔法陣は全て地上に向けられているため、上には作用しない。

 

『さぁさぁこの空がバトルフィールドですよ〜!敵勢力を排除して制空権を我が物にするのです!!』

 

「な、なんかテンション高いね!!」

 

キャスターは小さな魔法陣を手元に出現させ、魔力砲を放ってくる。それらを縦横無尽に避けながら、イリヤは自身の役割を果たし美遊はチャンスを狙う。

 

『低威力で構いません!距離を保って撃ちまくってください!!』

 

「うん!」

 

凛の立てた作戦は比較的役割を単純化させたものだった。空中を飛び、小回りが可能なイリヤは揺動と撹乱担当、それに対して突破力のある美遊は本命の攻撃担当。イリヤの役割はキャスターの意識を自身に向けさせることだ。

 

「中くらいの、散弾!!」

 

イリヤが散弾を放つタイミングに合わせ、美遊は一気に飛び込む。本命の攻撃、つまりは宝具を使った一撃必殺。以前と同様にランサーのカードを取り出す。

 

「ランサー、限定(インク)・・・・・」

 

瞬間、キャスターの姿が消失する。落ちたわけでも、倒したわけでもない。文字通り消えたのだ。

 

「消え・・・・」

 

一瞬の隙の間にキャスターは美遊の背後の出現、そのまま彼女を地上へと蹴り落とした。

 

「美遊さん!!」

 

『申し訳ありません、美遊様!!物理保護の強化が間に合わず・・・』

 

「大丈夫、大したこと・・・・っッ!?」

 

すぐさま立ちあがろうとする美遊だが、足に走る痛みに阻害されてしまう。先の一撃を食らった際に足に怪我を負ったようだ。痛々しく、膝からは血が流れ出ている。

 

『美遊様、足を!!』

 

「このくらい・・・治療促進(リジェネレーション)ですぐ・・・・」

 

しかし、治療を行う間も無く魔法陣からサーチの光が降り注ぐ。数秒後には無数の魔力弾が降り注ぐことだろう。

 

「ヤバい、美遊さん逃げて!!」

 

「逃げなさい美遊!!そんな集中砲火を受ければ障壁ごと!!」

 

「あ、ちょっとバカ!!」

 

居ても立っても居られず、ルヴィアは安全圏であった橋下しか飛び出す。同時にイリヤも急降下し美遊の元へと向かうが、数瞬遅く魔力弾が美遊へと降り注いだ。美遊は来る衝撃に恐怖を覚えつつ、何も出来ずに魔力弾を眺めるしかない。

 

「っ!!」

 

 

 

 

唐突に、美遊の目の前の空間が歪み、魔力弾を飲み込んでいく。それらの魔力弾は美遊の周囲を囲むように地面へと吐き出される。

 

「・・えっ?」

 

何が起こったのか理解できず呆然とする美遊。そんな美遊の元にイリヤが駆けつけ、美遊を魔法陣の上空へと連れていく。

 

「ほっ・・・イリヤ、ぎりぎり間に合ったみたいだね」

 

「し、心臓に悪いですわ・・・あっ」

 

地上から見ていた翔たちはイリヤが美遊を抱えて上空に戻っていったことを確認して安堵を覚えるが、今度はルヴィアにサーチの光が降り捧ぐ。

 

「ぬ、抜かりましたわ!!爆撃の範囲内にー!!」

 

「さっさと橋の下(こっち)に戻れバカ」

 

なかなかに厳しいコメントだけして特に助けに向かう様子はない。まぁ助けに向かうということは自分も爆撃の範囲内に入ることを意味しているから、正しい判断だろう。

 

 

 

一方、上空へと戻ったイリヤと美遊。ここまでの間に無事に治療促進(リジェネレーション)で怪我を治した美遊は、改めて空中に降り立つ。

 

『いやはや〜、しかし参りましたねぇ。さすが神代の魔女っ子(?)と言いますか。まさか転移魔術まで使えるなんて反則ですよ〜!』

 

「うーん・・・・」

 

もう先の先方は通用しないであろうことに加え、敵が転移魔術を使える以上は通常の攻撃はほとんど回避されてしまうだろうことが窺える。それはつまり、倒せる手段がほとんど潰されたも同義であった。しかし・・・・・

 

「・・・まだ、手はある」

 

何やら考えがあるらしい美遊は、決意の籠った声で呟く。それから数秒の時を経て、二人は同時に飛び出す。それは地上にいる三人に戦闘続行を意味する行動であった。

 

「ちょっと、まだ続ける気!?同じ策は通用しないわよ!!」

 

「一時撤退ですわ!!戻りなさい、美遊!!」

 

叫ぶ凛とルヴィアだが、イリヤと美遊には届かない。いや、そもそも届いたとしても大人しく従うこともないだろう。

 

「いくよ、ルビー!」

 

『いつでもどうぞ〜!』

 

先ほどと違い、イリヤが敵めがけて飛び出す。

 

「イリヤが前に?」

 

「だーっあの馬鹿!!せめて役割分担くらい守れーっ!!ていうか無意味よ!また転移で逃げられ・・・・」

 

案の定、迫るイリヤを前にキャスターは転移で逃亡を図る。しかしそれを織り込み済みのイリヤはそのまま反射平面に向けて散弾を放った。その量はあまりにも広範囲にも及ぶほど。その分威力は激減しているが、どこに転移しても当たるほどの弾幕であった。

 

そしてどこに転移しても当たるということも、その瞬間だけ敵の動きを止める事ができる。その一瞬の隙を狙い、上空から美遊が魔力砲を発射する。

 

「弾速最大・・・・狙射(シュート)!!」

 

迫る魔力砲。キャスターがそれに気づいた時には時すでに遅く、キャスターは魔力砲に包まれたまま地上へと落とされた。

 

「や、やった!?」

 

『いえまだです!!ダメージを与えましたが致命傷ではありません!早く詰めの攻撃を・・・・』

 

冷静に状況を分析していたルビーが更なる攻撃をするように指示を出すが、イリヤが動くよりも早く凛とルヴィアの二人が橋の下から飛び出す。

 

Anfang(セット)!!」

 

Zeichen(サイン)!!」

 

詠唱と共にそれぞれ宝石を取り出し、それを敵めがけてぶつける。

 

「轟風弾五連!!」

 

「爆炎弾七連!!」

 

炸裂する二人の攻撃。炎に風が組み合わさりかなりの勢いの爆発を起こした。

 

「うひゃぁ〜・・・・壮絶・・・・」

 

『見てるだけかと思ったら・・・・意外と役に立ちましたね、あの二人』

 

ほぼ一面が炎に包まれるほどの勢いを持つ爆発を見ながら呑気にそんな会話を交わすイリヤとルビー。彼女たちの上空では先まで空を覆い尽くしていた魔法陣が瞬く間に消滅していく様子が確認できた。

 

「ふぅ・・・・なんとか倒せたみたいね」

 

「予定はだいぶ狂いましたが・・・・決着ですわね。ですが・・・・それより貴女五連ってなんですの!?勝負どころでケチってんじゃねーですわ!!」

 

「う、うるさい!!成金のあんたとは経済事情が違うのよ!!」

 

息つく間も無くいつも通りの喧嘩が始まる。それを横目にしながら翔は地上に降りてきたイリヤの元へ駆け寄る。

 

「お疲れ様、イリヤ」

 

「うん・・・本当に疲れたよ」

 

「うん・・・・前のやつよりもだいぶやばそうな敵だった。見てるだけだったけど、分かるよ」

 

「本当だよ〜」

 

ふぅ〜とため息を吐きながらイリヤは翔との会話を続ける。その表情には確かな疲労が見えた。

 

そんな姉弟の会話や凛たちの喧嘩を見下ろしながら、美遊をまた戦いが終わったことに安堵し、地上へと降り立とうとする。しかし、降り切る前に彼女の視界に異質な光が映り込む。

 

「っ!!」

 

慌てて確認すると、そこには展開された魔法陣、そしてその中心には先程倒した筈のキャスターの姿が。どうやら倒される寸前で転移していたらしい。キャスターが展開する魔法陣が放つ光は徐々に強くなり、同時に魔力が増していく。

 

「マズイ、空間ごと焼き払う気よ!!」

 

凛の叫び。咄嗟に飛び出す美遊だったが、途中で失態に気づく。

 

どう考えても間に合わない。

 

地上の四人と合流して鏡面界から脱出するべきだった。

 

今からではその時間も無い。

 

迎撃も脱出も、すでに不可能。

 

「美遊さん!!」

 

背後から聞こえるイリヤの声に、美遊は前に進みながら振り返る。そんな彼女の目の前には二つの光が迫っていた。

 

「乗って!!」

 

一つはイリヤが放った魔力弾。そしてもう一つは、おそらく正面から以外は視認することは容易ではないであろうそれは美遊の横を通り抜けると、魔法陣の隙間を縫って敵の肩に直撃する。

 

それにより、魔法陣の光が一瞬弱まる。

 

そして美遊はイリヤの魔力弾を足場に一気にスピードを上げ、敵へと迫った。そして・・・・・。

 

「ランサー、限定展開(インクルード)・・・・!」

 

宝具”刺し穿つ死棘の槍(ゲイボルグ)”。

 

因果逆転の必殺の槍。

 

それは魔法陣に溜められた魔力が放たれる寸前で、敵を貫いた。

 

 

 

 

地上に降り立った美遊。彼女の手の中には無事に回収できた”キャスター”のカードがあった。

 

『クラスカード”キャスター”、回収完了です』

 

「今度こそ・・・・戦闘終了だね・・・・」

 

確かに倒した証拠であるカードを回収した今、先のように逃げられたということはない。今度こそ確実に倒したということに、美遊は安堵して座り込む。

 

「・・・さっきのあの光・・・・あれは・・・」

 

『分かりません、イリヤ様達のさらに後方から放たれたと思いますが、あれは魔力とは少々異なるようでした。あれはルヴィア様、凛様のどちらのものでもないと思われます』

 

あの瞬間、キャスターの肩を撃った一つの光、あれがなければおそらく間に合わなかった。今頃は鏡面界もろとも火の中であったことだろう。

 

「あれは、一体・・・・・・それに・・・」

 

美遊の脳裏に浮かぶのは、さっきの戦いで地上に蹴り落とされた時のこと。あの時、何故か目の前の空間は歪み、それが降り注ぐ魔力弾から美遊を守った。直後に巻き起こった砂煙のせいで、おそらくそれを確認出来たのは美遊とサファイアだけであろう。他のみんなはおそらく気づいていない。

 

「あれは・・・・!」

 

『美遊様?』

 

「おーい、美遊さん!!」

 

「美遊さん、大丈夫?」

 

美遊の元にイリヤと翔がやってくる。どうやら凛が美遊を迎えにいくよう指示したらしい。

 

「・・・うん、わたしは大丈夫」

 

「あれ?なにかあった?なんか、空気が・・・・」

 

「ううん、なんでもない。行こう」

 

敵を倒した以上、この鏡面界に長居は無用。崩壊に巻き込まれる前にここから出なければ・・・・・。そう考えて立ち上がったところで、一つの違和感に気づく。

 

「・・・空間の崩壊が始まらない?」

 

「え?」

 

美遊の声にイリヤと翔は空を見上げる。前回ライダーのカードを回収した時はそう時間もかからず鏡面界は崩壊を始めた。しかし、今回はすでにそれ以上の時間が経過したにも関わらず、崩壊が始まらない。

 

「えっと・・・つまり、どういうこと?」

 

『そんな・・・まさか、これは・・!』

 

「ルビー?」

 

一つの可能性にルビーが思い至った時、唐突に小さな爆発音が響く。方角は、先ほどまでイリヤと翔が居た方向。つまりは凛とルヴィアの二人がいる方向だ。また喧嘩を始めたのか・・・・そう思いながら視線を向けた先には、信じられない光景があった。

 

「え・・・・?」

 

「ど、どういうこと、ルビー・・・?」

 

『・・・最悪の事態です・・・・』

 

「あり得るの?こんなこと・・・!」

 

『完全に想定外・・・・ですが現実に起こってしまいました』

 

三人の目に映るのは血を流しながら地面に横たわる凛とルヴィア。そして彼女達を傷つけたであろう、剣を携えた漆黒の騎士であった。

 

「二人目の・・・・・敵・・・・!!」

 

 

 

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