女傭兵は友と共に   作:ガスト

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第3話

 

 武装採掘艦「ストライダー」、ルビコン解放戦線の切り札の一つであるそれを単機で破壊したレイヴンはアーキバス主導のルビコン解放戦線の拠点破壊作戦。通称壁越えに参加することになった。

 鼻につく言い方のスネイルのブリーフィングを終えるとイグアスの言葉を思い出す。

 

「……」

 

 ブリーフィングではヴォルタの乗っていたACの残骸は映し出されていたが他は分からない。

 つい数日前、顔を付き合わせた相手が死んでいるなんてざらにあることだが少しだけ意識が向いた。

 

 今日も今日とて飯を食う。

 ちょうどよい高さのツールボックスを見つけて機体を眺めながらご飯を食べるのが日課になっていた。

 ウォルターとも無線越しでの接触であるし、人と接触することはないのだ。

 

 確認した飯を腹に詰め込み、大きく伸びをするとレイヴンは機体調整にかかるのだった。

 

ーー

 

《ルビコン解放戦線の防衛拠点 通称「壁」を落とす。621お前の価値を示してこい》

 

「了解、ハンドラー」

 

 作戦領域に突入するなり、戦場は燃えていた。

 先行していたアーキバスのMT部隊が壁に設置された砲台からの砲撃に曝され、スクラップと化す。

 

 第一の壁の正面ゲートに配置されたガトリング砲台が第一目標だが正面から突入するのは流石に厳しい、機体の機動力を生かして第一の壁に取り付く、これで砲撃に曝されることはない。

 

「…ふぅ」

 

 息を整えて一気に飛び上がると壁上に配置された砲台を潰しながらガトリング砲台の真上に位置取る。

 

「な!敵機上空!」

 

「遅い…」

 

《ガトリング砲台の破壊を確認。街区の制圧は友軍MT部隊が行う。621目標四脚MTの排除に移れ》

 

 プラズマミサイルのマルチロックでガトリングを片付けると見向きもせず第二目標の四脚MTに向かう。

 真っ直ぐ向かいたいところだが上から無数の砲台がこちらを睨み付けている。

 向かって左に高速移動しながら砲台の設置場所に向けてプラズマミサイルをバラ撒くと移動できない砲台は無惨に破壊される。

 

「……」

 

 プラズマミサイルを撒きながら壁に接近し中央にある砲台を破壊すると目の前に四脚MTが現れる。

 

「灰かぶりて!我らあり!」

 

 両腕のガトリングを撃ちながら突撃してくる四脚MTを飛び越えると同時にパルスブレードて上に設置されていたミサイルランチャーを切り裂く。

 

「死ね!独立傭兵!」

 

 対応した四脚MTが急旋回しぶつかってくる、重量差で吹き飛ばされるがあえて抵抗せずに衝撃を逃がしながらショットガンを至近距離でぶちこみ、プラズマミサイルもおまけでプレゼント。

 

 ミサイルを受け止め、駄目になった左腕のガトリングをパージし追撃しようとする四脚MTだったがレイヴンは既に鼻先におり、左後ろ脚の関節がプラズマブレードで切断されてしまう。

 

「なんだ、こいつは!」

 

 すぐに体勢を立て直そうとするがその隙に右後ろ脚の関節をショットガンで破壊され、倒れてしまう。

 

「させるか!」

 

 劣性を見て他のMTが駆けつけてくるが仲良くプラズマミサイルの餌になってしまった。

 

「き、企業の狗がぁぁぁぁ!」

 

 改めてこちらを向くカメラを見て四脚MTは叫びながら残った右腕のガトリングを撃ちまくる。

 突き立てられたプラズマブレードは四脚MTの分厚い装甲をゆっくりと溶かし、パイロットを焼き殺す。

 

《BAWS四脚MTの排除を確認。街区における脅威は大きく減少した。次は隔壁にアクセスしろ、壁内部に侵入する》

 

 壁内部に配置されたMTは脅威ではなく、黙々と片付けていると通信が入る。

 

《聞こえるか、こちらV.Ⅳ ラスティ。速いな、どうやら話に聞くよりできるらしい。こちらもスピードを上げていく》

 

 とうやらブリーフィングで聞いていた援軍らしいがそんなのは関係なくリフトまで足を進め、一旦弾薬の補給を行う。

 壁の最上部の隔壁にアクセスし解放すると目の前に軽量二脚のACが降り立った。

 

《君がレイヴンか…あのハンドラー・ウォルターの小飼らしいな》

 

「……」

 

 建物を突き破り姿を表す目標ジャガーノート。

 

《これも巡り合わせだ。ともに壁越えといこうじゃないか》

 

 こちらに向けて突撃してくるジャガーノートを避ける二機は持ち前の機動力を生かして攻撃に転じる。

 

《重装機動砲台ジャガーノート。正面から攻めるのは得策じゃない。スティールヘイズのスピードで撹乱する君は背後から》

 

「っ!」

 

 ラスティの言葉が終わる前にレイヴンはジャガーノート左舷に備え付けられた二連装砲の砲身をパルスブレードで切断すると比較装甲の薄い背部へショットガンとプラズマミサイルを叩き込む。

 

《見せてくれる、流石はウォルターの猟犬》

 

 ラスティも負けじとジャガーノートに接近しレーザースライサーで右舷二連装砲を破壊する。囮の必要などない。レイヴンを見て二人でジャガーノートを袋叩きにすれば良いだけと言う答えに辿り着いたラスティも苛烈に攻撃を仕掛けていく。

 

「ふふっ…」

 

 初めて会った、声しか知らない間柄だと言うのに二人は完璧と呼んで差し支えないレベルの連携を取っていた。

 ラスティが下がればそれをカバーするようにレイヴンが突っ込み。レイヴンが下がればラスティの放ったミサイルがジャガーノートに降り注ぐ。

 

《レイヴン、司令部のスネイルから情報が入った。敵の増援が迫ってきている。迎撃しなければ共倒れだ。悪いが…ここは君に任せるぞ》

 

「私も行こう…」

 

《なに?》

 

 スネイルから送られてきた解放戦線の移動ルートを確認している一瞬の隙にレイヴンはジャガーノートの動力部にパルスブレードを突き立てていた。

 

「片付いた…」

 

《予想以上だ…。なら、もう一仕事頼もうか。着いてきてくれ》

 

 壁最大の標的であるジャガーノートに比べれば増援部隊など赤子の手を捻るより容易かった。

 

「…」

 

 回収のヘリを待っている間、レイヴンは上着を羽織ながら外で景色を眺めていた。視界に広がるのは煙が上がる壁。

 

「まさかここまでやるとはな。驚いたよ、君のことを過小評価していたようだ」

 

 煙草を吹かしながら現れたラスティを横目に見ていると彼は箱を差し出し煙草を一本、差し出す。

 レイヴンはそれを黙って受けとると口に加え、ラスティの差し出したライターで火をつける。

 

「一人じゃきびしい戦いだった。君がいて助かったよ」

 

「…嘘」

 

「ん?」

 

「…あなた一人でもやれた」

 

「それこそ、買い被り過ぎさ」

 

 ひさびさに吸う煙草はクソ不味かったがこの星で吸えるだけありがたい。と言うより、タバコを嗜んでいたことを今まで忘れていた。

 

「彼らからしてみればコーラル目当てにきた企業など侵略者以外の何者でもない。壁が落ちた今、勢力図はさらにルビコニアンの劣性になるだろうな」

 

「金があればそれで良い…思想など知らない」

 

「それが君が闘う理由か」

 

 静かに頷くレイヴン。

 

「ここで見つけられると良いな。君が闘うにたる理由を」

 

 するとラスティの無線に帰投命令が降ったようで吸いきったタバコをしまうと機体に戻る。

 

《ともに戦った縁だ、ひとつ伝えておこう。「壁越え」でアーキバスは君を捨て駒にするつもりだった。独立傭兵には露払いだけさせ、私たちヴェスパー部隊で制圧させる予定だったのさ》

 

 プライベート通信から流れてくる音声を黙って聞き続けるレイヴン。

 

《だが「壁」は落ちた。上の連中も君の名を覚える気になるだろう。この私と同じようにね。少ないが残りはあげるよ。ささやかな礼だ戦友》

 

 そういうとラスティのスティールヘイズは飛び立ち、迎えのヘリが肉眼で視認できる距離まで来ているのを確認したレイヴンは煙草を捨て、踏みしめるのだった。

 

ーー

 

「……」

 

 壁越え以降、レイヴンは煙草を吸う場面が多く見られるようになった。だが無漂白で淡々と吸い続けている彼女を見ると本当に好きなのかと疑問に思えてくるが頻度から見て好きなのだろう。

 なにもない日は三本、一定の時間に吸うのだからもしかしたら強化前からのルーティン的なものかもしれない。

 

 解放戦線からの依頼で不明機体を叩きのめしたレイヴンは相変わらず…というより休憩中少しゆっくりする傾向が見られ始めた。外界に色々触れたお陰でだいぶ落ち着いたようだ。

 

 次の依頼はウォッチポイントの襲撃、その為にレイヴンは武装を少しだけ変更時、作戦時間に備えるのだった。

 

 

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