こんなに不定期なのに読んでくださっている方々がいることにも感謝ですm(__)m
空が徐々に夕日で照らされる中、モンドの街を歩く俺の名はベルカス。向かうは西風騎士団総本山、モンド城。近づくにつれて、当然騎士団員がちらほらと視界に入る。そして、その全員が、こちらを見て、ひそひそと何かを呟いたりしているのを確認できる。
‟無敵狩人”の異名を持つ俺は、歩くだけで注目を集めてしまっていた。ふふ、いかんいかん、一般団員をビビらせてしまうとは。もっとオーラを抑えないとな。ぐふふ。
「おい、遊撃の問題児が本部に来てるぞ?なんだ?とうとうクビか?」
「アイツこの前巡回中にバーバラさんを口説いて教会シスター総出でボコられてたの見たぞ。それの件じゃないか?」
「先輩、あれがベルカスさんですか?‟モンドの恥部”の」
「ああ。気を付けろよ。アイツはある意味旧貴族よりも厄介だ。知ってるか?‟執務室でエルマイト鍋事件”の主犯だ」
「え?‟アカツキワイナリー無断酒宴”だけではないんですか?」
おいおいおーい、やぁめぇろぉー!!ほぼ全部思い当たるけど、やぁめろおぉおお!!特に‟執務室でエルマイト鍋事件”は本当にエゲツない怒られ方したから!まぁ150%俺が悪いんだけどね!
「チッ!」
とりあえず、うるせぇ奴らには舌打ちとメンチ切りをお見舞いしてズンズンと進んで行く。サッサと眼をそらして離れていく騎士団員の仲間たち。顔覚えたからな!
最早チンピラ然とした歩き方で本部まで到着した俺は、そのままの勢いで扉を開け放つ。うーん、勢いは大事ぃ!
「キャあっ!あ、ベルカス?」
「うげぇ……アンバーじゃん」
「ウサギ伯爵!」
「ひっ、ごめんて!」
出会い頭の俺の反応がお気に召さなかったらしい目の前の少女は、自分をデフォルメしたみてーなぬいぐるみを顕現させる。おい、やめろ!それはぬいぐるみを模した爆発物だろーが!お前、なんならクレーと同じ部類のヤベー奴だからな?
西風騎士団‟偵察騎士”である赤装束のコイツはアンバー。何を隠そう俺の上司様の大親友にしてモンドでもトップクラスのお節介女だ。
「アンタが本部に来るなんて珍しいね。あ、とうとう今までの珍事件の責任を取らされちゃうってこと?ク、クビ!?」
「ちっげーよ!皆まで言うなや!今回は資源採取場所の報告に来たんだっつーの。俺だってちゃんと仕事してんのよ?」
「なーんだ。アタシと同じか。でも、定期的に報告には来てるんだね?なんか意外」
「いや、普段は極力本部には来たくねーからエウルアに押し付けてる。最近は主にミカに。今回はどっちも用事があってダメでよぉ。期限がもうやばいからしょうがねぇってことで自分で来たってわけ」
「ウサギ伯爵…!」
「うぉお!?やめろ!バカ!!」
ギャーギャーと隠れ爆発物所持女と言い争いながらも、本部の大広間を歩いていく。うーん、やはり外でも中でもすれ違う奴らが振り返る振り返る。とりあえずメンチを切っておきましょうね。ギンっ!!
「コラっ!すれ違う人みんな睨みつけない!」
「痛ぇな!?大体なんでお前も一緒になんだよ?もう帰るところだったんじゃねぇの?」
「今日は巡回にも余裕があるから、アンタの報告に付き合ってあげようと思って」
「頼んでねぇ!ガキじゃねぇんだからよ」
「いいからいいから!ホラ、いっくよー!」
コイツ、本当に話を聞きやがらねぇ…こうなったらもうダメだ。諦めて本部を進んで行くのだった。まぁ俺は1階の事務所に行ってまとめた報告書出すだけだから一緒って言っても数分だ。その位は我慢してやろう。何しろ俺のが大人だからな!
何やら1階の常駐団員と話していたアンバーは、俺がさっさと2階に行くのを見て慌てて追いかけてきた。はぁー、慣れねぇー。
〇
「さて、ベルカス。君には幾つか聞きたいことがあって呼んだのだが……何で土下座をしている?」
「許してくださいぃい」
俺は現在、団長執務室にて頭を地面にこすり付けていた。うん、俗にいう、イナヅマ式ド☆ゲ☆ザってやつです。誰にって、決まってるだろ?
「入室してすぐ土下座って……ジンさんが引いてるでしょ!?」
「だ、大丈夫だアンバー。ベルカスの奇行……あ、いや、突発な行動は何度か見ている。大丈夫だ…」
「ジンさん、それって全然大丈夫じゃないよ?」
何やらアンバーがジンさんと話しているが、俺は顔が地面間近のため表情まではわかんねぇ。え?何でこんなことしてるかって?そりゃ、報告がスムーズに終わって帰ろうとしたら呼び出されたからだよ!何を額を抑えて被害者面してるんですかねぇ代理団長?パッツンパッツンの尻揉むぞコラァ?ぐへへへ。
「ちょっと、ジンさんのこと厭らしい目でみてるんじゃないわよ!リサさんに言うよ!」
「やめろ!あの人笑顔で電撃ぶっぱしてくるから!笑顔でお仕置きしてくるから!!」
リサさんはいい笑顔で躊躇なくお仕置きしてくるからなぁ。ドSなんだなぁ。ハッキリわかんだね。さて、俺が恐れ戦いていると、ジンさんは一度大きなため息を吐いてから話を始めた。
話の腰を折ってごめん…!
「遺跡守衛が狙われている?」
「正確には、モンド各地で遺跡守衛が倒されて、炉心やパーツが奪われている痕跡がある…という情報が入った。つい先ほどな」
「へぇー、そりゃあまた。何で遺跡守衛みてーな危ない奴を好き好んで狙うかねぇ。炉心も今の技術じゃほぼガラクタみてーなもんだし。その情報、正しいんすかぁ?」
「ああ、君の隣の優秀な偵察騎士が持ち帰ってくれたんだ。信頼するには十分だろう」
お前かーい!って、待てよ?つい先ほどって、この爆発ウサギ女、俺と会うまでジンさんと話てやがったな?そんで俺が来たからジンさんに報告しやがったんだ!あからさまに顔を背けてやがるしこの推理で間違いねーみてーだなぁ!あの時団員に伝えてたのはソレだな?やられたぁ!!
「あはは、ちょうど最近、アンタが遺跡守衛を倒したってエウルアから聞いてたからさ。だったら何か変わったことなかったかなって、直接ジンさんに話をしてもらった方が早いでしょ?」
「だったらそう言えよ。いきなり呼び出されたから心臓がキュってなったわ」
「そうしたら何かしら理由つけて逃げてたでしょ?程よくビビらせないとすぐ逃げるってエウルアが言ってたから」
「あ・の・ア・マ!!」
さてここからは簡単なお話です。
蒲公英騎士と偵察騎士に囲まれた俺にはもう素直に取り調べに応じるしかありませんでした。とりあえず先日の遺跡守衛の件を包み隠さずご報告。もちろん、最後に感じた違和感……いや、隠れていた‟奴ら”のことも。
「なるほど。話はわかった。ベルカス、引き続き遊撃隊の任務を全うしてくれ。特にエウルアは君を頼りにしている。君が騎士団に入ってからとても楽しそうにしているし、任務の成功率も劇的に良くなったんだ」
「えぇー、週休5日位欲しいんですけどぉー」
「ベルカスがふざける時は大体が照れ隠しってエウルアが言ってたよ。わかりやすいね♪」
「ああ、先…‥ディルックも同じことを言っていた。ヘラヘラしている時ほど実は内心慌てていると」
「や・め・て!!」
30分程執務室内で俺の知っている情報をお伝えした後、無事に解放された俺。
いやぁー、出ていく前に『そうだ、ベルカス。先日、バーバラを口説いていたと耳に挟んだんだが?』って言われた時は死んだかと思ったね。瞳の奥まーっ黒だったからね。うん、扉出ていくのが数秒遅かったらやられていたぜ!
「…アンタ、後で〇されるよ?ジンさん、何故かバーバラのことになると妙に執念深いから。さっきもアンタは見えてなかったと思うけど、風圧剣の構えだったからね?」
「どおりで引き寄せられる感覚がしたわけだね。マジで危機一髪だったんだね。あれ、震えが…!」
アンバーと二人でモンド城からそそくさと離れた後、暗くなり始めたモンドの街を歩く。今度は城門の方へ向かってだ。その道中で遺跡守衛の話が始まった。
あーあ、早く家に帰りてぇなぁ。
「そういえば、アンタが感じた気配ってエウルアには報告したんでしょうね?」
「当たり前だろ。それがジンさんの耳に入って今回直で聞きたかったんだろーよ」
俺だってちゃんと報連相できるもん!変わったヒルチャールいるもん!モンドと璃月含めた十四か所位に!!おっと、話がズレた。あのふざけたヒルチャールの話はまた今度ってことで。
「それで2人組って言ってたけど、そこまでわかったの?結構距離があったんでしょ?」
「まぁな。最初はなーんか見られてるなー位だったけど、戦闘終わった頃には‟感知”できてたからな」
「ああ、なるほどね。アンタ、いつも‟それ”を使ってればイノシシにも体当たりされないんじゃない?」
「アホ言え。元素力が持たねぇんだよ。そんで、得体が知れねーから早々に退散したってわけ」
「ふーん、まいいや、それじゃアタシはまだ巡回があるから。エウルアに今度ごはん食べようって伝えておいて!」
「ほーん、もうほぼ夜やぜ?大丈夫なんかぁ?お前もエウルア程じゃねぇけど尻でけぇんだからよ」
「ウサギ伯…」
「ひぇ、ごめ!」
「今日は最後にの風龍廃墟の確認をしときたいんだよ。あそこも遺跡守衛がいるからね。なんか嫌な予感がするんだ。偵察騎士の勘ってやつ」
一瞬、真剣な表情をしたアンバーを見る。
「アンバー、お前、気を付けろよ。なんか今回のこと、嫌な感じがするんだわ」
「だったら尚更放っておけないよ。アタシは西風騎士なんだから!ふふ、それにしても珍しいじゃない?アンタがそんなこと言うんだ?」
「まぁ、お前になんかあると、その、うちの隊長がうるせぇからだよ」
「あははっ、確かに。エウルアは口では恨み恨みって言ってるけど、仲間って認めたらとことん情が深いもんね」
「ハン!単に捻くれてるんだよアイツは昔っからよ」
「捻くれて、拗らせてんのはアンタも大概だけどね?意気地なし?」
「……エウルアからなんか聞いた?」
「直近のは酔った勢いでね。それじゃアタシ行くから、エウルアによろしくね!」
「あ、ちょ、ま…!」
そう言うとアンバーは、城壁の端まで軽やかに走っていき飛んで行った。街の明かりを下から受けて、この暗さの中家屋を滑空していくその姿は、なるほど流石はモンドの飛行チャンピオンだ。
アイツもなんやかんや忙しいんよなぁ。何しろモンドの偵察騎士はアンバーだけだ。
「さーて、俺も帰っかね」
遠くなるアンバーの姿を見送って、大きく伸びをする。
エウルアの人生の転機の一つは、間違いなくあの炎のような赤い騎士だ。そして、そのジジィ。かくいう俺も影響を受けていないわけではない。うん、最初はなんだコイツ馴れ馴れしい上にうるせぇ奴だと思ったりもしたが……困った人を放っておけない真っすぐで‟陰”のないアイツの炎のような明るさと勇気が、エウルアを旧貴族の鎖から解き放ったのだ。
『その、ベルカス、今日ね。あの、友達……ができた……の、かもしれないわ…あと、師匠も』
『………おー、そうかぁ。よかったじゃん』
あの時のアイツの顔を思い出す。不安そうで、それでいて、顔がニヤけるのを必死で堪えているような、色々入り混じった感情。
あの時の俺の事を思い出す。暫くして顔を合わせたアンバーとそのジジィの姿。そして、表情は冷徹を装いながらも、間違いなく嬉しそうに2人を紹介するエウルア。その時の俺の惨めさと感謝が入り混じったグッチャグチャな、ダッセェ感情。つくづく俺ってヤツは……意気地なしだ。今も、昔も。
アンバーなんてそのジジィの突然の失踪にも折れず諦めず、モンド唯一の‟偵察騎士”として自分の信念を貫いてるってのに、俺は……
「ぐぁあぁー!やめやめ!!ったく、アイツと会うと碌なことねぇ。帰って酒飲んで寝よ!」
くっそー、今度会ったらぜって―、あの尻どさくさ紛れに揉んでやる!!八つ当たり?うるせぇ!
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「風龍廃墟でアンバーのゴーグルが見つかった。そしてアンバー自身は行方がわかっていない」
数日後、俺は、いや、俺とエウルアは騎士団本部でアンバーが失踪したことを聞くことになった。
おいおい、マジかよ……なにお前まで失踪してんの?まだ尻揉んでねぇぞ?あのバカ……!
またエウルアが出ないことを謝罪。
アンバー回でした。続きます。
・ベルカス
拗らせている上に意気地なし…いいところはあるのか?
・アンバー
エウルアと幼馴染。そうなるとベルカスとも幼馴染。燃えるような勇気。
・ジンとバーバラ
バーバラが絡むと容赦などない。全くない。室内で元素スキルを躊躇なく使う位にはない。