「621、お前に意味を与えてやる。仕事の時間だ…」
ーー
世の中は金だ。自身が傭兵となり、強化人間になったのもそれに起因するところが大きい。くそったれな自身の世界にはなにもなく、ただ非常に現実だけが揺蕩う世界でしかなかった。
そんな過去を走馬灯のように見ていると外部から刺激が入り、覚醒する。その時に自身が眠っていたという事実に気づく。
《621、仕事の時間だ。突入カプセルの電源を落とす、後は合図を待て》
ガコンっという振動で自身が乗り込んだ機体の周りの電源が落ちたことを感じる。
無重力の浮遊感は少しだけ収まり、何かに引き寄せられるような感じを得る。
《今だ、起動しろ》
ハンドラー・ウォルターの言葉と同時に機体を起動させる。
すると視界がクリアとなり格納庫の壁を映し出す。
起動と同時に大きな衝撃を感じるとそのまま振動に襲われ落下する感覚がどんどん強くなっていく。
モニターに映る高度計が規定のポイントを通過した瞬間、格納庫のパージボタンを押し、壁が剥がれた瞬間機体を飛び立たせる。
「……」
眼下に広がる鋼鉄の大地、だがそこに着地すれば減速不足で機体がスクラップになりかねない。
スラスターを吹かし、減速しつつ鋼鉄の大地の隙間に機体を滑り込ませるのだった。
ーー
〔ISB2262 惑星ルビコン3に着陸〕
《座標は…グリッド135 誤差はあるが許容範囲内だ。この先のカタパルトを使え、それで帳尻が合う。》
配管を抜け、展開していたガードメカを手早く片付けるとカタパルトに向かうのだった。
ーー
「……」
ひとまずは及第点と言ったところか。っとウォルターは先程の戦闘を見て判断する。
シミュレーターでは619、620よりやや劣る印象だったがその違和感も今は全く感じさせない。
カタパルトを使い、汚染都市でゲリラと戦闘を繰り広げている621を見ているとむしろ、前任者より洗練されているように感じる。
ACでの実戦など初めてだろうによくやる。
だが彼女も目的のための手段の一つでしかない、人生を買い戻せるだけの金を与える。それに関しては嘘ではない、だがそれ以上にここは死に近すぎる。
「登録番号Rb23、傭兵ランク圏内。識別名は…」
するとレーダーに大型機の反応。それは621に向けてまっすぐ向かってきていた。
ーー
《封鎖機構とやりあうのは本意ではないが。構わん、迎撃しろ。今ならお前が特定されることはない》
戦闘許可が降りた瞬間、アサルトブーストで一気に巨大なヘリの鼻先まで迫る。アサルトブーストを吹かすと同時に放たれたヘリのミサイルは曲がりきれずに地面や壁に激突し爆発していく。
「ひっ!」
所属不明ACのカメラがヘリのコックピットを睨み付けると封鎖機構のパイロットは離れるために一気に機体を上昇させる。
「っ!」
その上昇性能は想像より遥かに高く、展開していたパルスブレードはヘリの下部、分厚い装甲を斬るだけにとどまる。
機体が落下すると同時にミサイルとライフルで牽制しつつ着地、降り注ぐミサイルをクイックブーストと物陰でやり過ごしつつ、物陰から一気にアサルトブースト。
コックピットからは逸れたものの左の機銃を破壊、右手のライフルを投棄し、ヘリに張り付く。
「し、しまった!あああぁ!」
そこからヘリの翼を蹴り、コックピットへと迫りパルスブレードでコックピットを貫くのだった。
《惑星封鎖機構のSG 大型武装ヘリの撃墜を確認した。621今日の仕事は終わりだ。手に入れたライセンスの識別名を伝える》
モニターに映し出されるライセンス名を静かに読み上げる。
「レイ…ヴン……」
「そうだ、それがお前のルビコンでの名義だ。機体を回収する、指定座標へと向かえ」
「了解」