エウルア可愛い。
「ベルカス、この恨みは忘れないわ」
俺の目の前では1人の美女が立っていた。そしてその美しい貌を厳しく歪めて俺を睨みつけている。その腰には冷気を帯びた宝石、“神の目”が青く輝気を放つ。
うん、元素力溜まってるやん。コイツ、マジやん。
水晶のように透き通る髪を靡かせて彼女が大剣を構える。その姿はまるで舞を踊る直前のように凛として美しい……うん、この気持ちを口にしておこう。そうすれば彼女の誤解もきっと解けるだろう。よし!
「あれくらいでガタガタ言うんじゃねぇ!このツンデレ拗らせ尻デカ女!!」
次の瞬間、視界を埋め尽くしたのは吹雪と流麗な動きで放たれた大剣……の腹の部分だった。
うーん、間違えちゃったみたいですね!でもコイツに素直に頭を下げるなんて俺のプライドが許さねぇぜ!ちくしょうエウルア、許すまじ…っ!
そのまま家屋の窓を突き破ってぶっ飛ばされた俺は地面にぶっ転がり数メートルゴロゴロした後に大の字で倒れ伏す。グハァ、青空が青いゼェ。
●
モンド一の弓使いにして“無敵狩人“、ベルカス。それが俺様だ。モンドでは知らぬ者はいないであろうその名は、畏怖と尊敬を持って俺の毎日を彩っている。
「はぁ、それで今回は何をしたんですか?」
「え、やだなサラちゃん別に何もしてないぜ?ただあの女が急に不機嫌になって難癖つけてきたから尻デカ女のデカ尻をフルスイングで叩いただけですが?」
「それは、よく生きていましたね…」
「いや、あんなん見せられてたらもう衝動的にやっちゃうでしょ?大体ね?年頃の娘があんな格好でいるなんてけしからん話ですわ!」
俺はモンドでも有名なレストラン『鹿狩り』でランチをいただきながら看板娘のサラちゃんとお話し中だった。
うん、サラちゃんもなかなか良いスタイルをしていますがエウルアには及ばんねぇ。
「別に君のためにこの格好をしている訳ではないのだけど?」
サラちゃんが料理をする姿をカウンター越しに見ていると背後から氷のように冷たい声が聞こえる。冷気も感じる。うん、幽霊かな?
「あ、エウルアさん。今日もムッチムチの尻ですね?また叩かれに来たんですか?この暴力エロ尻女……あベェし!?」
うん、腹を殴られました。この馬鹿力めがっ!
「エウルアさん、いらっしゃいませ!」
「ごめんなさい、サラ。うちの隊員が邪魔をしたわね」
エウルア・ローレンス。
風の国モンドで大昔に隆盛を誇っていた名家、ローレンス家の出身にしてモンドの自警団、“西風騎士団“の遊撃小隊長でもある。
そして俺の幼馴染にして腐れ縁にして上司でもある。遺憾ですけどね!
「君の軽口は本当に閉じないわね?大体、朝のことは君が悪いんでしょう?私が楽しみにしていた、とっておきの蒲公英酒を昨日1人で飲んでしまったんだから…!」
「別に一杯飲んだだけだろーが。まだ半分以上残ってるしな。しっかり保存もしたし。そもそも俺の家に酒を置きすぎなんだよ!そんなに飲まれるのが嫌だったら自分ン家に置きやがれ!それか家で呑んでやがれ!!」
今朝の口論の続きが始まる。
そもそもエウルアは俺の家によく来て酒を飲む。モンドの酒場では家名が邪魔をして気持ちよく飲めないことが多々あるらしく、一度その場面に遭遇した俺が勢いで我が家を飲みの場として提供したことが始まりだった。
あの時はなぁ…周囲の奴らにムカついてたし、俺自身もかなり酔ってたからよく覚えてないが……まさかそこからズルズルと家を居酒屋代わりにされるとは…おつまみも作らされるしエウルア以外もたまに飲みに来るし…アルェー?俺のプライベート空間ないなった?
「このままじゃ居酒屋ベルカス開店しちゃうだろーが!ボトルキープかこのヤロウ!」
「何の話をしているのよ!?それに、家で開けても意味が…君と開けて飲みたかったから……」
エウルアが後半何やらボソボソ言っているが聞こえん。ハキハキ喋りなさいよ!サラちゃんは何やらニヤニヤしながら料理を作っている。
エウルアに近いからサラちゃんには聞こえたんかな?
「サラちゃーん、なんて言ってたの今?ベルカス様ごめんさい、とか?」
「えっと、ですね…エウルアさんはベルカスさんと…」
「サラっ!?っ、ふんっ!」
「ぱァあーーーっ!!?」
俺絶叫。
しかし、自分の声も聞こえない。エウルアが俺の両耳に掌打を叩き込んだからだ。一瞬の無音と脳にまで響く衝撃!視界がグニャグニャだぁ。うん、解せぬ。
「はぁはぁ……っ!あ、朝のことはもういいわ。それよりも仕事に行くわよ!」
俺が蹲っている間に、サラと何かを話し終わったエウルアが急に凛々しく仕事モードになった。
「まずは、ぐは、俺の聴力を奪おうとしたのを謝るべきではないですかねぇ?隊長様ぁ?」
「……別に謝ってもいいわよ?ただし私もお尻を触られているわけだから、ぜひ第三者に私の非があるかを聞いておきたいわ。例えば、私達のトップであるジンとかね?」
「うっし!些細なこと気にしてないで仕事行くかぁ!お仕事だーい好き!」
遊撃小隊現地物資調達係ベルカス・ナハト。
遊撃小隊のコマ使いにして、西風騎士団の社畜。それが俺の真実です。
クソっ、代理団長を出すのはズリぃだろ!ちなみに一度エウルアにやりすぎたことがありそん時に直々の“お説教“を受けたのは今でもトラウマだ。しかもディルックの旦那まで来やがって…あれ、動悸と頭に痛みが…っ!何気に権力者に可愛がられてるんだよなぁこの幼馴染。
俺が勝手に体調不良を起こしている中、襟首を掴まえて石畳の上を引きずって行くエウルア。いや、エウルア隊長様。うん、引き摺られながら下から躍動する尻を見るのも悪くないですね。背中がめちゃくちゃ痛いけどね!
「今日はダダウパの谷付近の巡回を…聞いてるかしら?」
「お前の尻ってメッチャクチャ柔らかそうだよな……」
「んなっ……何を、マジマジと見てるのよ!!」
「あちょ、ま!?」
「この恨みは、今晴らすわ……っ!」
エウルアの美麗な脚が俺の脳天に振り降ろされた。モンドは今日も平和である。
ああ、仕事したくねぇ。
拙い文章能力ですが、妄想の赴くままに書いていけたらと思いますm(__)m