超・真次元クロスネプテューヌ   作:虚無の魔術師

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ノリで書いた過去作のリメイクです。やる気とノリで続き書いたりしますので、よろしくお願いします。

ではっ!


プロローグ 勇者到来

────『旧き神話の聖譚』

 

 

遠い昔、数億年もの過去の話。守護女神達の存在する天界と人々の存在する巨大な大陸が、この世界であった。争いもなく、彼等は平穏を謳歌し続けていました。

 

しかし、その平和が永く続くことはなかった。

 

 

突如空より現れた禍々しい破壊者。■■■と呼ばれたそれらは、災禍を引き起こしました。世界を喰らい、立ち向かった人も女神も、平等に滅ぼしていきました。世界の大半が焼かれ、大地の殆どが消えていったその時────希望の灯火が現れたのです。

 

 

────破壊者に対抗するべく産まれた奇跡の存在、名を『勇者』。彼が世界を救うべき、破壊者へと挑んだのです。勇者と同じ理念と正義を宿す戦士達と共に。

 

 

 

鋼の城の王にして寡黙なる狙撃手 『ヘイル』

 

 

無限の技と天を掴みし剣の祖 『ダイン』

 

 

勇気と親愛に満ちた最高の騎士 『フリート』

 

 

深淵より産まれし闇夜の孤王 『ノワール』

 

 

そして、勇者と共に最後まで戦った光の女神と光の精霊────六人の仲間と共に勇者は戦い、ついに破壊者をしりぞけることに成功した。

 

女神と精霊は滅び行く世界を安定させ、浮遊する一つの大陸として悠久の存続を為しました。

 

 

こうして、我等の世界は救われたのです。旧き勇者とその仲間達、光の女神の願いは今も続いています。彼等の願いを忘れず、平和な世界になることを願いましょう。

 

 

 

───『ゲイムギョウ界創世記』

 

 

 

パタン、と。

大きく題名が記された本を、一人の男が閉じた。歴史書のように分厚く、童話のように分かりやすく描かれた本の表紙をなぞりながら、男は椅子の上で口を開く。

 

 

「────もう数億か、刻は長いようで短い」

 

 

ふと、男は机の上にあった本を開く。文字だけが綴られる頁を指でなぞりながら、歌うように言葉を口にする。

 

 

「光の女神より産まれし四人の女神。争い続けていた彼女達が、ついに手を取り合う」

 

 

本を閉じ、椅子から立ち上がる男の周囲からあらゆるものが消える。本も机も椅子も、まるで最初からなかったように空白の空間だけが存在していた。

 

ただ一つ────他のものが消え去った瞬間に現れたものを除いて。

 

 

「約束の刻だ、旧き勇者よ。過去に遺した予言を、今果たそう」

 

 

そこにあったのは、半透明な光に包まれた棺桶のようなケースであった。その中で、一人の青年が静かに沈黙していた。永遠に眠っているように感じ取られる光景を前に、男は顔色すら変えることはない。

 

男はふと視線を反らす。何もない虚空を見た男の瞳は、全く別の景色を映し出していた。

 

 

◇◆◇

 

 

「─────ゲイムギョウ界に遍く生を受けし皆さん」

 

 

晴れ渡る青空の下、一つの大陸の近未来都市の塔の広間にて、大規模な式典が行われていた。大勢の人々が集まるその式典は、世界の流れを大きく変えることになるものである。

 

 

「新しき時代に、その第一歩を記すこの日を、皆さんとともに迎えられることを喜びたいと思います」

 

 

会場の舞台に立ち、周囲の人々に微笑みながら語りかける女性。紫色の長い髪を二つに分けた三つ編みにし、豪華なドレスに身を包んだ女性は、静寂を保つ人々に向けて言葉を続けた。

 

 

「ご存知の通り、近年、世界から争いの絶えることはありませんでした」

 

 

紫髪の女性がそう告げると共に、各々の方向から新たに動き出す人影があった。

 

 

「女神ブラックハートの治める────ラステイション」

 

 

黒いドレスとは対照的な白髪が特徴的な女性、ブラックハートが厳格と言わんばかりの雰囲気を崩すことなく前へと歩み出る。

 

 

「女神ホワイトハートの治める────ルウィー」

 

 

他の女性達とは違い、小柄な女性。水色の髪と白のドレスを纏った彼女 ホワイトハートも同じように進んでいく。

 

 

「女神グリーンハートの治める────リーンボックス」

 

 

豊かな胸を強調させたドレスを着こなし、薄緑の長髪をポニーテールに整えた女性 グリーンハートが穏やかな微笑みを浮かべながら、歩いていく。

 

 

「そして私、女神パープルハートの治める────プラネテューヌ」

 

 

紫髪の女性 パープルハートを含めた四人の女性───否、女神達がステージの中央へと並ぶ。彼女たちの足元に光のパネルが浮かぶと共に、四人の女神を空へと乗せていった。

 

 

「四つの国が国力の源であるシェアエナジーを競い、時には女神同士が戦って奪い合う事さえしてきた歴史は、過去のものとなります。

 

 

本日結ばれる友好条約で武力によるシェアの奪い合いは禁じられます。これからは国をより良くする事でシェアエナジーを増加させ、世界全体の発展に繋げていくのです」

 

 

長い時を争い続けた四人の女神と四つの国。しかし、彼女たちはようやく戦い以外の答えを見出だしたのだ。奪うのではなく、手を取り合って協力し合おうと。効率的ではないにしろ、この選択は決して間違いではない。

 

 

互いに歩み合い、互いと共にあることこそが誰もが求めた平和なのだ。少なくとも、この光景を咎める者など誰もいない。見惚れたように空を見上げる人々の姿が、それを証明している。

 

女神達が互いの顔を見合い、互いの手を取り合う。繋いだ手を握り、四人の女神は声を合わせて告げた。

 

 

「─────私達は過去を乗り越え!希望が溢れる世界を作ることを、ここに誓います!」

 

 

本当の意味で果たされた、四ヶ国の友好。数千年以来訪れたであろう平和が実現したことに、人々は大きな歓声を響かせた。喜びに満ち溢れた光景を優しく見守る女神達、ネプテューヌは噛み締めるように笑みを深めながら、爽快な程に晴れ渡る青空を見上げた。

 

 

 

───彼女達は知らない。

今この時の光景を、数億年前にいた者が予知していたことを。その者が、世界を救った者との約束という名を予言を残したことを。

 

 

蒼き大空に浮かぶ一筋の光が、女神の瞳に映った。

 

 

 

◇◆◇

 

 

少し前、女神達による友好条約の式典の合間に。謎の空間にいた男は、目の前の半透明な棺の中で眠る青年へと手を伸ばす。

 

 

髪の色が特徴的な青年だった。僅かに紫が帯びた銀色と鮮やかな程に白く輝く二色の髪を伸ばし、背中まで結ばれている。青年は呼吸すらしていない。まるで死体かと感じてしまうかもしれないが、何故か彼の姿は生気に満ち溢れていた。

 

 

「────『四人の女神が心を合わせ未来を誓いし時、女神の元に新たなる勇者現れん』」

 

 

「『世界は多くの困難に陥る。他の世界も含め、多くの脅威が彼等の道を阻むことになる』」

 

 

「『だが、勇者と女神達は共に在り続ける。多くの世界を救い、絶えぬ破滅を終わらせることであろう』」

 

 

男の口から語られる言葉は、旧き時代に残された予言であった。当然、この世界でそれを知る者は数少ない。彼を含めても三人、いやその三人も覚えているか分からない。

 

 

パチン!と男が指を鳴らすと、半透明な棺が光の粒子となって崩れていく。空中に浮かぶ青年の身体に手を向けると、彼の身体が男の前への移動していく。

 

 

「…………君には、多くの困難があることだろう。ある意味では君は、彼以上に勇者として在るべきなのかもしれない。多くのものをそれはきっと、酷な話だろう」

 

 

静かに青年の額に指を添える。その瞬間、青年の全身に光が伝わっていく。僅かな変化の後に、青年がゆっくりと呼吸を始めた。まるで生き返ったとは思えない程に、穏やかに眠る青年の顔を見据え、男は静かに言葉を紡いだ。

 

 

「───選択の時は今ではない。けれど、私は君の選択を尊重する。何故なら君は、旧き勇者の血統なのだから」

 

 

それだけ言うと、浮遊する青年の真下の空間が開いた。足元に開いた大穴に男は物怖じすることなく立ち尽くしている。それどころか堂々と手を広げ、聞こえていないことを理解していながら、青年へと祝福を送った。

 

 

 

「さぁ、新しき勇者よ。今こそ出向の時だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

心配せずとも、世界(古郷)は君を祝福するだろう。どうか君が人なりの幸せと平和を掴み取る未来を、願っている」

 

 

パチン!と両手を重ねたその時、青年の身体から浮力が消えた。青年は未だ意識もなく静かに眠っている。だがしかし、彼は重力に引かれるように深い穴へと落ちていく。

 

 

そして─────穏やかな光に包まれながら、青年は青空へと解き放たれた。

 

 

 

◇◆◇

 

 

「─────え?」

 

青空に浮かんだ光に気付いたネプテューヌは思わず瞬きをした。一筋の流星かと思った閃光だが、それがこの場所に向かって落ちてきているとようやく理解した。

 

 

「………?なにあれ?」

 

 

「おいおい、流星か?」

 

「いえ、アレは────此方に落ちてきていません?」

 

 

他の女神達も気付いたらしく、空を見上げながら目を細める。だが、もう一つの事にも気付いたネプテューヌの声を聞き、考えが塗り替えられた。

 

 

「─────アレって、人じゃない?」

 

 

光に包まれて見にくいが、確かに人の姿はあった。認識した瞬間、誰よりも先にネプテューヌが動き出す。

 

 

「っ!いけない!」

 

 

ドレスに包まれた姿が一瞬に変化する。電子的な光の翼を広げ、空へと飛び出した彼女は高速で飛翔していき、光を帯びた青年の元へと寄り添う。

 

今も落下している青年に、意識はなかった。こんな状況で呑気だと思うのも一時。ネプテューヌは青年を起こさぬように彼の身体を何とか受け止めた。

 

 

「はぁ、間に合って良かった」

 

 

最悪な未来にならず、安堵を溢したネプテューヌ。ゆっくりと地上へと降り立っていく彼女は、慌てて駆け寄ってきた人々と共に青年の様子を確認した。

 

彼が深い眠りに着いているという事実もあり、最終的にすぐ近くにいるプラネテューヌの教会へと運ばれ、そこで様子を見ることになった。

 

 

式典も終わりを迎えて数時間

件の青年は未だ目覚めることなく、医療に携わる者も問題はないとすら言っていた。

 

 

しかし、パープルハートを含めた女神達は半ば上の空であった。理由は明白だ。

 

 

「…………空から降ってくるなんて、一体何者なのかしら」

 

 

平和の式典の直後に現れた青年が何もないわけがない。誰もがそんな風に考えており、ある女神は青年が何か事情を抱えている可能性を、ある女神は青年が敵である可能性を考えたりしていた。

 

 

そんな最中、パープルハート達の元に青年が目覚めたという報告が届いた。

 

 

 

◇◆◇

 

 

「……………」

 

 

教会のベッドで目覚めた青年は、ボーッとしていた。何度か瞬きをしながら、周りを確認する青年の様子は挙動不審とは違う何かを感じる。

 

周りの状況を確かめようとキョロキョロとしていた青年だが、突然開いた扉の方にすぐさま意識を向けた。

 

 

「────良かった、何事もないみたいね」

 

「───」

 

「ごめんなさい、自己紹介を忘れたわね。私は女神パープルハート。またの名をネプテューヌ」

 

 

青年の無事を安堵するパープルハートは、自身の胸を軽く撫で下ろした。一方で、青年はパープルハートの姿に見惚れたのか、彼女のことをジッと見つめている。

 

 

「それはそうと。どうして貴方は空から降ってきたの?」

 

 

ふと、パープルハートは核心を突くような発言をした。改めて対面して青年が悪人ではないと彼女は確信していた。恐らく、空から降ってきたのは彼自身意図したことでもなく、致し方のないことだったのだろう。

 

だからこそ、知りたかったのだ。どうしてあんな規格外な方法で青年はあの場に現れたのか。

 

 

しかし、どれだけ待っても青年は口を開かなかった。それどころかパープルハートの発言に首を傾げている様子まである。それは彼女の質問の意味すら理解できてないようだった。

 

怪訝そうな顔だったネプテューヌもそれに気付いたらしく、心配するように問いかけた。

 

 

「もしかして貴方………喋れないの?」

 

 

しかし、答えは返ってこない。青年は一言も発することなく、ネプテューヌの疑問にすらハテナを浮かべている様子だ。ただ言葉を喋れないということではないと悟った

 

その理由を口にしようとした途端、新たに部屋に入ってくる人影が複数現れる。

 

 

「やっぱり起きてるみたいね。少しだけ安心したわ」

 

 

三人の内の一人、黒いドレスに白い長髪の女性が声をかけてきた。ネプテューヌに匹敵する程の美人な少女達が現れたことで、青年も心底驚いた様子で目をパチパチとさせている。

 

 

「あぁ、ネプテューヌの方が挨拶したのを忘れたわ。………私はノワール。ラステイションの女神 ブラックハートでもあるわ」

 

「私は女神ホワイトハート、名前はブランだ。ルウィーの守護女神をしてる」

 

「ベールですわ。リーンボックスの守護女神をしていますの」

 

 

物腰柔らかい女神達の自己紹介を前に、青年は不思議そうに首をかしげるだけだった。キョトンとした青年の様子に違和感を覚えながらも、ノワールは目を細めながら問い詰めようとする。

 

 

「私達は名乗ったわ。貴方も自分が何者か、教えてほしいのだけれど」

 

「ちょ、ちょっと待って!ノワール!」

 

 

慌てて遮ったネプテューヌに三人は意図も分からず困惑を見せていた。しかし、青年の身に起きていることいち早く理解していたネプテューヌが、意を決したように口を開いた。

 

 

「彼────記憶喪失、なのかも」

 

「ちょっと!いきなり何言ってるの?」

 

「だって可笑しいじゃない。彼、私達の言葉が分からないというより、そもそも言葉が何なのか理解してないみたいなの。彼本人もよく分かっていなさそうだし………」

 

 

ネプテューヌの視線を受け、青年は瞬きをすることしか出来なかった。ネプテューヌ本人の言葉と青年の雰囲気から、嘘ではないと他の少女たちも思い始めたらしい。

 

ふと、ブランと名乗った白いドレスの少女が呟いた。

 

 

「前に本で読んだことがある………記憶喪失になった人間は稀に身体機能を忘れることがあるって。歩き方や立ち上がり方、言語機能を忘れたりすることもあるってな」

 

「それじゃあ、彼もそうなのですか?」

 

「まぁ、だろうな。恐らく、空から落ちてくる前に強い衝撃を受けたか、或いは………」

 

 

「ってことは、彼は名前も覚えていないのよね?」

 

「あぁ………名前があるものを持ってない限りはな」

 

「ちょっと待って。彼の首に何か掛けてない?」

 

 

ノワールの言う通り、青年の首にはネックレスのような飾りが掛けられている。ネックレスの先にある鉄のプレートに何かの文字があるのが見えた彼女達は覗き込んでみると、斜めにした『十字』のような文字が刻んであった。

 

 

「これって、彼の名前?でも、一体どんな意味の名前なのか…………」

 

「─────クロス、という名前はどうかしら?」

 

 

思い付いたと言わんばかりの自信満々の笑みを浮かべたネプテューヌが、堂々と発言する。ノワールを含めた他の女神達が呆れていると、青年は力ない動きでゆっくりと頷いていた。どうやら彼はその名前を気に入ったようだと、皆が理解できた。

 

 

「さて、問題が一つ解決したのはいいですが………もう一つの問題も出てきましたわね」

 

「記憶喪失のコイツを、クロスを誰が保護するかって話だ」

 

「それは勿論、私に任せて。彼を助けたのも、彼の名前を考えたのも私だからね」

 

えへん、と胸を張って答えるネプテューヌ。ブランもベールも特に反論はなく賛成らしい。面倒事を押し付けたいという考えでもなく、純粋に断る理由がないだけなのだが。

 

しかし、ノワールだけが不安そうな顔を隠せずにいた。

 

 

「はぁ、分かったけど。いい?ネプテューヌ。彼だって記憶喪失なんだし、常識や言葉も分からないんだからちゃんと世話してあげるのよ?」

 

「任せてって言ってるじゃない。心配性ね、ノワール」

 

「妹やイストワールに任せず、自分でやりなさいって話なのよ!分かってる!?」

 

「────ぜ、善処するわ」

 

 

少し焦ったように振る舞うネプテューヌに、三人のジトーとっとした視線が突き刺さる。そんな少女達を尻目に、クロスはキョロキョロと状況が読み込めず困っていた。

 

 

少年少女はまだ知らない。

これから自分達に起きるであろう幸せと波乱に満ちた物語が始まるという事実を。

 

 

 

 

 

 

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