そして今後、過去の話に挿絵を追加することもあるのでその時は最新話の前書きにて告知いたします。
戦いが始まった。
「タイプⅢといえど、戦後のハイエナ如き!」
「子供とはいえ油断するな。首切りアリスの実力は折り紙付きと聞く」
「だが所詮継ぎ接ぎのレストアよ!」
アルテルはマシンガン二丁と剣の二刀流。敵はひとつはライフル二丁と剣と盾、もうひとつはマシンガン二丁と盾のついた大砲二丁。
大砲持ちの援護を受けながら、剣持ちがその刃を振り上げながらアルテルへと向かってくる。
「……この程度、ですか」
剣を持って突っ込んでくる敵を前に、大砲持ちの攻撃を左右に動いて避けながらアルテルは呆れた声で呟いた。
「練度が低い。低過ぎです」
そして振り下ろされた剣を両手の剣で弾き返し、突きの一撃で片方のライフルを貫き壊す。
「んだと、ガキィッ!」
「よせ、間合いを取れ!」
「この程度が、正規軍……」
「役立たずが。所詮は核戦争の置物ですか」
片方のライフルを壊された敵が、諦めずに残ったライフルを撃ちながら再び突っ込んでいく。一方アルテルはマシンガンを撃ちながら、大砲持ちの攻撃から敵を盾にできる位置を取り続けている。
この時点でヨゼフさんや大砲持ちのパイロットを含めて、勝敗を既に察していた。
ただ一人、最期が目前に迫ったパイロット以外は。
「捕まえたぞ!」
ライフルも捨てた敵が、四本腕でアルテルのロボットに掴みかかってくる。流石は四本の腕を使っているということか、パワーではアルテルが押し負けている。
でも、これで終わりだ。
「なっ……!」
掴みかかったせいでもう逃げられない。剣こそ押さえ込まれたものの、まだ自由に使える二丁のマシンガンが容赦なく火を噴いた。
放たれた無数の銃弾が敵の胴体を守る鉄板を蜂の巣にして、その向こうのコクピットを壊し尽くす。あれじゃきっと中の人はもう……。
「あと一機」
一体を仕留めたアルテルは、もう一体の敵へと向かっていく。だけど今度の相手はやられっぱなしじゃないみたいで、マシンガンでアルテルの動きを抑えながら距離を取り、正確な狙いで大砲を撃ってくる。
「こっちは、強い……」
「すまないがこっちも仕事なんでな。お嬢さんには死んでもらう!」
マシンガンで引き撃ちしながら隙を見て強力な大砲を撃ってくる。シンプルだけど厄介な戦い方を前に、アルテルはなかなか近付けない。
「予想以上の機体捌きだ。昔ならグリーンベレーにもなれたかもな」
「それは、どうも」
だけどアルテルもただやられているだけじゃない。ジグザグの動きにジャンプも交えた複雑な動きで敵の狙いを狂わせながら、近付けずもこれ以上離されないように距離を保ち続けている。
どちらも一歩も譲らない凄まじい戦いが、私の目の前で繰り広げられていた。
「何をもたもたしているのです。早く潰してしまいなさい!」
「老いぼれが。敵の戦力を過小評価しておいて、まだ気付かんか」
なかなかアルテルを倒せないことにヨゼフさんは苛立ってるみたいだけど、それでも敵は焦った様子もなく、淡々と今の戦い方を続けてくる。
「クソッ、引き剥がせん。この際ビジネスは抜きだ。兵士としてのプライドに賭けてこの戦い、勝たせてもらう」
さらに濃くなった敵の弾幕にも負けず、アルテルは脚についた盾でマシンガンを防ぎつつ強力な大砲を冷静に避けながら、こちらもマシンガンで牽制していく。
「一人目と違う。距離を詰められない……」
「こいつ、これでも喰らいついてくるか!」
苛烈な戦いが繰り広げられる中、岩陰に隠れていた私にヨゼフさんが話しかけてくる。
「どうやらこちらが優勢のようだな。残念だが、君の可愛いナイトはここで終わりのようだ」
「負けません。アルテルは、絶対に」
大丈夫、アルテルは負けない。正規軍だか何だか知らないけれど、アルテルの方が強いって私は信じてる。
まだ出会ったばかりだけど、彼女は私にとってヒーローなんだから。
「まったく。あの娘ではなく君がアレに乗っていれば、今頃勝負はついていただろうにな」
「それって、どういう……」
私がロボットに乗れば、勝負はついていた? 何を言ってるんだろう。そんなの、素人の私が乗ったってすぐやられちゃうのは当たり前じゃん。
それとも何か他の意味がある?
聞き出そうと思ったその瞬間、突然近くの岩山が崩れた。
「クソッ、これでは逃げ切れん。狙ったか、アリス!」
そして崩落した岩に敵が激突して姿勢を崩し、その衝撃でさらに岩山が崩れて敵のロボットを押し潰した。
まともに相手を狙って突っ込んでも埒が明かないと悟ったアルテルは、敵を岩山の近くに追い込んでマシンガンで崩すことで、逃げ道を塞いだんだ。
「あなたは……強かった、です」
最後にそう言って、アルテルは剣を敵のコクピットに突き立ててトドメを刺す。
こうして戦いは、アルテルの勝利で決した。
「正規軍のパイロットが二人だぞ!? ニュータントならまだしも、ただの人間の小娘ごときに……!」
元軍人のロボット二体でもアルテル一人に勝てなかったことに、ヨゼフさんは動揺を顕にする。
そして彼は私に向かい、言葉を発した。
「貴様、逃げるつもりかアサキ・ユズ。いや、オリジナルワン! そもそも貴様らニュータントがいなければこの世界は」
「待ってアルテル!」
その言葉を最後まで聞くことなく、ヨゼフさんはアルテルが乗るロボットに踏み潰されてしまった。
オリジナルワン。ニュータント。最期に私の知らない言葉を言い残して。
「ユズ。大丈夫、ですか?」
「……ごめん。ありがとう」
心配したアルテルが、慌ててロボットから降りてきて声をかけてきてくれる。
この子に悪気はなかった。ヨゼフさんが近くにいて、私が危ないと思ったから助けてくれたんだ。アルテルは何も悪くない。
敵の言葉を最後まで聞きたかったなんて、ただの私のわがままだもん。
「どうして、謝るんですか……?」
「ううん、なんでもない。なんでもないよ」
「つらかったら、車の中で休んでください」
やっぱり優しいなぁ、アルテルは。
でも戦いも終わったのに、アルテルはまだ車には戻らないみたい。こんな何もないところで、何かする事があるのかな。
「アルテルは、どうするの?」
「敵の部品、取れるだけ取ってきます」
「え、取っちゃっていいの?」
「アームドユニットの部品は、高く売れます。残った分は、
なるほど。巨大ロボの部品は高く売れる。それならやっつけた敵の部品も、他の人に取られる前に持っていけるだけ持っていかないとだよね。
「お金も大事だもんね、うん。私も何か手伝えるかな?」
「工具は、車にあるので……頭の装甲、剥がしてください」
「よーし、頑張るぞー!」
恩返しも兼ねて、私も部品取りのお手伝いをすることにした。
感想だけ言うと、思った以上の重労働でした。工場で働いてる人たちとかってすごい。
どうやら明日は筋肉痛になりそうです。
部品取りのお仕事を終えた後、私はまたアルテルのトラックの助手席に座っていた。なんだかすごく疲れたし、ゆっくり休ませてもらってる。
でもずっと戦ってたりしてるアルテルは私より疲れてそうだけど、大丈夫なのかなぁ。
そんな事を考えていると、アルテルにある事を尋ねられた。
「ユズ……これから、どうするんですか?」
「これからかぁ……」
これからどうするか。確かに考えてなかったなぁ。
「わかんないや。この世界のこと、まだなんにも知らないし」
そもそもそれを考えられるほど、私はまだこの世界のことをちゃんと知らない。恥ずかしながら、多分まだ独り立ちできる感じじゃないと思う。
「それなら……私と一緒に、来てくれませんか……?」
「いいの!?」
え、いいんですかアルテルさん。
一緒に行きたい、とはなんだか甘えてるみたいで言いづらかったけど、本当にアルテルと一緒にいていいのならこれほど心強いことはない。
「私……ユズと一緒に、旅をしたいです」
「旅? どんな旅なの?」
「私、戦争の途中に生まれて、平和な世界を知りません。だから、そんな世界を見る為に、旅をしています」
「平和、かぁ……」
とっても強くて、敵と戦う時は容赦ないアルテルだけど、思った通りその根っこはとっても優しい子なんだなって、改めて思った。
でも、そんな旅にどうして私が必要なんだろう。ここはちょっと訊いてみることにした。
「あとどうして、私なんか?」
「……可愛いです」
「か、かわ!?」
「それに私の知らない事、たくさん知っています。いろんな事、教えて欲しいです、から……」
「私の方が教わる事だらけになりそうだけどなぁ」
「平和な世界のこと、教えて欲しいです」
なんだかちょっと口説かれた気もするけど、それはさておいてアルテルに私が教えてあげられることってあるのかな。平和な世界って言っても、どこをどう教えればいいかわからないし。
でも、なるべく期待に応えられるように頑張らなくちゃ。
「あと……」
まだ何かあるみたい。私は耳を傾けるけど、そこから続く言葉に私は思わず吹き出すことになる。
「夜は……私のペットに、なってください」
「どういう意味!?」
ペット!? ペットって何!?
夜っていうと……まさか、えっちな事!?
「お楽しみ、です……」
「すっごい気になるんだけど! 何されるの私。ねぇ!」
「えへへ……」
「見たことない笑い方! 可愛い!」
ああ。私、何をされるんだろう。こんな可愛い子になら何をされてもいい気もしないことはないけど、私ちょっと不安です。
こんな感じでいまいち締まらないながらも、私はアルテルと旅をすることになった。いろんな出会いと苦難に満ちた、長い長い旅の始まりだ。