茶色い岩で構成されている洞窟が見えてきた。中はそんなに暗くない。ザザァっていう波の音は今も昔も変わってねぇ。その中に別荘のように少し豪華な家がある。庭には盆栽が何個も棚に置かれている。パッと見ると松や梅…… だったか? 何か珊瑚っぽいものや見た事無い物まである。とにかく沢山置いてある。老後の趣味だったか? まぁ、ともかくその家に入る事にするか。何かアミ―王国にある別荘みたいになったな。先ず玄関の側にあるインターホンを鳴らして…… あ、スタフィーが先に押したか。
「このインターホン、凄く綺麗だよ!」
「この家も俺様の家に負けない位豪華だな…… エクステリアがこれならインテリアもさぞかし豪華だろうなぁ……」
俺様の家も中々豪華だけど、ロブじいさんの家も結構豪華だよなぁ…… どれ程のしんじゅを費やしたらこれ程の豪邸が造れるんだ?
そうして待ってたら豪華な珊瑚で作られた玄関が開いた。中から出てきたのは、髭を生やしたロブスターのようなおじいさん。
その名も“ロブじいさん”。
昔有名な戦士だったんだが、今では年をとった事で実力が衰えたから隠居してるじいさんだ。
と言っても、今でも十分つえーんだが。
「おぉ! スタフィーとキョロスケか! 久しいのう!」
大きな髭は以前より長くなっていて、凄い長老感が出てる。いや、長老と言うより仙人か? 長老や仙人だったらこういう豪華な家というより古そうな、年季が入ってる家に住んでそうなイメージがあるんだが…… 結構元気溌剌な感じで喋っているから年老いている感じがしねぇ。流石は昔伝説と言われただけの事はある気がするぜ。
「ロブじいさん! 久しぶり!」
「お、ロブじいさん。まだ元気なんだな」
「当り前じゃ! むしろこれからとも言える年じゃぞ!」
え? そんな年なのか? というかロブじいさんの年って幾つなんだ? もしかしてロブじいさんみたいなロブスターって年寄り位の年齢になったら強くなったりするのか?
「何用で来たのじゃ?」
「テンカイで新しいお茶が作られたから、それを届けに来たんだ!」
「あと、俺様の旅の土産もあるぞ」
「おぉ、そうか! こっちでもお茶を作っとるが、大空で作るお茶は格別じゃろうなぁ!」
「へぇ、こっちでもお茶を作ってるのか?」
どうやら洞窟でもお茶を作ってるようだな。でもお茶ってこういう所でも育つ植物だったか? 潮風とかで駄目になりそうな気がするが…… 塩に耐性でもあるお茶でもあるのか?
「今何やってんだ? 盆栽か?」
「うむ、そうじゃ! 盆栽をやっておるが結構評判が良くてな! それで最近は沢山盆栽を育てておるぞ!」
「何か変な盆栽まであったけど?」
「あれは挿し木の要領で育ててるんじゃ! 結構上手く育ってるしこの調子だと次の品評会で高評価を頂ける筈じゃ!」
マジか? あのよく分からない盆栽が? 俺様から見たらチンアナゴがくねくねとダンスしてるような、ウーボが踊ってる感じにしか見えないが、それってそんなに凄いのか? その筋の世界ってのは俺には分からんな……
「あ、ヤドカリタとマーメイドさんは今いるのかな?」
「あぁ、あの二人か」
ヤドカリタとマーメイド。前者は綺麗な貝殻を被ってる俺様の親友のヤドカリで、後者は美しい人魚のおねえさんだ。二人とは昔からよくお世話になっている。ヤドカリタはスタフィーにスピンとかのやり方を教えてくれたし、マーメイドは敵から受けた傷を治してくれたから冒険に心強かった。その二人は現在このロブのどうくつに暮らしているそうだ。今何やってんだ?
「それなら今家に……」
「あ、スタフィー! キョロスケも!」
「あら、スタフィーとキョロスケ! 来てたのね!」
玄関の奥の部屋から誰か出てきたな。その人影に面影が大いにある。その姿はヤドカリのような姿の友達であるヤドカリタ。そして、人魚のような姿のマーメイドだ。そのマーメイドだが、下半身が魚のようなヒレなので水中じゃないと移動出来ない。そんな事もあり水の入った水槽に乗って移動してるようだ。
「二人共来てたんだ!」
「うん! ロブじいさんの持って来たお菓子を食べに来たんだ」
「ロブじいさんの出すお菓子が美味しくてね~、時々来てるのよ」
「へぇ~、そうなんだ。ところで……」
「「?」」
「ヤドカリタ、おめぇの貝殻は、何だ……?」
ヤドカリタの奴が被っている貝殻何だが………… 何というか、赤とか青とか黄色とか緑とか…… 綺麗な色合いの貝殻何だが、一際気になるのが貝殻の禍々しい棘が生えていやがる。何か毒がありそうな雰囲気が醸し出してるぞ!? 何だこの貝殻は?
「あぁ、これ? こういう刺々しいデザインの貝ならフォークみたいな悪い奴が寄って来ないと思って被ってるんだ! それに、殻の中に籠ればこの棘が僕の身を守ってくれるからね!」
「そんな棘だと普段から棘に刺さる事もあるんじゃないか?」
「まぁ、うん…………」
ヤドカリタの奴、図星か。
こんな痛そうな棘が生えてる貝殻を被って生活したらうっかり棘が刺さってもおかしくない。生活に支障が出るだろ。一応ヤドカリタの奴もそう思ってるみたいだ。というかあんな棘を生やしたもんを被る時点で察しないか?
「私も何度か刺さりそうになったのよね……」
「ワシもじゃ。今日も刺さりそうじゃったよ」
今日『も』って事は、日常的に刺さりそうな事態が起きてるのかよ? それは駄目だろ!?
「うぅん…… やっぱり以前の殻に戻すかなぁ……」
戻した方が良い。俺はそう思う。綺麗な花には棘があるってどこかで聞いた事あるが、今のヤドカリタはそんな感じだ。綺麗なのはヤドカリタじゃなくて貝殻の方だ。
「まぁ、それはさておき…… お茶でも楽しむかのう」
「そうだね! 今日テンカイで採れたお茶だよ!」
「あと旅で買ってきた土産もあるぜ。美味しい物だぞ」
「あら! それは美味しそうだわ!」
スタフィーが持って来たお茶とキョロスケの土産があるって事で居間に行く事になった。ロブじいさんもヤドカリタもマーメイドも結構楽しみにしているみたいだ。大空で作ったお茶か…… 確かに興味が湧くだろうなぁ。
居間に付いたが、電灯もテレビもテーブルも凄い豪華だ。俺の家よりも数段豪華だ! これ程の家を造るのにどれだけのしんじゅを使ったんだ?
「ほう、キョロスケ。もしかしてこれを造るのにどれ程のしんじゅを使ったか気になっておるな?」
「ギクッ! 何で分かったんだ?」
「ほっほっほっ! 目を見れば分かるぞ!」
伝説の勇者って言われていただけの事はあり、洞察眼はあるな…… スタフィーの父ちゃんであるパパスタも同じ位の洞察癌があるのか? そう考えている内にロブじいさんがはっきりと答えた。
「そうじゃな………… 5000万しんじゅくらいかの」
「えぇ!?」
「はぁ!? そんなに!?」
「ほっほっほ! しんじゅ自体はまだあるわい! 何せオーグラと戦った時の報酬はたんまりあるわい!」
オーグラと戦った時の報酬! 強敵を封印したとすればお礼の品も相当なものだろうな。だとしたら納得しそうだ。そういや俺達はオーグラに助けられて、オーグラの最期を見届けたけど、光の玉になって空に飛んでいったんだよな…… あいつ、今でも元気にしてるかな?
「さぁて、お茶を楽しむとするかのう。茶菓子もあるぞ」
「わーい! 美味しそう!」
「あぁ、これは結構美味しかったわよ。食べてみない?」
「あ、このチョコレートも美味しいよ?」
「おっ、このクッキーは美味しそうだな」
そんなこんなでロブじいさんの家でお茶会が始まった。思えばスタフィー達にとっては、冒険が始まったばかりの頃に親しくなった面々だ。そのメンバーとお茶会なので盛り上がる筈だ。皆は近況とかの話でワイワイと話に花を咲かせた。
大分時間が経ったな。
皆茶菓子を食べて、お茶を飲んですっきりした表情をしている。ロブじいさんはお茶を飲んで力を抜いたような状態でぐったり寝転んでいやがる。何か伝説の勇者とは思えない様相だな…… まぁ昔の事だしなぁ。
「あ、そろそろ帰らなきゃ。スタピー達が待ってるし……」
「おぉ、そうか。もうそんな時間か」
「それじゃあ直ぐに送ってもらうか」
直ぐに送るって言ってるけど、どうやって移動するんだ? もしかしてジュエリーに乗っけてもらうとか? 初めてテンカイに行った時はジュエリーに乗って行ったんだっけなぁ……
「実はこの辺りにもワープじぞうがいてのう、そのワープじぞうに頼めばテンカイにひとっ飛びじゃ!」
「え? この辺りにもワープじぞうが来てな、おかげで遠い所にも直ぐに行けるようになったわい」
「僕も度々使っているんだ。凄く便利だよ」
「私もよ。友達の所に行くのによく使っているわ」
へぇ、そうなのか。ワープじぞうがこの辺りにもいるのか。アミ―王国に現れたデジールを倒す為に冒険してた時は結構お世話になったな。そういえばアルバイトとか募集してた時あったけどワープ能力を持ってる事が必須だったっけ…… ワープ能力使えるって相当厳しい条件だよな……
「あっ、そのワープじぞうってテンカイにも来てたんだった! すっかり忘れてたよ!」
「おいおい…… まぁ、そのおかげで俺様は助けられたんだけどな」
テンカイにも来てたのか…… 何かどんどんワープじぞうが進出してるな。もしかして俺様の家の近くにも来てるんじゃないか? 弟と妹達はそういう事言ってなかったし、俺様も見ていないから多分まだ来ていないだろうが……
「帰りはワープじぞうを使うと良いじゃろう」
「うん! そうするよ!」
「ワープじぞうか…… 最近使ってないなぁ」
早く帰れるという事でワープじぞうを使う事になったぜ。そういやワープじぞうって何号とか名前に付いてたけど此処にあるもんは何号なんだ? ともかくワープじぞうがある、ロブじいさんの家から少しだけ離れた水辺に向かった。水辺と言ってもウーオみたいな敵はいない、平和な場所である水辺だ。そこには、アミ―王国で何度も見た、地蔵の姿をした彼、ワープじぞうが鎮座している。ワープじぞうは様々な姿をしているが、このワープじぞうは片手で盆栽を持っている。それ、落としたら割れるから片手で持っちゃ駄目じゃないか?
「あっ、スタフィー王子とキョロスケさんですか?」
「ん、知ってるのか?」
「はい! 他の方から聞いております! 以前テンカイとアミ―王国、そしてランパ星を救った英雄と聞いております。キョロスケさんはその大親友だと聞いてます」
「俺も有名になったのかぁ…………」
俺様も有名になったんだなぁ…… スタフィーとは何度も冒険しているし、有名になってもおかしくは無いだろう。うぅむ、そうなればハデヒラリさんに自然と惚れられそうな気もするが……
「あ、キョロスケさんと話すのは初めてですから自己紹介します。私はワープじぞう100号です」
「100!?」
「はい。その通りです。ピッタリ100です」
そんなにいたのか!? 確か冒険していた頃は1号から9号までだった筈…… すげぇな…… こいつらを束ねてるワープじぞう王は大変そうだな……
「それじゃあテンカイに行ってくるね!」
「うむ、中々美味しかったと伝えてくれ」
「それじゃあね!」
「またね~」
「うん! また来るよ!」
元気に別れの挨拶をして俺達はワープじぞうの近くに寄った。このワープじぞうの力で俺達をテンカイに一瞬でワープさせるのだ。この能力はアミ―王国を冒険している時に凄く役立ったな。
「それじゃあいきますよ!」
ワープじぞうが光り出し、周囲を光が包みだした。これはワープの兆候だ。この光に包まれる事で別のワープじぞうの場所にワープ出来るのだ。展開された光が収まると、そこはロブじいさんの洞窟ではなく、
雲が見える大空だった。
スタフィーの身長は36cmですけど、「ヒトデの中では大きい方なのかな?」と思って調べてみると、ヒトデの中で大きいものは60cm位なので「スタフィーって中間位だな」って思いました。
もしかして「伝説のスタフィー」の歌詞にある「標準体型」ってそういう意味?
次回は2023年9月20日21時00分に投稿予定です。