転生現代入り   作:xandra

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3.夜の密会

「……お母様、ちゃんと寝てる?」

「ん……そうね、しばらく大丈夫だと思うわ」

 

寝息をたてるお母さんの顔を確認して、ふぅっと一息つきレミリアに向き直る。

 

「漸く二人っきりでゆっくり話せるわね」

「そうね、誰かさんのせいで今まで出来なかったものね」

 

上目遣いでレミリアが睨んでくるが、容姿のせいか何だか媚びてるようにも見える。責められてる気がまるでしない。

私が無反応なのを見ると、レミリアは肩を竦めた。

 

「まぁいいわ。まずは現状把握から始めましょうか」

 

私達は二歳になっていた。

流石にこの位の歳になると、身体の動かし方や生活リズム、感情等のコントロールも多少は出来るようになってくる。

そのお陰でようやく二人きりの時間を作る事が出来たのだ。

 

「現状把握も何も、死んで転生したってことでしょ? 何で記憶を保持したままなのかは解らないけれど」

「それも不可解だけど、どうしてあなたと双子で生まれてきたかって事の方が問題よ」

 

言って、眉を顰めながら腕を組むレミリア。

胡座を組んでいることも相まって、幼い見た目に似合わずおっさんくさい。

 

「何よ、私だってあんたと双子なんて死んでも嫌よ」

 

死んだからこそこうなっているんだけどね。

実際は別にそれほど嫌というわけではなかった。むしろこの不可解な現象の前では友人が傍に居てくれるのは非常に心強い。

が、それを伝えるのはなんだか癪である。

 

「あ、ごめんなさい。そういう意味じゃないのよ。私はあなたと家族になるっていうのは大歓迎よ? ……ただ、何か意味があるんじゃないかって事」

 

大歓迎て。

何だかむず痒い気分になるのを誤魔化す為に、枕元に隠しておいたビスコを口に放り込む。

結構美味しいのよこれ。

 

「それは結構普通の事じゃないの? ほらよく言うでしょ、"深い関わりを持った相手とは、前世で既に出会っている"とかなんとか」

「物食べながら喋るのやめなさいよ。……あーほらもうポロポロ零してる!」

 

身を乗り出して私の寝巻きの裾をパンパンとはたいて零れたカスを床に落としていく。

あんたは私の母親か。

あ、そういえば姉だったか。

 

「というか何でこんな物持ってんのよ」

「昼間お母さんが厠に行ってる隙にちょろっと。あぁ、あんたその時昼寝してたわね」

 

ちなみにこの手のおやつの隠し場所は台所の流しの下の物置だ。

観音扉の内側には包丁がズラリとぶら下げられている。

包丁収納扉というらしいが、何故あんな乳幼児の手が届く高さに危ない物を設置するのか甚だ疑問である。

 

「そもそもこれは異変なんじゃないの? 博麗の巫女としてはどう考えてるのかしら」

「異変を解決する側である巫女を強制的に転生させる異変? はっ、スペルカードルールも糞もあったもんじゃないわね。誰に退治して貰おうっていうのよ」

 

それじゃあ異変じゃなくて侵略よ。と付け加え、新たにビスコを口に放り込んだ。

……この緑色の方は不味くは無いけどあんまり美味しくないわね。

やはり緑は敵なようだ。

 

「だったら余計に拙いんじゃないの? 博麗の巫女不在の現状は」

「紫がなんとかするでしょう。巫女不在時の異変だって、前例が無いわけでもないし」

 

まぁなるようになるでしょう、と呑気な言葉を吐きながら更にビスコに手を伸ばす。

なんかクセになるわねこれ。止まらない。

 

「それ一個頂戴よ。……ありがと。

それで? 博麗の巫女様としてはどう動くつもりなのかしら?」

 

私が手渡した緑ビスコを咀嚼しながら

「あら美味しいわねこれ」などとのたまうレミリア。

なら全部くれてやるわ。

赤い方は一つもやらんがな。

 

「わ、ちょっと投げないでよ!」

 

レミリアの文句を無視しつつ、

 

「もう二年以上も経ってるのよ? それこそ紫が放っておかないでしょうよ。とっくに新しい巫女が据えられてるはずだわ」

「へぇ……随分とあいつを信頼してるのね」

 

レミリアはそう言うと、僅かに目を細めた。

吸血鬼異変の事もあるし、あいつに何か思う所でもあるのだろうか。

 

「してないわ。あいつの手腕を信用はしてるけどね。ムカつくけど、人を見る目と腕は確かなのよね」

 

そして何より、幻想郷を想う気持ちは誰よりも強い。

 

レミリアは、そう……。と小さく呟くと咳払いを一つして、

 

「ところで、死んだ時の事を覚えてる?」

「死んだ時ねぇ……それが何も覚えてないのよね。最後の記憶は……えーっと。なんだっけ。思い出せないわね」

 

別に最近妖怪と戦ったという記憶も無いし。

案外縁側でのほほんとお茶でも飲んでたかもね。

あー、熱いお茶が飲みたい。

ミルクも麦茶ももう飽きた。ポカリとかいうのは甘くて美味しいけど。

今はビスコで我慢しましょう。あ、あと二つしかない。

 

「私も最後の記憶って何だか曖昧なのよね。私の能力じゃあ過去は見れないし。

……咲夜の紅茶が恋しいわ。今頃皆何してるのかしらね」

 

頬杖をついて窓の外に目を向けるレミリア。

儚げなその横顔は、前世とは違い日本人然としている。

だが、スッと通った鼻筋等はかすかに前世の面影を感じさせる。魂の影響だろうか。

月を眺めるその姿には、かつての夜の帝王としての威厳はもう無い。

元々あんまり無かったけどね。

 

「え、ちょっと待って。聞き流しそうになったけどあんた能力使えてるの?」

「……え? えぇ、使えてるわよ? かなり弱体化してるし、安定しないけどね。あなた自分の能力試してないの?」

 

試していない。当初はそれどころじゃ無かったし、ここ最近は滑舌を良くする為の訓練とおやつの盗み食いで忙しかったのだ。

 

「……信じらんないわね。真っ先に試そうとする物じゃないの? 普通」

 

やれやれと言った風に量掌を上に向けため息を吐くレミリア。

オーバーリアクションがなんかムカつく。

 

「ちょっと今試してみなさいよ」

「ん……もうやってるわ。あー……でも、駄目ね。なんとなく存在は感じるんだけどね」

 

ふぅっと息を吐き、

 

「この体、霊力が殆ど無いのよ。赤子だからって事もあるんでしょうけど、それにしてもこの霊力の低さは異常だわ」

 

それでも、何と無く体が軽くなったような気がする。

この分じゃあジャンプの飛距離を少し伸ばしたり、高所から飛び降りた際の衝撃を緩和する程度にしか使えないだろう。

 

「私も魔力や妖力がまるで無いわ。空を飛んだり魔力弾を出したりも勿論出来ないわ。まぁそれは人間になったからって事なんでしょうけど。

あなたの異常な霊力の低さっていうのは、ここが外の世界っていうのが影響してるんじゃないかしら」

「やっぱり外の世界よね、ここ。ざっと見回しただけでも見たことの無い機械がいっぱいあるし」

 

テレビとか電灯とかね。

何より水道というのはとても便利だ。わざわざ汲みに行かなくとも蛇口を捻れば水が出てくる。近代文明万歳。

 

「で、あんたの能力の方はどうなのよ」

「駄目ね、殆ど使い物にはならないわ。言うなれば"運命を見る程度の能力"って所かしら。干渉はほぼ無理よ」

「未来予知ってこと? 充分使えるじゃない」

「それがそうでも無いのよ。使おうとしても発動するかは三割程度。

発動したとしても靄がかかったように不鮮明にしか見えないし」

「つまり現状打破する術は無し、と。あーなんか面倒くさくなってきたわね」

 

脱力して足を前に放り出し、天井を見上げる。

小さなオレンジ色の光を発する電灯が少し目に痛い。

 

「そんな事言わずに何か考えてちょうだいよ。そんなんじゃ、いつまで経っても帰れないわよ」

「もうこのままで良いんじゃないかしら。ちょっと大人びた子供として普通に人生を謳歌しましょ。

……あ、ビスコがもうない」

 

投げやりな気分になった私は、空になった大袋を脇に放り投げる。

くそ、緑の方全部レミリアにあげるんじゃなかった。

 

「やっぱりそれちょっと返して。どうせそんなに食べないんでしょ?」

 

言いながら、返事も待たずにレミリアの足元に散らばるビスコを二つ程回収した。

 

「……レミリア? どうかしたの?」

 

当然文句が飛んでくるかと思ったがそんなことはなく、怪訝に思いながらレミリアの方に顔を向けた。

 

「……あなたは、それで良いの?」

 

------なんて顔してんのよ、あんた。

思わずそんな言葉が口から漏れそうになったが、何とか飲み込んだ。

前世でも今世でも、レミリアのこんな表情は見たことがない。

 

これが、あのレミリアなのか?

この優しく触れなければ壊れてしまいそうな弱々しい女の子が?

 

赤子が親に助けを求める自衛本能として泣き喚いているのではない。

嗚咽一つ漏らさず静かに涙を流す姿は存在そのものが儚げで、心の奥底に押しやっていたであろう弱音をさらけ出している。

 

レミリアの本当の姿を、見てしまった気がした。

 

「私は、嫌よ。こんな何処だか解らない場所に、人間として放り出されて、一生を終えるなんて」

「……レミリア」

 

ポツリ、ポツリと呟くように話すレミリアに私は何と声を掛ければ良いのか。

 

----一人でそんなに溜め込んでいたのね

----気付いてあげられなくてごめんなさい

----軽はずみな発言をしてごめんなさい

 

頭の中に沸いては消える言葉の全てを飲み込んで、

 

「……おいで」

 

私はレミリアを抱き寄せた。

抵抗することもなく、素直に身を預けてくれたレミリアは、私の背中に手を回す。

 

「ありがとう」

 

どういたしまして。

いや、違う。私が今伝えるべき言葉はこれじゃない。

側にあなたが居てくれたからこそ、私はこんなにも落ち着いていられるのだ。

もしもこの世界に一人ぼっちだったならば、今のあなた以上に取り乱していたかもしれない。

気が、狂っていたかもしれない。

それを救ってくれたのは、紛れもなくあなたなのだから。

だから、私の言うべき言葉はこれ一つだ。

 

「私の姉として、生まれてきてくれて、ありがとう」




あれ、どうしてこうなった。
そんなにシリアスにするつもりなかったのに。
何も考えずに書き進めるからこうなるんだよ。
説明文的な所訂正する必要が出てくるかもです。

ハーメルンの使い方がよく分かんないです。閲覧数とか何処で見れるんだろう。一桁だったら泣く。
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