終末のアルテル   作:スグリ@あれこれ書いたりする人

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アームドユニットの解説回です。

感想、評価などいただけるととても嬉しいです。


アルテルのメカ教室
実質設定資料


「おはよう、アルテル」

「ん」

 

 朝起きたら、最初にキス。

 

 次にカーテンを開けて、朝ご飯のそんなに美味しくないパンを食べたら、歯を磨いて濡れたタオルで顔を拭く。

 

 その後アルテルともう一回ちゅっとキスをする。これが今では当たり前になった朝のルーティーンだ。

 

「好きです、ユズ」

「うん、私も」

 

 別に恋人として付き合ってるつもりはなくて、ただお互いの事が好きだからいつの間にかこうなってただけ。自分で言うのもなんだけど、不思議な関係だなぁって思う。

 

「今日はどうするの?」

「一緒に、来て、欲しいです」

 

 そして二人とも着替えたら、いつもは私はお留守番も少なくないけど今日は二人で出掛ける事に。今日はどんな出来事が待ってるのかなぁ、なんて思いながら私はアルテルの後をついていった。

 

 

 

 

 

「ここは……?」

「私が、ギルドから、借りているガレージ、です」

「アームドユニット、ここにあったんだ」

 

 アルテルに連れて来られたその場所は、街の片隅にあるオンボロな倉庫。そこには見慣れたアルテルのアームドユニットが武器や弾、トラックと一緒に置かれていた。

 

「フローレンス、です」

「フローレンス?」

「この機体の、名前。エイブラムスⅢという、機種を、改造した私だけの、機体です」

「そっか、フローレンスっていうんだ。よろしくね」

 

 これまで知らなかったこのアームドユニットの名前は、フローレンスっていうらしい。思ってたよりも可愛らしい、アルテルらしい名前でそれを知るとなんだか今までよりも愛着が湧いてくる。

 

「今日は、一緒に……勉強、しましょう」

「お勉強!?」

 

 なんでアルテルが私をここに連れてきてくれたのか気になってたけど、お勉強かぁ。苦手なんだよねほんとに。学校でも赤点取らないように頑張るので精一杯だったし。

 

「アームドユニットに、ついてです。整備も、手伝ってくれると、助かるので」

「アルテルが助かるなら私頑張るよ!」

 

 そうだ。いつまでもアルテルに甘えてちゃだめ。できる事をちょっとでも増やさないと。フローレンスの整備ができるようになれば今よりずっとアルテルの力になれる筈だしね。

 

 それはそうと、こんなロボットのお勉強なんて男の子ならすごく喜びそうだなぁ。私も理解するんだ、男のロマンを。

 

「なら……まずは気になるところ、ありますか?」

「今は箱の中にしまっちゃってるけど、この子たちって腕が四本あるよね。どういうこと?」

 

 気になるところから教えてくれるみたいだから、私はまず腕の事を聞いてみた。

 

「普段は箱の中にしまっている腕は、ボックスアーム、です。力は強くないですが、精密に動かせるので、ここには軽めのライフルや、マシンガンを持たせます」

「重い武器は持てないけど、軽い鉄砲なら使えるってことだね!」

 

 四本腕のうち内側にある二本は箱の中にあるからボックスアーム。力は弱くて軽い鉄砲を撃つための腕。ここまではよし。

 

「その通り、です。ご褒美に、お尻、撫で撫でしてあげます」

「撫でたいだけだよね!?」

「むふふ」

 

 いや、これは自分のご褒美だよねアルテル。私のお尻を撫で回すだけじゃ飽き足らず、思いっきり揉んでくる。

 

 そうしてアルテルが満足するまでお尻を揉まれた後、説明は次の段階に進んだ。

 

「ボックスの外側の腕は、メインアーム、です。ボックスアームと同じくらいの精密さに加え、パワーもあるので、色々な武器を使えます。ライフルやマシンガンも使えますが、基本は剣などの近接武器や、バズーカ、スナイパーキャノンのような、重火器を持たせます」

「重たい武器はメインアームに、軽い武器はボックスアームに持たせて、持ち替えないで全部一緒に使えるのが腕が四本あるいいところって事?」

「えらい、です」

「やった!」

 

 なるほど、理解できた。

 

 力が強いメインアームには強い武器を、力は弱いけど収納できてコンパクトなボックスアームには軽い武器を持って、持ち替えをしないで同時に使える。鉄砲を撃ちながら近付いてそのまま剣でバッサリ、なんてこともできるんだ。

 

 そう考えると四本腕は確かに便利で強そう。でもそれならと、疑問が一つ浮かんだ。

 

「でもそれならなんで腕を六本とか八本にはしないの?」

「そんなの、操縦、できません」

「なるほど」

 

 納得。これなら腕をもっと多くした方が強いんじゃないのって思ってたけど、確かに操縦できないならしょうがないよね。何事もほどほどが大事。

 

「次、気になるところ、ありますか?」

「脚も不思議な形してるよね。膝、なのかな。曲がるところが二ヶ所あって変な感じ」

 

 次に気になったのは、こっちもまた独特な脚の形。関節が多くて、なんというか脚がS字型みたいな形になってる。これはどういうことなんだろう。

 

「アームドユニットの、脚は、脚力を上げる為に、獣のような、逆関節構造になってます。でも、構造上、正面からの攻撃に弱いので、脚に、盾もついています」

 

 ここはよくわからないけど、とにかく脚力アップの為にこうなったってことなのかな。そう納得しておこう。

 

「四本腕も合わせたら意外と人の形じゃないよね」

「発明されたばかりの、第一世代アームドユニットは、人型だった、らしいです。第二世代で獣脚になって、第三世代で腕が四本に、なりました。第二世代は、たまに見かけます」

「へぇー、色々あるんだ」

 

 アルテルが言ってるのって、つまりアームドユニットは進化する度にどんどん人の形から離れていってるってことだよね。

 

 私には難しそうだけど、好きな人がこういうのを勉強したら楽しいんだろうなぁ。

 

「あと、頭も、覚えて欲しいです」

「頭?」

「一つ目に見えますが、中には標準、広角、望遠の三つのセンサーが入っている複合センサーです。頭が壊されても、標準のサブセンサーはありますが、広角と望遠は、使えなくなります」

「ふむふむ」

「整備では、別々で取り替えたり、修理する事もあるので、覚えてください」

「わかった、頑張る!」

 

 さらに頭のパーツについても教えてもらった。

 

 私なりに解釈すると、一つ目に見えるフローレンスの目の中に実はさらに役割が違う三つの目が隠れてて、必要な時にはそれぞれ別々に交換したりしないといけない。

 

 ひょーじゅん、こうかく、ぼうえん。ちゃんと覚え切れるかはわからないけど、頑張っていこう。

 

「それと、動力源は、核電池を使っているので、その扱い方と、推進剤の入れ方も、覚えてください。これは危ないので、しばらくは私がするので、見ていてください」

「う、うん。わかった」

 

 核電池に推進剤。この二つは危ない物らしい。核電池はまあ核だし、推進剤って多分燃料のこと。火がついて爆発とかしたら大惨事だもんね。

 

「難しい、ですか?」

「うん、正直……」

「ゆっくり、がんばります」

 

 今日教えてもらったところの整備の仕方とか、まだまだ色々と勉強しないといけないところがたくさん。学校の勉強も上手くいかなかった私にできるかどうかは不安だけど。

 

 何の為かも考えないでなんとなくやってた学校の勉強とは違う。今はちゃんと、アルテルの為って目的がある。そう思うと、できるかどうかはともかく頑張ることはできる気がしてきた。

 

「こっち、来てください」

「わかった!」

 

 この日アルテルは他にお仕事とかはなかったみたいで、一日つきっきりでお勉強に付き合ってくれた。

 

 こんな可愛い先生なら私、頑張れる気がする!

 

 

 

 

 

「どう、でしたか?」

「やっぱり難しいよぉ……」

 

 ガレージでのお勉強や実践を終えて、アルテルと一緒に宿に帰ってきた私は、ベッドに横になってゴロゴロしていた。

 

 機械をいじった事なんて元の世界じゃ一度もないし、すっごく大変な一日だった。

 

「でもお陰で、学校に巨大ロボって教科があれば赤点回避できる気がするよ!」

 

 まあ巨大ロボなんて教科ないけど。

 

「がっ、こー?」

「あ、ごめん。変な事言っちゃったね」

「がっこーって、なんですか?」

 

 私の軽口に出てきた学校って言葉を、どうやらアルテルは知らないみたい。

 

 そういえばこの世界で学校って見ない気がする。お店のお手伝いをしてる子供とかもよく見るし、もしかしたらこの世界にはないのかな。

 

「子どもたちがみんなで集まって、文字とか計算とか、いろんなことを勉強するところだよ」

「がっこー……素敵です」

 

 でも学校を知らない割に、アルテルはいろんなことを知ってるし、機械の扱いやお金の計算もできてるよね。

 

「アルテルは頭いいけど、どこでお勉強教えてもらったの?」

「育ての父や、ハンターの人たち、です」

 

 ハンターってことは、ギルドにいるあの人たちみたいな人に勉強を教えてもらったんだ。やっぱりハンターさんたちって、乱暴そうに見えていい人たちなんだなぁと改めて思う。

 

「お父さんって、どんな人だったの?」

 

 そして気になったのは、アルテルを育ててくれたお父さんについて。もう亡くなったとは聞いてるけど、どんな人なのかアルテルから聞いたことはなかった。

 

 優しい人なのかな。それともちょっと怖い人なのかな。

 

 アルテルが教えてくれたその答えは、予想もしてなかったものだった。

 

「死んで、私から逃げた……臆病な、人です」

 

 臆病な人。それもアルテルから逃げたって、どういう意味なんだろう。

 

 アルテルの過去に何があったのか、すごく気にはなるけれど、多分この先は踏み込んじゃいけない。なんとなく、そんな気がする。

 

「ご飯、食べよっか」

「何、食べますか?」

 

 誤魔化すように夕飯のお話に切り替えて、そこからはさっきの話題に戻る事もなく。

 

 その後一緒に夕飯を食べた私たちはいつも通り身体を拭き合って歯を磨いて、灯りを消して寝る準備をする。

 

「おやすみ、アルテル」

「ユズ、おやすみ、なさい」

 

 そしていつも通りに深いキスを交わして舌を絡め合い、糸を引いた唾液を手で拭き取ると、手を繋ぎながらぐっすりと眠りについた。

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