そして、感想いただいている方々、励みになります!ありがとうございます!
ある晴れた昼下がり。俺は1人で城下町の巡回をダラダラと行っていた。片手には串焼きを携え、気分は食べ歩きだ。ちなみに我らが隊長は緊急会議とかで騎士団本部へ招集されている。内勤週間が落ち着いたと思ったらね…!可哀想に!ブハハハ!
そう思っていた時期が俺にもありました。
「遺跡守衛の討伐ぅ?えぇー、ヤダァ」
モンドの冒険者協会受付で俺は黒髪の美女に心底嫌そうな感じを出してそう言った。
「流石は西風騎士の中でも皆様が噂をするベルカスさんです!ではよろしくお願いしますね!」
「キャサリンたん、聞いてた?俺、ヤダって言って…」
「騎士団の上の方にも話は通っていますので、心置きなく行ってきてくださいね!」
「あの…ちょ…」
「モウ一度、オ試シクダサイ」
「ヒュっ、え?」
「再起動シマス」
「あ、っスぅ〜……っ依頼、受けます」
「ありがとうございます!あ、詳しいことはこちらの手紙をご覧になってください」
思わず依頼を了承し、足早にその場を離れた城下の噴水広場で立ち止まった。
うん、言いたい事はわかる。だが何も言うな。わかっている。俺は面倒な依頼を押し付けられたんだ。
あと、最後のキャサリンちゃんなに?え、スッゲー無機質な声だったんだけど?怖すぎぃ。
「はぁ、遺跡守衛って物理ダメージあんま通らないんだよなぁ。めんどぉ」
騎士団に話が通っているってことは遊撃小隊への正式な任務と受け取っていいだろう。しかし、俺を指名するなんて、どこのどいつだぁ?文句言ってやるぁ!
苛立ちと共に手紙を開封すると、そこには整然とした筆跡で数行の文字が記されていた。
ー冒険者協会から蒼風の高地で遺跡守衛が徘徊していると相談があった。対応できそうな冒険者は残念なことに別件で動けないらしい。困っているキャサリンに俺は我が騎士団の誇る優秀な騎士、ベルカス・ナハトを推薦しておいた。存分にその力を振るってくれよ?
お前を信頼する兄貴分にして、カードの負け分50000モラの返済をゆっくりと待っているガイアより。
追伸、頼りになる友人がいれば是非とも連れて行くといい。もちろん、騎士団から報酬も払おう。人望の厚いお前なら簡単だろう?ー
「脅迫文だコレ」
騎士団の騎兵隊隊長ガイア様直々の手紙には、『この前の負け分の返済はゆっくりと待ってやるからこの依頼を受けろ』と書いてありました。ハッキリわかんだね。
しかし、これでいよいよ逃げられなくなった。マジで討伐のために頭を使わないといかんな。
「さぁーてと、まずは戦力の補強だよなぁ。シールド持ちは欲しいよなぁ。あと前衛も。欲を言えば両方持っている奴とか」
溜め息を吐きながら、頭を抱える。
そんな都合よく、シールド持ってて前衛で戦える奴なんてねいねーよなぁ。
「ベルカス様?珍しいですね、この時間に城下町にいらっしゃるなんて」
「いたわ。シールド持ちの前衛ガチタンクスーパーメイドが」
「え、ガチタンク?あの、メイドではありますが…」
声をかけてきたのはメイド服の上に鎧を着込んだ1人の少女。肩口あたりでカットした白銀の髪と翡翠の瞳。
「いやごめん、こっちの話だわ。俺は今絶賛お仕事中よ。そんでさ、そのお仕事、手伝ってくれない?ノエルちゃん」
「はい!お任せください!」
「返事早ーい。え、マジで大丈夫?」
「はい。今日は特に急ぎの手伝いはありませんし、問題ありません。ですが、エウルア様は本日はご一緒ではないのですか?」
「あのお尻は今モンド城でお話中よ。そんで、いきなり遺跡守衛の討伐任務が入っちゃってさ。弓使いの俺1人じゃキツそうだからノエルちゃんがいてくれるんならすげー助かるんだわ」
西風騎士団のメイドにして“見習い騎士“ノエル。
既に7回試験に落ちているが、その不屈の精神で未だに騎士の夢を諦めずモンド城どころかモンド城下町で日々誰かの役に立つために邁進している頑張り屋さんだ。
俺も周囲からノエルの活躍を引き合いに出されて日頃の行いをチクチク言われたりしているが、ノエルの働きを出されたら黙るしかない。それ位に彼女は働き者なのだ。
「あ、ですが出発は10分ほどお待ちいただけますか?買い物を済ませて騎士団に届けたらすぐに同行しますので!」
「え、全然大丈夫だけど…10分ておま、何なら出発は1時間位後でも…」
「いいえ!私のことでベルカス様の時間を浪費する訳にはいきません!すぐに戻ってきますので城門前でお待ちください!では!!」
「あ、ちょ」
俺が何かを言う前に、ノエルちゃんは広場から上層に上がる階段を駆け上がっていく。うん、すんげースピード。ノエルちゃん、身体能力高いんだよなぁ。あれで何で騎士選抜抜けられねーんだろーなぁ。てゆーか俺はよく入団できたもんだよなぁ。
ふと、手に持っている串焼きを見る。俺は任務中に買い食いをしてブラブラしている。一方、ノエルは騎士団の雑事を行い、急な俺の誘いにも嫌な顔せず一生懸命に頑張っている。
「………なんか、申し訳無くなってきたなぁ、色々と」
すっかり冷えた串焼きを口に運び、俺はノエルちゃんを待った。串焼きうめぇ。
「そういや、遺跡守衛っていえば、ミカがなんか言ってた気がするなぁ」
一週間程前の記憶だし、あの夜はエウルアとmぁまぁ飲んだからよく思い出せん。あの日のことは……うん、別の事は思い出せなくもないが…いや、思い出せん!!エウルアも朝はいつも通りだったし、大丈夫なはずだ。大丈夫だよね?
●
「それでは行きましょう!」
「うん。あの、そんなに気負わなくていいからね?その、俺もさ、頑張るから、ね?」
「何を仰っているんですか。ベルカス様はいつだって遊撃小隊の任務で各地を駆け回っているではないですか。頼りないかもしれませんが、今日は私もお手伝いをさせて下さい!」
ま、眩しぃー。そして、後ろめてぇー!ちなみにノエルちゃんが城門に来たのは7分後でした。10分切ってきたんだよ?この娘。どんな身体能力してんの?
笑顔で俺のやや後ろを付いて来てくれる出来過ぎた後輩様と歩くこと数十分。俺達が到着したのは蒼風の高地の丘の上。
そこから少し先を見下ろすと、うーん、いるねぇー。わっかりやすく闊歩してんねぇー。
「さて、面倒くさいけどサッサと討伐して終わりにしますかね。ノエルちゃん、作戦はさっきのでオケ?」
「はい、お任せください。作戦も理解しています!」
「うっし、そんじゃ行きますかぁ……ん?」
「ベルカス様?」
「いや、あっちに晶蝶が」
「あ、その…!大変申し訳ないのですが、後にしていただけましたら私が必ず捕まえていきますので!今は…」
「いや、そこまでじゃないから!そんなメチャクチャ慌てなくていいから!ごめぇん!大丈夫、始めよう!行くぞ!」
視線の先で悠々と歩き回る巨大な機械人形。今回の討伐対象、“遺跡守衛”。
長めの腕と短めの足、ずんぐりとしたボディの中心には光る単眼。大昔に何らかの役割を持っていた機械兵器がコイツの正体らしいが、今はとにかくぶっ倒す。
ちょいと外野に気を取られたが、気を取り直して。モンドの平和のために、戦闘を開始します。ノエルちゃん、真面目すぎぃ!!
「いくぜ、相棒!」
相棒であるシャープシューターの誓いを構える。え?リカーブボウはって?バカ野郎、用途に応じて武器を使い分けるのは当然だろ!決して攻撃力が頼りないから乗り換えたなんてことはないから!ないから!!
「ラァーイ!」
内心の言い訳を振り切って、矢を放つ。スキルではない、純粋な俺の力と技術で撃たれた一撃!
うん、当たりはしましたけど、全っ然効いていないね!アイツ物理ダメージ耐性高すぎなんだよっ!
「まぁ、ダメージ狙いじゃないからいいんだけどね!ノエルちゃん、行くぞ!」
「はい!」
『va-viiーー!!』
矢の直撃に対して歩みを止めた遺跡守衛。意味不明な機械音と共に、グルリと俺たちの方を向いた。俺達を敵として認識したってことだ。
俺が次の矢を構えると同時に遺跡守衛の上半身が回転し、背中だった部分が正面に向けられ、赤い輝きを放った。
「ミサイル来るぞ!」
「はい、任せて下さい!」
赤い光が膨張し破裂した瞬間、遺跡守衛からミサイルが撃ち放たれる。その数6発。しかし、ノエルはその場を動かない。
ミサイルは全弾ノエルに殺到し、爆発を巻き起こした。
「問題ありません!」
周囲がミサイルの余波で燃える中、無傷のノエルが爆炎を駆け抜け、遺跡守衛に肉薄する。そのまま、獲物である大剣を振い近接戦闘を仕掛けていく。
“護心鎧”…でしたっけね?ノエルの岩元素スキルだ。自分と周囲の仲間に岩元素シールドを纏わせてくれる上に、条件次第では回復もしてくれる有能スキル。うーん、なんでこの娘未だにメイドやってるんやろ?騎士選抜の試験官は無能か?
「ジンさんに今日の活躍伝えておけば評価もあがるやろ。そんじゃ、今のうちにやりますか!」
思考を切り替えて、離れた位置でノエルと戦う古代兵器さんに弓の照準を合わせる。狙いは、目玉っぽい部分!
「ノエルちゃん!」
「はい!」
合図をするとノエルが俺を背後にして後方に下がる。守衛も下がったノエルを追いかけた。うし、俺とノエルと遺跡守衛が一列に並んだ。
誘導完了。はー、ド正面狙いやすいわー。
「ってことで、ぶち抜けぃ!」
スキル『徹鉱の一矢』!放たれた矢は、狙いやすさもあって遺跡守衛の目玉に突き刺さる。
『viーvi!……!』
目玉が破砕されバチバチと放電しながらも倒れない守衛。流石にタフですね。だが、もうお前の仕留め方はわかっとるんじゃい。
「ノエルちゃん、準備よろしく!」
「いつでもいけます。任せて下さい!」
再び守衛に突っ込んでいくその姿は凛々しい騎士そのもの。うん、かっけぇー。
ノエルが守衛に近づいたタイミングで俺はもう一度、矢を放つ。先ほどとまったく同じ、目玉に向けて。
『vi、vgagag―aga-gaー……!!?』
二度目の衝撃にその巨躯をガタガタ振るわせた数秒後、とうとうその場に崩れ落ちた守衛。
何を隠そう、遺跡守衛とは巡回任務で何度も戦っている。当然弱点も行動パターンも履修済みだ。え?ちゃんと戦えるんだ?当たり前だろこれでも西風騎士ぞ?
まぁ、遺跡守衛に関して言えば遡るとガキの頃から戦り合っているんですけどね。
「今だ、ノエル!かましたれ!!」
「はい!戦場の大掃除の時間です!!」
ノエルの“神の目”が一際大きく光、黄土の光が弾ける。溜め込んでいた元素力の解放、“神の目”持ちの必殺技“元素爆発”と呼ばれる現象だ。
ノエルはその大剣に岩元素のオーラを纏い、光の超大剣を薙ぎ払うように守衛にブチ当てた。
「うっし!効いてる効いてるぅー!このまま終わらせるぞ!」
ノエルが振い続ける光の剣は確実に守衛にダメージを与えている。当然、俺も弓を構えて矢を放ち攻撃を加える。
まぁ俺は元素スキル使わなきゃ攻撃はカスだからな…メインはノエルちゃんに任せてるぜ!え?スキル使え?俺のはスキルは溜めが長げーんだよ!まだ撃てねぇーんだよ!
「これでっ、終わりです!」
ノエルが一際大きく剣を振りかぶり守衛の頭部の一つ目に叩き降ろした。
『v v、v I gg aーーva……』
激烈な音が蒼風の高地に響き渡り、古代の兵器は仰向けに倒れた。
「やほーい!何とかなったー!ノエルちゃんありがとぉー!!これでガイアの兄貴借金もう少し待ってくれるぅー」
「えっと、よくわかりませんが、お役に立てたのなら嬉しいです!」
自分は遠くから指示出しとちょっとした攻撃して、あとは年下の女の子にバチバチに戦わせて勝利……あれ?俺様ってひょっとしなくてもクズじゃない?
「ノエル…さん、お疲れ様でした。『鹿狩り』で何か奢らせてください」
唐突な俺の敬語と敬称付けに驚き、『お、お礼なんてとんでもありません!?』と恐縮しまくるノエルさんだが、断られるわけにはいかない。恐らく今回の件はエウルアの耳に入る。いや、会議はガイアの兄貴も出席しているはずだから、多分もう知らされているだろう。
ノエルにおんぶに抱っこで解決しておいてそのまま帰ってきましたなんてアイツが許すわけがない!そもそもこんな天使みたいな娘にこのまま帰られたら俺のプライドが耐えられねぇ!
「とりま、モンド城まで戻ろう!さぁ、さっさと行こう!はい行くよ!」
「ベルカス様、ちょ、待ってください!」
ちょっと前から‟外野”が見てるからねぇ。さっさと撤収するに限るぜ!
Ж
少し離れた場所で遺跡守衛を倒した二人組。恰好から、西風騎士団の一員であると確信する。身を隠して戦闘も確認したが両方が“神の目”を持っていることと、それなりの戦闘力と経験を有していることがわかった。
「ちょっとぉ、倒されちゃったじゃん?いいの?」
「良くはない。一刻も早く集めたいのだからな」
近くの木に背を預け、頭上に向けて返事をする。
そこには紫の装束の同僚が木の枝に座って無邪気に足をブラつかせている。
「アイツらやっちゃえばよかったのに」
「今は騎士団と関わるのは得策ではない。ここで危険を犯すよりも別の守衛を狙えば済むことだ。目的を間違えるなよ?」
「はーい。それじゃ、さっさと帰るとしますぅー。無駄足お疲れ様ぁー」
頭上の気配が消える。まったくせっかちな同僚だ。
「さて、私も離れるとしよう」
歪な形をした曲刀。手に馴染んだ長年の獲物を手元から消し、もう一度騎士供を見る。
今はまだ動く時ではない。だが、あと少しで準備は整う。
それにしても……
「あの男、案外侮れないかもしれんな」
風景に身体を溶け込ませ、私もその場を後にする。
全ては淑女様のために。
・ノエル
有能なる岩元素銀髪丁寧女騎士。ノエル、なんで試験落ちてしまうん?なんでなん?
騎士団の審査基準どうなってるんですかね?
読んでいただいている方々、ありがとうございますm(__)m