波花騎士とは腐れ縁です   作:クタクタ88

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 前回の続きです。
 ディルックの旦那をお迎えしたい今日この頃です。ピックアップしてくだちい。
 


仕事終わりの晩酌 ~豚肉の油炒め~

 

 モンド城を囲む城壁の近くに建てられた小さな一軒家。屋根裏部屋を含めて2階建ての俺様のマイホームだ。ちなみになんだが、持ち家だ。すごいだろう?

 まぁそうじゃなきゃ居酒屋代わりになってたら速攻追い出されてるしな。遺憾ですけどね!

 

「ほーい、解体終わり。なかなか質のいいイノシシ様でラッキー」

 

 マイホームの真ん前、湖を眺められる原っぱ。なんということでしょう!そこには完璧に解体されたイノシシが、綺麗なお肉になっていましたとさ。

 え?倒したら一瞬で肉になる?なにそのファンタジー?城内に戻ってきたのが夕方頃ってことで、既にトップリと日が暮れているからサクサク行くぜ!

 さて、食べきれない肉は包んで『鹿狩り』にお裾分け。何やかんや昼飯やら飲みやらでお世話になってますからね。ついでに、ソーセージとハムに加工を依頼した。

 加工肉は日持ちするし、作っておいたらつまみとしては最高なんよなぁ。

 

『質のいいお肉をこんなに、いいんですか?え?それとは別にハムとソーセージを?それなら代金は結構です!』

 

 サラちゃんの御厚意で燻製代が浮いたところで、夕食兼晩酌の準備を始めますかね!加工品は後日受け取るとして、マイホームの台所に立つ!うーし、獣肉で美味しいの……作っちゃおっかな!

 あれ?俺様、任務終わってからもノンストップで働いてない?あれれぇー、任務以外でも社畜じゃない俺?

 

「ベルカス、もう解体を終わらせたのね。相変わらず早いわね。ご苦労様」

 

「昔っからどっかの誰かが腹をグーグー鳴らして待ってるのを見てたからかねー?自分でも解体と料理の腕はモンド1…いや、2、3位だと思ってるわ」

 

「そ、そんなにはしたないことしてないないわよ!!君の方は昔っから大物ばかり狙って返り討ちに遭っていたでしょ!気絶した君を毎回助けていたのは誰だと思っているの?この恨み、覚えておくわ」

 

「はぁー!?恨むよりも感謝しやがれよ!卵取りに木に登って降りられなくなったのを助けてやったのは誰だってーの?あぁん?」

 

 エウルアが突っかかってきますね。コイツは昔っからこうだよ。狙う獲物や、今日は何を食うかで揉めることも多かったわー。

 台所で料理をしながらもエウルアとギャーギャー言い合いをする。やれベルカスのせいで遺跡守衛から逃げ回る羽目になったやら、池で魚獲ろうとして溺れかけたエウルアを助けてやったのは俺だやら…

 うーん、懐かしいね!

 

「思い出した!あの時お前は……あ、待て、もうすぐ出来るわ。皿貰っていい?」

 

「え、あ、うん!これでいいかしら?」

 

 よし、後は軽く味付けして…完成やな。料理は継続しているぜぇ!優秀な俺様に拍手!

 

「はい、“豚肉の油炒め”大盛りっ、完成っ!」

 

 今夜のメインは任務中に獲れたイノシシ肉をたっぷりと使い肉多めにして絶雲の唐辛子と炒めた説明不要のガッツリおつまみ!

 これは酒に合うぜぇ。肉を喰らというこのコンセプトに対して満足のいくものを出せたであろう。

 あと付け合わせの千切りキャベツ。トマトと玉ねぎのサラダを用意。お肉だけだと飽きちゃうからね!お気遣いの紳士ベルカスです!

 

「いい匂い。毎度のことながら、流石ね」

 

「そういうのは食ってから言ってほしいけどな。だが、味には自信があるぜ!よし、始めっか!!」

 

「ええ、いただきます。あ、この前のお酒のボトル残ってたわよね。ベルカスも一緒でいいわよね?」

 

 リビングに置かれた質素なテーブルの上に並べられた食事を2人で向かい合って食べ始める。エウルアは慣れたもので、壁際の棚に雑多に置かれている酒瓶を物色する。

 マジでコイツ週5くらいで家に来てるし、何なら泊まってやがるからな。コイツ用のブランケットやらクッションやらがあるし、何なら俺のベッド奪われることも多々あるからな?

 

「ホテル・ベルカスかっ!ふざけるな!」

 

「はぁ、君急に叫び出す癖直した方がいいわよ?ほら、バカなこと言ってないで飲むわよ」

 

「はぁい。そんじゃ、乾杯ってことで。今回も馬車馬の如くよく働きましたわ」

 

「ええ、乾杯。いただくわね」

 

 俺とエウルアは木製コップに蒲公英酒を注いでお互いに杯を突き合わせ、一杯目を飲む。口の中に広がる何とも言えぬ酸味と甘み、そしてアルコール……うんめぇえ!!

 

「ぶっはぁ!そして今回のメインを…んぐっ、うん、美味しっ!!」

 

 酒を飲んだ後豚肉の油炒めを食べる。しっかりとした濃い味にギットギトの油の旨味が口いっぱいに広がる。我ながら最高にジャンクで酒に合う味付けになってるぜぇ!

 さてさて、向かいのエウルアさんの様子はどうかな?うんうん、いい顔して食べていますねぇ。まぁそこは流石に旧貴族、上品に食べてますね。

 

「はぐっ、はふっ……ゴクっ、ぷはっ……っふふ。美味し」

 

 油炒めを食べ、酒を煽ったエウルア。杯から口を話した後、その表情はふわりと緩む。まるで、幸せだと言わんばかりの普段の凛としたそれとはまったく違う顔。

 その後、暫くは酒と肉、時々サラダで箸休め…といった形で晩酌は進んでいった。その間、俺たちはダラダラと喋るのは他愛もないことばかりだ。

 

「ジンさん最近更に仕事中毒に磨きかかってない?この前アルベドにヤベー色のドリンク貰ってたぞ?」

 

「この前アンバーが偵察中に鉱石が沢山採取できそうなポイントを見つけたらしいわ。今度巡回任務中に行ってみましょうか?」

 

「クレーに爆弾で吹っ飛ばされたら、余波で近くにいたバーバラのスカートん中見えた…ふひ」

 

「ジンに伝えておくわね?」

 

「ヒェッ、ゴメっ!?」

 

 さてさてそんなやり取りをしながら時刻は深夜になり心地良く酔いも回ってきた頃、それは俺の何気ない言葉から始まった。始まってしまった…!

 

「しっかし、いつもそうやって笑ってればモンドでも騎士団でももっと好かれんだろーに」

 

「……何か言ったかしら?ベルカス?あら、コップが空いてるじゃない。ほら、注いで上げるわよ。ありがたく思いなさい」

 

「なんでもねー。あ、これ飲んだら次は他の酒開けん?この前ディルックの旦那に貰った璃月の酒あったろ?」

 

「……悪くないけど、確かスネージナヤの“炎水”もあったわよね?それも開けましょうよ」

 

 おいおい、“炎水”って言やぁエンジェルズシェアのバーテンダーが『強い』と明言した度数バカ高の酒だ。一口飲んだが喉が焼けるような感覚と一気に体に回るアルコールによって少量で止めておいたやつだ。

 まぁ、あの時は次の日巡回任務だったから日和ったが……ここは、しっかりと向き合っておくのも悪くないだろう。いや、今度は倒す!逃げはない!!何より、この女の前で!酒の席で!逃げはないっ!!

 

「おいおい、エウルアちゃん。まだ晩酌は始まったばっかだぜ?いいのか、そんなに飛ばしちまってよ?」

 

「あら、私は君の心配をしているのよ?明日はせっかくの非番だというのに無様に頭を抱えながらベッドの上で一日を過ごす……ベルカスが可哀想でしょ?」

 

「ああ、キレちまったよ……飲もうぜ?“炎水”……っ!!」

 

「決まりね。それじゃあ、始めましょうか?」

 

 ほろ酔い…どころか、まぁまぁ酔っているエウルアが笑みを浮かべる。

 俺は酒棚の奥から“炎水”の瓶を取り、エウルアは食器棚から小さなグラスを取り出して来て、テーブルに並べる。さぁて、準備は完了だ。

 

「ぶっ潰してやるぜぇ?乾杯!」

 

「下品ね。お酒は楽しく、優雅に楽しむものよ?乾杯」

 

 楽しく?優雅に?バカが!酔い潰してそのエロ尻をコッソリ揉みしだいてやるぜぇええ!!

 エウルアとほぼ同時に、俺は自分のグラスに注がれた透明な液体を、一気に飲み干した。

 

 *

 

 私は西風騎士団遊撃小隊隊長、エウルア・ローレンス。この自由の国で過去に悪逆を尽くした旧貴族の筆頭格の血筋。現在でも後ろ指を刺され、嫌悪の対象とされている存在だ。

 町を歩けば陰口を囁かれ、酷い時に石を投げられ物も売ってもらえない。公然として差別の対象とされることが私の人生の常識だった。

 

「ベルカース?ベルカスぅー?なによぉ、もお潰れたろぉ?」

 

「カヒュー、カヒュー……んガッ、世界が輝いてる……これが、平和なんだね…がふっ」

 

 そんな偏見と孤独に晒されていた私は今現在、暖かい家の中でローレンス家の者ではない1人の男と酒を飲んでいる。正確には、飲んでいた…といった表現が正しいかしらね?もっと言うと、酔い潰したと言った方がいいかしら?まぁ、私もかなり酔いが回っているけれど、今回は私の勝ちのようね。

 

「ベルカスぅ?聞いれるろぉ?」

 

 私の部下で西風騎士団の問題児。彼が問題を起こして私が尻拭いをするなんてことも少なくはない。何ならジンにだってよく説教を受けている。旧貴族の私よりも素行を指摘されるってどうなのかしら?

 

「別に私は、モンドや騎士団の人達に好かれなくていいの……」

 

 テーブルに突っ伏して涎を垂らし、眉間に皺を寄せて呻いている、お世辞にもかっこいいとは言えない男。真向かいで、全く同じ姿勢でテーブルに頬をつけて、彼を睨む。“炎水”を開ける前の彼の言葉に、少し…いや、まぁまぁ苛立ったのは自覚している。全く、こんなに付き合いが長いのに、この男は乙女心というものを本当にわかっていない。

 

「君とこうして下らない話をしてお酒を飲んで、最後は2人揃って酔い潰れる……それが私にとって、大切なのよ、ベルカス」

 

 豪邸とは到底言えないガタがきている一軒家。家具も安物ばかりで、ソファのスプリングも上質ではない。身を預けているテーブルなんて表面に傷がついたり、汚れが着いたり…ふふ、こんな所でほぼ毎日過ごしているなんて、ローレンスの親類が知ったら卒倒するんじゃないかしら?例え卒倒しようが、私はここに来るのを止めるつもっりはないけれど。

 

「ふふっ、私を置いへぇ先に寝りゅなんてぇ…この恨みぃ、覚へておくわぁ」

 

 はぁ、これは2人して明日は地獄ね。まぁ、それも悪くないかしら?

 最後に、目の前で苦しそうに呻いている私の大切な“味方”の頬を軽くつねり、ふわふわと温かい気持ちに包まれながら、私も意識を手放した。

 




 読んでいただきありがとうございますm(__)m

余談 
・ベルカスの家
 モンド城壁外周。ヘルターさんがいる裏門から左に出た辺りにある妄想。外見は塵歌壺の『古風な田舎の家屋』。

・ディルックとジン
 ベルカスとエウルアが騎士団に入る前から知り合いで二人にとって兄と姉のみたいなポジションという妄想。なので、色々世話を焼くことがあると良き。エウルアは他人行儀な関りをするが、内心ちゃんと好きだと萌える。
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