「一体なんだってんだぁ?」
急に村に潜入中の他のエージェントの棚谷から連絡が来たと思えば、要件も無しに「すぐに来い!」の一言だぞ?理由くらい教えてくれればいいのに。
「まあ、それほど急ぎの要件なんかな」
そう思いながら人里に付くと、その光景に俺は思わず声に出した。
「本当に何が起こってやがんだ?」
里は一見、なんの変哲も無いようにみえる。しかし散発的に聞こえる悲鳴や、ある家の中から鈍い音が連続で聞こえたり、遠くで倒れている人、明らかに異常だった。それに気づいて、家から出てきた住民もいる。
「おい!ここだ!」
包丁を持った人を取り押さえている人物が見えた。
「棚谷、何が起こってんだこれ!?」
先に里に戻っていたエージェント棚谷だ。
「分からない。昨日から潜入中のエージェントが応答しないから、人里に出て見ればこんな有り様だ」
「まあいい、取り敢えず何とかするぞ」
まずは連絡が取れなくなったエージェントを探さないとな。そう思い、移動しようとした瞬間、
「うぎゃっ」
爆発が起きた。
「ぐっ、うぅ」
爆風を受けて転んじまった。棚谷は……クソッ、瓦礫の下敷きになってやがる。
「クソッ、本当にもう何なんだ」
起き上がって爆発した方を見てみると、人影が見えた。
「おい、お前!大丈夫か?そうだったらさっさと避難しろ!」
人影の隣には子供もいた。泣いている。だが、その人影は俺の言葉を無視し、何か子供に向けて言っている。
「おい、何やってんだ!?」
その人影が後から来たもう1人と話すと、手から炎を出した。悪寒がした為、素早く財団支給の拳銃を取り出すと、人影に向かって構える。
「止めろ!」
ヤバい。そう思い引き金を引く。人影に当たり、倒れた。
「はあ……」
財団職員として、初めて人に向けて引き金を引いた。そう思ったが、ある違和感を覚えた。
「え?」
その人影が起き上がってきた。
「おいおい、知ってるか?私はどれだけグチャグチャになっても、死ねないんだ」
違和感の理由は明白だった。だって、普通の人間は手から炎なんて出しはしない。
「せっかく人が大事な事を教えてやってんのによぉ、それを邪魔するのは大人としてどうかと思うぞ。」
「何言ってんだかわからないな」
「何もかにも、ただ私はこの子に教えてるだけだぜ?まぁいいや、私の邪魔をしたんだ、取り敢えず死ね」
ヤバい、そう思って拳銃を連射した。だが、奴、藤原妹紅は弾が幾つか当たっているのに動じず、炎を出し、攻撃してきた。
「っ___危ねぇ」
弾倉の弾を全て吐き出した後、急いで回避行動をとったが、本当危ねぇ、ギリギリを炎がカスっていった。流石要注意人物リストに載っている、流石不死身の怪物ってワケだ。
「ここからどうすりゃいいか」
炎だからカスっていても火傷はする。現に体の右側が痛え、その上拳銃は避ける時に炎に飲み込まれてドロドロに溶けてやがった。完全に詰んだな。
「まぁ、いつ死ぬかは元々分からなかったしな」
財団のエージェントとしてアノマリーに接する以上、未知の異常によって同僚のエージェントが死んでいくのを見てきた。俺だっていつ死んでもおかしくは無かった。ただ、俺は運の良い奴だっただけだ。まあ、もう運は尽きたがな。でも、最後に、
「でも、最後に言っておく。あんたはそれでいいのか?」
「はっ?何が言いたいのかよく分かんないな」
「そうか……」
腕が俺の方を向き、灼熱の炎が吹きだそうとしてた。
……後は任せた。
「!?」
今までぼうっと見ていたもう1人の人物が藤原妹紅にタックルして姿勢を崩し、攻撃を阻止した。
「貴方、危ない人ですね」
その人物、上白沢慧音が俺にそう言い。藤原妹紅ともみくちゃになるが、上白沢慧音が藤原妹紅を押さえつける。
「けーねぇ、やっぱりアンタは時代遅れだ。今更熱血指導は受けが悪い」
「そう?でもこういう時こそ必要じゃないですか?」
今度は逆に俺が傍観者になっちまった。まあ、傍観してる暇はないがな。まずは、サイトに戻るか……いや、里のセーフハウスに行って、エージェントを探すか。怪我の治療もしたいしな。
「幾ら大人でも無茶は駄目ですよ。さあ、行ってください」
2人が距離を取ると、上白沢慧音がこっちを向いて言ってきた。
「すまない」
そうして、向かい合う2人を後にして、俺はセーフハウスに向かった。