もしも女神像に呼ばれてアイルー達がウマ娘世界に現れたなら 作:葉隠 紅葉
トレセン学園において大人気の施設ができた。一週間ほど前に出来たばかりではあるが、完成した途端メディアの間で評判となった人気の施設がある。それがここ、アイルーカフェである。
コンセプトとしては猫カフェと同じようなモノであろうか。だが違うのは、対象となるのが猫ではなく猫獣人族アイルーという事である。訪れた客たちは料金を払う事でアイルー達と好きなだけ交流する事が出来るという施設なのだ。
店内に一歩脚を踏み入れる。床は淡いオークの木で造られており、壁にはアイルーたちの可愛らしいイラストや写真が飾られているのだ。まさしく猫カフェならぬアイルーカフェである。
店の外にはウッドデッキで造られたカフェテラスまで備わっているのだ。緑に囲まれたこの空間、訪れた客が開放的な気分でコーヒーや紅茶を楽しむ事ができるという訳だ。
小瓶に入った美しい花々が飾られ、店内には優雅な音楽が流れている。お客は極上のクッションに座りながら、アイルーたちと最高の一時を過ごす事ができるのだ。
人間達はアイルーにお菓子を与えたり、手で触って撫でたりと思い思いの行動を取って癒やされる事が出来る、まさしく最高の癒やしスポットなのである。
人間達からまるで商品のように扱われるというこの行為。アイルー達がこの不当な扱いを気にするかと言えば…実はそうでもなかった。
アイルーとは生来、争いを好まぬ穏やかな種族である。敵意を持たぬのならば近くにいてもいいや、とばかりに彼らは思い思いにくつろいでいた。
というか何もしなくても御飯は貰えるわ毛づくろいをしてくれるわで大助かりであった。人間達はみな優しい、思わず喉もゴロゴロ鳴るというものだ。その店内は実に穏やかな雰囲気が流れていた。
ひなたぼっこをするサバトラ柄のアイルー。女性客の膝でゆったりとくつろぐ子猫のアイルー。眼鏡をかけながら本を読み…されど口は客から差し出される菓子を口に含みながら読書に励む茶トラアイルー。人間とアイルー双方にとってwinwinの関係となる楽園がそこにはあった。
女性というものは総じて可愛いものが好きである。これが非常に受けた。人間社会でテレビと雑誌に取り上げられるあっというまに大人気施設となったのである。ちなみにこの喫茶店学園内ではあるものの一般開放されており、利用料金さえ払えば一般人だって利用できる。
ではウマ娘達はというと…まぁ言うまでもないだろう。彼女達にとっても大変素晴らしい癒やしスポットとなった。日々酷使される肉体、思春期特有のデリケートな精神がアイルーたちと交流を図る事でストレスが軽減されると分かってはトレーナー達も放ってはおかない。彼等は自身の担当ウマ娘達に対しても積極的にこの施設の利用を促した。
ウマ娘にとっても可愛らしいアイルーと好きなだけ戯れられるという絶好のスポットとなったのである。今回はそんな施設に訪れたとあるウマ娘を紹介しよう。
彼女の名はアグネスデジタル。サングラスをかけた彼女はじっと視線を店内へと傾ける。紅茶を呑みながら固唾をのんで見守る先は…楽園の光景であった。
「はわにゃぁ~~ん…」
勿論見ているのはアイルー…
ではなくアイルーを愛でるウマ娘ちゃん達の姿である。可愛らしいアイルーに心動かされる乙女達の姿。それはさながら聖母像のように慈母に満ちた尊い光景である。そんな光景、誰だってみるだろう。ならばアグネスデジタルである彼女が見るのもまた当然の事なのだ。
視線の先ではアイルーに膝枕を行っているウマ娘の姿や、子供アイルーを力いっぱい抱きしめる子供ウマ娘の姿があった。彼女たちは思い思いに慈母心、庇護精神を表現していた。
未来を担うウマ娘ちゃん達の至上の姿。眼福、どころではない。この世にこれ以上可愛く尊いものがあるのだろうか、いやない。思わず反語表現が出てしまうほどには幸福感に満ちた光景であった。
というか可愛すぎやしないだろうか。あの幼女ウマ娘ちゃんなどアイルーを抱きしめながら満面の笑みを浮かべて母親への写真撮影に応えていた。幼い背丈で大きなぬいぐるみを抱きかかえるように、全身でハグを行う。そして手を猫のポーズにしてアイルーと一緒に写真を撮る瞬間など意識がふっとびそうになった。
あぁだがやはり…
彼女はそっと視線を店内の片隅へと傾ける。その視線の先には…とある一組の生徒達がいた。
ハルウララとツインターボ、である。彼女たちは実に楽しそうにアイルーとじゃれていた。猫じゃらしを片手に一匹の蒼アイルーと遊ぶツインターボは弾むような声をあげた。
「あはは、この子ってば可愛いなぁー!よーしよし!」
「こっちのおやつも美味しいよ♪」
「あっターボもおやつ買ってきたんだった。こっちのも食べていいよ♪」
あぁなんという事だろうか。件の蒼色の毛並みをしたアイルーはぺたんと尻もちをつくと二人の間に挟まるように座った。そのまま2人の美少女ウマ娘にあーんをされているのである。少女たちの間ではリラックスソファに座りながらぺろぺろと舌だけ動かしておやつを堪能するアイルーがそこにはいた。
裏山けしからん。だがそれ以上にアイルーに癒やされているウマ娘の美しさがアグネスデジタルの瞳にはあまりに眩しく、そして尊い。
どうやらあげているのは猫用のおやつらしい。ちなみに猫獣人であるアイルー族は皆雑食である。食べてはいけないものという物があまりなく。猫用の食料でも人間用の食事でもガンガン食べて美味しく消化する事が出来るらしい。
そんな様子を羨ましく思ったのか周囲にいた子供アイルーたちが彼女たちの周囲に集いだす。一匹の子猫アイルーなどハルウララの肩に手を載せてそっともたれかかっていた。
「あはは、くすぐったいよぉ」
複数のアイルーに頬をぺろぺろと舐められたり頭をこすりつけられながら嬉しそうに頬をほころばせるハルウララ。子供アイルーに囲まれる彼女達のなんと麗しい事か。最早後光すら差していそうな気配である。
アイルーを優しく抱きしめるツインターボ。彼女はアイルーのおなかに顔を埋めると、そのまま深く深呼吸をした。そんな彼女に対して、ハルウララが首をかしげて問いかけた。
「ターボちゃん、何をやってるの?」
「猫吸い!ネイチャがいっつもアイルーにやってるんだー!」
「へー気持ち良さそう!」
「もふもふってーふわふわ~な感じっ!」
「私もやってみたい!…猫吸い(?)私もやってみてもいいかな?」
アイルーに問いかけ、許可を得る。無事承諾を得られたハルウララは、ツインターボのように、アイルーのうなじにそっと頬を寄せた。
「なんかお日様の匂いがするね~えへへっ」
「ぽかぽか~ネイチャが好きになる訳だなぁ」
二人して、アイルーを抱きしめながら頬を緩ませる。そのまま見つめ合って、満面の笑みを浮かべる二人の天使。その愛らしさ、その可憐さ。まさにプライスレスである。
気が付けばウマホを取り出していた自分、そんな自身の痴態を恥じるアグネスデジタル。ウマ娘ちゃん達にも、ひいてはアイルー達にも悪い行為だろう。彼女は自省できる良識のあるファンなのである。心の中で一眼レフを取り出して思う存分、眼前の光景を心のフィルムへと焼き付ける。
あぁなんて素晴らしい光景なのだろう
彼女は心中で女神に感謝を述べる。累計10GB程脳内写真を取り続けた時に漸く彼女は席を立つ。これ以上の萌えの供給は過剰摂取にあたる。きっと彼女の心臓が持たなくなってしまうだろう。
彼女は心中で両手をすり合わせてウマ娘ちゃんとアイルー達に祈りを捧げながらそっとお財布を取り出した。そのままレジに向かう途中にその光景を見てしまう。見て、しまう。
「ねぇねぇ君!一緒に写真を撮ってもいいかな?」
「にゃぅ~♪」
「あはは、この子もいいってさ」
「それじゃ一緒に取ろう!ターボちゃんも私達の傍に近寄って」
「よし来た!せーの…むぎゅー♪」
『むぎゅ~♪』
「ヒョワッ!!?」
頬を互いに寄せあう二人のウマ娘、ハルウララとツインターボ。彼女たちは今にも抱きつかんばかりにすり寄って同じスマートフォンを眺める。一体何をする気なのだろうか。そんな二人は右手と左手をそれぞれ差し出してアイルーを膝に抱きかかえている。
互いの指と指を絡ませながら、両手で愛おしそうに一匹のアイルーを互いに抱きしめあっているのだ。
まるで夫婦、聖母マリアに相当する慈愛の光景。最早ダイナマイトにも匹敵し得る破壊力である。そうして彼女たちは互いの頬を寄せ合って自撮り写真の撮影を行うのであった。餅のような少女の柔肌と柔肌が、一匹のアイルーの頭上で交わった。
「「ハイ、チーズ!」」
「エンダァアアアアアアア!!??」
「お客様、大丈夫ですか!?」
萌えの過剰摂取に、鼓動がおさまらない。最早冒涜的なまでの可愛らしさであった。間違いなく人生においてベスト5には入るであろう光景に、彼女は気絶しそうになる。心臓を抑えながらそのまま店内の地面に倒れこむアグネスデジタル。
あぁ女神よ。この世にアイルーとウマ娘ちゃん達を産み出してくれてありがとう。この場にはいない女神に祈りを捧げながら彼女はそっと気を失った。
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