え?俺が幻影旅団の4番ですって!?   作:ハンマーしゃぶしゃぶ

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第二話 死亡フラグ乱立

クロロに無理矢理連れ出され、レア能力狩りしたり、お宝を奪ったり、そしてウボォー達と喧嘩修行したり、新作ゲームを漁ったりの毎日。

そうやって人殺しにもようやく慣れてきて、「うーん、俺も少しは苛められっ子から苛めっ子側にクラスチェンジできたかな?」なんて考えていた、ある日、旅団だよ全員集合!を言い渡されて、俺達は大仕事をする事になった。

だが、今回は、その感覚麻痺がちょっといけなかったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うわぁなんだか大変なことになっちゃったぞ。

うーん…緋の眼と緋の眼が被ってしまったなぁ。

 

俺が抱いた感想はそのようなものだった。

緋の眼だ。

鮮やかな紅い眼球が、あちらにもこちらにも在る。

とうとうと言うべきか、思ったよりもあっさりと、今日という日が来てしまった。

いきなりのクライマックス感があるが、これは旅団自らが撒いた自滅への道筋の序曲に過ぎない。

結局、俺という男は、「団員ナンバー4」のまま、自滅街道を踏み出した。

およそ最悪だ。

 

これをやってしまったって事は、もう引き返せないという事だ。死ぬまでクラピカに狙われるだろう。いや、ひょっとしたら、万が一、ごめんなさいすれば許してくれるだろうか。

悪いことをしても、ちゃんと謝れば許してくれると、前世の俺の記憶は教えてくれている。小学校のババア先生は、そうやって俺を虐めてきたクソ野郎を許すことを強要してきたのだ。間違いない。

などというのは半分冗談だ。明らかに交渉不可。敵対確実は確定的に明らか。

クロロのおバカ…!なんで襲った…!よりにもよってクルタ族…!

俺の転生前記憶では、よくファン達が色々考察していたが…当事者の一人になっても結局の所、理由は「わからない」というのが実情だった。というのも、クロロは基本的に団長モードの時は自分ひとりで考えて結論を出し、そして実行を命じる。そして蜘蛛では、頭からの命令は絶対だった。団長以外の俺達はあくまで脚であり、頭の意思に従うだけの歯車でなければならない。

そして俺は、多分元来の性格が、思考停止のままに言われたことをやるだけのイエスマン気質なのだろう。〝脚〟とイエスマンの相性はバツグンだったというわけだ。

 

つまり…俺は……そう、俺は……詰んでいたのだ、初めから…!

俺とて当初はクルタ襲撃を何とかするつもりではいた。

しかしよくよく考えたら、史上最悪のコミュ障力を持つ俺などでは、最初から止めるなんて不可能だったのだ。

クロロに「仕事だ」と言われて、シャルナークの運転する車に揺られる事数時間。いや十数時間か。とにかく長時間だ。途中で何回か乗り換えもしたかもしれないし、飛行機も使ったかもしれないが、俺は爆睡してたからよくわからなかった。寝てた俺の事はウボォーが担いでくれたらしい。そして、鬱蒼とした森に連れてかれて、あとはもう流されるがままだ。森に潜む、オリエンタルな衣装に身を包んだ奴らを無力化するよう言われた。

戦い自体はいつもと同じだ。戦闘をスムーズに、滞り無く実行するために、陰キャな俺が確立した手法とは、テンションを上げ、勢い任せになんとかするというもの。今回もそうした。

問題は、俺がそいつらの正体に気づいたのが戦闘後だということ。冷静な思考がいつも以上にダメダメだったのは、まだ殺しに慣れきっていないのを何とかするため、無理矢理テンション上げたのもあるし、起きたての寝坊助状態で戦っていたせいでもある。つまりは、俺を睡魔に襲わせるような運転をしたシャルナークのせいだろう。俺は悪くないと思う。悪くないんじゃないかな。あぁ、悪くない。そんな気がしてきた。

 

だがそこに、さらなる問題が発生してしまった。無力化した後の戦後()()だ。ひらたく言えば〝拷問〟ということになる。

こいつらのお宝…〝緋の眼〟を手に入れるにはどうしても必要な作業だったのは言うまでもない。超有名だ。

フェイタンなどは嬉々としてやっていたし、旅団メンバーも身内以外の事は同じ人間とすら見ていない節があって、拷問も淡々と行っていたのだが、さすがにクズを自覚する俺でも少し拷問は遠慮したい所だった。

と思っていたら、ウボォーやマチなどは「倒した後の嬲りにはキョーミねー」などと言いだし、集落の端でトランプを始めたので俺もそちらに加わらせてもらった。

しかし彼らが効率よく解体されていく様は、どうしても視界の端に映るし、悲鳴はどうしたって聞こえてくる。困ったものだ。延々と迫真のグロ映画見させられているようで、良い気分では無い。

我ながら、人が解体されていく現場に居合わせながら、抱く感想がソレというのもどうかと思うが、こういうグロ耐性をゲットできてしまったのも、全部、幻影旅団とかいう幼馴染達のせいです。おまわりさん、こいつらです。

 

まぁでも俺も目出度くクズの一員なわけだ。元々うっすら自覚はあったが、それでも俺がクズだからといって、いつかは相応の天罰とか報いを受けなきゃいけないなどという義務は無い。

俺はクズでも幸福になってみせる。

殺人を犯さなきゃいけないサガを背負っても、安心に生きてみせるぞ…という気概を持つのは大事だと、俺は前世の愛読書から学んでいるのだ。

報いも天罰も絶対受けたくない。俺は幸福を掴んでみせるぞ。

 

だが前途多難で困難な道のりなのは確かだ。

作中でも屈指の強キャラ・クラピカにリベンジされるの確定となってしまったが、これはもうなんとしてもクラピカを返り討ちにしなくてならない。

念入りにウボォーを強化していく…これしかないだろう。

ウボォーには可能性が無限大だ。

キメラアント編にも通用する可能性を秘めた肉体を持つとは、ネット上に無数にいる賢者達のお墨付き。

伸ばしまくって、そして凝を怠らない油断無きバーサーカーにウボォーを育てれば…物語後半まで余裕で通じる真の強者になるかもしれない。

俺が矢面に立つのは嫌だ。危険過ぎる。だって、クラピカは頭いいし天才だし緋の眼だしで、本当に一般旅団員にとっては最悪なのだ。

だから、俺が安眠できる夜を守る為にも、ウボォーが矢面に立つ。

なにせ特攻はウボォーの役割だって、団長モードのクロロも言っていた。

だからウボォーがまずクラピカに挑む。あぁ何も間違っていない。クロロの指示通りだ。

 

 

 

 

というわけで…さっそく一日でも多く、ウボォー強化月間を確保しようと思った俺は直ぐに動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ?どうした、ライブス。なんかよーか?」

 

クルタ族襲撃から数週間後、主要メンバーは本拠地(ホーム)でいつものようにまったりしていたが、俺はケンカ(修行)開始の合図として闘気を漲らせたオーラを飛ばしてウボォーを挑発する。

いつもならばウボォーからやってくる行為だ。

 

「おお?!ライブスから俺をケンカに誘うたぁ…!~~~~~っしゃあああッ!!!嬉しいじゃねぇの!!愛してるぜ~~っライブス!!」

 

だが今回は俺からの誘いという事で、どうやらテンションが上がったらしいウボォーは、バキュームが如き強化系キスを俺のほっぺに繰り出してきた。俺の頬の肉が削げかけた。頬が物理的に痩ける前にやめて欲しいものだ。

 

「へぇ?明日は雪かな?ライブスからとはね」

 

シャルナークが実にのんびりと、他人事らしさ爆発な感じで言っている。

おい他人事じゃないんだぞ…!ウボォーを生き延びさせられるかどうかで、旅団の運命とか本気で変わるんだからな…。多分だが。

まったく参謀ポジションなんだから、数年後に襲ってくるリベンジャーの脅威ぐらい予測して欲しいものである。

 

「ライブスもちったぁらしくなってきたじゃねえか。いっつも受け身だからな。うし…じゃあ順番決めるか」

 

ノブナガも実に嬉しそうにしてるし、何故かあみだくじをフィンクス達と開始しているが、お前らに割く時間ない。

俺はウボォー強化計画に忙しいんだ。

だからそこで列を作るのやめてもらっていいですか?

当然、俺が抗議した所で、その声は彼らの耳には届かないだろうし(物理的に)、最近では俺も抗議の声をあげることすら諦めている。

 

 

 

 

こうして始まったウボォー強化計画だが、テンションアゲアゲで、いつもより超破壊拳の威力マシマシなウボォーとの修行は、俺に身の危険を感じさせ、テンパランスの防御力急上昇にも繋がった。

だが少しは手加減して欲しい。イエローテンパランスのずば抜けた防御力がなければ、今頃俺は本気で死んでいただろう。

だが、ウボォーも、元々の強さに磨きがかかっているのは、俺程度でも見て取れる。

最近の仕事で、ウボォーが、超破壊拳を地面に繰り出し敵を一掃した事があるが、その時のクレーターが、薄れつつある俺の記憶の中の、陰獣とのヨークシンバトルで見たクレーターより明らかに大きいのだ。

順調に仕上がってきていると言って良いだろう。

ウボォーのブリーダーとして、俺も鼻が高い。

この調子でいけば、鎖野郎を返り討ちにする日も近いだろう。

だがしかし手は抜けない。

ウボォーは、圧倒的なフィジカルを有するがゆえに、舐めプをする癖があるからだ。

もっとも、その癖は旅団全員に共通する特徴だが、特にウボォーは酷い。

ハンデだ!と言わんばかりに、あからさまに油断バリバリで敵と戦うなんて数知れずで、その度に墓穴掘ってノブナガに尻拭いをさせている。

 

「ぬわ!?こ、この…!ライブス、ずっこいぞ!!テンパランスを〝隠〟で隠して、足元に這わせてやがったな!?」

 

だからこうして、偶にはサンドバッグ役を止めて攻撃して、ウボォーに対応力を付けたい…という俺の思惑の元、彼の自意識を変えようとしているわけだ。

テンパランスは何でも食うので、こうやってターゲットに一部分でも接触できれば、後はターゲットのオーラを吸って食って自分の肉に換えてブクブクと肥えていく。際限はない。俺が停止を命令しない限り、イエローテンパランスはどこまでも何でも食らって肥大化する。

俺のテンパランスの攻撃の弱点は、移動速度も捕食速度もどちらも遅いという事だが、隠で対象に接触させれば、その時点で相手は詰みと言って差し支えない。

ヒソカのバンジーガムのように、よく伸びよく縮み、どこにでも張り付き、纏わりつく生きた粘液。

バンジーガム以上に、単純な怪力では対処が面倒だと自負している。

テンパランスの捕食が一度始まれば、それから逃れるには、粘液が食い込んできた皮膚と肉を全部削ぎ落とすか、己のオーラを爆発的に放出して、弾き飛ばすしかない。…と思っているのだが、実際は俺が思いつかないだけで、きっと攻略方法なんていっぱいあるんだろう。

…最近、この念獣はイエローテンパランスというより、ノトーリアス・B・I・Gなのでは?と思わないでもないが…ま、念はフィーリングよ、フィーリング。

 

「…!やってやるぜ!!!いくぜぇライブス!テメーのオーラと、俺のオーラ!!どちらが上か…勝負!!!」

 

獰猛に笑ったウボォーが、自分のオーラを隅々から集めて、そして一気に体外へと放出する。ウボォーが選択した対処方は、後者だったようで安心した。まさか、練習試合のような喧嘩修行で、ウボォーの皮膚と肉をごりごり削るわけにもいかない。俺達、旅団には治療系の能力者はいないから、欠損はそのまま後遺症として……、あっ、マチがいるじゃないか。

マチの念糸縫合の腕前なら、テンパランスに食いちぎった肉片を「ペッ」と吐き出させれば、きっと元通りに治療できるだろう。

ようし、いいぞウボォー!どんどん無茶な方法で、テンパランスの捕食を破ってみせてくれ!俺も、どうやって対処されるのか勉強になる。

 

「うおおおおお!!!」

 

雄叫びと同時に、ウボォーがの肉体からオーラが吹き出た。まるで火山のように猛々しい。

ウボォーに纏わりつイエローテンパランスが、ぶわりと剥がれ飛び散っていくが、残念ながら全てではない。

ここが俺のテンちゃんの素晴らしい所だと自画自賛してしまおうか。

一片でも対象に引っ付いていれば、そこからオーラ食いは継続し、欠片は太りだして立派なスライムへと成長してしまう。

ただでさえオーラ放出で疲労したウボォーから、みるみるうちに力が抜けていって、擬似的な強制的な絶の完成だ。強制絶よりもっと酷い。ちょっとだけウボォーの筋肉が萎んだように見える程、肉体もあからさまに脆く疲弊してしまうのが、オーラ枯渇の怖い所だ。メルエムvsネテロの結末を思い出してみれば、ネテロの変わり果てた姿にショックを受けた人は多いことだろうと思う。あれぐらい、オーラ枯渇とは恐ろしい状態だ。

でっぷり太ったテンパランスと、そしてそこら中に飛び散った子テンパランス(スライムの破片)を呼び戻し、俺の元に呼び寄せて、そして食った栄養源(オーラ)を俺へと吐き出させると、ウボォーの莫大なオーラが、俺のオーラとして還元される。

ちなみに、この時に破片を呼び戻すのはコツがいる。

某寄生獣漫画のパラサイトのように、事前に「本体へと戻れ」と念じておくことだ。

でないと、破片になったスライム念獣は、そのまま枯渇して枯死するか、制御を離れて全てを食って無限に肥え太ろうとして暴走するかのどちらかだ。

暴走と言っても、俺という本体に接触すれば自然と俺の制御下に戻って、食い貯めて変換したオーラを俺自身に還元できるので、全く問題はない。ちょっとばかし、周囲の被害がとんでもない事になるだけだ。

 

「ち、ちくしょー…!俺の…負けか、よ……!くっそおおお!」

 

オーラを失い、ちょっと痩せたウボォーが倒れ込んだままに、ゼェーゼェーと喘息のような荒い呼吸をしながら、力なく叫んでいた。オーラを失ってぶっ倒れるのは、まさに精根尽き果てた状態なのだが、このウボォー、やけに元気に見える。やはりウボォー……ナチュラルに怪物…!

そんなウボォーに、俺は彼から奪い取ったオーラでまたスライム念獣を作って、そして倒れたウボォーの口に飛び込ませた。

 

「うぼぉ!!?」

 

ウボォーがうぼぉって言ってて少し面白い。

 

「ゲホッゲホッ!!お、おいライブス!それ、やる前に言ってくれって言ってるだろが!!!」

 

体内に飛び込ませたスライム念獣に、オーラを吐き出させて、俺が命じた対象へと還元させる。すなわち、ウボォーへとオーラを譲渡する。そんな芸当まで出来る。今回で二度目だ。

凄まじいチートな念獣だと思うが、これぐらい持ってても、果たしてこの世界で生き延びれるのかは不確定なのが恐ろしい。

特に、俺は旅団No4という事実が未だに怖い。

鎖野郎だけでなく、そろそろヒソカも警戒しなくてはならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思った俺は、ある日からスライム念獣のテンちゃんを常に身に纏う事にした。

俺はイエローテンパランスに引き籠もり、絶対に本体を露出させない。常に物質化したテンちゃんに包まれて生活するのだ。

これで、いつトランプ野郎に奇襲されても対処できる。恐らくだが。

 

「…?ねぇ、団長、あいつ誰?」

 

「ライブスだ」

 

「は?」

 

マチが、俺を見て困惑している。

何故なら今の俺は、太った巨漢中年女性の姿をしているからだ。

イメージとしては、トータル・リコール(旧版)だろうか。

あんな感じに擬態した中年女性姿のイエローテンパランスの中に、ハンサム顔の本体である俺は潜んでいるというわけだった。

実際はハンサム顔ではないが、そう思い込む自由の権利ぐらいは俺にもある。

 

「あれが…ライブス?嘘でしょ」

 

「本当だ。おい、ライブス。見せてやってくれ」

 

「…」

 

中年女性の顔に亀裂が入り、上から段々と擬態顔を剥離させていけば、俺の素顔が空気に触れた。久々にスライムの鎧を解除すると何だか不安になってしまう。

 

「うわ。本当にライブスだ。…なんでテンちゃんでずっと化けてるのさ」

 

「用心のためじゃないか?最近は、俺達も名が売れてきたからな。ライブスの警戒は尤もだ。…お前達も、油断はするなよ」

 

「って言われてもよォ。どうせ俺達とまともに戦える連中も、プロハンターの中でも殆んどいねぇしな」

 

そう言ったのはフィンクスだ。

確かにそうだ。旅団は、既に世界でも上澄みの実力者で、念能力全体から見てもかなり上位に食い込んでいるだろう。

しかし、その余裕綽々なセリフは余りにも危険だ。俺はテンちゃんに包まれながら内心で怯えていた。

旅団の戦闘員ともあろう者が、そんな舐めプな態度ではいかん。そんなでは、この俺を守れない。もっとプロ意識を持った達人になってくれ、フィンクス。そんなだから、オーラは強くても、色々な技術や心構えが拙いチンピラ止まりだって笑われてしまうんだぞ。

確かに大半のプロハンは、戦闘力という意味では大した事のない奴らだが、それは彼らがハンターだからだ。

彼らの人生目的は、殆んどが探索とか探求で、戦闘はそれらの過程で発生する雑務の一つでしかない。

だから、命のやり取りを主目的にした念能力を保持するプロハンターは少ない。

とはいえ、大きな目的を持ったプロハンターは、その雑務的な戦闘を、超一級でこなせる人達が殆んどだ。

超有名所では、やはりモラウさんだろう。

彼は、武闘派じゃないと言いつつ、化け物であるキメラアント達を ――それも幹部の超化け物を―― 、絶不調の身で足止めしたり殺したりと大活躍をしたプロ中のプロだ。

そういう、身も心もプロ意識の塊のような者が、世界の上澄み中の上澄みの中にはごろごろしている。

そして、旅団がこのまま、世界でも屈指の大悪人集団というロールプレイを実践し続けるなら、いつかはそういうプロ中のプロが討伐にやってくるかもしれない。

 

俺は、旅団の意識改革が必要だと判断した。

旅団を、俺を絶対安全に守ってくれる、超人集団に変えなくてはならない。

俺以外の奴らにもっとプロ意識を持って頂いて、意識高い系旅団になってもらわねば。

それには修行だ。

ひたすら修行あるのみ。

だが、修行といっても、やることなんて所詮前までと変わらないのが実情だ。

心源流の先生なんて呼べる伝手も無い俺にとっては、漫画知識が一番の先生という状況は変わらない。

流を意識しながら、ひたすら実戦形式で、旅団メンバーと戦いまくる。

模擬戦では、隠を積極的に使って、テンパランスを足元から土中に放ち、地中を食わせ掘り進めながら相手の足元や背後からスライムの奇襲だとか、屋内での模擬戦では、壁・天井・床のコンクリ内を、やはりテンパランスに食わせ掘り進めて、まるで花京院の法皇の結界のようにして「くらえウボォー、半径20テンパランススプラッシュを!」状態にして、周り中からスライム弾丸を撃ち出したりしてやった。

俺の必殺技を惜しげなく旅団の奴らには披露してやると、やがてそれぞれが俺の能力を攻略しようと必死に頭を使いだして、だんだん俺の戦績から勝ち星が消えていき引き分けだらけになっていった。悲しい。

当初はあんまり特訓喧嘩に乗り気じゃなかった奴らも、ちらほら参加し始めていて、パクノダとマチなんかも強くなった感がある。

マチなんか、必殺仕事人スキルに加えて、糸使い執事スキルを修めてしまった。俺のテンパランスに「超高速の斬撃はどうだろうか」と思ったのが切っ掛けだったとかなんとか。

指クイッとやって、岩も家屋も車も念糸で両断してみせた。なんという強キャラの風格。

 

こんな感じで強くなっていく頭の回転も速いフィジカル最強陽キャ軍団に、スライムを食らいつかせる一辺倒の戦い方しかしないもともと頭悪いただのオタクコミュ障野郎の俺では有効打が無くなっていっていった。

もっとも、これらの話は全部模擬戦での話である。

俺のテンちゃんには、もう一つ大技があるのだが、それは団長から「遊びで使うような技ではない」として禁じられてしまっている。

あのクロロが禁じるなんて、どんな大技なんだ!と唾をゴクリと飲み込んでしまいそうになる前フリだが、実際は実に単純でバカみたいに力任せの技なので安心して欲しい。

簡単に説明すると、何でも食って自分のオーラにして太る性質のテンパランスに、辺り一面無差別にボリボリ食わせて超デカスライムに成長させて、スライムの大津波を起こして周辺一帯を飲み潰す面制圧攻撃を行うというだけである。

これをやると、地形が変わるし、目立つし、太りすぎたテンパランスのオーラの消費に苦労するしで、後始末が大変なので禁止されている…という理屈だ。

その名も〝スライムぬるぬる地獄〟…。だが、マチにくっそ否定された挙げ句に、勝手に改名されたので〝タイダルウェイブ〟…。普通すぎてつまんない。

 

バトル遊び漬けの日々だったが、お陰で成果はあった。

テンパランスに纏わりつかれたのを、オーラの爆発的放出で振りほどく…という事を結構な頻度でやっていた仲間達は、そのオーラ内包量を急成長させたのだ。

特にウボォーはそれが目覚ましく、大変素晴らしい。

肉体とオーラでゴリ押す脳筋ゴリラ戦士……それでこそのウボォーだ。

ウボォーが最強であり続ければ、きっと仲間想いのウボォーがいつだって身を挺して肉壁になってくれるに違いない。

ウボォーという最強のヘイト稼ぎメイン壁に、そして俺のテンパランススライムアーマー。

独り歩きをしなければ、かなり死亡率は減るだろうという確信がようやく抱けた。これで、ようやく俺も少しは安心して夜を眠れそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな事を思っていた、少し前の俺を叱りつけてやりたい。

俺に安眠の夜は来ないのかもしれない。

なぜ、俺の目の前には頬に水滴マークとお星さまマークをばっちしメイクしたマッドピエロがいるのか。

 

「君が旅団の4番か♠…ふふ、いいね♥」

 

「…」

 

死にたい。

いや、死にたくない。

 

「ヒソカ。蜘蛛のルールはさっき言った通りだ。蜘蛛に入りたいのなら…ライブスを倒してみせるんだな」

 

立会人のクロロが無慈悲な事を言っている。

これって、つまりはアレだ。俺はもう要らなくて、新しい4番が欲しいって宣言してるのと同じなのだ。

なにせ、クロロが制定したルールの中に、『蜘蛛に入るには、スカウトか、或いは在籍者の番号を奪う』というものがあるからだ。

クロロが俺とヒソカを戦わせるというのは、俺は死んでもいいって事なわけである。

クロロから「ライブス、お前もう船降りろ」と言われてしまった俺だが、こんな所で死ぬわけにはいかない。というよりも、苦痛なく幸せに生涯を終えるつもりだから、いつだって死ぬわけにはいかない。

 

あぁ、これも全部オモカジ…?だったかオモカゲ?だかの奴のせいだ。

あいつがいれば、ヒソカと戦うのは奴の運命だったはずだ。多分。

幼馴染だったクロロに死刑宣告され、みんな大好きなマッドピエロのヒソカさんと、今まさに命とナンバー4を賭けた勝負に臨まされる。

こんな理不尽を俺に押し付けたオロシガネさんめ…絶対許さんぞ。

 

「…ん~…ダメダメ♠これから僕とバトルをしよう(踊ろう)っていうのに、他の奴の事なんか考えちゃ…イケないよ?」

 

狐のように笑ったピエロが、トランプ手裏剣を投げてくる。のを、俺は棒立ちで受け止めた。

 

『アギっ!アギギギギ!イキナリ、トランプ投げてンジャネーゾ!コノ、マッドピエロがヨォ!!ギギィッ、テメェーの、変態チンポコ噛みちぎってヤロォカ!?ギギギギィィぃッ!!!』

 

さすがイエローテンパランスだ。なんとも無いぜ。というか口悪いぞテンパランス。勝手に喋るんじゃあない。俺が口悪いって勘違いされてしまうだろうが。

どうやら〝隠〟で隠したバンジーガムをトランプに付けていたようだが、バンジーガムごとテンちゃんはもぐもぐしている。

 

「…へぇ」

 

ヒソカは、でっぷりしたおばちゃん状態の俺の皮膚と肉に、ズブズブ沈んでいくトランプとバンジーガムを眺めつつ、俺のことをジーッと見てくるだけだった。

ねとねとした視線が大変気持ち悪いが、視線が気持ち悪いのは俺もなので、そんな事で俺は差別はしない。キモ仲間だ。同志よ。

でも命を狙ってくるのでヒソカとは友達にはなれない。

 

「う~ん…僕の負けかな。ちょっと打つ手が無いな☠」

 

突如、意外な程あっさりとヒソカは負け宣言をした。

まぁ実際その通りで、棒立ちで防御に専念したイエローテンパランスはかなり強固だ。

イエローテンパランスに弱点はなァい、というのはラバーソール先輩も仰っていた通りだこの野郎。

攻撃をする時には、防御面積が薄くなったりする時もあるが、さらさら攻撃する気がないイエローテンパランスの防御性能はぴかいちだ。

オーラも物質も食うから、怨念系も遮断する。

毒ガスとかも分解して、俺に必要な健全な空気だけを本体の俺に提供してくれる。

同じ理屈で、水中や海中に入っても、水を食って分解して必要な気体だけを俺にくれるテンパランスは、その点、本家本元イエローテンパランスが抱えていた水中の弱点すら無い。テンちゃんは、本当に本体思いの良い子なのだ。

ウボォーの本気ビッグパンインパクトも、フィンクスのぐるぐるパンチwith100回転も、フェイタンのライジングサンも、防御に専念したイエローテンパランスを突破できた奴はいない。

 

イエローテンパランスの天敵といったら、有名所では、体内攻撃が可能なメタリカ等だが、俺は自分の体内にもスライム粘液を浸透させているから、多分だが対処出来ると思う。対処してくれるんじゃないかな、テンちゃんが。

恐らく、もっとも怖いタイプは陰獣の梟のような奴だろう。

アレは問答無用で空間に引きずり込んでしまうタイプだから、超防御も体内防御も意味がない気がする。

ノヴさんの四次元マンションも同じ理由で怖いタイプだし、モラウさんのスモーキージェイルも、ユピーでさえ破壊不能だったから閉じ込められたら詰んじゃいそうではある。

だが全部くらったことが無いからわからないが、可能性があるとすれば、オーラを食うというテンパランスの性質で、オーラで形成された空間を直接食えれば、いつかは空間に穴が空けれるかもしれないが…どれだけ時間がかかるかも分からず、穴を空けている間に俺が衰弱死するかもしれない。

試した事がないので、全部可能性の話だが、とにかくアレ系には十分注意しないといけない。

あとは、アベンガネのような除念師も、ひょっとしたら俺の念獣スライムを問答無用で食べてしまう可能性があるし…、継承戦のハルケンの防御不可能の矢とか、能力バレしたら防御不可能で全部食われちゃうプレデターとか、五大災厄とか、ミニチュアローズとかごろごろしてるこの世界では、どんな能力だろうといつか無惨に殺されてしまうかもしれないのだ。旅団に所属してる時点で、もう死亡フラグはビンビンなのだから。

 

最後に、これはもう語るでもない事だろうが、当然だけど圧倒的に格上の超パワーとかも怖い。主にメルエムとかメルエムとかメルエムとかネテロだ。もっとも、この辺は全ての生命体が怖いと言うだろうから、俺だけの弱点ではない。

…弱点はないとか思って生きてきたけど、天敵だらけじゃないか。怖ー…。

弱点らしい弱点はないが、俺のイエローテンパランスは無敵ではないと、努々忘れてはいけないのだ。忘れそう。

 

しかし、ウボォーのパンチすら無力化し吸収しきってしまうイエローテンパランスには、現時点のヒソカでは突破口は作れないと思う。

万が一、ヒソカのトランプで俺のテンちゃんが切り裂かれたらどうしようかと思ったが、それは杞憂だったようで安心した。

 

「フッ…残念だったな、ヒソカ」

 

フッって笑って余裕たっぷりに取り繕っているが、内心、クロロはきっと俺を処分しそこねて悔しがっている事だろう。ヒソカに向かって「残念だったな」なんて慰めの言葉までかけているのが証拠だ。

しかし残念ながら、4番は俺で不動だ。ざまぁみろ。俺がそう簡単に死ぬと思ったか。絶対死なんぞ。絶対死なんから、永遠に4番は俺だ。

ウボォーの夢が、核ミサイル並のビッグパンインパクトならば、俺の夢は核爆弾もミニチュアローズも防御しきるイエローテンパランスだ。何だって防御して生き残ってみせる。

 

ヒソカは、「本当に残念だよ♦でも、またリベンジのチャンスは与えて欲しいな♥」なんて言って颯爽と去っていったが、俺の目は誤魔化せない。

あいつ絶対粘着してくるに決まっている。俺のスライム並に粘着するだろう。

それぐらい、クロロという男は、ヒソカの大事なオモチャに認定されているからな。

 

「団長、なんであんな奴とライブスを戦わせたのさ」

 

マチが、いつもよりドスを利かせたおっかない声でクロロに尋ねている。

いつも不機嫌そうで怖いマチだが、今日は特に怖い気がする。生理だろうか。

 

「なんだ、心配だったか?だが無用だ。見ただろう?ライブスの絶対防御を突破できる者はいない」

 

「だからって、何もあんな変態野郎に、ライブスをあてがう必要はないだろ。私が相手してやる」

 

「ああいう変則的で読みにくいタイプには、まずはウボォーかライブスを当てるのがスジだ」

 

クロロとマチがぺちゃくちゃしてると、そこにシャルナークが携帯をポチポチしながら割って入っていった。

 

「団長ー、あいつの入団テスト受け入れた交換条件って、前の仕事で言ってた『タダ働きしてくれる助っ人』に関係してる?」

 

ニヤッとクロロは笑った。

 

「ああ。割が良いだろ?」

 

いや絶対割に合わないぞ。ああいう手合いは初手からばっちし拒絶しないと、勘違いしていつまでも纏わりついてくるんだ。ヒソカは変態ストーカーなんだ。俺は(変態仲間だから)詳しいんだ。

まぁ苦労するのはクロロだから別にいいのだが。

…いや、良くないな。

今のクロロの発言から推測するに、クロロは「(ライブス)と一回戦うかわりに、仕事を一回手伝う」という交換条件でも出したらしい。

ふざけてはいけないよ、クロロボーイ。なぜ自分で戦わないんだい?

自分でも戦わない。俺に押し付ける。仕事の助っ人料をケチる。そういうケチケチ精神が、変態を引き寄せてしまったんだぞ。

ヒソカに目をつけられたばっかりに、いずれ旅団は一人一人狩られてしまうんだ。

将来、クロロとヒソカが天空闘技場で試合をする時に、一時的に死体になったヒソカを、テンパランスで粉微塵になるまできっちりと食わせるつもりだが、ソレ以前に変態とは関わらないのが一番なのだ。

なのにクロロったら、少しの経費を浮かせようとして、あんな変態と交流を持ち始めてしまうなんて。

…もしや、それぐらい幻影旅団の懐事情は厳しいのだろうか。

あれだけ盗んでいるお宝も金も、まさか全部使い込んでしまったのか?

全額、流星街に寄付しているとでもいうのか?

だとしたら、クロロくん、君はやっぱり悪人プレイ向いてないのではないか?

まぁどうせ金の流れなんて、俺程度が調べたってクロロが細工してるなら分かりっこないし、全ては闇の中だ。

 

とにかく、理由なんてどうでもいいが、既に変態ピエロと関わり合いを持ってしまった以上、4番の俺は常に警戒しないといけない。

4番以外でスカウトすれば、俺を殺さずに入団してくれたりしないだろうか。

まだ、あの…なんと言ったか…全身に穴が開いているピューピュー賑やかなリコーダー人間の、ボルシチョフだか、ポルナレフだかの…あの人だってまだ入団してないし、あの人の番号をヒソカに密かにプレゼントしてしまえばいいのでは?

もう変態ピエロと関わってしまったのだし、少なくとも4番の俺の無事を保障するために、ボルシチョフ・ドンドコドーンさんの番号を彼にプレゼントしてしまおうではないか。

 

「……………クロ、ロ………あの…………ヒソカを、空いている、ば、番号に…………入団…させ、ないか?」

 

「ほら!団長、ライブスもあの変態野郎をバラして殺してやりたいって!入団させないって言ってるじゃん」

 

マチよ、どういう耳をしているんだ貴様。

いつもは当たり前のように聞き流される俺の声を聞き取ったと思ったら、コレか。

いや、きっと分かっててワザと改変して、俺の反応を見て楽しもうという、陽キャヤンキー達特有の、本人達はマジで双方楽しめていると思い込んでるタイプの、あの()()()という文化だろう。

最低の陽文化だ。全部陰文化に変えてやりたい。

 

「…気持ちはわかるが…ライブス、どうせあいつはお前に勝てはしない。奴が旅団に入りたがっているなら、その欲求を利用し、蜘蛛の最大の利益を導くべきだ」

 

したり顔で言うクロロだが、俺はその嘘を見抜いている。

「どうせお前に勝てはしない」とか俺を褒めるような事言っておいて、どうせキモくてコミュ障で引きこもりで芋で防御しか出来ない俺をレギュラーから外したがっているに決まっている。

旅団という陽キャ軍団には、俺よりも攻めに優れてて、見栄えのするピエロなヒソカが相応しいと思っているのだろう。

全くその通りだ。どうせ俺なんて幻影旅団に相応しくない。能力は防御特化で、見てくれだってウジュウジュしたスライムだし。攻撃といったらスライムをぶつけるだけだしな。

だが、俺はそんなヨコシマな考えには決して屈しない。

命を、4番の座を、絶対死守してみせる。

ぜっっっっっったいに、死なない。

死ぬのは、ヒソカにホモストーキングされるクロロの方だ。はっはっは。やーいやーい。

 

…。

 

いや、それもまずい。

クロロが死んだら、旅団は崩壊一直線だ。

そうなったら、壊滅的コミュ能力しかない俺を、一体誰が守ってくれるんだ。

変人だらけのハンター協会だが、俺を受け入れてくれるかどうかは分からないし、そもそもまた別の組織で一から人間関係を構築するのが面倒臭い。

やはり、俺には旅団しかない。

馴染み切れない集団だが、幼い頃から過ごしてきただけあって、妙な居心地の良さはあるし、俺のコミュ能力の低さも、ある程度理解して融通してくれるメンバーもいる。何も、陽キャヤンキーのイジリ展開をしてくる奴ばかりでもないから、それが逆に少し厄介なのだ。嫌いになりきれない。切り捨てれない。

俺の安全と、そしてぬるま湯が如き居心地の良さを死守する為に…俺はやはりクロロをも守護らなくてはならないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クロロは確信していた。

ライブスが誰にも負けぬ事を。

クロロ以外もだ。

マチも、シャルナークも、パクノダも、旅団に入りたいという道化師を装う奇妙な男に、ライブスが負ける姿が微塵も想像できないでいた。

 

「…あいつ、かなり使うよ。鍛えられた念能力者だ」

 

シャルナークが言うと、パクノダも頷いた。

 

「そうね。でも、ライブスのテンパランスを突破するのは、ウボォーですら至難。あいつに打つ手は在るかしら」

 

マチが、両者の会話に加わる。

 

「無理だね。ウボォーですら…というか、あたしらの誰も、ライブスのテンパランスを攻略できないんだから」

 

打撃、斬撃、刺突、熱、冷気、電撃、毒…一切が効かず、散らされて分解、無力化されてしまう。無論、何事にも限度はあり、たとえば熱には上限が、冷気には下限があるが、それは熱核兵器か、液体窒素タンクにでも突き落とすか等をしなければならず、この粘液を破壊するのは極めて困難であった。

無力化だけで済めばまだよいが、それどころか、テンパランスは〝威力〟が持つ〝運動エネルギー〟等も、消化吸収して、オーラに作り替えるという性質もある。

それはつまり、テンパランスの粘液質量の成長であり、いざという時は本体へオーラを提供するタンクの増加に繋がった。

下手な攻撃は、ただただライブスに利するのみだった。

 

クロロ、パクノダ、シャルナーク、マチらは、四人でジェンガをしながら、ライブスとピエロの試験バトルの行方を見守る。

だが、事態はあっさりと終わりを告げた。

 

「…やっぱり、あのヒソカってやつ強いね。頭も切れる」

 

「ええ。ライブスのテンパランスの特性をすぐに見抜いた」

 

「…見抜いたからって、どうせ何もできないよ」

 

「そうらしい。ヒソカの奴は、無駄な戦いと判断したようだ」

 

クロロがジェンガの1ピースを抜き取ると、ガラガラと木細工の塔は崩れていった。

一見して、極めて冷静に崩壊する木の塔を見つめながら、クロロは小さな声で「げ…」と呟いていた。

ヒソカは、ライブスを包み守る、揺蕩う粘液を見て溜息をつく。

そして、充分に致死量のオーラを込めて投げつけてやったトランプを、事も無げに棒立ちで受け止め、無力化してみせた蜘蛛の4番の姿に、ヒソカは股間が疼くのを感じていた。

 

(美しい…オーラに全く淀みが無い♠彼の体を覆うアレは、念獣かな…?♥ふふふ…、僕のバンジーガムとよく似ている♠とても丈夫で、よく伸び、よく縮み、そして粘性に富む♣しかも、僕のバンジーガムよりも更に厄介な性質をも加えている…素晴らしい研鑽…或いは、才能!これほどの果実が、もう実っているなんてね♥)

 

今はまだ手の届かぬ、遥か樹上の、滴る果実。

幻影旅団の団長の力に惹かれて、わざわざここまで来たが、その甲斐はあったというものだ。

 

(蜘蛛、か……クロロ以外にも、皆結構美味しそうだし…♣それに、4番のライブス……うん、実にイイ♥最強の盾と鎧に守られ続けた、君の無垢な肉体…♥あぁ、どれだけ美味しいんだろうか♠)

 

いつか、あの鉄壁の念鎧を引き剥がして、内の柔らかな肉を貪った時、一体どれほどの極上の美味を味わえるだろうか。

ヒソカはその時を想像すると、思わずそれだけでエクスタシーを決めそうになってしまう。

寂れた廃墟を後にしつつ、ヒソカはもう一度振り返って、蜘蛛が潜む廃墟を眺めた。

 

「…また来るよ、ライブス♠次に会う時まで…誰にも傷つけられないでくれよ♥」

 

ヒソカのベロが、ペロリと唇を濡らした。

 

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