もしも女神像に呼ばれてアイルー達がウマ娘世界に現れたなら   作:葉隠 紅葉

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第14話

 そこはウマ娘達が住まう世界とはまた異なる世界。そのアイルーはとあるアイルー村の中で、傷ついた身体のままゆっくりと目を覚ました。

 

 全身が、ひりつくように痛い。砂漠地帯からやってきたそのアイルーは真っ赤な体毛をしていた。帽子と簡素な鎧を身につけただけの彼は、そのベッドから身じろぎをしながらむくりと起き上がる。

 

『こ、ここは…』

 

『あっ、目が覚めたニャ?おーいみんなーこの子気がついたよー』

 

『うぅ…全身が痛いニャ…』

 

『ナルガクルガに襲われたんだよ?命があるだけ良かったよ』

 

 そういってその赤アイルーに近づいてきたのは複数のアイルー達である。どうやら倒れていた彼を介護していたのは彼らのようだ。

 

 ニャゥニャゥとアイルー語で鳴いてくる同族の様子を伺うに、どうやらここはアイルー村らしい。赤アイルーはまだ身体が痺れているのを感じながら、周囲を見渡した。

 

 木の葉や蔓草で編んだベッド、壁にはツタや苔が生えており、柔らかな光が空洞の入り口から差し込んでいる。

 

 そう、ここは密林地帯。うっそうとしたジャングルが生い茂る厳しい環境下である。密林地帯に隠れ住んでいるアイルー村、その村人達に救われたらしい。その赤アイルーは命がある事に安堵し、助けてくれた密林地帯のアイルー村人達に感謝の意を示した。

 

『お前さんこんな辺境に何しにきたにゃ?』

 

『僕はルナ。砂漠地帯出身でここまで旅してきたんだニャ…』

 

『さ、砂漠!あんな恐ろしい所からここまで…っ!?』

 

 介護をしていた、一番若そうなアイルーが驚いて言った。ルナ自身、驚いている。よもや単独でここまで長旅が出来るとは自分でも思わなかった。

 

 アイルー達は基本的に、旅をしない。自身が生まれ育った地帯で生まれ、育ち、そして死んでいく。人間と交流するような個体はともかく、今ここにいるような極めて野生のアイルー達はそのような閉鎖的な社会を形成しているのであった。

 

 なにせ外に出れば恐ろしいモンスター達がいるのだ。ルナの故郷にはティガレックスという暴力の化身のような存在まで居るのだ。命からがら抜け出したと思いきや、今度は見たこともないような黒い化け物に襲われたのだ。

 

 本当に生きてて良かった。彼は身震いしながら、周囲に居たアイルー達から水を分けて貰う。

 

 

『僕が来たのは楽園の存在を教える為ニャ!女神様の神託を一匹でも多くのアイルー達に伝える為に旅をしているんだニャ!』

 

『め、女神?楽園…?』

 

『うん、なんでも女神様がいる世界に移住してこないかっていう話だよ』

 

『ニャニャッ!女神様!?』

 

 動揺するアイルー達。尻尾を逆立てざわざわと騒ぎ始める密林地帯のアイルー村。総勢20名にも満たないような小さな集団は、蜂の巣をつついたような騒ぎになった。

 

 そんな中、ルナは努めて冷静に話をし始める。彼の言葉によると、その楽園では、食べ物が豊富にあり、安全な寝床がある。そして何より恐ろしいモンスター達がいないという話である。

 

 モンスターがいない。この世界の支配者とも呼べるような恐ろしい竜や獣たちが居ない。ただそれだけで、この村のアイルー達にとっては信じがたい話である。つい先日も怒り狂ったナルガクルガの襲撃によって数匹が帰らぬ猫となっただけに、彼らはわらをも掴みたい思いで必死にルナの言葉に聞きいった。

 

 そんな中、一匹のアイルーが言葉を荒げて否定する。そんな美味しい話があるものだろうかと。

 

『嘘だぁ、こいつナルガクルガに吹っ飛ばされて頭おかしくなったんだニャ』

 

『本当だって!僕たちの仲間ももうみんな女神様のところに行ったニャ』

 

『うーん、なんか嘘っぽい…』

 

『おなかいっぱいご飯が食べられる?もうナルガクルガに怯えなくて良いの?』

 

『女神様…アタシも会ってみたいにゃぁ~~』

 

 にゃいにゃいと五月蠅く鳴きあうアイルー達。本当にそんな天国みたいな場所があるのだろうか。有るものはまだ見ぬ楽園に希望を膨らませ、また有るものは怪訝気味に首をかしげる。

 

 ざわざわとざわめきが大きくなる集団。そんな混乱の最中、ある一匹の子供アイルーがルナに問いかけた。

 

『僕もその楽園行きたいにゃぁ~どうやって行けば良いのー?』

 

『うーんとね。女神様曰く、青い光が来たらみんなで飛びこめー!だって』

 

『青い光ってあれの事?わーい一番のりにゃ~』

 

『あっこれ待つんじゃ!』

 

『えっ嘘!あれの事!?私も行くニャ~』

 

 突如現れた青い光。それはなんとも神々しい聖なる光であった。その神々しさに、瞳を奪われる。一匹、また一匹と。次々にかの青い光へと飛び込み始めるアイルー達。

 

 長老アイルーなど、一部の年老いたアイルー達の止める声もむなしく。彼らはお先にとばかりに楽園へと向かっていく。モンスターに怯えなくて住む、そんなアイルー達の新天地へと。

 

 彼らがどこへ向かい、どう暮らすのか。この選択が本当に正しかったのかどうか。それは未来の彼らのみが知る事だろう。一つ確かな事は、ウマ娘とアイルー達は互いに手を取り合い、尊敬し合えるパートナーとなり得るという事実だけであった。

 

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