ダンまち世界に転生するのは間違っているだろうか   作:厨二病の末路

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24話目です。

遅くなってすみません。

今回いつもより長めです。


少年は事情を打ち明ける

時は少し遡り2日前────

 

本拠(ホーム)で皆がザックの帰りを待っていた。特にアリーゼと輝夜は気が気でないようで、『心配だから迎えに行く』などと言いだす始末だった。

 

しかし、18階層での襲撃の後始末に追われ事が済んだ時にはリヴィラにザックの姿はなく、渋々本拠(ホーム)でザックの帰りを待つことにしたのだが…

 

「遅いですね…。カールスさんは大丈夫なのでしょうか…」

 

リューがポツリと口にした。『大丈夫なのか』という疑問に対してアリーゼと輝夜は口を噤む。外傷は受けていなかったにも関わらず、妙に消耗していた様子を思い出していた。

 

「大丈夫だろ。今のオラリオでアイツより強え奴もそう居ねえ。オツムも弱くねぇ。心配しなくてもじきに帰ってくるだろうよ」

 

「そう…よね。ええ、きっとそうだわ!帰ってきたら今日頑張った事をめいっぱい褒めて、遅くなった事を説教してあげるんだから!」

 

「調子が悪そうでしたからねぇ。一泊してくる可能性もあるんじゃないでしょうか?」

 

「……それもそうね。じゃあ今日は解散にしましょう。明日に備えて皆ゆっくり休むのよ!」

 

アリーゼの一言で少女達は散り散りに部屋へと戻っていく。しかし言い出しっぺのアリーゼと輝夜は部屋に戻らず、皆を見送ってから談話室に留まった。

 

「ありがとう輝夜。気を遣ってくれて。ザックは今まで1度も、無断で外泊した事なかったものね。きっと帰ってくるはずだわ」

 

「気にするな。寝不足で明日のパトロールに支障がでたら敵わんからな」

 

輝夜はアリーゼしか居なくなった談話室でソファにだらしなく腰かけていた。すると談話室の扉が開き、話を聞いていたのかアストレア様が口を挟んだ。

 

「輝夜ったら、それも理由ではあるのだろうけど…。1番はザックの事を気遣ってでしょう?彼、ずっと皆で待ってたなんて知ったら気に病むでしょうから」

 

「はて。アストレア様が言っている事が私には理解できませんねぇ」

 

「ふふふ。じゃあそういう事にしておきましょう」

 

きっと輝夜の嘘はバレている。だが、1人の少年を思ういじらしい少女の為にその事実をそっと胸にしまいこんだ。

 

「せっかくだから3人で楽しくお喋りしながら待ちましょう。私達ならザックが気に病むことも無いでしょうから」

 

「アストレア様!つまり…神々の言う『じょしかい』というやつですか!?」

 

「団長…貴女は何を言っているんだ」

 

「ふふ、そうね。プチ女子会ね」

 

「アストレア様まで!?」

 

輝夜のツッコミも虚しく、アリーゼとアストレアがキャッキャし始めたその時、ホームにノックの音が響いた。

 

「……こんな夜更けに誰だ?」

 

場の空気は一変し、輝夜とアリーゼは警戒の体勢をとる。

 

「2人とも、そんなに構えなくても大丈夫よ」

 

「ちょ、アストレア様!?」

 

諭すように言ってアストレアは自ら玄関先へと出向く。慌てて2人は主神を護るように前に出て玄関へと向かった。

 

アストレアが問題ないと言っているのでその言葉を信頼して扉を開けると、この場に似つかわしくない…というより、違和感しかない筋骨隆々の猪人(ボアズ)がザックを担いで立っていた。

 

目の前の状況を上手く飲み込めずフリーズしている2人をよそに、アストレアが声をかけた。

 

「『猛者(おうじゃ)』。どういう経緯でザックが()()()()()()()()()教えてもらえるかしら?」

 

「工業区での騒ぎに駆けつけた時にこの男を見つけた。……瀕死の状態でな。腕がもげ、全身の骨が砕けていた。ウチの治療師(ヒーラー)が元通りにしたがな」

 

「「!?」」

 

「…そう。感謝するわ」

 

感謝の意を伝えるとオッタルは、無造作にザックを床に置きそのまま立ち去った。2人はザックの姿を見て呆然としている。

 

「2人とも。ザックを部屋に運ぶのを手伝ってもらえないかしら?」

 

「…アストレア様。これはどういうことなのでしょうか」

 

アリーゼはザックに目を向けながら問いをなげかける。

言いたいことはこうだ。何故、ザックの髪が無造作に伸びて、顔立ちが僅かに変わっているのか…という事だ。

 

未だに目の前の状況に頭が追いついていないのか、縋るようにアストレアへと答えを求めた。

 

「ごめんなさい。何も分からないわ。…私はこの子の主神(おや)ではないから不安なのは一緒よ」

 

少し目を伏せて表情に翳りを落とすアストレアに、2人は何も言えなくなってしまう。

 

「だから、ザックが起きてから彼の話を聞きましょう。この子は律儀だから、何の説明もしないでこのままという事にはならないでしょうから」

 

アストレアは意識のないザックを優しく撫でた。例え自分の眷属(こども)でなくとも、短い間ではあるが眷属(こども)達と都市の安寧を取り戻す為に従事していたザックを他人だと割り切ることは出来ない。

 

「…そうですね。起きたら話、いっぱい聞かせてもらいましょう!」

 

「あぁ、そうだな」

 

2人は不安を呑み込んでザックを部屋へと運んだ。

 

 


 

 

アストレア様とテーブルを挟んで向かい合いザックは話を切り出した。

 

「俺の身体の変化についてです。こんな事になるとは俺自身も思っていなかったので、超越存在(デウスデア)である貴女に話を聞きたいのです」

 

ザックは迷いなくアストレアにステータスが見える位置に寄り服を脱ごうとした。焦っているように見えたのか、アストレアが憂いた表情でザックの手を握った。

 

「本当にいいの?貴方が頑なに自分の身の上を語ろうとしなかったのは、きっと主神(おや)を思ってのことでしょう?……貴方はこの選択を後悔しない?」

 

「そこまで俺を慮ってくれる貴女に全てを晒す事を後悔などしません。……アストレア様ならばきっと俺の主神も許してくれる」

 

確かにゼウスとの約束を違える事になる。だが、自分の眷属でもない俺をここまで思ってくれているアストレア様に隠し事をしたくない。

きっとゼウスも許してくれる。……非常に身勝手な憶測ではあるが。

 

ザックはアストレアの手を優しく解き服を脱いで背中を晒した。

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 

ステータス

 

ザック・カールス

 

Lv4

力 : SSS1856

耐久 : SSS1922

器用 : SSS2107

敏捷 : SSS2298

魔力 : SSS2099

技巧F

剣士H

精癒I

 

《魔法》

【テンポラル】

・時間魔法

・自身の時間を加速、対象の時間を範囲減速、遡行する。

・詠唱式 【迸れ(アクセラ)】【減衰せよ(レクシオ)】【回帰(インタラクト)

・加速、減速、遡行範囲はLvに依存する。

・遡行は相手の巻き戻った時間に起きた出来事の影響を受ける。

・■■■■■■■■■■■■■■■

 

【 】

 

 

 

【 】

《スキル》

【天眼】

・任意発動。

・発動時、目的に合わせその場の最適解を点と線で捉える。

・魔眼無効。

 

 

異界之旅人(サブ・ウィアートル)

・任意発動。

・ステータス自動更新。

 

邯鄲ノ夢(ファンタマゴリア)

・瀕死時に発動。

・瀕死戦闘時にステータスが大幅に早熟する。

・全ステータス超高域化。

・一時的に発展アビリティ【魔導】【魔防】の発現

・自身を含めた世界の動きを緩慢化する。

 

冒険舞台(ヒロイック・フォリオ)

・格上の敵との戦闘時に発動。

・【魔力】のステータス高域化。

・戦闘時に観客が多ければ多い程ステータス高域化。

・戦闘を見ている者を鼓舞し奮い立たせる。

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 

「────────────」

 

情報量が多すぎるのか、アストレア様はしばらく固まってしまった。

無理もない。部屋を訪ねる道中にステータスの更新を行った結果がこれだ。

 

前回のアレンとの戦いの後に、更新をした際のステータスの伸びが異常だった為、前もって更新しておいたのだ。……まぁこちらとしても『ステータスSSSってなんぞや』という感想しか出てこない訳だが。おまけにランクアップ可能と来ている。

 

「(なんでこうなったかは、予測できるけどな。それよりも、魔法の黒く塗り潰されてる追加項目が気になるけど…)」

 

「……そう。ゼウスの眷属(こども)だったのね。道理で口を割らないわけだわ」

 

1人で考察に耽っていると、アストレア様が呟くようにそう言った。

 

「…ええ。俺がゼウスの最後の眷属です。あの爺さんの後押しがなければ、もしかするとオラリオに来てなかったかもしれません」

 

きっと『最高の冒険者』になるなんて夢も、ゼウスと出会わなければ発露する事の無い泡沫と消えていただろう。話す口調からは巫山戯たジジイとしか思えないが、間違いなく恩人である。

 

「ふふ、なら私はあの(ひと)に感謝しなくちゃいけないわね?」

 

「俺もですよ。アストレア様とファミリアの皆と出会えたのは、間違いなく爺さんのお陰です」

 

他にも聞きたい事があるだろうが、アストレア様は緊張を和らげる為に、ステータスの事を気にする素振りを見せずに軽い口調で話してくれている。

 

「気を使わせてしまってすみません。身の上を明かさなかったのは所属というよりも────」

 

「ええ。この『魔法』と『スキル』ね」

 

「はい。身の上に関わる事ですから。スキルも間違いなく希少(レア)スキル…というより特異なものでしょうから」

 

特に【異界之旅人(サブ・ウィアートル)】は特に異質な物だと思う。自身でステータスの任意更新が出来るというのは、本来ありえない…あってはならない事だと思うから。

 

ステータスは明かした。ならば、このスキルを得るに至った出来事を語るべく口を開こうとすると、アストレア様の人差し指がザックの唇を軽く抑えた。

 

アストレア様の顔をおずおずと見ると、いつもと変わらない柔らかい微笑みでザックを見ていた。

 

「いいのよ。全てを語ろうとしなくても。気づいてないでしょうけど、とても張り詰めた表情をしているわよ?」

 

確かに、言われるまで全く気が付かなかった。心の奥底で自身の身の上を、晒け出すことを無意識に拒んでいたのだろうか…。そんな心を見透かすかのようにアストレア様は続ける。

 

「以前のことは私たちには分からない。だけど、オラリオに来てからの貴方の事は他の誰よりも見てきたわ。その上で言います。『ザック・カールス』は素晴らしい人だって」

 

「………ありがとうございます」

 

恥ずかしげも無く、今ザック自身が欲しがっていた言葉を贈ってくれた。少し顔が赤くなっているのを感じて、誤魔化すように次に話を移すことにした。

 

「実際に聞きたいのは【魔法】に関してです。アストレア様はステータスに記載されている内容以外で、何かしらのデメリットを受ける【魔法】というのを何かしら知っていたりしませんか?」

 

「いいえ。聞いた事がないわ。……少なくとも私は知らない。デメリットというと【魔法】の使用過多による精神枯渇(マインドダウン)くらいしか思い浮かばないわね」

 

アストレア様はキッパリと言い放つ。一縷の望みをかけて聞いてみたが、やはり前例はないようだ。

 

「なら、【魔法】のこの黒く塗り潰されている部分が、デメリットと考えるのが良さそうですね」

 

「恐らくその通りだと思うわ。と言ってもこんな状態のステータスを見た事もないから、断定は出来ないけれど……」

 

アストレア様の双眸が伏せられ言葉が少し弱々しくなった。あまり力になれていない事を憂いているのだろうか…。

 

見かねてザックは明るい表情でアストレア様に声をかけた。

 

「顔を上げてくださいアストレア様。歴史に名を残す冒険者たるもの規格外であって然るべきだ。神でさえも解らない下界の神秘というやつですよ!やっぱり俺はそうなるべくして生まれてきたんです!」

 

全くもってフォローになっていない気がする。アストレア様も少し顔を上げてポカンとしていた。何だか少し居た堪れなくなってきた。

 

するとアストレア様は破顔してこちらに向き直った。

 

「ふふふ。『最高の冒険者』になるんだものね。私たちに解らない事があるのも当然かもしれないわ。……ありがとうザック」

 

気を使ったつもりが逆に気を使われてしまった。どうもアストレア様の前だと空回りしがちな気がする。ザックは話を続けることにした。

 

「話をもどしますね。今起きている身体の変化と、基礎アビリティの上限突破については、関連性があるものだと俺は確信しています」

 

ゴライアス戦で感じた違和感、それは大男と対峙している時により顕著に身体へと現れた。

 

「【時間魔法】の加速の出力を上げた際に感じた違和感。今まで自身の敏捷性(アジリティ)が上がるだけだと思っていましたが、どうやらこの魔法は俺の寿()()()()()()()()()。良い言い方をするなら成長を促しているものだと思っています」

 

突飛ない事を言っている自覚はある。だが、以外にもアストレア様は驚く様子もなく黙ってこちらの話に耳を傾けている。

 

「今の俺の状態は、廃工場で敵と対峙した際に限界まで出力を上げた為に起きた弊害だと思います。基礎アビリティについても、魔法の使用で喰い潰したおよそ2()()()()()()と、その上【邯鄲ノ夢(ファンタマゴリア)】が発動した状態での時間経過で得られたものだと考えてます」

 

「…突拍子もない話だけどザックは確信しているのね」

 

アストレア様の言葉に頷きで返す。するとアストレア様は1つ質問を投げかけてきた。

 

「その加速の出力単位毎で、どのくらい身体に影響が出るかは分かる?」

 

「…今の所はなんとも。簡単に説明すると今は1から5までの間で出力を調整して使用しています。最近の使用で違和感を覚えたのは3から5の間です。この身体の変化は5の状態を、およそ2分使用して起きたものです」

 

とは言ったものの、Lv3の時は3速と4速の使用時は特に違和感など感じなかった。まぁ4速を使用したのは、クソ猫(アレン)に殺されかけてた時なので、違和感を感じる暇もなかっただけかもしれないが。

 

Lvが上がって【魔法】の出力の振れ幅が上がったからなのだろうか?もしそうだとしたらLvが上がる事に使用が限定される事になる。

 

考え事に耽っていると、アストレア様がこちらに聞こえるように溜息をついた。

 

「…こんな事を聞かされたら魔法の使用を禁じたい所だけど、貴方は言っても聞かないわよね」

 

「極力は控えるつもりですが、使用を躊躇って目の前で命を取り零す…なんて事になったら俺はきっと俺自身を一生恨みます。だから、いざとなれば躊躇はしません」

 

ザックは2ヶ月前の惨状を鮮明に覚えている。今でも思い出すだけで腸が煮えくり返る。闇派閥(イヴィルス)への怒りと自分の不甲斐なさで。あんな思いは二度とごめんだ。

 

ザックは拳を強く握りアストレアを見つめる。その力強い瞳に覚悟を感じ取ったアストレアは少し苦笑いをした。

 

「これはどれだけ説得しても無意味ね。それで、アリーゼ達にはどう説明するつもりなのかしら?」

 

「端的に【魔法】の副作用でこうなったと伝えるつもりです。所属に関してアイツらは別に気にしないでしょう。一応アストレア様にも立ち合ってもらえますか?」

 

「分かったわ。それで他に言うことはない?」

 

「……()()大丈夫です」

 

本音を言えば『遡行』についても話しておきたかった。だが、きっと対応策なんてものは無いし、悪戯に不安を煽る事になってしまう。

 

含みのある言い方をしたザックに、アストレアはやはり心配そうな目を向ける。でもきっと、自分ではザックの力になれないのだろう。

 

それでも、少しでも胸の仕えを取ってあげたくてアストレアは手を広げた。

 

「……?アストレア様?」

 

「来なさい」

 

「………恥ずかしいんですが。一応、年頃の男ですよ?」

 

「いいから来なさい」

 

「……はい」

 

怒ってる訳ではなさそうだけど、初めてアストレア様から神らしい圧力を受けた気がする。普段温厚だからギャップが凄い。

 

ザックはアストレアの圧力に負けて吸い込まれるように抱きしめられた。すると、先程までの圧力が嘘かのように優しく頭を撫でられる。すると子守唄を歌うような優しい声でアストレアは囁いた。

 

「あまり力になれなくてごめんなさい。隠し事も、きっと私達のことを慮っての事でしょう?」

 

「……はい。俺がしっかりしていれば良いだけの問題ですから」

 

「もう。そうやって突き放される私達は結構傷つくのよ?……ふふ。私は貴方の主神(おや)ではないけれど、私はアリーゼ達と同じくらい貴方のことを思っているから。何があっても必ず帰ってきなさい」

 

「はい。アストレア様のいるこの場所に、必ず帰ります」

 

そのまま会話は途切れ、微睡みが訪れる。眠気に逆らえずそのままアストレア様の胸の中で意識が途切れた。

 

久々という訳では無いが、悪夢にうなされることもなく心地の良い眠りに着く事ができた。

 

 

 

 

 




ここまで読んで頂きありがとうございます。

まぁ〜、どうやって話を纏めようか随分悩みました…。
何とか脱稿できて良かったです。

感想やコメント、励みになりますので是非お願いします!

アリーゼ達への説明は次回で軽くして話を進めてくつもりです。更新頻度落ちたので、話はテンポ良く進めて行けるように頑張ります。

次回もよろしくお願い致します。
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