え?俺が幻影旅団の4番ですって!?   作:ハンマーしゃぶしゃぶ

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第一話 旅団結成

俺はクズだ。

俺は自分が嫌な思いをしなければ、無関係の罪なき人々が無惨に死んだって殺されたって悲しくならないタイプのゴミ人間だ。

だからだろうか。これは天罰という事だろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「蜘蛛では―――」

 

今、俺の目の前で幼少期の面影を消して、冷徹な〝団長〟を演じきっているクロロが、かの演説を始めていた。

…のを、俺はクロロ同様曇った目で見つめていた。

 

(どうしてこうなった!?)

 

演説の終わりに、俺達は蜘蛛の入れ墨と、団員番号を体に刻むという事になったのだが…。

ウボォーは、ノブナガと1番を賭けてジャンケンし、動体視力を活かした11連続のアイコの末に、右手ではなく左手をとっさに出すというノブナガの奇策によって1番の座を失った。

 

「ぐ、ぬぬぅ!じゃ、じゃあ11番だ!!ちょうど今も11連続アイコだったし、縁があらぁ!しかも1が二つだから1の倍、豪華だぜっ!!どうだノブナガっ!!俺のが上だぜ!!」

 

とか叫んでいた。

それが初期メンのくせに11番の理由だった。ウボォーさんはそれでいいのだろうか。

あとパクノダもだ。

 

「私、8番って数字好きじゃないのよね。ねぇクロ――団長、これから旅団を大きくしていくって意味でも、別に数字詰めなくてもいいわよね?ウボォーは11番だし。私は9番でお願い」

 

悪魔の化身と考えられるタコの脚が8本だから云々カンヌンとか言ってパクノダは9番をゲットしていた。流星街ってタコ嫌うんだ、へー。確かにここって教会あるし、裏切り者をユダとか、銀貨30枚とかヨークシンで言っていた記憶がある。どうやら、流星街ってキリスト教的思想が蔓延しているようだ。毎日カタヅケンジャーの事しか考えてなかったから知らなかった。

そしてなんでか俺は4番を貰った。

4番とかいうあからさまな死亡フラグ。俺でなくても見逃さないね。

おおブッダよ、この世界にはオモカネだかオモカゲはいないのですか?俺はオモカレさんかヒソカさんに殺されるのは確定だというのですか。

クソッタレ過ぎる。

俺は断固たる意思を示し断ろうとしたのは言うまで無いこと。Noと言える日本人に、俺はなる。なってみせる。

 

「……………その………あの…………俺、4番は………」

 

だが俺の声は小さく、そしてコミュ障であった。現実は無慈悲である。

こんな陰キャ根暗でコミュ障な俺にも、陽キャ集団であるこのイカレタ幼馴染達はときたま優しいが、基本、俺は笑いモンにされていて、それはまるで陽キャに飼われている陰キャ下僕さながら。そもそもこいつら超人集団でもあるのに、なぜ俺の極小ささやきボイスを聞き取れないんだ。俺のコミュ障ボイスはこいつらの超人聴力を持ってしても聞き取れないのか。不思議だね人体。

 

この世界の掃き溜め・流星街で生まれ、精孔を開いたのを切っ掛けとして転生の記憶を思い出した俺は最初は喜んだ。

俺は人気マンガの、人気悪役集団の幼馴染になれるんだと。

しかし数秒後には「俺は馬鹿なのか?」と自分を嘲笑う事になる。

当たり前だった。

なにせこの世界は死亡フラグがそこら中に散りばめられていて、人の命の価値がかなり安い。バーゲンセールのようにポロポロ善悪功罪関係無しに死にまくる。命は投げ捨てるモノで、そして大安売りされるモノな世界。

そしてそんな世界の、更に流星街である。もう終わりだよ俺の命。

 

他人をゴミのように殺す価値観云々については、別にどうでもよかった。

俺はたぶん前世からして自分勝手な奴で、自分と身内が大事で他人の死とか不幸なニュースなんて寧ろ蜜の味で美味しいな、とか考えるクズ野郎だった気がするから、寧ろ流星街の流儀とは性根が合致する。

だからクロロが打ち立てた「流星街を守る為に外の世界に痛みと恐れを刻み込む」という思想に忌避感は無い。

無いが、俺はとにかく自分大事だ。自分が一番可愛い。

死にたくない。嫌な思いをしたくない。苦しい思いをしたくない。

共に幼少期を過ごしたサラサが受けた仕打ちには、クロロ達と同様に報復すべしとの思いは強いし、そのために他者に痛みを強要するのもいい。〝なんで他人に優しさを分けて――〟という名言についても、俺から言わせれば「他人と身内で、命の価値なんて同じなわけない」とも思う。

けれど、そういう派手に攻撃的な行為を続けることで、外の世界からA級賞金首に指定されてしまうし、ヒソカなんていう〝真性の奴〟を引き寄せてしまうしで、俺の命まで危ないのは嫌だった。

幻影旅団の友人達だって、全員同郷の幼馴染であるし(陽キャ集団に笑いものにされてる陰キャポジションの俺だが、それでも酷いイジメは受けていないし暴力は振るわれていない。なので一応友人だとは思っている)、友人としてなら偶にだが、良い奴らばかりだし死んだら寝覚めが悪い。友人の1の命は、他人の命10000に相当する。ちなみに俺の命は、他人の命1兆に相当する。その友人が無辜の人々を躊躇いなく殺す性質でも、その殺意と行動が俺に向かなければ「あらあら困った友達だ」程度なものだった。

だから、このままシーラのように旅団から距離を置いて、自分の身を守ろうかとも思ったが………旅団という友人兼家族達を失うというのは、それは〝俺は嫌な思いをした〟に分類される鬱感情なので全力で回避したいと俺は判断した。

自信過剰で無鉄砲なこいつらを守護る為には、身近に居て行動の制御を試みる方がいい気もする。悩みどころだった。

 

そこまで考えて俺はピンときた。

俺は考えるのが苦手だし馬鹿なクズなので、ここは作中屈指の頭脳明晰キャラ…我らが団長クロロくんに考えてもらえばいいのだと。

俺の最悪最低コミュ力では、いくら一を聞いて十を知るクロロでも理解できないだろう。というよりまず俺の声が聞こえないらしい。だが、幻影旅団には、屈指のチート念能力者パクノダがいる。

パクちゃんに、俺の原作知識という源記憶を覗いてもらうのだ。そしてメモリーボムでクロロとかシャルに伝達する。完璧な作戦だ。

 

「パ、パク、ノダ」

 

「じゃあ蜘蛛のタトゥー、マチにお願いしようかな」

 

「いいよ。エンバーミングの技術があれば、この程度のイラストと番号なんて一秒で終わらしたげる」

 

「ありがと。…痛い?」

 

「ん?最初だけちょっとチクッとするかも。でも気付いたら終わるレベル。アタシの念糸技術ならね」

 

だめだ。まるで気付いてくれない。俺の声がパーフェクトプラン並みに存在感が無いからちくしょう。

視線で気付いてくれる可能性もある。諦めてはいけない。

陰キャ特有の、相手が気付いてくれるまで挙動不審を発動させる。パクノダ気付け。俺の弱点。俺は大きな声で喋りかけれない。

 

「ん?あ…!ほら、マチ…ライブスがあんた見てる!」ヒソヒソ

 

「っ。……だ、だから何さ」

 

「もう…チャンスじゃない!もっとグイグイいかないと実るもんも実らないわよ!?」ヒソヒソ

 

「な、なにが実るってのよっ!アタシは別に―――」

 

「あのねぇ…もうずっと前から皆にバレバレだから。それにクロロとの経験上言わせてもらうと……ああいうタイプはこっちからいってあげないとずっと朴念仁のままよ?」ヒソヒソ

 

「う…」

 

「ライブスってクロロ(タイプ)なの…解ってるわよね?」ヒソヒソ

 

「…で、でも」

 

「ほら、いきなさいっ!」

 

「い、いくったって……何をどうすればいいのさっ」ヒソヒソ

 

「もう!じれったいわね!だから―――」ヒソヒソ

 

女子二人組は耳と口を寄せ合ったりして、秘密のガールズトークに夢中だ。俺の声などそよ風と同じで、彼女らにとっては何も感じないに等しいらしい。俺の視線に気付いてから始めたのは確認済みだ。だから話の内容なんて、およそ推定できる。俺が気持ち悪いとか、そういった内容だろう。ボソボソゴニョゴニョと吃って喋る、根暗な男が、引きつった顔で女を見ていれば、誰だって生理的嫌悪を抱くのは、俺自身分かる。

いきなり行き詰まった俺のパーフェクトプラン。どうすべきか、次の策を考えていると、

 

「あ、あのさ!」

 

急にマチが大声で俺にガンを飛ばしながら喋りかけてきた。

ひたすら恐ろしい。これはまさにヤンキーに睨みつけられる根暗ボーイだ。誰か警察を呼んできてくれ。カツアゲされてしまう。

 

「ア、アタシがライブスの入れ墨もしてやるよ!!」

 

やはりヤンキーの洗礼だ。俺の皮膚を、マチお得意の針技で抉って刺して切ってをするらしい。

最悪だ。俺はマチを視ていたわけじゃない。用があるのはパクノダのほうだ。勘違いから絡まれてしまった。俺の反応を見て後で皆で笑いモンにするのは分かっている。「あの時のライブス見た?」「見た見た。肩がビクッと跳ねてたな(笑)」「あいつってすぐキョドるから見てて笑える(笑)」とか品評会を開催するのだろう。

 

「え…あの…ちが、くて……」ゴミカス小声

 

しかし無惨にも俺の抗議の声はゴミカスだった。センリツさんがいればこんな事にはならないだろう。しかし彼女はここにはいない。ここは流星街のゴミクズの掃き溜めだ。

 

ちなみにライブスとは俺の名前だ。

なんでこんな名前なのかは解らない。この世界で物心ついた時にはそう呼ばれていた。

きっと命が沢山ありますように、みたいな素敵な願いを込められて誰かが名付け親になってくれたに違いない。なんて考えた事もあったが、べつにそんな事はなかった。

俺が精孔を開き、そのショックから原作知識やら前世やらを思い出し、そして死にたくない一心から俺が発現させた能力を見て、俺は自分の名前の由来を確信した。

 

俺の名前の由来…それはたぶんスライムであり、それのアナグラム。ファミリーネームのグロブスターなどは、まんまそれを暗示しているようだった。

余りに強烈な、身勝手で我儘な死にたくない精神が、俺に某スタンドバトル漫画の金字塔に出てくるイエローテンパランスのような能力を発現させたのだった。もう運命が俺の能力を決めていたらしい。

我が念獣スライムのテンちゃん(イエローテンパランス)は、まさにラバーソールのスタンドのような非常に強力な防御力と悪食っぷりを誇る。

そして、映画のブロブのように物質もオーラも食って自分のオーラにし、ぶくぶく太り巨大化する。

念獣なのだが、物質を食った場合はそれを消化しオーラ化するまでは一般人にも見えるようになってしまうが、そこはさすがのイエローテンパランス。なんとそれを逆手に取れた。

ラバーソールもやっていたように、スライムに俺自身を覆い尽くさせて変化し、変装まで出来てしまった。消化をストップさせれば長時間の可視化も可能。もっとも、俺がまだ未熟なせいで変装は不格好でピカソの絵みたいになってしまうが、そこは修行と経験で造形美はぐんぐんレベルアップ中である。

まだまだ肝心の防御力も食事速度(=攻撃速度)も、まったく未熟なのも理解しているので、毎日のようにウボォーの念パンチを一日100本喰らってテンちゃんの防御力を鍛えている。

ウボォーも、「俺のパンチを鍛えるめちゃくちゃ良いサンドバッグじゃねぇか!最高だ!!ありがとよライブス!!!」とか言ってノリノリだった。俺をサンドバッグ扱いしている。未来青狸漫画に出てくるガキ大将が、買ったばかりバットの殴り心地を、メガネ少年に試すが如くだ。なんかすごく惨めになる。陰キャでコミュ障でサンドバッグだ。だが、ウボォーさんは俺にも眩ゆい特大笑顔を向けてくれる、数少ない真の陽キャだ。ウボォーといると陰キャの俺も心休まる。そう思っていたが、最近のサンドバッグ扱いを見るに、どうやら俺に向ける太陽が如き笑顔は、肉食獣が餌を前に見せる勝ち誇った笑顔らしい。

だが、ウボォーギンは旅団の戦力の要だし、ウボォーが生きていれば旅団の未来もまた変わるだろうから、彼の強化にもなって一石二鳥なのは確かだった。

ウボォーが殴ってくる度に、接触したテンちゃんにウボォーの拳をオーラごと食わせれば、テンちゃんの食事速度の修行にも繋がるし、オーラを食われ枯渇し、その度に頑張って復活し、再度立ち上がるウボォーはオーラ総量アップも果たしているようだった。

俺とウボォーの日課の組み手は、まさに双方にとって利益だらけだ。そう信じている。

そこへノブナガも参加して、少年時代の俺達三人はまさに毎日一緒に修行という名の喧嘩に明け暮れる日々。

ノブナガが斬ればスライムが刀を飲み込んでジュウジュウ溶かし食い…ウボォーが殴ればスライムが腕を飲み込んでハミハミする。

 

『ギギぃッ!アギ、ギギ、アギギギッ!!』

 

テンちゃんが、心なしか喜びの声を上げている。刀が美味かったのだろうか。

 

「ぐあああ!ライブスのスライム斬れねぇぇぇぇ!しかも、おい!?俺の刀また食いやがったな!?安かぁねぇんだぞ!?また金か刀、盗まねぇといけねぇじゃねーか!」

 

「ちっくしょーーー!!!俺のビッグバンインパクトは…まだまだ完成に程遠いぜ!!こんなんじゃビッグバンインパクトなんて名乗れねぇ…!…って、うお!ち、力が抜けてく…!しかも熱ぃ!?おいライブス、ちょっ、おい!?食うのやめさせろ!手、溶けてね!?俺の手溶けてねぇか?!!」

 

具体的な姿と能力のイメージが、偉大なる転生前知識書物によって完成されていたお陰か、俺の〝(テンちゃん)〟は本当に凄い防御力と捕食力へとメキメキ成長していってくれたのはありがたかった。メモリ容量設定がどうなっているのか不明だが、この念獣能力詰め込み過ぎなのでは…と思うくらいの強さを発揮しつつある。大した制約も誓約も設定してない筈だが…ホントにこんな化け物を俺が創り出せたのか、我ながら不思議だった。これも偉大なる前世知識書物のお陰だろう。

まだ若く未熟とはいえ、ウボォーの超破壊拳の威力と衝撃を軟体ボディで散らし、吸収し、オーラを貪って、そして拳に纏うオーラを食い尽くせばお次は実際の肉体を貪りだす。

可哀想なウボォーとノブナガ……拳をスライムにジュワジュワ食われ、刀を何本もダメにされ………時には丸ごと捕食されて全身スライムに甘噛されて服がボロ布に………日常がスライムぬるぬるプレイだったはず…。ハッキリ言って気持ち悪かったが、これが俺の強化に繋がり、それはつまり俺の命の安全に繋がる。そう思えば、漢達のスライムローションプレイを眺めるなど、俺は我慢できる。

だが俺は、本当はマチと修行して、マチの服とかを、バスタードよろしく、テンちゃんでジュウジュウ溶かしてラッキースケベとかしたかったと思うのは、それはもう男のサガだろう。普段は圧倒的に格上の美少女ヤンキーを、スライムプレイで……などと想像する俺は、根暗故に性癖も相応に歪んでいるらしい。そんな自分が愛しい。

 

とまぁこんな日々を過ごす、むさ苦しい雄だらけの日常だった。たまにクロロと一緒に、仕事関係で活動する事もあったが、俺はクロロに引っ張り出されない限り、基本的にホームでゲーム三昧か、それともこの喧嘩修行かだ。

時折、フランクリン、フェイタンとかフィンクスまで、俺を殴る大会に参加してきて怖いしもっとむさ苦しかった。女性陣は誰一人参加してくれなかった。

しかし、ウボォーとノブナガ…フランクリンは別に大丈夫になってきたが、フェイタンとフィンクスはやはり苦手だ。やはり普通に怖い。この人達こそ真のヤンキー魂を持っている。話が合わない。そもそも、誰とも話などしないが。

だがフランクリンも油断は出来ない。フランクリンさんは、普段は知的で優しいのだが、念弾乱射してくる時は普通に世紀末モヒカン系になるから、やはり恐怖感が強い。

全力でスライムに籠もれば、念弾も、フィンクスのぐるぐるパンチも10回転くらいまでなら効かないから痛くはないが、やはり怖いものは怖い。

 

「リッパーサイクロトロン10回でも効かねーのかよ!すげぇな!でもムカつくなァ!!おいライブス…15回でやらせろ!」

 

「ライブス…ちょとスライムで私を食うね。ライジングサンの熱でも、お前のスライム平気か試す」

 

「ちょっと待てよお前ら。俺のダブルマシンガンを1000発撃ち込ませてくれる約束が先だ」

 

こんな感じで彼らはいつも物騒だ。ウボォーの方が俺に気を使って「今日はここまでだな」ってしてくれるから好きだった。こいつらは、いつまでも終わらないから苦手だ。

 

 

だいぶ話が逸れた。話を戻そう。

 

 

 

 

 

 

 

過去回想から戻ってみれば、気付けば俺はマチに上半身を剥かれて、蜘蛛エンブレムと4番という縁起でもない番号を刻まれていた。

仕事が早い。

フザケルナヨ。マチ、コノヤロー。許さな―――

 

「ほ、ほら!いい出来だ!か、感謝しなよ!!」

 

なんで急に大きな声出すのか。急な大声に、俺の動きはバインドされ、思考は小パニックで真っ白だ。やはりこの手の人種は苦手だ。頼むから大きな声で威嚇しないで欲しい。睨まないで欲しい。なぜガンを飛ばすのか。俺がちょっとエッチな願望を抱いていたのを見抜いたのだろうか。そうかもしれない。女はスケベな視線に敏感だというし。

しかし、睨んできても、かわいいのは確かだ。マチは、美人ヤンキーだった。前世で黒ギャルAVで抜いていた気がする俺は(なんでこんな記憶ばかり残っているのか)綺麗な白肌ヤンキー美少女には屈しない。

 

マチは睨んでくるし、なんだかパクノダとウボォーギンとノブナガとフランクリンはニヤニヤしながらこっちを見てくる。やはり、マチの大声でビクついている俺を笑いものにしている。やはり俺が陰キャだからか、いつもナチュラルに馬鹿にされているのを感じていた。

それにやはりパクノダは俺に見向きもしてくれない。どうすれば、俺の意志を外部発信できるのか。難問だ。流星街育ちで、かつバカな俺は文字だって全然書けないのだ。

パクノダ、俺を触ってくれ。たっぷりねっとり触ってくれ。お触り希望だ。さわさわしてぇーあたしをさわさわしてぇー記憶を探ってぇーという熱い思いを込めた俺の熱視線は、しかしパクノダは一笑に付して、ニヤニヤと眺めるだけだった。

団長と一緒に未来知識で無双して欲しいのに、俺は原作知識持て余してどうしようもないというのに。あんたらみたいに頭良くないというのに。未だに継承戦編の奴らの能力とか読解できていないというのに。

幼馴染の男達にすら、ろくに喋りかけれない俺が、パクに…女の子に気安く触ってもらうなんて、無理よりの無理だ。

俺の未来は暗い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライブス=グロブスターという男は寡黙で、そして表情を変えない男だった。

クロロは旅団の団長としての演技を完璧にこなす時…ライブスの姿を思い描く。

どのような時も動じず、盗みを働く時も、旅団の障害を取り除き…殺人を犯す時も、ライブスは眉一つ動かさなかった。その、感情を完全に消した不変の冷徹な表情。それこそが団長クロロの求めるものだ。

 

(…すごいな。ウボォーさんとライブス……あれだけの全力のオーラをぶつけあってもお互い平然としている…)

 

クロロは旅団で最強の攻撃力を誇るウボォーと、旅団で最強の防御力を誇るライブスの念のぶつかりあいに魅入っている事が多い。

二人の圧倒的な念のポテンシャルには、これまで何度かあった死線に出くわす度に助けられた。

どんな敵も砕くウボォーギンの矛。

どんな牙からも旅団の皆を守ってくれるライブスの盾。

 

(二人がいれば…蜘蛛はいつまでも生き続ける)

 

そう確信させてくれる二つの柱だった。

 

旅団は悪名を高める為に、とある大物同業者(盗賊団)を襲った事がある。

その一党には強力な念能力者もいくらか存在しており戦争(ケンカ)は熾烈を極め、まだ未熟な面もある若い蜘蛛は危うい状況に何度か追い込まれさえした。

しかし、ライブスのイエローテンパランスが、攻撃に晒された旅団メンバー全員を取り込んで敵の攻撃を跳ね除けて、そして銀行の建物そのものを徐々に喰らってオーラを蓄えた念獣スライムは、体内に取り込んでいた旅団メンバー全員にそのオーラを還元した。

速度に劣る為に、その時の熟練の敵に食いつき攻撃する事は出来なかったが、そうして仲間を守り、消耗したオーラすら補給してくれて、誰一人、頭も脚も欠けること無く見事にその難敵を倒したのだ。

 

(ライブスのイエローテンパランス……気体を含むあらゆる物理的、オーラ的干渉を散らし、無効化し、喰らい、無害化して蓄え…状況に応じて体内の生命へ無害化したモノを提供できる。素早い動きこそ苦手だが、その防御の突破は至難…!呪念さえも、オーラそのものを吸収し分解するという性質の前には削がれていく……スライムの体積を通り過ぎて体内にいるライブスへと呪いを届けるには、莫大なオーラが必要だ。ライブスに呪いが届く頃には、呪念は霧散するか微々たるモノへと削ぎ落とされているだろう。オマケに、念獣スライムを変形させての変装、そしてオーラの蓄電池としても使えるという利便性。…素晴らしい。よくぞこれだけ…複合能力を強力にまとめた念獣を創り上げた。手放しに称賛するよ、ライブス)

 

付き合いが長いからこそ解る。ライブスは非常に寡黙で無表情な男だが、その反面ひどく愛情深い。

クロロと良く似た黒髪を持つその素顔は、一旦仕事が終われば、クロロ自身が昔に失った優しさと甘さを滲ませる柔和な笑みを見せた。

ライブスの旅団メンバーへの愛…旅団を、仲間を助け守りたいという強い想いが具現化した能力。

クロロはそう予想する。

 

(その反面…敵への冷徹さが、無慈悲に全てを溶かし喰らうところに現れている。まさに…ライブスをよく現した〝発〟だ)

 

その姿勢と想いはクロロに強い共感を抱かせていた。

しかし、団長としては幻影旅団(蜘蛛)のデザインにおいては仲間への友情と愛情は足枷ですらある。

蜘蛛の団長の理想…それは、たとえどれほど脚がもげようが頭が潰れようが、決して死ぬことなく蠢き続ける不死の蜘蛛。

世界に恐れを振りまき続け、蜘蛛の巣に手を出せば手足を齧られるだけでは済まないと…臓腑の奥まで貪られると〝流星街の外の人間〟の魂に染み込ませる。

 

(これからだ。まだまだ俺達は――)

 

蜘蛛の糸は、まだ紡ぎ始められたばかりだった。

 

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