終末のアルテル   作:スグリ@あれこれ書いたりする人

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本作がSFではないのはこういうことです。


3【後半性的要素あり】

「ユズ、さん……」

「楽にしてて。私の服、貸してあげるから」

 

 女の子をずっと裸のままにしておくのは良くない。私はマフラーとベストを脱いでベストを助けた女の子の上半身に着せ、マフラーを腰に巻いてあげた。布面積はまあかなりアレだけど、裸よりはマシ。そう思うことにしよう。

 

 そして少しでもこの子が楽になれるように。膝枕をしてあげて、そっと頭を撫でながら。

 

 私は、始まってしまったアルテルの戦いに目を向けた。

 

「ハァッ!」

「くっ……」

 

 地を蹴り、渾身の力を込めて放たれたシューギの篭手の着いた剛腕を、アルテルが胸を守るように腕を交差させて受け止める。

 

「その華奢な身体でこれを受け止めるか。ならばッ!」

 

 続けて蹴り。アルテルは身体を捻って躱しながら、ナイフを振り上げシューギの顔に傷をつけた。

 

「やはり、見た目通りの強さではないな」

 

 顔の傷から流れ出る血を指で拭って、ぺろりと舐めながらシューギは言う。

 

 そして言葉を発することもなく、アルテルは飛び出すとナイフで勢い良く切りかかった。

 

 ナイフの間合いを見切り、シューギが避ける。

 

 外した。そう思った途端、分厚い胸筋から突然血が噴き出し、シューギは咄嗟に飛び退き距離を取ってきた。

 

「何が起きた!?」

 

 アルテルの攻撃は止まらない。華麗に舞うように突き、切り、鋭い攻撃を放つ。

 

 シューギも戦い慣れているみたいで、ナイフの刃は簡単に避けられて当たらない。だけどそれでも、シューギの身体には少しずつ傷がついていた。

 

「そういうことかッ!」

 

 何かに気付かれた。アルテルの攻撃をシューギは大袈裟に避け、しゃがみ込み、拳を打ち込んでくる。

 

「うぐっ……!」

 

 お腹にパンチを受け、姿勢を崩す前に飛び退くアルテル。

 

 そしてシューギは、言った。

 

「刃渡りの短いナイフで君がいとも簡単に人の首を切れる理由、見えたぞ。貴様が切っているのは、空気だ」

「気付き、ましたか」

 

 アルテルは頷く。けど、空気を切るって、どういうこと……?

 

「岩をも砕くであろうパワーと、音速を超えるスピード。そこに研ぎ澄まされた精密性が加わり、ナイフを振るう事で空気を切り裂き、見えない真空の刃を生み出している。とても人間業とは思えんがな」

「それに、気付くまで、生きていた人……あまり、いません」

「初めてでないのが残念だ」

 

 ちゃんと理解できるわけじゃないけど、アルテルがとんでもない事をしてたのはわかった。私の想像よりもずっと、アルテルが強かったってことも。

 

「改めて認めよう。貴様は強い。限りなく、最強に近い程に」

 

 シューギが構えた。……来る。

 

「故にッ! 俺は貴様を倒して糧とし、より高みへと! 最強へと近付くのだッ!!」

 

 猛攻。残像すら見える程のスピードの拳の連打。一撃一撃に普通の人なら一撃必殺の威力が込められたそれを、アルテルは躱し、受け止め、反撃していく。

 

「どうして、そんなに、力を……」

「最強でなければ、無双でなければならんのだ! 頂点以外は皆弱者! 踏みにじられるだけの虫ケラよッ!」

 

 お互いに血を撒き散らしながら、ナイフと拳、蹴りの応酬が繰り返される。追えるわけない。目がついていける筈のない凄まじい速さの戦いなのに、どうしてか私は二人の動きを追うことができた。

 

「かはっ……!」

「アルテル!?」

 

 シューギの重いパンチが、下からアルテルのお腹に突き刺さる。その威力でアルテルの小さな身体が打ち上げられ、天井に勢い良く叩きつけられた。

 

「俺は虫ケラにはならん! 虫ケラなんぞであってなるものか!」

 

 どさりと床に落ちたアルテルを見下ろしながら、シューギは高らかに叫ぶ。

 

 これで終わりじゃない。終わりなわけがない。だってアルテルは、私が知ってる最強の女の子なんだから。

 

「極論、です……」

 

 立ち上がった。立ち上がってくれた。

 

 滝のように血を吐き、頭からも血を流しながら、ふらつく足でアルテルは立ち上がる。その手から武器のナイフはもう落ちていて丸腰で。

 

 逃げて。

 

 いや、違う。

 

 言いたいのは……私が言うべきことは、そんなことじゃない!

 

「勝って、アルテルっ!」

「まだ立ち上がるか。ならば虫ケラのように死んで逝けッ!」

 

 ボロボロのアルテルに向かって、シューギが容赦なく拳を振り上げる。

 

 まだだ、目を背けるな。見届けろユズ!

 

 アルテルは、負けない!

 

「なっ……!」

 

 拳が振り下ろされた瞬間、シューギの右腕の肘から先がスパッと切れた。

 

【挿絵表示】

 

 アルテルが、笑った。

 

「私の、勝ち……です」

 

 そして、アルテルが素手で放った手刀がシューギの胸を貫く。

 

 アルテルの、勝ちだ。

 

「素手で、手刀で、刃を……」

「奥の手、です」

 

 これがアルテルの切り札。さっきまではナイフを使って真空の刃を繰り出してたけど、それをアルテルは素手でもできてしまうらしい。

 

 もしもの時の為に隠してある、正真正銘の奥の手なんだろう。

 

「俺にも、その力があれば……守れたというのに……」

 

 アルテルの手に胸を貫かれながらシューギは力を失って座り込み、枯れた声で語った。

 

「力がなければ、何もかも、こぼれ落ちてゆく……」

 

 きっと、それはシューギの戦う理由。強さを求めた理由。今となってはもう何もかもが遅過ぎる、とっくの昔にこの人が失ってしまったものだ。

 

「そうか、そうだったのか……」

 

 けれどそんな行き場のない怒りと悲しみで鬼になったシューギの表情が、すぐ目の前のアルテルを見た途端に憑き物が落ちたみたいに穏やかなものになった。

 

「迎えに、来てくれたんだな……タリサ……」

 

 きっと昔に守りきれなかった人が、アルテルの身体を借りて迎えに来てくれたんじゃないかな。少なくともシューギには、そう見えているんだと思う。

 

「守れなくて……ごめんな……」

 

 そう言って弱々しくなった力でアルテルを抱いて、大粒の涙を流しながら。最期にそう言うと腕がだらりと落ちて、シューギはアルテルに受け止められながら穏やかに死んでいった。多分、穏やかだったと思う。

 

「おわり、ました……ユズ……」

「終わったね、アルテル」

 

 今日この日まで、何人の人たちが攫われてここで殺されたかはわからない。きっと、数え切れないくらいの人たちが犠牲になったんだろう。

 

 でも、それもきっと今日で終わり。私たちが終わらせた。そうだよね、アルテル。

 

 

 

 

 

 古城での戦いの後、私はアルテルの手当を済ませるとTOSを使ってギルドの人たちを呼んで地下に捕まっていた人たちを助けに行った。

 

 お城の中のあまりにも悲惨な光景に吐き出すハンターの人たちも多い中、私も必死に吐き気を堪えながら仕事を頑張って。街に戻った後はベッドで寝て傷を癒やしてるアルテルの代わりに私がギルドで報酬を受け取った。すごい額に一瞬目眩がしたけど、この札束はアルテルのものだ。アルテルが命懸けで勝ち取ったお金だ。

 

 私は札束を奪われないようにアルテルの知り合いのハンターに守ってもらいながら、逃げるように宿に帰った。

 

 多分一生忘れられないトラウマになるかもしれない古城での事件はこうして幕を閉じて、それから一週間が経った。

 

 

 

 

 

「ユズ、ユズ……」

 

 痛い。

 

 恥ずかしい。

 

 気持ちいい。

 

 あれから一週間、私はずっとアルテルに身体を貪られていた。勿論、性的な意味で。

 

「アルテル……っ!」

 

 乱暴におっぱいを揉まれて、身体のあちこちを齧られて舐められて。食べ物を買いに行く時、食べる時以外はずっと裸で、四六時中ベッドの上で襲われる毎日。

 

 ずっとずっと、力尽きるまでえっちな事をされて、昼も夜も関係なしに疲れたら気絶するように眠って、起きては襲われての繰り返し。

 

「ひうっ!?」

 

 感覚が押し寄せて、ビクンと身体が跳ねた。

 

 身体を見下ろすと、アルテルが私のおっぱいを齧っていた。

 

 でも、今のアルテルは違う。いつものおスケベさんなアルテルとは違う。

 

 これまでのアルテルならえっちな事をする時は小悪魔みたいな可愛らしい笑い方をしてたのに、この一週間私を襲うアルテルはずっと辛そうで。

 

「ユズ、もっと……です……」

 

 あのお城で見た残酷な光景を、人をたくさん殺した感触を頭から追い出そうとして、アルテルは自暴自棄になって私を貪る。

 

 私も同じだ。あそこで見た酷いものを少しでも忘れる為に、アルテルからもらう痛みや気持ちよさにされるがままに身を委ねてる。痛い間は、気持ちいい間は頭の中を真っ白にできるから。

 

 多分、これは共依存ってやつだ。それも、とびっきりに良くないやつ。お互いに溺れて、辛い現実を忘れようとしてる。

 

 痛みと気持ちよさに溺れながら、回らない頭で考える。虚ろな目で襲ってくるアルテルを、拒めばよかったのかな。そもそも今のこれはこれでいいのか、悪いのか。

 

 考えてもしょうがない。これまで通り、されるがまま。何もかも投げ出して目を閉じようとしたその時、ドアからノックの音がした。

 

「お客さんだよ。出てあげな」

 

 この声は、宿の女将をしている若いお姉さんだ。女将さんはドア越しにそう言うと、私たちのお部屋の前を去っていった。

 

 多分、あの人にはかなり気を遣わせちゃってるなぁ。この一週間私たちがこんな感じなのを察してくれてか、なるべく触れないようにしてくれたり隣のお部屋に男の人を泊めないようにしてくれたり。

 

「行こっか、アルテル」

「行かない、で、ください……」

「大丈夫。アルテルも一緒だよ」

 

 とにかく私たちにお客さんが来てるなら、こうしちゃいられない。戦いでの強さはどこへやら、弱々しく甘えるアルテルに服を着せて私もさっと服を着ると、優しく手を引っ張りながら宿の外へと向かった。

 

 

 

 

 

「あの、お客さんって……」

 

 私たちにお客さんって誰なんだろう。

 

 心当たりがない中宿の外に出てみると、そこには杖をついた一人の女の子がいた。

 

「ユズさん、アルテルさん! この間は本当にありがとうございました!」

 

 なんだろう。初めて会うと思うんだけど、なんだか見覚えがあるような……。

 

「あっ、もしかしてあの時の!?」

「リリアといいます! よろしくお願いします!」

 

 思い出した。あのパーティー会場で捕まってて、アルテルが助けた子だ。元気そうで本当に良かった。

 

「脚、大丈夫?」

「まだ痛いですけど……杖をついて、なんとか頑張ってます」

 

 私が手当てをした脚の傷は、街に戻ってちゃんと治療してもらってもまだ痛いみたい。当たり前だよね。ナイフで肉を思いっきり削ぎ取られたんだから、多分一生残る傷になると思う。

 

 それでも杖をついてでも頑張って歩いてる。リリア、強いなぁ。

 

「それに私だけじゃないんですよ」

 

 リリアにそう言われて辺りを見渡すと、いつの間にかたくさんの人が私たちを囲んでた。え、どういうこと?

 

「あんたらのお陰で助かったよ!」

「この御恩は一生忘れません!」

 

 どうやらこの人たちみんな、あのお城に捕まってた人たちみたい。

 

「だってさ、アルテル」

「私が、助けた、人たち……?」

「アルテルさんが戦ってくれなかったら、ここにいる私たちみんなあのお城で食べられて死んでしまっていました」

「アルテルが、みんなを助けたんだよ」

 

 確かに助けられなかった命もあった。あそこで見た残酷な光景は、多分一生私たちの心の傷として残るだろう。

 

 だけど、それでも助けられた人たちとの出会いが少しでもアルテルを立ち直らせてくれるきっかけになればいいなぁと思う。私も頑張って立ち直るからさ。

 

「それはそうと……」

「ひゃっ!?」

 

 えっ、何!?

 

 リリアが急にしゃがみ込んだと思ったら、私の脚に顔をダイブしてきて……えぇっ!?

 

「ユズさんの太もも、なんですかこれ天使の太ももですか!? すべすべぷにぷにもちもちふわふわ……!」

「むうぅ……!」

 

 だめ、アルテルが拗ねてる!

 

 リリアは私の太ももに夢中で頬ずりしてて……これ、どういう状況なの。

 

「あの時ものすごく痛くて辛くて……でもこの包み込んでくれるような太ももが私の心を守ってくれたんです!」

 

 私のせいか。私のせいなのか。

 

 あの時は少しでも落ち着くといいなって思って膝枕をしてあげてたけど、どうやらそのせいでリリアを変な性癖に目覚めさせてしまったみたい。罪悪感!

 

「アルテルつねらないで! 痛い!」

「ユズは、私の、ペット、です」

「ペットだなんて失礼な。この太ももは天使、いや女神ですよ。女神の太ももですよ!」

「ユズは、おっぱいも、おしりも、すごいです」

「変な事で張り合わないで! 私が恥ずかしいだけだから!」

 

 結局最後はこんなはちゃめちゃで、私だけ公衆の面前でめちゃくちゃ恥ずかしい思いをして。アルテルもいつも通りの小悪魔に戻って一件落着だ。

 

 ところで私のだらしないぽっちゃりボディの、どこがそんなに魅力的なんだろう。

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