「戻って来た!」
「やっぱり此処が一番やな!」
「なんか長旅みてぇだったな」
スタフィー達はお土産配りを終えてテンカイに戻って来た。地面が白い雲、そしてそこから見えるサファイアブルーの如き色の海。今まで何度も見ている、見慣れた景色。今回で何度目なんだろうなぁ。
「あっ! 戻りましたか!」
すると、近くにいたテンカイ兵士がやって来た。王子が戻って来たのだから駆け付けてくるのは当然だろう。スタフィーは今まで何度も冒険をしているので戦闘能力は結構ついている。だから余程の事が無い限り彼が敵に襲われても負ける事は無いだろう。
「あ、ただいま!」
「久しぶり…… って言う程外出はしてませんが、ご無事で何よりです!」
「まぁ、にいちゃんなら簡単にやられへん! うちも同様や!」
「何度も冒険したからなぁ」
確かにスタピーもスタフィー程ではないものの、何度か冒険に出ている。スタフィーが身に付けていないハイハイやその状態でのスピン・壁ジャンプが使えるのが強みだ。兄とは異なる技を使えるのが彼女の強みだ。
「おう、帰って来たのだな!」
「無事で何よりです」
テンカイの王宮の入り口からパパスタとママスタもやって来た。彼らも息子と娘が心配でやって来たようだ。親が子を心配するのは当然だ。キョロスケ自身、それはよく知っている。
「ふむ、キョロスケよ。スタフィー達と共にいてくれて感謝するぞ!」
「いや、成り行きで一緒に行く事になっただけなんだけどな」
「それでも、じゃ。友と近くにいるだけでも安心感や楽しさは全然違う。儂にはよく分かるわい」
「あぁ~…… ロブのじいさんの事か……」
キョロスケ自身も知っている事だが、昔パパスタとロブじいさんが二人でオーグラと戦った事がある。その時の事を指しているのだろうか。
「今後もスタフィー達の事をよろしく頼むぞ?」
「はぁ……、まぁ、すっかり腐れ縁だしなぁ」
そういえばスタフィーとの仲はもう何年経ったのだろうか? もう結構経っているように感じる。スタピーもスタフィー程ではないが十分長い付き合いだ。ハマグリ呼びは嫌だが。もうすっかり長いんだな。
「そういえばキョロスケはこれからどうするの?」
「お土産を配り終えたし、家に帰ろうと思ってるぜ?」
「そうなんだ。それじゃあ送ってあげようか?」
「いや、大丈夫さ。そんくらいはな」
「ホンマか? あの貝にまた邪魔されるんやないか?」
「いや、近道使えば大丈夫さ。あそこは狭いからあいつは通れないし」
スタフィーとスタピーは道中誰かに襲われないか心配しているようだが、キョロスケは秘密の道を知っているらしく、襲われる可能性はまず無いらしい。
「それなら安心やな。あの貝じゃあ狭い道は通れへんやろうし」
「それじゃあ大丈夫かな?」
「あぁ。いつまでもスタフィーに頼られる程俺様はヤワじゃないぜ?」
キョロスケは自信満々に言っている。スタフィー達との冒険で大分度胸が付いたようだ。
「そうか…… 今度は何時来る?」
「んん…… まぁ、気が向いたら、かな…………」
「そうかぁ。何時でも来てね! 歓迎するから!」
スタフィーは笑顔でキョロスケに返事をする。何だか頼りのある表情だ。もう王子と言ってもおかしくない程の度胸と信頼感・心構えとなっている事が窺える。もうテンカイの王様と言ってもおかしくないだろうなぁ。
「じゃあねー! また来てねー!」
「今度はごっつ美味しい御馳走を買って来てなー!」
「俺は使いっパシリじゃねぇぞ!」
軽い冗談を言いながらキョロスケはテンカイをあとにした。帰りもワープじぞうで帰ろうとしたが、此処でまた懐かしい相手と出会った。雲の端に水色のクラゲのような生き物が浮いている。キョロスケはこのクラゲに見覚えがあった。
「あ、ジェリーか?」
「そうっす! 久しいっすね!」
「僕が呼んだんだ」
そのクラゲのような生き物の名は「ジェリー」。
ふわふわと宙を浮いて移動する事が出来る。それによりかつてスタフィーの冒険の手助けをしたことがある。
「俺っちに乗れば直ぐに辿り着けるっす! 乗ってみる?」
「ん~…… それじゃあ乗って行くか」
「ジェリーなら直ぐに飛べるよ! ワープじぞう程じゃないけど、結構早いよ!」
「空から見た景色は結構綺麗やで。一度見てみ?」
空から見る景色か…… それなら一度乗る価値があるな。テンカイから見る景色とはまた異なる美しい景色を見れそうだ。
「それじゃあそれに乗るか」
「よぉーし! 落っこちないように掴まってるっすよ!」
こうしてキョロスケはジェリーに乗ってテンカイを去る事にした。キョロスケがジェリーに上に乗ると同時に出発。その様子を見ながらスタフィーやスタピー達は手を振りながらキョロスケを見送った。
「また来てねー!」
その声を聞いて、「あいつらしいなぁ……」と思いながらテンカイを後にした。
「到着っすー! 空の旅はどうだったっすか?」
「おぉ、もう着いたのか」
キョロスケとジェリーはキョロスケ指定の場所に到着。サンゴが所々に生えていて、海水も透き通っているように透明度が高い、綺麗な場所だ。そこに小さな抜け穴がある。そこを通ればキョロスケの家に着けるそうだ。
「いやーっ! 王子も随分成長したっす!」
「確かにな」
ジェリーの一言にキョロスケは確かに、と言いたげに頷く。最初に会った時はおっちょこちょいで弱気な所があったが今では強大な敵に立ち向かう、勇気ある王子になった。当時を想うと感慨深い所がある。
「それじゃあ俺っちは帰るっす! 道中お気を付けて~!」
「あぁ、またな」
そう言ってジェリーは手を振りながらキョロスケと別れた。彼が離れて行く度に彼の姿は小さくなっていき、やがて完全に見えなくなった。
「しかし、皆昔と変わらず元気だったな~…………」
キョロスケはお土産を渡す為に巡った場所と出会った者達の事を思い返す。
婚約者になる予定のハデヒラリさん。
今でものんびりと過ごしているロブじいさん達。
王国で真面目に王政をしているスタフィー達。
慕われる王となったマテルとコラル王子。
そしてランパ。
皆が今まで以上に元気で暮らしていた。
だからこそ思う。
今まで戦ってきた強敵、オーグラ、イーブル、デジール、ダイール…… 彼らの脅威から守ってきたものが、キョロスケが見て来たものなのだ。皆が平和に暮らしている世界。それこそが、スタフィーやキョロスケ達が守って来たものなのだ。
「もしもオーグラに会えたら…… お土産でも渡すかな……」
オーグラ。
かつてスタフィーが戦った魔物。スタフィーにとっては最初の強敵とも言える。今までの冒険で3回程戦ったが、イーブルとの戦いで改心しスタフィー達を助けた。その後オーグラは光の塊となり、何処へと飛び去って行った。彼がどうなったか分からない。生きているのかすらも…… だが…… もしかすると…………
「さぁて、この穴に入って家に帰るか」
キョロスケがこの小さい穴に入って家に帰ろうとしたその時だった。
「アラぁ? あなたは…………」
声が聞こえた。
今までに何回か聞いた事のある声。それ故に声を出した主が誰なのかハッキリと分かった。しかし、キョロスケ自身は苦手な相手であるという事。でももしかしたらワンチャン…… そう思いながら後ろを振り向くと…………
「アラぁ、久しぶり~♡」
「げぇっ! ラブリー!」
赤と白の体色、そして何より大きな唇を持つ、カサゴのような魚。
ラブリーだ。
「あら、久しぶりなのに何で嫌らしい感じなのん?」
ラブリーは何かとキスをしようとする事もあり、キョロスケはラブリーに苦手意識を持っている。正直そんなに関わりたくない…… というのが本音だ。
すると、後ろからラブリーと似た姿の魚が出て来る。橙色と緑色をしており、ラブリーの姉妹にも見える。
「おぉ、キョロスケはんやないか!」
「久しゅうなぁ!」
彼女達はラブリーの知り合いである橙色の魚がラブリン、緑色の魚がラブラブ。ボーボーかざんでは共に旅行していた程の仲良しだ。
「どう? 久しぶりだし、私の店でお話しない? サイダーあるわよ?」
「いや、お前の店って色んな写真とか売ってなかったっけ?」
「最近飲食店を始めたのよ~♡」
えっ? そうなのか? 初耳なんだが。飲食店って何を出すんだ? まさか変なものを出さないよな?
「どう? これから一緒に一杯いかない?」
「いや、え、遠慮しとくぜ……」
「まぁまぁ、そう言わはんといて~」
「是非寄ってみてや~!」
どうやらキョロスケを誘うつもりのようだ。雰囲気からしてあまり断れそうにない雰囲気だ。まさかこのままその店に……?
「さぁ、いらっしゃい~♡」
「ちょ、こらー! やめろー!」
結局キョロスケは抵抗する間も無くラブリー達によってお店に入る事になった。
後日、キョロスケは自宅に帰宅。かなり疲れていた様子だったらしい…… 彼がどのような目に遭ったのか、彼のみぞ知る…………
ついでに、彼の殻には唇の跡が幾つかあったという…………
スタフィーの小説、皆も書こうぜ!
後書きは2023年10月18日21時00分に投稿予定です。