もし読んでくれている方がいましたら、ありがてぇm(__)m
「うぉーお、作ってる作ってる。アイツらなかなか勤労意欲高いよなぁ」
今回の任務は星落ちの谷。そして、少し先には見えるは、何やら巨大な骨のようなものと木材を組み合わせて作ったトーテム。トーテム?まぁ、独特な建造物が複数。
はい、みんな大好きヒルチャール達です。今回は建造物の破壊が目的だ。
げへへ、最近ストレスも溜まってるしな。ちょうどいい、存分にぶっ壊してやる!
「ベルカスさん、油断は禁物ですよ。まずは相手の動きをしっかり観察して、地の利を活かしましょう」
俺の個人的な恨みによる破壊衝動を察したのか、隣から一人の少年は声をかけてくる。
柔らかい金髪に青を基調とした衣服。特徴的なのは腰に提げられた大きな手帳。
「ま、お前ならそう言うわな。遠征帰りですげー成長したって周りから聞いてたからどんなスーパーマンになってるかと思ってたけど、安心したわ。ミカきゅん、お帰りぃ」
「いや、気色悪いですよ!?それに、スーパーマンってなんですか?僕は僕のままですよ!」
目の前でツッコミを入れるコイツの名前はミカ。我らが遊撃小隊の優秀な前進測量士である。遊撃小隊での歴は長く、俺に次いで位の古参だったはずだ。
最近までは大団長殿の遠征に同行していたため不在だったが少し前にモンドに帰って来たのだ。
「ご謙遜すんなって。なんたって大団長殿のお墨付きなんだからよ。それに俺らとしてはお前が無事に帰ってきたってのが大事なんだぜ?」
「ベルカスさん…!」
「これでエウルアから振られる仕事を押し付け……いや、分担できるぜ!イヤッフーウ!!」
「そういう人でしたよね。はぁ、感動して損しました」
ダメな大人を見てやるせない、そんな表情のミカ。おい、やめろ!そんな目で見るんじゃねぇよ。
コイツ物凄い謙虚で冗談とかも真にに受けるのに、何故か俺の時は対応が冷たかったりするんだよなぁ。何?俺がモンドでも屈指のダメ人間だから?
「とにかく始めましょう。ベルカスさん、僕が先行します。精密射撃!」
俺とのやり取りもそこそこに、ミカが動いた。ヒルチャールの一体にボウガンで遠距離で一撃。すかさず接近して槍で追撃を行う。
今回の俺との編成だと長柄を扱えるミカの方が前衛にはなるのだが、迷いはない槍捌きは遠征に行く前とは違った迫力と自信が動きに現れていた。おいおい、マジで成長がすごいことになってるんですけどぉ?
「あ、ちょ、まだ準備が…!えっと、援護は任せろい!」
その動きに付いて行けずにオロオロする俺様。とりあえず弓を構えてミカの近くのヒルチャールを撃ちまくる。とにかく今は戦ってる風な感じで切り抜けるぜ!
「よしっ、一つ破壊しました!残りもあと少しで…!」
「ミカっ、増援来たぞ!」
有能少年の活躍によって既にトーテムは一つ倒壊。残りの一つもガタピシいっているその時、どこからともなく数体のヒルチャールがやってきた。お決まりの増援ですね。知ってます。
「いつもありがとうございまーす!」
「何ですかそれ?おっと、速射牽制!」
日頃のご愛顧に感謝しつつ、弓で小さな奴らは確実に撃ち倒す。ミカもボウガンの早撃ちで器用に間合いを保ち接近戦を継続している。槍が届く距離に相手が入るとすかさず一撃をお見舞いして、複数のヒルチャール相手でも危なげなく戦っているのがわかる。
「やるねぇ、お兄さんも頑張らんとね!ってわけで、ラァーイ!!」
俺様のスキル、『鉄鉱の一矢』を発動!岩元素を帯びた弓矢が放たれ、トーテムに直撃ぃ!
「そして、破壊ぃい!ん気持ちぃい!!」
「あ、ベルカスさん、まだ高台の弓兵が…」
身体を駆け巡るエクスタシーを感じていたら、何やら飛来する紫電。あ、しまっ!
「ほげぇぇええ!?」
バチバチと感電しながらぶっ飛ぶ俺様のいっちょ上がり。はい、オチもしっかりつきましたね。ヒルチャール戦では視界の外の弓チャールに注意するんだ!ベルカスお兄さんとの約束だぞ?
●
場所は変わってモンド城が見える少し高い丘の草っぱら。そこで俺とミカは腰を下ろして一休み。俺としてはもう帰って一杯やりたい位には働いた感があるんだが。
「次は東の方に行ってみましょう。報告によると氷スライムが集まっている池があるらしいので」
「お前本当に仕事好きねぇ。今は昼休みなんだからそういうのは後にしようぜぇ」
「あ、はい。少し待ってください。今測量した内容を記載しているので」
「んとに、そういうとこも変わってないな。ほら、渡しとくから自分のタイミングで食えよ?」
俺様が独自に……アルベドにぐずってカスタムメイドしてもらった補給袋から二つ紙包を取り出し、一つをミカに渡す。
今日の昼飯、モラミートだ。パンのような生地にひき肉をたっぷり挟んだ割とシンプルな料理だが、これが美味い。更に俺様特製のスパイスとタレを使って旨味をブーストしているのだ。
「あ、これ僕がまだ遠征に行く前にもよく作ってくれてましたね。相変わらず、いい匂いですね…」
「ふふ、更に腕を上げているぜ?ほら、食ってみろ、トぶぞ?」
ミカは手帳を閉じ、受け取ったモラミートをパクりとひと齧りする。うん、美少年は食べるだけであざといな。
「っ!はむ、もぐっ、美味しいです!」
「ぐふふ、そうだそうだ食っとけ食っとけ。俺らはいつ戦闘になるかわかんねぇだからさ。食える時くらい美味いもん食っとこうぜ」
最初は小さな口で齧っていたミカも今はガブリとかぶりついて頬張りながら味わっている。その姿を見て、漸く俺も自分の分を食べ始める。うん、流石は俺様ですね。男の子が好きな濃い目の味付けの肉と、外を包むふんわり食感の生地。バリバリ動き回る我ら遊撃小隊に必要不可欠な糖分、塩分、たんぱく質に炭水化物が身体を駆け巡る……ような気がする。うん、つまりは美味いってことですね!
「ふぅ、ご馳走様でした。相変わらず料理上手ですね。とっても美味しかったです」
「せやろせやろ。今度はお前の好きな冒険者エッグバーガーも作ってやるよ。あれは出先だと食べにくいから、俺の家とかで良ければだけどな」
「ああ、居酒屋ベルカスですね。わかりました!」
「そうそう、居酒屋ベルカス………ん?あれ?ちょっと待って」
休憩と昼食を済ませた俺たちは再び巡回を開始し、城の周りのモンスターを倒したり、鉱石やたんぽぽの種の採取をしたりし、夕方頃には騎士団本部に到着した。
ちなみに、道中ミカに聞いたところ俺の家はやっぱり居酒屋認定されているらしい。そうだよなぁ、この前なんかガイアの兄貴とロサリア姐さんが二次会的な乗りで来襲したからなぁ。まぁテキトーにつまみ作ったけど。あれ?俺にも責任の一端ある?
「ベルカスさん、今日はありがとうございました」
「別にお礼言われることなんてねぇだろ。2人で巡回に行ってんだから。俺は俺でお前がテキパキやってくれるから楽できたしな」
「いえ、その、遠征から戻って、早く元々の任務の感覚を取り戻さないとって、少し気負い過ぎていた気もするんです。なので、ベルカスさんの変わらない怠惰さで肩の力が抜けた気がします。流石ですね!」
「褒めてるそれ?ねぇ、ミカきゅん?」
すっごい優しい笑顔だったから素直に感謝を受け取るしかできなかったが、この子本当に俺には遠慮しねぇな。まぁ、良い方向に行ったのならね、いいんだけどね。
さて、本部で今回の巡回報告を済ませて俺達は城下町で別れる予定だったが、ミカが俺を呼び止めた。
「ベルカスさん、少し気になることがあるんです。報告は既に済ませたんですが」
「ほう、聞こうか?」
「あの、エンジェルズシェアを見ていて一切こっちに目線合ってないんですけど?ベルカスさん?ねぇ!」
俺は既にこの後の晩酌のことで頭がいっぱいだったので悟られないようにキリッとしてみたんだが、目線は正直だったようだ。ゴメェン、ミカぁ。
「遺跡守衛を見かけない?」
「はい。遠征前に測量した数字と比べると、今回周った地域は少ないように感じました」
「でもまぁ、いいことじゃね?アイツら普通に人を襲うし」
「それはそうなんですが、小さな変化でも警戒することが大事だと今回の遠征で学んだので、ベルカスさんにも伝えておこうと思ったんです」
「ああ、俺も巡回中気にして周り見ておくわ。安心しとけ」
もちろん、杞憂で済むとは思っているんですけど。そう言ってミカは苦笑いする。しかし、その眼は真剣そのものだ。それを見て俺も気持ちを入れ替える。コイツは本当に頼もしくなったね。うん、追い越されるかもしれぬ…
「もうとっくに追い越されていると思うけれど?」
「まだだろ!俺の方が背高ぇーし!!それに最強の元素爆発もあるしぃ……って、エウルアさん、お疲れっすぅー」
「あ、エウルアさん!お疲れ様です、本日の任務、無事完了しました!」
いつの間にか俺の後ろには隊長様がいましたとさ。おやおや、若干顔が疲れているように見えるな。最近は珍しく外回りよりも本部での内勤が多いんだよなぁ、やっぱ隊長格は大変よなぁ。うん、気楽な立場でこれからも行こう。
そんなことを考えていると、エウルアと目が合った。すると、彼女の瞼がキュッと締められる。あれ?なんか機嫌良くなくない?
「…ええ、ミカ、ご苦労様。本部でも君の話題が出ているわ。随分腕をあげたってね。私も鼻が高いわ」
「い、いえ!僕はまだまだです!これからも頑張ります!」
「おいおい、とりあえず今日のお仕事は終わってんだからさっさと解散しようぜ。ってわけで、俺はこっちだから!」
ミカに対して優しく微笑んだエウルア。だからこそ嫌な予感がガンガンと警鐘を鳴らしている。ここは一刻も早くエンジェルズシェアに避難して今日の自分にご褒美をあげるべきだ。そうすることを強いられているんだ!
「待ちなさい」
「グェっぷす!?」
ダメでしたね。隊長ハンドで思いっきりマントの襟首を引っ掴まれました。くそっ、なんて膂力だ。伊達に大剣ブン回してねぇなオイ!
「何だよ?オフくらい好きにさせろっての」
「今日、本部でガイアに会ったんだけど、その時にベルカスが作ったつまみがとても美味しかったって言われてね?」
「あぁ?それがどうしたんだよ?」
「ベルカス、私がここ数日本部でずっと内勤だったのは知ってるわよね?家にも帰らずに、溜まっていた書類を黙々と片づけていたの。誰かさんの始末書とかね?」
おっと、ここまで来て嫌な予感をビンビン感じちゃったぜ。エウルアの目が据わっている。そして、身に覚えがあり過ぎる…!
「ねぇ?何で君の不始末の書類を処理している私がお酒もおつまみにもありつけず、ガイアの奴が君の作ったおつまみを食べて私にマウントを取ってくるのかしら?この恨みは、誰に晴らせばいいのかしら?ねぇ、ベルカス?君はどうすればいいと思うか教えてくれないかしら?徹夜明けで、明日非番である私に……!」
「あ、あわわわ…!?」
よく見るとガッツリ目の下にクマが出来てる隊長殿。そして、口に手を当ててオロオロしながら俺とエウルアを見守っているミカきゅん。うん、落ち着けよミカ。答えは出ているぜ?
「…飲みましょう。腕によりをかけてつまみも作ります。あと俺の始末書の処理、誠にありがとうございました。靴、舐めましょうか?」
「いらないわ。さ、君の家行くわよ?」
「ベルカスさん、その、お疲れ様です…」
エンジェルズシェアに背を向けて、エウルア閣下と我が家に向かう。うひぃー、エウルアちゃんの声低っくかったなぁー。慣れないデスクワークと酒飲めてないストレスが突破してたんだろうなぁ。
ミカは今から弓で射られる橋の上の小鳥を見るような眼で俺を見送った。