あと、感想を下さった方々、ものっすっごく励みになりましたm(__)m
こんな更新頻度で読んでくれている方いて感謝しておりやすm(__)m
「ベルカス、それじゃ、始めてもらっていいかしら?」
「はい。始めさせていただきます。ところで何が食べたいのでしょうか?教えていただいてよろしいでしょうか?」
ここは居酒屋ベルカス。もとい、俺の住処のボロい家屋。でも、今日は絶対居酒屋ベルカスじゃないといけないんですだって目の前のエウルアがとんでもなく鋭い目つきで見下ろして来るかららららら。
あ、当然のように今跪いてます。傅いてます。寛げる我が家?ねぇよ!!
「食べたいもの…ね」
「は、はい!全身全霊で作らせていただきます!」
よし!食いたいものさえわかればこっちのもんよ!こちとらガキの頃からコイツの好みは知っているし、料理のレパートリーも蓄えている。こーんな胸と尻だけ育った高飛車女の機嫌なんてすーぐに直してやるわ!
「任せるわ」
「え?いや、でも」
「任せるわ」
「あ、ちょ、ヒントとか」
「任せるわ」
「あ、スぅー……はい」
終わったぁー。ノーヒントぉー。冷気を漂わせながらクマの出来た眼でこっちじっと見つめるエウルアさんこえぇ。任せるわ(氷元素)こえぇえ!作るしかない。アイツが食べたい料理を。え?これなんて料理バトル漫画?
しかし、その前に…
「はい、コレ」
「え?なによこれ?」
「俺様特製、温熱アイマスク。これ着けて1時間くらい寝ろ。その間に作っておくからよ」
「別に平気よ。それに今寝たら、きっと起きれないわ。……そうなったら…その、やっと君と過ごせるのに」
最後の方はものっすごく小さい声で聞こえなかったが、どうやらエウルアは爆睡こいて飯を食いっぱぐれるのが嫌らしい。まったく、ガキの頃から食い意地張りやがってよ。大人になって割かし上品になってきたかと思ったらこれよ。ぷぷぅ!
「何か失礼なことを考えているわね?」
「ひぃ、すみません!でも、とりあえずマジで少し寝とけっての。ちゃんと起こしてやっからよ。そのマスク、効果は数分であんま実用性はないけど寝付く前にはちょうどいいんだよ。な?」
「でも…」
「いきなりとはいえ、せっかくお前と飲むのにそんな疲れた顔されてたらつまんねぇんだよ。俺はっ、お前とはっ、楽しく飲みてぇし食いてぇの!おわかり?」
「なっ!?なにを、い、言って…ちょ、わかった!わかったわよ。ほら、それを貸しなさい。でも、1時間よ?ちゃんと起こしなさいよ?」
エウルアは一瞬顔を真っ赤にした後、アイマスクを奪い取ってソファに向かっていく。グフフ、押し切ってやったぜ。しかし、ワンチャンこのままぐっすり眠ってもらうのもありなのではないだろうか?アイツかなり疲れてるし、隊長を気遣って行動だったらそれはもうしょうがないのではないだろうか?そしてコイツが眠っている間にエンジェルズシェアに…!
「あ、そうだベルカス。もし起こさなかったら……うん、その時に教えるわね♪」
「あっ、スゥー、大丈夫ですぅ死んでも起こすんでぇ。そうしないと殺さ…死んじゃうんでキッチリ時間通りに起こしますぅ、邪なこと考えてすみませんでしたぁ」
仮眠に向かうエウルア様の目線と弾むような声は、‟起こさなかったら殺す”という意思をしっかりハッキリ俺に届けてくれた。
よぉーし、腕によりをかけておいしいの作っちゃうぞぉー!そして機嫌を直してもらうぞぉー!この前いい松茸採れたし、まずはアレ作るかぁ。
●
キッチリ1時間経ち、ソファで横になっているエウルアを起こす。あ、こいつ俺のブランケットに包まりやがって自分のやつ持ち込んでるだろーが。あと、妙に口元が緩んでやがんのもムカつくぜ!
「んぅ、んふふ…ベル…」
「起きろー、このネボスケお尻め!」
「うっ…………あ゛ぁ?」
「ヒっ、ごめぅゲぇふっ!」
うん、起こし方をね、間違えましたね。アイマスクを引っ張って、パッチンしただけなんですけどね?ヒルチャール王者みてぇーな低っきぃ声と同時に痛烈な蹴りをいただきました。痛ったーい。
ソファからモソモソと起き上がるエウルアの顔は、1時間前とは明らかに血色が違う。流石は俺様特製アイマスク!ティマイオスをネチネチ詰めて…いや協力を仰いで作ってもらった甲斐があるぜ。
「今日のメニューはコレじゃーい」
「へぇ、いいじゃない!」
オンボロ机の上には、3品の大皿。うーん、ミッチリ並べる感じになってしまったが、まぁ見た目豪華だからよし!
「つーわけで、今日はチ虎魚焼き、かにみそ豆腐、そして松茸の肉巻きだ!」
「璃月料理ね、最近あまり食べてないし、うん…いいんじゃないの?」
「素直じゃねぇー、まぁいいや。ホラ、食うぞ。睡眠取ったら次は栄養だ!」
いそいそと卓に着き、取り皿にかにみそ豆腐をよそってエウルアに渡す。さぁ食え食え。まずは口当たり優しいものを食いなさい。
かにみそ豆腐はモンドで獲れた太陽ガニを使い、身も混ぜている。身には特製スパイスを軽く振っているため、ややモンド風の味付けに。ベルカスアレンジですね!
「いただきます。ん、うん…!美味しいじゃない。かにみそって癖があると思っていたけど、いい味付けね!」
「そこは俺様の味付けの賜物よ!」
「次は、はむ…モグ、魚も好みの味だわ。あ、ベルカス、お肉も取って」
「へぇへぇ、松茸は良いの使ってるから歯応えも風味もいいぞぉ」
1時間そこらで大丈夫かとは思ったが、そんな俺の考えは杞憂だったようでエウルアちゃんはパクパク…いや、バクバクと料理を食べていく。くくく、美味かろう。松茸はとっておきのやつを使ったし、チ虎魚焼きもタレに漬ける時間は足りなかったが、濃いめの味付けのを身にしっかり揉み込んでいるから酒が進むであろう!
お馴染みの蒲公英酒と璃月産の地酒を出し、食事を食べながら飲んでいく。うーん、うめぇ!
「ところであのアイマスク、なかなかいい出来よね。いつの間に作ったのかしら?」
「そりゃ、ティマイオスを脅し…いや、アドバイスをもらってだな」
「…今日処理した陳情書の中に遊撃隊の極一部に無理な錬金依頼をされるって書いてあったわね。何か知ってるかしら?」
「しゅいましぇん」
時折仕事の話になりながらも、いつも通りに時間は進んで行く。今回はエウルアの愚痴…主に本部に缶詰めだった時のことが多かったが。本部はお偉いさんやらインテリ共が多いからなぁ、くわばらくわばら。
その後2時間程雑談しながら酒を煽る。ミカの成長が著しいが、それに比べて俺は…とか、最近錬金術で作られたポーションが流行っているとか、それこそ今度璃月に行って本場の味を食ってみたいとか……そんなもん。そんなもんだ。
それでも、コイツは外で見たことない位に大笑いするし、距離も近いし、時々見惚れちまう位にその、なんだ…うん何でもない!酔ってるからだ。うん、なんやかんやでコイツと飲むのがしっくり来るってことなんだろなぁ‥…
「ま、まぁガキの頃からの腐れ縁だからな!うん!腐れ縁!」
「んむぅ、ベルカスぅ、うるさいぃ、あと、おかわりぃ、ヒック」
「おぅ、今日は特に酔うの早いな。まぁ、徹夜続きつってたからこんなもんかぁ。ほれ、水飲め水」
「られがぁ、酔ってるってのよぉ…水じゃなくて、お酒ぇ、まらまらぁ、飲むわよぉ~、はふぅ」
「はいはい、寝るんならベッド……いや、二階までは無理っぽいからソファ行けほら」
「あぅ、じゃあ、はい」
顔を赤くしながら、眠たげな瞼をしっとりと濡らし、俺を見るエウルア。その両手は何かを待ち構えるように広げられている。口は真一文字に結ばれて、最早語ることはないと言わんばかりだ。こぉいつよぉ…マジでよぉ…
「……いや、自分でよぉ、行けよぉ…」
「んっ!」
「だからよぉ」
「んっ!!」
「ぐぎぎ、ふぅ、はぁ~……わかったよ」
渋々とエウルアに肩を貸す形で抱き上げる。え?正面から?できるわけねぇだろ!コイツ尻だけじゃねぇんだぞ!?胸部装甲も分厚いんだぞ?流石の無敵狩人の俺でも理性は無敵じゃねぇんだよ!あとエウルアてめぇよ、なにを不満げな顔してんだコラ。こっちがどんだけ配慮してると思ってやがんだオイ。
ぬぐぅ、左側にすごい圧を感じる。しかも、固くない。ものっすごく柔らけぇ圧……!俺の理性が押し込まれていくぅ!ちきしょうがぁ!!
「おら寝ろ。明日休みなんだろ?俺は明日は」
「……昼から巡回任務。知ってるわよ」
「は?今お前…」
「ふわぁ~、寝るわぁ……はふぅ」
一瞬、エウルアの声が理性を取り戻した気がしたが、ソファのクッションに埋められた赤ら顔は酔っ払いのそれだ。ああ、ビビったような、残念なような……名残惜しさから寝ているはずのエウルアをもう一度見つめる。あれ?おかしいぞ、俺近づいてってね?アルェ?やばいやばい、もうエウルアの近くに戻ってきちゃってんじゃん。
ソファに横になっているがその豊満さを隠さず美しい曲線と瑞々しさを感じさせる太もも、丸まったことで逆に強調されている胸元が俺の眼球に焼き付くように情報を叩きつけてくる。
ああ、やっべぇ…………理性くん、さよなら。
飲んでる時に上着を取っ払っていたため、剥き出しになった肩。陶器みてーなそれに吸い込まれるように手が触れそうになるその時、頭ん中にある光景が思い出された。
まだエウルアの言う復讐を何にもわかってなかった頃。その時に見た光景。復讐を誓いながら、誰よりも気高くて、誇り高くて、何より美しかった、エウルアが神の眼差しを受けた、その時の光景。その時の気持ちも、思い出した。
―ああ、綺麗だ。綺麗すぎる。俺とは違う。違い過ぎる、薄汚い俺なんかとは―
気が付くと俺の手は、エウルアの美しい水色の髪に触れていた。うお、スッゲェいい肌触り。うん、これが限界だ。俺には。俺みてーな、半端もんには。今度こそ、その場を離れる。
「意気地なし」
……なんか聞こえた気がしたが、俺はそのまま食器を片付けて台所へ向かう。
「あぁーぁ」
本当に意気地なしなのだから、俺はエウルアになんも言えずに、食器を洗うことしかできないのだ。
●
side:エウルア
ベルカスがため息を吐きながら私をソファに連れていく。肩を貸す形で…それが不満で、フラついたフリをして思い切り胸を押し当てる。
「んぎっ!?」
ベルカスは素っ頓狂な声を出しながらも、ギクシャクとした動きでソファまで私を連れていく。思いっきり意識している癖に、必死で何かを抑えている微妙な表情を横目で見た後、ゆっくりとソファに横たわる。なによ…ホッとした顔しちゃって。
「おら寝ろ。明日休みなんだろ?俺は明日は」
「…………昼から巡回任務。知ってるわよ」
頭を掻きながら、テーブルに戻ろうとするベルカスにそう言ってやると、一瞬驚いたように彼が振り返るが、私が欠伸をしてさっさと寝る態勢に入ったのを見て、そのままテーブルの上を片付け始める。
なによ……今、絶好のチャンスじゃないわけ?決して傲るつもりではないが、私は傍目から見て、決して見た目は悪くないはずだ。それには当然、体つきだって入っている。ただ、旧貴族という肩書きがそれら全てを覆い隠していることも自覚しているのだけれど。
ベルカスに至っては、そんな肩書きは関係ないはずだ。伊達に10年以上の付き合いではない……と思っている。え?そうよね?だってあんなに嫌がっていた騎士団にも私が頼んだら入ってくれたし。そもそも、私の復讐を手伝うって言っていたし!ドラゴンスパインでは死にそうになりながら私の隣にいるって言ってくれたし!
頭の中でぐるぐると巡るネガティブな考えが浮かんでは振り払っていると、床が軋む音に気がついた。ベルカスが近づいてきている?え?酔ってる振りして煽ってたことに気がついた?え?もしかして、え?いざ今日ってなるとそれはそれで心の準備が…!?
サラリ、と頭を触れられる心地よい感触。それが2、3回続いた後、気配は離れて台所に向かっていく。
「意気地なし」
本当に、意気地なしだ。もう一度、今度は口には出さず胸の内だけでそう呟いて、私は眠気に全て丸投げしたのだった。
読んで下さりありがとうございましたm(__)m