────神殿の中で、二人の男女がいた。自分はそれを真横で静かに見ていた。いや、見ていることしか出来なかった。まるで幽霊かのように、自分の実体はなかったからだ。
『…………女神様、本当に宜しいのですか』
『─────くどいな、■■■■。既に決めたことだ、今更変えるつもりはない』
美しい姿をした女性、だろうか。クロスはその姿は見えても、顔や声にはノイズが掛かっていた。どれだけ耳を澄ましても、目を凝らしても、彼女の存在を掴むことはできない。
彼女の背後にいた屈強な騎士の男が、苦言を呈していた。納得できないという態度を隠さず、男は必死に食い下がる。
『しかし、御子であるお二方は「彼」と貴方の子です。その子達を辺境に送る…………』
『─────確かに、この子はアイツと私の子だ。愛情もある』
『では!尚更考え直してください!』
クロスは絶句した。どうやらこの女神と呼ばれる女性は、自分の子供を捨てるつもりらしい。少なくとも、一緒に過ごすつもりはないらしい。
しかし、女性は悲痛そうな様子である。布に包まれた二人の赤子に見つめた女神の様子は、一度揺らぎかねない程不安定なものであり、
『………無理なのだ。私では、この子達を幸せにはできない。私は女神として、国を、世界を守る存在だ。一つの存在だけを愛することなど許されない。私は平等でなくてはならない』
『しかし………っ!』
『それに、この子達を守るにはこれしかない。女神と勇者の子など、世界は容認しない。あの崩壊の眷属が生きていたとしたら、この子達はきっと狙われる。私はそれに堪えられないんだ』
赤子を愛おしそうに、寂しそうに見つめる女性に、背後の騎士は何も言えずに口を閉ざした。閉ざすことしかできなかったのだろう。彼女の言っていることが、間違っていないと理解しているのだから。
『だからこそ、せめて願おう。この子達が、崩壊に関わらない世界で幸せに生きられることを………それが、母として出来る最後の仕事だ』
そう告げると共に、クロスの視界が変わった。一瞬にして切り替わった世界の中で、彼の目の前には真っ黒な闇が映る。
─────闇の中で、誰かが蹲っているのが最後に見えた。何も見たくない、そんな風に全てから背を向けて。
◇◆◇
「………っ」
ふと、意識が覚醒したクロスは勢いよく起き上がった。真っ白なベッドの上で寝かせられていたことに気付いたクロスは戸惑いながら、何があったかを思い出す。
「俺、確かあの洞窟で─────」
─────ノワールを助けるために戦っていたその時、声を聴いた。その瞬間、凄まじい力が流れ込んできたところから、記憶がおぼろげだ。最終的にどうなったのかすら、今の自分には分からない。
「あっ!クロスさん!目が覚めたんですね!」
「ネプギア、おはよう………?どうしたの?」
扉を開け、此方に気付いたネプギアが駆け寄ってくる。笑顔で応えた直後、心配そうなネプギアの顔が変わったことに戸惑うクロス。彼女はその疑問に答えるように、問いかけた。
「どうしたんですか?クロスさん、何か嫌な夢でも見たんですか?」
「?なんで?」
「だって─────泣いてるじゃないですか」
「…………え?」
思わず、目元に触れるクロス。確かに、瞳から雫が溢れていた。戸惑いながらもクロスは涙を拭う。何故泣いているのか、分からない。だが、悲しいという感情だけは、何故だか感じているのだった。
◇◆◇
「おーっす!クロスおはよー!元気そうで何よりだよ!」
「アンタはちゃんと座りなさい!………クロス、貴方本当に大丈夫?何処か体調悪くない?」
「ううん、大丈夫………心配させてごめん」
ネプギアに連れられ、クロスは教会の広間へと着いた。呑気に椅子を揺らしているネプテューヌと彼女を注意しながらもクロスの心配をするノワール。二人に頭を下げたクロスは彼女達以外にも別の相手がいることに気付いた。
「あ、えっとお二人は………」
「私はブラン。ルウィーの女神、ホワイトハートという名前もあるわ」
「お久し振りですね、ベールと申します。リーンボックスの女神、グリーンハート、どちらで呼んでくれても構いませんよ?」
「俺は、クロスです。よろしくお願いします、ブランさん、ベールさん」
自己紹介をする二人の少女、ブランとベールに丁寧にお辞儀をするクロス。そんな青年の様子に、二人の女神は驚いた様子を見せながらも感心したように頷く。
「………数日でここまでの状態、ネプテューヌ達の言うように記憶能力は人並み以上みたい」
「発音や言語も、一瞬で記憶したという話も嘘ではないみたいですわね。やはり何か特別なものを秘めているのは確かでしょう」
「え、えっと………」
真剣な様子で此方を見つめるブランとベールにどうするべきか迷うクロス。そんな事をしていると、ふとネプテューヌが声を上げた。
「あ!いーすん!お疲れー!どうだったー?」
「検査の結果、少し分かったことが─────クロスさん!?目が覚めたんですね!?」
「イストワールさん!………じゃあここは、やっぱりプラネテューヌなのか」
ラステイションに居たはずだが、プラネテューヌの教会に戻ってきたらしい。その事実に驚いていたクロスを尻目に、ブランが話を切り出す。
「………ネプテューヌ、ノワール。貴女達が見たことを、聞かせてくれる?」
「私が話すわ。あの時の事を、全て─────」
そうして、ノワールは語り始めた。トゥルーデ洞窟で対面した、周囲の物を取り込む謎のモンスター達。それを操る謎の男との戦い。突如女神化が強制的に解除されたこと。
─────そして、クロスが戦いの最中に変身したこと。それが女神達にとっても重要な話だったらしい。
「変身?彼が?」
「あの時、私は見たの─────アレは女神化とほぼ同じものよ」
「ですが、クロスさんは男ですわよ?女神では無さそうですけど………」
「えー、男の女神もいるんじゃないかなー?」
「矛盾してるよね、それ」
真剣に話し合う三人の女神を余所に、のほほんとマイペースなネプテューヌにクロスは突っ込んだ。そういう女神もいるのかもしれないが、自分がそんな感じだとは到底思えない。
観察するように此方を見つめるブランに、クロスもキョトンとして思わず視線を合わせる。ふいっ、と顔を反らしたブランは話を反らすかのように切り出した。
「じゃあ変身してみて。実際に見てみれば何か分かるかもしれない」
「変身って………一体どうすれば?」
「そりゃあれだよ!こう────ぶわっ!とか、きゅいいいいん!って感じで!」
「な、成程…………?」
「素直に分からないって言っていいのよ?」
擬音で説明しようとするネプテューヌに、クロスは疑問符を浮かべながらも何とか理解しようと逸る。流石に心配してきたノワールが助け舟を出してくれたお陰で、他の女神達からも変身のコツについて聞けることができた。
「え、ええっと──────『アクセス』」
胸に手を押し当てて、意識を切り替えるように集中させる。するとクロスの全身に力が駆け巡り、彼の姿が改めて変化する。黒い長髪に女神たちの変身した時と同じようにプロセッサースーツを纏う青年の姿になったクロスは自身の身体を見下ろし、感心したように呟いた。
「…………ふむ、これが変身か。何というか、変な感じではあるな」
「……………」
「何だ?人をそんな目で見て、俺に何かおかしい点があるとでも?」
「「「「だっ、誰ッ!?」」」」
比較的に大人しい好青年であるクロスとは思えぬくらい、大人びた程度の青年に女神達は驚愕を隠しきれなかった。別レベルの変化に衝撃を受けるネプテューヌ達に、クロスは肩を竦める。
「誰とは失敬だな………俺は俺だ。既知の相手を見違えるほどに耄碌している訳ではあるまい」
「ふ、雰囲気が全然違う!クロスってもっとマイペースで爽やかな感じのイケメンじゃん!なんか口の悪いオラオラ系みたいな感じになってるぅ!ね、ねぇクロス!その顔でいつもみたいなこと言ってみて!」
「────相変わらず騒がしい女だな。嫌いではないが、女神の品位を気にするのならば節度を持つんだな」
「辛辣ぅ!?」
露骨に呆れるクロスの今までにない毒舌にネプテューヌは愕然として崩れ落ちた。ねぷぅ!といういつもの口調も消えて戦慄するネプテューヌ。余程衝撃だったのか、再起動には時間がかかっていた。
「いや、ネプテューヌのやり方間違いじゃないかもしれない…………クロス。ちょっといつものようにネプギア達と話してみて」
「ふむ?………良いだろう。ネプギア、先日借りた本についてだが、解読が難しい点についての疑問が幾つかある。時間があればで構わないが、それに関して教えてくれると助かる」
「あ、はい!分からないことですね!任せてください!何でも言ってくださいね!」
怪訝そうでありながらも、クロスはネプギアと私的な会話を続ける。礼を言う、と頭を下げるクロスはこれでいいかと言わんばかりにブランを見る。
ジッと見つめていたブランはふむ、と小さく頷いて答えた。
「やっぱり別人みたいな変化だけど………間違いないわね。口調や性格が変質してるだけで、内面に違いはないわ」
「………恐らく何か外的要因によって変質してるのかも。彼が変身できた力に由来してるのか分からないけれど」
では、何がそれに関係しているのか。疑問はやはりそれであった。イストワールが調べてみたが、クロスの中にある力の因子は深く入り混じっているらしい。何か強大なものが、彼の中で渦巻いているのだとか。
分かっているのは、この変身も、性格や人格の変化もその因子が関わっているのではないか、ということ。
「分からない問題は一度置いておいた方がいいわね、その姿って普通に女神化と同じものなのかしら?」
「武器は剣ですわね………他に何か特徴的な力はあるのでしょうか?」
「ああ、それならば簡単だ。口で説明するよりも────見た方が早い」
そう言いクロスが手を伸ばすと、彼の背後に浮かぶ光陣から無数の剣が飛び出す。その剣はまるで自我を持つようにクロスの周囲をフワフワと飛び回る。
「この姿の能力────剣の自動操作ができるらしい。背中の光円にストックされてるみたいで、剣が破壊されるとここから出現するようだな」
「はぇー、なんか凄い力だねー。前見た時も思ったけど、その剣ってどういう風に動かしてるの?」
「意識、感覚というのだろうか。俺の思念でコントロールしてると思う。今のところでは簡単な動きしかできないが、慣れさせればもっと効率よく戦えるようになるだろう……………む」
自身の能力の感覚を本能で感じ取っていたクロスは不意に反応を示す。自らの身体に起きている状態を理解し始めたのであろう彼は冷静に、ネプテューヌ達に語り始めた。
「すまない、皆。どうやらこの姿を維持できるのも限界らしい。そろそろ元に戻りそうになるな─────」
瞬間、クロスの姿が光の粒子に包まれる。驚いたネプテューヌ達の前で、元の姿に戻ったクロスが慌てたように着地した。彼はポリポリと頭を掻いて笑う。
「うーん、なんか不思議な感覚…………でもなんだろ。懐かしい感じもする」
「やっぱりイストワールに詳しく調べてもらってもいいんじゃないかしら?貴方自身、自分が何者か興味があるでしょ?」
「────いやー?別に」
あっけらかんと、クロスが告げた言葉に全員がえ?と停止した。当のクロスは不思議そうに首を傾げながら「別にいいよ」と再度告げる。
「ほ、本当に………?貴方、自分が何処から来たのか、故郷とか知らないんじゃないの?」
「そうだよ!ノワールの言う通り!クロスのこと待ってる人達だっているかもしれないし………!」
「────多分いないよ。よく分からないけど、そうだって感じはする」
心配するネプテューヌ達に、クロスは平然とそう答えた。絶句する女神達を余所に、クロスはそういう確信すらあった。恐らく、『自分』には何もないのだろう。過去も、後悔も、それ以外の何もかも。だからこそ、思い浮かぶ記憶はあっても、それが自分のものであるからすら定かではない。
「でもいいよ。俺が誰かなんて、何が何でも知りたいって訳じゃないし。今の俺はクロスっていう名前もあるんだ。昔のことも、ゆっくり知っていければそれでいいよ」
「それでも、自分が何か分からないなんて………怖くないの?」
「全然。だって、俺はなりたいものがあるからね」
「なりたいもの?」
「──────『勇者』」
それは、彼が呼ばれた名であり、彼が本を読んで憧れた存在でもあった。誰かの為に戦って、笑顔や平和の為に立ち上がるヒーロー。その姿にクロスは見惚れていた気がしていた。
「夢の中で言われたんだ。この世界でこれから色んな事が起こるって。その色んな事で、皆傷付いたり悲しんだりするって。悪い奴等が、平和をめちゃくちゃにすることが起こるって」
「…………」
「もし、そんな大変なことが起きたら、ネプテューヌ達は戦うんだろ?なら、俺もその時に力になる。皆と一緒に、世界を、皆を守れるように強くなりたい。俺が本で見た伝説の勇者のように、誰かの幸せを守れるようになりたい。
────元々、俺はそうなる為にこの世界に来たんだと思う」
◇◆◇
「────クソ!クソクソクソッ!クソォ!!」
人気の無い森の中、スライヌのようなモンスターしかいないような辺境の森で、ロードは怒り狂っていた。腕部に装着した装置から黒い閃光を放ち、木々を消し飛ばし、残った木も蹴り飛ばし、グシャグシャに踏みつける。
癇癪のように暴れ回るロードに、周囲から生物の気配は消えていた。尋常ではない怒りと殺意に巻き込まれないように、本能で感じ取ったモンスター達が逃げていたのだ。
「なんだ!?なんなんだアイツらは!?────あの力、あれだけのエネルギー!俺よりも下等な存在のくせに!俺の計画の邪魔をしやがってぇえええええええええッ!!!」
ラステイションの辺境で暗躍していたロードは、その目論見をネプテューヌやノワール、クロスによって打破された。打破されるだけでも屈辱でしかないが、それ以上にわざわざ此方から撤退するしかなかった事実が、ロードの思考に苛立ちと殺意の熱を持たせる。
周囲を手当たり次第破壊し尽くして、ようやくロードは冷静になった。ふーっ、と肩を落としたロードは腕部のガジェットを起動し、何かを操作する。
「ロストエナジーの大半を失った、また集め直しか。こっちは■■■の復活のためのエネルギーがより多く必要だってのに」
ロードが呟いたその名は、周囲の音に紛れて正確には届かなかった。しかし、彼はやはり気にしない。誰かに聴かせるわけではない、ただの独り言であるからだ。
「………あの女神どもを使えば、■■■は覚醒する。だが、簡単には奪えない。いや、ダメだな。奴等のエネルギーは■■■とは相反する性質だ。分解するだけならまだしも、核として利用するのは厳しい…………クソ、ホントにイライラする。
いけ好かないが、『アイツ』と合流するのが最優先か。だが、これからどうするべきか────」
「────ふむ、お困りのようだな」
独りでに思案していたロードは、不意に呼び掛けられる。ジロリと振り向いたロードの前にいたのは、妙な三人組?であった。
小さなネズミのような生物に、ネズミ耳のパーカーを被った女、そしてその二人を従えるように立つ魔女のような姿をした女性。ロードはそれを敵とすら判断しなかった。ただの有象無象であるかのように苛立ち混じりに吐き捨てる。
「なんだ、テメェ等。今の俺は機嫌が悪いんだ」
「女神に負けたことか?仕方あるまい、奴等に正攻法で挑むこと自体無謀なのさ」
「……………今、機嫌悪いって言ったよな?」
魔女らしき女性の発言に、ロードは足を止めてジロリと目を向けた。その瞳に込められているのは、怒りを突き抜けた無機質な殺意。怒気すらない純粋な殺意に、魔女の後ろに隠れていた二人(一人と一匹)はビクリと全身を震わせる。
ロードは無造作にガジェットを装着する腕を振り払う。撒き散らされた黒い粒子は形を作っていき、ロードの操る眷属である『
「────殺せ」
見向きもせず、『
────けしかけたはずの『
「そう血気盛んになるな、私はお前とやり合う気はない。ここに来たのは交渉のためだ」
「交渉だぁ?たった今俺はムカついてムカついて、虫の居所どころか気分が悪ぃんだよ。お前等をブチ殺して、ロストエナジーにすることは決定─────」
「─────女神ども、邪魔だろう?」
怒りのままに話を無視しようとしたロードに、魔女の囁きは嫌でも耳に入った。装置を付けた腕を伸ばしたロードは更に目を細め、ようやく耳を傾ける姿勢になっていた。
「私もだ。女神がいる以上、暗躍するのも難しい。私の目的の為にも、女神の連中をどうにかするのは必然。そこでだ、共に手を組まないか?」
「手を組むだと?お前等と、この俺が同等だとでも?」
「ああ、同等の立場だが、あくまでも協力関係。利害が一致するまでの間、共に女神どもと戦えるように協力して、邪魔になれば消せばいい。簡単な話だろう?」
「…………お前ら如きと組むメリットは?」
「お前は知らないだろうが、私は奴等をどうにかする手段を知っている。どうだ?悪くない話だと思うが」
魔女の言葉に沈黙していたロードはやっと腕を下ろす。しかし信用した訳ではないらしくその瞳に宿る敵意と警戒心は一度も揺らいではない。それを隠すことなく、ロードは不敵な笑みを浮かべた。
「────いいだろう、お前等を利用してやる。だが役に立たないたと判断した場合は、お前等をブチ殺すのが最初になる」
「決まりだな。機会があれば連絡する。その間は好きにするといい。………ああ、次はお仲間も呼んでおくのだな」
「…………何者だ、お前。どこまで知ってやがる」
「悪いが、企業秘密だ。だが、前者にだけは答えてやらんこともない」
魔女の言葉に笑みを消したロードのドスの効いた声に、彼女はほくそ笑む。魔女のような帽子を片手で掴み、彼女は宣言した。
「私はマジェコンヌ────女神たちを倒し、この世界を滅ぼす者の名だ」
◇◆◇
「いやー、しかし怖い人っちゅね………オバハンが挑発した時はホント生きた心地しなかったっちゅよ」
「あ、アタイも!なんつーか、アイツ此方を見てるようで見てねぇって言うか…………スゲー不気味だったていうか」
「当然だ、アレに善悪の概念はない。辺りを破壊することも相手を殺すことも、奴にとっては自身の感情を制御する為の行為でしかない。文字通り、破壊の権化だ」
ロードの去った後、小柄なネズミと少女は一息ついてロードへの愚痴を口走る。マジェコンヌと名乗った女性はその二人の意見に釘を差すように告げた。
「手下に死なれるのもなんだから忠告しておくが、奴にだけは不用意に近付くなよ。癇癪で殺されては割に合わん。私や他の奴が近くにいれば止められるだろうが、いない場所では助けられんぞ」
「お、オバハン………妙に詳しいっちゅね。アイツ、何処かで知ってんっちゅか?」
「────深入りしないことだ。お前も奴等に目を付けられるのは嫌だろう?だが、奴にも感謝しなければならないな。」
「そうですね。………例のブツを探し出すのも楽になりそうですし」
口を噤む少女の隣で怪訝そうに問い掛けたネズミに、マジェコンヌは静かに呟く。同じように黙った二人(一人と一匹)を余所にマジェコンヌはロードの消えた方向を見つめ────いや、睨んでいた。
「破滅の使徒…………崩壊の眷属め。この世界は私のものだ。貴様らにだけは渡すものか」
その瞳に宿るのは、尋常ではない敵意と憎悪。
自らの主の見たこともない程の感情に、二人の配下は驚きはしたが大人しくすることを選んだ。
◇◆◇
「あの女………何者だ?女神どもと同じようで別な何か────何が狙いだ?」
その後、離れた場所でロードはマジェコンヌへの疑念を深めていた。あの時感じた力に心当たりはある。だが、何か既視感がある。確かに女神と似た力であるが、アレと同じようなものを、他で見たことが────。
「いや、何が狙いかは知ったことじゃねぇ。どうせアイツらも適当に利用してロストエナジーに変えればいい。それにまだ、俺には力を手に入れるチャンスはあるしな」
ロードはそう言って、ポケットに手を伸ばしてそれを取り出す。光の無い黒いガジェットのようなソレを手に、彼は不敵にほくそ笑むのであった。