ダンまち世界に転生するのは間違っているだろうか   作:厨二病の末路

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23話目になります。

コメントありがとうございます。
ぼちぼち頑張って行こうと思います。

それでは、よろしくお願いします。



少年はハードな一日を過ごす(後編)

ふと、意識を覚ます。どれだけ眠りについていたか把握ができない。夢とは思えぬほどリアルな痛みや感情を、何度リピートしただろうか。

 

「(確か、リヴィラで少し休んでたんだよな…)」

 

身体を起こし、立ち上がる。幸い頭痛は取れているが、眠る前の比ではない程の倦怠感が身体を覆っていた。何にせよ気分が最悪なので足早に18階層を発つ事にした。

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

迷宮(ダンジョン)から出ると日が沈みかけていた。どうやら仮眠していたのは2~3時間程だったらしい。外で吸う空気がやたらおいしく感じるのは気のせいではないだろう。

 

「(にしても酷い目にあったな…。出来れば二度と使いたくない。けど…)」

 

きっとこの先も使用する場面が出てきてしまうのは必定だ。暗黒期である今、至る所で闇派閥(イヴィルス)の襲撃が起こっている。当然何もしなければ命を落とす者も大勢いるだろう。

 

ザックは目の前で零れ落ちる命を見捨てたりはしない。代償に自身の身に災いが振りかかろうと、惜しげも無く使用する。

 

「(きっと、アストレア・ファミリアの皆やアーディが()()()()()()()()()。それを阻止できるなら…)」

 

自分が死ぬつもりは毛頭ないが、彼女達を見捨てるという選択肢も同じくらいにありえないものだった。

 

「(アストレア様とも約束したし、俺の冒険譚を待ってる奴を先に逝かせるわけにはいかないよな!)」

 

とりあえず、先の事を考えるのはやめて散歩を楽しむことにしようとした。その時だった。

 

ドゴオオォォォン…

 

「────────は?」

 

知らぬ間に工業区で歩いていたようで、謎の轟音が響き渡る。どう考えても普通じゃない。となると…

 

「ああ、クソ。とんだ厄日だな!」

 

ザックは愚痴を垂らしながら音のした方へ足早に向かう。巨大な工場の中をくまなく捜索する。すると、1人の大男が立っていた。

 

「(……!?)」

 

()()()()。フードを深く被って顔は隠れているが、それでも溢れ出る風格は隠しきれていない。辺りには四肢がもがれている冒険者であろう者達が辛うじて息をしていた。

 

「(間違いなく、今まで会った誰よりも強いな…。闇派閥(イヴィルス)にこんなのが居るなんて聞いてねえぞ…。本当にツイてない)」

 

とはいえ、このまま見逃すという選択肢はない。こんな奴を野放しにしておいたら、どれだけの犠牲がでるか分からない。

 

狙うは不意打ち一閃。これが唯一の勝ち筋だ。軽く深呼吸をして周囲の気配と意識を同一させる。相手に勘づかれないように、呼吸、身体に巡る魔力、相手を斬る意識さえも『無』にする。

 

男が動く。それに合わせて男との距離を一瞬にして詰め────

 

「やっと動いたか」

 

そう言って男は自身の背丈に迫ろうかという程の大剣を()()()()()

 

「〜~~〜~~~〜~~ッ!?」

 

途端にありえない勢いの暴風が起こり、ザックは壁際に吹き飛ばされた。魔法を唱えた訳でもない。文字通り大剣を軽くふるったようにしか見えなかった。

 

「ほう?そこらに散らばっている塵芥よりかは喰いごたえがありそうだな」

 

「冗談キツイぜ。俺はお前みたいな大男に喰われる趣味はねえんだ」

 

平静を装って返答をするが、内心は穏やかではなかった。しかしこれだけの騒動だ。何処かしらから応援が来るはずと踏んでいたザックは少しでも時間を稼ぐ為に会話を続ける。

 

「俺の接近にどうして気づいた?自分で言うのもなんだが、完璧に気配を断っていたはずだ」

 

「あぁ確かにな。だが気配を断つ()()()()()()()()。そのつもりなら、ここに入ってくる前にさっきのように気配を断つべきだった」

 

確かにその通りだった。工場の中に入るまで最低限の気配遮断しか行っておらず、実際に大男と接敵するまでその状態を維持し続けていた。

 

「並の冒険者なら違和感に気づけないだろうがな。俺には通用せん。……と、時間稼ぎはもういいだろう?挑んでくる気概が無いのならお前はここに転がっている蛆以下だ。とっとと失せろ」

 

こっちの思惑に勘づいた上で、最大限の罵倒を投げかけられる。正直に言って勝機は見えない。だがザックにとってこの挑発は安くない。

 

「【迸れ(アクセラ) 3速(トリプル)】」

 

「……ほう」

 

「その蛆以下の存在に足を掬われねえようになッッ!」

 

地面を蹴り、縦横無尽に駆け回り大男を翻弄する。正面から突っ込もうものならそこらに散らばっている冒険者の二の舞になるだろう。

 

だからこそ、相手のリズムを少しでも崩してその隙を狙う。

 

「つまらんな」

 

その一言と共にこちらの思惑なぞ全て吹き飛ばすように大男は、大剣を振るう。

 

「〜~~〜~~~〜ッ!?ふざけやがって!」

 

吹き飛ばされはしなかったが、足場にしていた壁や天井が崩れ去り、地の利も活かせなくなってしまう。最早、撹乱することも出来なくなり正面から打ち合う事を余儀なくされる。

 

「【4速(クアドラ)】」

 

「…ハハハッ、まだ上があるか!出来るならば最初からそうしていろ」

 

「燃費が悪いんだよ脳筋。その趣味の悪い外套とっぱらって────ッッ!?」

 

身体に違和感が奔る。ゴライアスとの戦いの後に感じたものより明確に。

【時間魔法】に呼応するように、ザックの身体にズレが生じる。

 

「この俺を前にして考え事か?嘗められたものだなッ!」

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁ!?」

 

意識を戻すと大男が横から大剣を振り回していた。咄嗟に刀を挟み込み、胴の切断を免れたが壁に叩きつけられた。

 

「ク…ソが!」

 

吐いた悪態は自分に対してであった。今の一撃で左腕がおしゃかになることも無かった。

 

「あの状態から良く反応したものだ。だが今の一撃を受けては刀も粉々に……、待てその刀は…」

 

大男は刀を観察して考え事に耽っているように見えた。その隙を見逃さずにザックは再び接近してから刀を振るう。しかし、大男は片手とはいえザックの渾身の一撃を指先で止めた。

 

「────────は?」

 

「クククッ…。アーハッハッハッハ!ジジィめ!よりによってこんな奴に剣を渡したのか!お前が!最後の英雄候補か!」

 

「は?何を意味のわかんねぇ事を…ぐあッッ!?」

 

大男は空いていたもう片方の手で思い切りザックを殴り飛ばす。

 

「……う……ぁぁ」

 

()()()()()()()で現れるとはどういう因果か。ジジィめ。俺らが事を起こす事を知っていたか?」

 

なにか独り言を言っているが全く聞き取れない。並の冒険者なら命を刈り取られる一撃だ。全身の骨は砕け、血が逆流して口からボトボト溢れ落ちる。おまけに三半規管までイカレた。なんで今立ち上がれているのかよく分からない。

 

「今の一撃で立つか。ハハハッ!ならばこい!」

 

「【5速(クインティ)】」

 

身体中が悲鳴を上げている。今にも意識を落としてしまいそうな中、ザックはリミッターを外す。

 

「ガァァァァァッッ!!」

 

「ッッ!?」

 

明らかに動きが変わるザックに大男は驚嘆する。先程までとはまるで違う。パワーもスピードも戦いまでも大男に迫るまで伸びている。

 

「(死に瀕する事で発動する希少(レア)スキルと考えるのが妥当か。油断すれば喰われるのはこっちだな。だが…!)」

 

「惜しむらくは片手である事だなッ!」

 

数合程打ち合った後に大男はザックの刀を吹き飛ばす。しかし、吹き飛ばされた勢いを利用してそのまま裏拳を胴に叩き込む。

 

「ぐっ…!?」

大男が軽くよろめく。ザックはここぞとばかりに蹴りを顔面にいれて男を吹き飛ばした。同時に外套も剥がれ顔が露になる。が、しかし……

 

「(目がぼやけて全く顔が見えねえ…。かろうじて赤色っぽい髪が…見える程度だな)」

 

「ハハハハッ!まるで獣だな!だがいい、もっと俺を楽しませろ!」

 

「いや…もう……終わり…だ」

 

「…チッ、援軍か。だが収穫はあった。お前は必ず俺が喰らってやる」

 

大男はそう言い残し、壁をぶち破りそのまま逃げた。ザックは致命傷と無茶な魔法行使が祟り精神力(マインド)が尽きてその場に倒れこんだ。

 

 


 

 

目を覚ますと見慣れた天井がそこにはあった。どうやら誰かが、本拠(ホーム)に運んでくれたらしい。

 

身体を起こそうとするが全く動かせない。だが、身体にあった外傷は見る限り塞がっているようだった。その証拠に左腕が元通りにくっついている。

 

しかしまだ、身体が動かせないほど疲労しているようなので眠ることにした。

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

また夢を見る。リヴィラで仮眠をとった時と同じ夢を。

 

痛みを何度も繰り返す。絶望を何度も味わう。

 

一生このままなのだろうか?気を保っていられるうちに何とかしたいが、何をどうすればいいかは分からない。

 

「(早く終わってくれ…)」

 

ただ自分の感情を殺してこの夢が終わる瞬間を待つしかなかった。

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

「…おいザック!起きろ!!」

 

「んっ?輝夜か…?」

 

目を覚ますと心配そうな顔をして輝夜が顔を覗き込んでいた。聞きたいことがあったので横になりながら問う。

 

「どのくらい眠ってた?」

 

「はぁ…。丸2日くらいだ。お前が工業区で死にかけていた所を【フレイヤ・ファミリア】が見つけてくれたんだ。ったく…【猛者(おうじゃ)】がお前を担ぎこんで来た時は何事かと思ったぞ」

 

よりによって【フレイヤ・ファミリア】に借りを作ってしまったらしい。まぁ、命があるだけ儲けものか。だが、この貸しは高くつきそうだ。一体何を要求されるやら…

 

「それより何があったか教えろ。それと…」

 

輝夜が少し言い淀む。らしくない態度に少し頭を傾げると、ゆっくりと口を開いて言葉を紡いだ。

 

「何でそんなに髪の毛が伸びているんだ…?」

 

「は?」

 

輝夜の言っている言葉の意味が分からず、間の抜けた声で返事をする。我を取り戻し、髪の毛を摘んでみると今まで経験したことない長さになっていた。

 

「それに、声も低くなってるし顔も心做しか精悍になっている…。一体何が起きたんだ?」

 

()()()()()()。考えられる理由は1つしかない。【時間魔法】だ。感じていた違和感の正体はこれだったのだろう。しかし…。

 

「(使用する度に身体の成長速度を促す…ってレベルじゃねえ。一体【5速(クインティ)】でどれだけの時間を喰ったんだ?)」

 

あの夜に使用した時間は2分にも満たない。だが体の変化を少なく見積もっても約3年は時が進んでいるような気がする。

 

「おいザック。聞いてるのか?」

 

「ん?ああ?心配かけて悪いな。何があったかは今夜、皆に話すよ。それよりアストレア様は居るか?」

 

「……神室でお前がそろそろ目覚める頃だろうと言って待っている」

 

「そうか。じゃあちょっと行ってくるな」

 

立ち上がると少し視線が高くなった…気がする。そのまま立ち去ろうとすると裾を引っ張られる。

 

「…輝夜?」

 

「なぁ、本当に大丈夫なのか?…何故か分からないが今のお前を見てると……」

 

輝夜はそのまま口を噤む。その先の言葉を口にすると現実になってしまいそうだから。そんな不安を払拭させるように頭を優しく撫でる。

 

「輝夜が心配してるような事は起こらないよ。だから安心して」

 

「…………」

 

それでも不安が尽きないのだろう。輝夜は口を噤んだままだった。

 

「じゃあ、また夜に今までの事話すから」

 

それだけ伝えて部屋を後にした。

 

 

 

 

神室の前で深呼吸をしてノックをして部屋に入る。

 

「失礼します」

 

部屋に入るとアストレア様が紅茶をお茶を淹れて待ってくれていた。

アストレア様は少し微笑んで「そろそろ来る頃合いだと思っていたわ」と言った。

 

「話しておかなければいけない事がありまして」

 

ザックはそう言って語り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んで頂きありがとうございます。

更新が遅れて申し訳ありません。
話の終わり方も中途半端ですが、ご容赦ください。
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