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目を覚ますと、視界には知らない天井が映った。
「ここは……」
目をこすりながら身体を起こして、辺りを見渡してみる。
真っ白な壁。
ぼんやり光るSFチックな機械。
人の気配は全くしない。
寝ていたベッドを見てみると、それはタマゴ形のカプセルみたいな形をしていた。
「ほんとにどこ?」
ここで眠っていたみたいだけどこんな場所、全く身に覚えがない。どうして私、こんなところにいるんだろう。
こういう時は眠る前に何をしていたかを思い出せばいい。早速私は頭を回転させて、過去の記憶を探ってみることにした。
「くっれ〜ぷ〜♪」
そう。私、
「危ないッ!」
「えっ……」
周りの声に顔を上げて、気がつけば目の前にはトラックが。
そして次の瞬間、私の意識はそこで途切れたんだ。
「これってもしかして、異世界転生ってやつ!?」
アニメとか小説とかで何度も見た展開だ。現実世界で死んで、ファンタジーとかの異世界で生まれ変わるってやつ。歩道に突っ込んできたトラックに轢かれて死ぬのは、流石にちょっとベタ過ぎる気がするけど。
ていうか、転生ならチートとかもあるのでは?
「目覚めよ、私の能力!」
……何も起きない。
「ダークネスヘルフレイム! カオスギガサンダー!」
やっぱり何も起きない。
「ステータスオープン!」
そして何も出てこない。
「女神さまー、聞こえてますかー」
そういえば女神さまにも会ってないような気がする。まあそれはそういうパターンもあるよね。
とか考えてると、ふとある事に気がついた。
「服……」
なんと私、何も着ていなかったのです。転生するにしても流石に裸は雑過ぎると思います、女神さま。
ていうかさっきから全裸でポーズ決めながらダークネスなんとかとかカオスなんとかとか叫んでたの私! これじゃめっちゃ恥ずかしい人だよ!
「服はどこかなぁ〜」
とにかく裸のままは落ち着かないから、部屋の中を探してみる。
「あ、あった」
あっさり見つかりました。ベッドの下。
しかもご丁寧にも私がよく着てた私服のパーカーコーデのフルセット。死んだ時は学校の制服を着てたけど、異世界で制服しかないのは困るもんね。ご配慮感謝します、女神さま。
「さて、と……」
服を着てちゃんと靴も履いたところで、次にすることはひとつ。
「いざ、冒険へ!」
せっかく異世界に転生したんだもん。こんなところでじっとしてなんかいられない。
私は意を決して、外の世界へと旅立った! けれど……。
「うわぁ、ボロボロだ……」
目が覚めたあの部屋は結構綺麗だったのに、そこから出てみると思った以上にボロボロだ。廃墟って言っても言い過ぎじゃないと思う。
「どうしたものかなぁ」
相変わらず人はいないし、こんな廃墟にずっといてもしょうがない。ひとまずここは外を目指してみよう。
電気がチカチカしてる静かな廊下をさまよう事、10分ほど。多分それくらい。大体それくらい歩いてると、何やらバイクみたいなエンジン音が聞こえてきた。もしやこれは人がいるのか!
「おーい! 聞こえますかー!」
お願い、気付いて!
「助けて下さーい!」
右も左もわからない異世界。ここはこの世界のことを知ってる人に助けてもらうのが一番。ていうか気づいてくれなかったら食べるものもないし最悪ここで飢え死にだ。異世界転生した途端にそんな死に方は流石に嫌だ。
「聞こえたか、女の声だぞ」
「こっちだ!」
気付いてくれた! 後はここで助けを待てば……。
「いやっはぁ、女だァ!」
「しかも若いぜこいつぁ!」
「お宝発見だ!」
すみません、失敗だったかもしれません。出てきたのは三人のなんだかヒャッハーな人たちでした。
「しかも肉付きがいい。こいつは高く売れるぜ」
「肉にするもよし、奴隷にするもよしってか」
「若い女の肉は欲しがる奴も多いし、抱き心地も良さそうだからなァ」
たすけて。この人たち、何言ってるの。肉?
食べるの、私を?
わからない。理解できない。だって私、人だよ? 人を、食べる?
「キズ物にするんじゃねぇぞ」
「チッ、わかってるよ」
男の手がこっちに伸びてくる。
怖い。逃げないといけないってわかってるのに、脚が震えて動かない。
誰か助けて。そう祈った瞬間。
突然男の手首が、なくなった。
「ぐあぁぁぁぁっ!?」
痛みに気付いて、男が耳を裂くような絶叫を上げる。
そんな声を黙らせるように。
次の瞬間には男の首が消え、傷口から血を噴き出しながら残された身体は力を失い崩れ落ちた。
「大丈夫、です……」
そして聞こえたのは、可愛らしい声。
見えたのは私よりも小さな、童話のアリスのようなドレスを着た銀髪の女の子。
改めてここが異世界なんだと思わされる、あまりにも綺麗な出で立ちの彼女は血で塗れたナイフを持って。私を守るナイトみたいに、ヒャッハーな男たちの前に立ち塞がった。
「私が、守ります」
なんでだろう。私よりも幼い、小学生か中学生くらいの子なのに。その言葉には全てを委ねてもいい気がするくらいの説得力があって、こんな時なのに彼女の背中を見ているととても安心する。
この子は一体、何者なんだろう。
「こいつ、よくもジョージを!」
「俺らに喧嘩売った事、後悔させてやるぜ。てめぇら二人とも、
男の一人が、啖呵を切って斧を振り上げ女の子に襲いかかる。危ない。そう言おうとした瞬間、彼女は動き出した。
ナイフを両手に持って、振り下ろされた斧の木でできた棒の部分を切り刻む。そして落ちてきた金属の刃、その側面を靴の底で蹴って男の股間へと叩きつける。
「か、はっ……!」
大事なところに直撃を食らって、男が悶える。その隙を、彼女は見逃さない。
股間を抑える事さえ許さず彼女はナイフを振るい、男の首をスパッと切り落とした。
「ひぃっ……!」
転がり落ちた首を見て、残った一人は怯えながらも目の前の女の子に拳銃を向ける。
「ウサギのドレスの女、まさか……」
パンッ! と乾いた銃声が響いた。
彼女はまだ、立っている。撃たれた筈なのに、その小さな身体には傷一つ付いていない。
撃たれた瞬間、キンという音がした。もしかして彼女は、撃たれた銃の弾をナイフで防いだんだろうか。
「
迫る彼女を前に、最期にそう震えた声で口にして。残る一人も、彼女の手で首を失って崩れ落ちた。
そして死体を一瞥すると、彼女は腰を抜かした私の元へとやってきて手を差し伸べてくれた。
「立てますか……?」
べっとりと血で塗れた、小さな手を。
この子は人殺しで。
本当なら怖い筈なのに。
自分でもどうしてか分からないけど、何故だかこの子の事を怖いとはまるで思えなくて。
「うん、ありがとう……」
血で汚れるのを躊躇わずに、その時私は彼女のこの小さな手を取ったんだ。