化け狐がキヴォトスで先生になるようです 作:ヘルゴーレム白雉
ある日のことだった。
何の前触れもなく、世界が終焉に向かって突き進み始めた日のこと。
帰ってこないあの人を心配して教室を飛び出し、青空の下を探し回った。得体の知れない怪物たちの襲撃をどうにか振り切りながら、瓦礫に変えられていく街を駆けて、駆けて、何時間経ったかわからない頃。
出た時はまだ南中高度まで上る途中だった太陽が、すでに西へ傾きかけていた時。
見つけた時には、もう何もかも手遅れだった。
次第に大きくなるノイズがあの人のヘイローを──そして肉体をも呑み込んで消していく様を、ただ見つめることしかできなかった。
小雨が降り始めた。
頭と背中に冷たく重い感触がずっしりとのしかかる。
それが決して辺り一面を濡らす水によるものではないことを、少女は知っていた。
やがて再び空が晴れても──全てが終わった今でも、その感触は少しも消えていないから。
世界はそれを知っていて、少女を嘲笑うかのように、彼女の手元に残した。
願いを叶える機械。
そして、叶えるための力を。
しかし、それらを起動するための魂とでもいうべきパーツは、長いこと入っていなかった。
入ったのはつい最近のことだ。
記憶が正しければ、それは先生がアビドス高等学校にやって来る数週間前だった。
*
ここまでのあらすじ。
ヘルメット団に誘拐された仲間を助けに行った。
そしたら何故か街に閉じ込められてゲームが始まった。
ゲームの景品として提示されたその仲間を取り返すため、アビドス廃校対策委員会の一行は勝利を目指して戦うことになった。
──以上。
「ホシノ先輩……!」
後輩の声で、ホシノは現実に引き戻された。眼前には、明らかにキヴォトスの生き物ではない異形の怪物が多数。蔓が巻き付き固まってできたような体に、棘のついた独特な形状の白い頭。
この区画に転移させられてから数時間が経過していた。先刻悠々と空を飛んでいたはずの飛行船はどこかに消えて、ヘルメットの声も聞こえてこない。
ゲームが始まったはいいものの肝心の内容が一切説明されないことに戸惑う間もなく、この謎の怪物たちが襲ってきたのである。ホシノたちはやむなく応戦した。おそらくゲームとはこいつらと戦うことで、全員を倒せば勝ちだろう。
これだけなら実に単純明快、いつも不良達とやっている抗争と何ら変わらない。
のだが──現在。
アビドス高等学校廃校対策委員会のストライカーたちは苦戦を強いられていた。
彼女たちの武器である銃火器が、怪物たち相手には少しも効果がないのである。ライフルやミニガンで蜂の巣にしたり、ショットガンで頭を狙えば怯ませることはできるが、それだけだ。単純に硬いのか再生しているのかは知らないが──並の生徒ならばとっくに気絶しているほどの攻撃を撃ち込んでも、やつらは無傷のままぬるりと立ち上がってくるのである。
さながら映画に出てくるゾンビだ。いや、それ以上にタチが悪いかもしれない。
攻撃の通じない相手を前に、三人はやむを得ず逃げることを選んだ。幸い足はこちらの方が速い。街中の規則正しく整備された区画の道路を直角に曲がって曲がって、まるで自陣の城の複雑な道を逃げるようにして、駆ける。
殿を務めていたノノミが後ろを振り向く。
誰もいない。うまく撒いたようだ。
「なんとか、逃げ切れましたね……」
あの疲れ知らずのノノミが微かに肩を上下させながら息をしている。相当な緊張と運動を強いられ、三人は心身ともにかなり消耗していた。
「二人とも、大丈夫?」
同じくやや息の荒いホシノの口調にも、表情にも真剣さが滲み出てきていた。
いつものんびりとしている彼女の視線は厳しい──つまり本気と書いてマジでまずい状況である。そこそこ広いこのエリア内に、一体やつらがどれだけいるのか予想もつかない。しかし少なくとも街中に奴らがうようよいることだけは確かだった。軽く百体はいるだろう。
「大丈夫です、けど……」
「ん……」
おそらくこれ以上逃げ場は無い。
無敵状態の敵の大群が四方八方から押し寄せてくる。文字にするとこれから起こるであろう事態がどれだけとんでもないかわかる。そもそもあの怪物たちは一体何者だ──チンピラ百人程度はとうの昔に壊滅しているレベルの弾幕やゼロ距離ショットガンの連射を喰らっておいて、気絶どころかかすり傷一つもつかないとは、どんな化け物なのだ。化け物だが。
「駄目、やっぱり先生と繋がらない……」
ホシノの傍で彼女以上に厳しい表情をしながら、砂狼シロコは愛銃を手に立っている。妨害されているのか、転移させられてから先生との通信はできないままだ。
普段から数百キロのライディングを平然とこなす彼女さえも、他の二人同様に息を切らし始めていた。むしろ呼吸の荒さでは、他二人より上だ。
彼女はつい最近、あの怪物たちの脅威を身に染みて実感したばかりである。
ライディングの最中に奴らと出くわしたあの日。
向こうの攻撃で足を負傷しながらも間一髪で逃げ切れたが、あの場に英寿が割って入らなければそのような結末もなかっただろう。
今度は敵の数が違う。十に満たない数であの力だ。銃が効かないならば殴り合ってでも徹底抗戦したいが、はっきり言ってあれに生身で対抗できるとは思えない──そもそもあの英寿ですら床に転がしておくのが精一杯だったのだ。銃撃戦を選んだ時と変わらず、数の暴力に押しつぶされるのがオチだろう。
結論、
「正直、勝てる気がしない」
敵は今までにないほど強く、一方こちらは弾薬も体力も底を突きかけていて、頼みの綱である先生の指揮もない。この状況から逆転できる未来は見えない。
──だけど。
飛行船型アドバルーンの画面に映されたあの顔がよぎる。
後輩の乱れた前髪からのぞく光をなくした瞳が。
ボロボロに叩きのめされ、もとの元気などかけらも残っていない無惨な姿。
アサルトライフルを強く握りしめる。手汗が滲んでいようとかまわない。
「──けど、行かなきゃ」
呟く。
呼吸を整えていたホシノとノノミが、俯いたままの白い狼を見る。
「……シロコちゃん?」
「戦わないと。セリカを、助けないと。セリカは──大事な仲間だから」
顔を上げる。
前髪の影に隠れていた蒼い瞳が露になり、陽の光を受けて輝きを取り戻す。消えかけていた戦意の炎が、再び瞳孔の奥で燃え上がる。
「そうです。セリカちゃんを助けましょう!」
置いていたガトリングを再び持ち上げるノノミ。蒼い炎が彼女の心にも再び火をつけたようだ。
そんな二人を見たホシノの表情が緩む。ショットガンを持つ両手に力が戻ってくる。
体を起こす。
「よーし、この戦いが終わったら、みんなで水族館に行こう!」
「先輩、それは死亡フラグ」
「ふふっ」
委員長の台詞へ即座にツッコミを入れるシロコに、ノノミが思わず微笑む。
その時だった。
「!?」
「きゃっ──!?」
岩が力づくで粉砕されたような轟音が空気を震わせ、地面が突き上げるように大きく揺れた。土煙が上がり、周りに散らばっていた瓦礫が小さく跳ねて、転がる。思わず声を漏らしながらも何とか倒れずに持ち堪えた三人は、すぐに音のした方へ視線を向けた。そこには、
「あれは……!?」
今までに見たよりも一際大きく禍々しい見た目の怪物が、地中から
そしてこの場にいる者の中で一番それを感じたのは、シロコだった。
「……!!」
というのも、三人の中で唯一、彼女はあの怪物と因縁があったのである。
あの日の記憶がフラッシュバックする。
サイクリング中、突然襲いかかってきたこの化け物に足を傷つけられ、大勢の異形に追い立てられたあの日。
望まぬ再会にほんの少し手が震える。
しかし次の瞬間、シロコの視線はそれとも違うところへ移った。
「──っ!!」
彼女の目に映ったのは、蔓の腕に縛られた傷だらけの後輩だった。
ボロボロになってはいるが──黒いツインテール、頭に生えた猫耳、自分たちと同じアビドスの制服。紛れもなくあれは──
「ッ!!」
「シロコちゃん、待って!」
考えるより先に脚が体を前へ飛ばした。委員長の制止も置き去りにして、シロコは怪物に真っ向から突っ込んだ。強大なこと以外に何もわからぬ相手に対しどう戦うかなど、何一つ考えてはいない。後輩を人質に取られているせいで迂闊に銃も撃てない。しかし今更そんなことは彼女を止める理由にはならなかった。
案の定、怪物は棘付きの蔓を次々に伸ばして攻撃してきた。跳ねて、屈んで、掻い潜る。銃弾にも耐える自分たちの体でさえ、掠りでもすればダメージは免れない。一度皮膚を貫いたことのあるその攻撃は脅威だ。
それでも。
大切な後輩を取り戻すという強い意志が、そして彼女を傷つけられたことで生じた激烈な感情が、砂狼シロコを前へと推し進める。
走る。極限まで神経を研ぎ澄まし、勘だけで一撃一撃を回避しながら隙を狙う。銃弾を避けるのには慣れている。それより少し速くて威力がある程度の攻撃など、どうということはない。
さあ、確実に狙ったところへ当てられる距離まで来た。後輩にも蔓にも防がれていない頭を狙う。そこが弱点かはともかく、どんな化け物だって顔を撃たれれば怯みくらいはするはずだ。足払いをかけようと横薙ぎに振るわれた蔓を飛び跳ねて回避。そこ──
「──ッ」
トリガーに掛けた指へ力を入れた瞬間、わずかに姿勢を変えた相手が人質を射線に入れて──
「ッ!!」
躊躇ったほんの一瞬、傷ついていた左足に衝撃と激痛が走った。
シロコはそのまま姿勢を崩し──破砕されたコンクリートの地面へもろに落下し、跳ねながら転がって──倒れた。
視界が砂煙に包まれる。ただ感情だけで動いていた体は、糸が切れたように勢いを失った。全身が痛い。起き上がれない。
そのことで皮肉にも思考が冷静になり、意識の外から負傷箇所を狙った陰湿な攻撃に当たったのだ、とようやく気づく。
もはや反撃するだけの力はない。想像よりずる賢かった怪物の術中に嵌ってしまった結果だ。
とどめを刺さんと蔓が伸びてくる。
(セリカ……!)
遅くなる世界の中で最後に目に入ったのは、後輩の姿だった──
と言いたいところだったが。
彼女の予測した最期は訪れなかった。
「ッ!!」
すんでのところで巨大な鉄塊が落ちてきて、蔓を弾き返した。
「シロコちゃん──」
鉄塊──に見えた巨大な盾を構えながら、ホシノは傷だらけの後輩を見て言った。
「っ、平気……」
シロコは彼女に答える。
どう見てもその言葉が真実とは思えない。
相手の会心の一撃で満身創痍となった彼女は、もはや立つことさえ危うい様子だった。
そんなホシノ達に追い打ちをかけるかの如く、
「ホシノ先輩、敵が……!」
ノノミの声でさらに悪い知らせが入ってくる。
背後を振り返る。倒れた後輩、その後ろでガトリングを構えて二人を守ろうとするもう一人の後輩、そのさらに奥の地平線。
否、地平線ではない。それに見えたのは、先ほど戦った怪物達の巨大な群れだった。
後ろだけではない。前もだ。セリカを縛っている怪物の奥に、白い骸骨のような頭が数え切れないほど連なって、じわじわと迫ってくる。
左右は建造物や瓦礫で囲まれて逃げられない。完全に包囲されてしまったようだ。
だけど。
「ノノミちゃん!」
「わかってます!」
ここで諦めたくない。
諦めるわけにはいかない。
途切れることなく響き続けるガトリングの音を背に、ホシノは怪物の蔓から後輩を庇い続ける。対物ライフルを受け止める時よりも強い衝撃が、ひっきりなしに手を震わせる。隙をついて反撃に転じることも考えたが、やはりセリカを人質に取られているせいで迂闊なことはできない。
その間にも、攻撃の手が届かない前方から怪物の群れが距離を詰めてくる。押し潰されるのは時間の問題だった。
動くことも、撃つこともできない。
それでも。
ホシノはここで諦めるわけにはいかなかった。
あんな光景はもう見たくない。
ましてや大事な後輩たちを、あんな目に遭わせるわけにはいかなかった。
だがそうやって抗おうとする彼女を嘲笑うように、周囲の状況は刻一刻と悪化していく。
「弾薬が──このままじゃ──」
鋼に蔓が叩きつけられる音と絶え間なく続くガトリングの銃声に混じって、ノノミの悲痛な声が聞こえる。
ホシノは考えることを諦めなかった。残り少ない弾薬と二人に減った戦力で何ができるのか。抗うのだ、この状況に。かつてそうしていたように。まだ彼女に後輩がいなかった頃は風前の灯火だった──今もそうだが──アビドス高校は、彼女の諦めの悪さと途方もない努力で首の皮一枚繋がったといっても過言ではない。
しかし、なまじ頭の良い彼女にこの状況を打開する現実的な術はほとんど思いつかなかった。
そんな彼女を嘲笑するように、ガトリングの弾はみるみる減っていき、怪物たちは距離を詰めてくる。
もはやゲームオーバーは必至であり、今は遺言を考える猶予でも与えてやっているのだ、とでも言わんばかりに。
地平線を埋め尽くす怪物はまるで、文明を飲み込み破壊し尽くす津波のようにさえ見える。
それを見ているうち──対策委員会の平穏な日常は、永遠とは言わずともしばらくは続くものだろう、と無意識に考えていた自分に気づいた。
一度は全てを失いかけ、それでも必死に努力して、そのうちそんな自分についてきてくれる後輩ができて、ひと段落していた。相変わらず大変ではあるが、独りで東奔西走していた時よりずっと楽しかった。
毎日教室に集まって談笑して、定例会議を開いて。悪質商法に騙されたり、アイドルを始めようとしたり、銀行強盗を企てたりして、そのたびに笑って。たまにはみんなで水族館に行ってはしゃいだりして。こんな砂漠のど真ん中に大勢の人が押し寄せたり、宝くじで一発当てたりだとか、そういう奇跡だのなんだのが起きることもなくて。
根拠などないが、たとえ借金完済に数百年かかる状況であっても、そうやって乗り越えていける気がする。
そんな日常はいとも簡単に破壊された。
仲間の一人が拐われ、傷つけられて、得体の知れない怪物たちがたくさんやってきて、街を踏み潰していく。
あの時と全く同じ。
世界とはある時、一瞬で終わるものなのだ。
だが当時とは違い、ホシノはこの侵略が誰の差し金か容易に推測することができた。
先生はおろか後輩たちにすら教えていない秘密を抱える彼女に、この状況を打開する術はほとんど思いつかなかった。
──たった一つしか。
「きゃっ!」
ノノミが声を上げて倒れる。怪物たちの先鋒がとうとう来た。
その時、ガトリングとは違う銃声が響き、相手の何体かが怯む。
「ノノミ……!」
背後に迫る敵に対し、応戦したのはホシノではなく、シロコだった。
満身創痍の体に鞭打って走り出す。ここで動かなければ、何もかも終わってしまうから。立つことすらままならないほど傷つき体力を使い切ったはずの肉体が、不思議とまだ動く。
近接戦闘の間合い。彼女も決して銃撃戦しかできないわけではない。本来ならば英寿のように、倒すとまでは行かずともある程度は応戦できる。
だがほとんど限界の彼女と無傷に等しい怪物とでは、あまりにも力の差がありすぎた。
手に持った槍でライフルを叩き落とされ、シロコはあっさりと地面に転がされてしまった。
「シロコちゃん──!」
ホシノが叫ぶ。
仰向けに倒れた彼女の胸に、怪物が槍を突き立て──
なかった。
できなかった、という方が正確だった。
体格の大きな人影が目にも止まらぬ速さで過ぎていき、怪物を飛び蹴りで吹っ飛ばした。
向こうが取り落とした槍を拾い上げ、続く後ろの二体からの攻撃をそれで器用に受け流して返り討ちにすると、さらに後方の集団へ投げつけて蹴りを入れた。
ざっと五、六体ほどだろうか、付近にいた怪物たちを瞬く間に制圧した人影の正体は──、
「……先生」
少女たちは、彼を──そう呼んだ。
すらりとした長身に落ち着いた色合いのコートを纏い。
威風堂々、唯我独尊、豪華絢爛──それらの言葉を具現化してひとまとめにしたような男。
浮世英寿が、そこに立っていた。
「みんな、大丈夫か」
彼は満身創痍のアビドス生徒三人を見て、声をかけた。
「大丈夫……それより先生、まだ敵が」
一番大丈夫からは程遠い銀髪の少女がそう答える。
事実として敵は未だ大勢残っていた。むしろ、何体か倒されたところで向こうにとって損害はないに等しい。
しかし彼は笑みを浮かべ、
「心配無用だ」
そう言った。
瞬間、天空から弾丸の雨が降り注ぎ、前線の怪物たちを丸ごと後方へ吹っ飛ばした。
『みなさん!』
見上げた先には黒いヘリコプターが一台。そのスピーカーから響いたのは、
「アヤネちゃん……!」
転移の直前ぶりに聞く声だった。
「遅いよ二人ともー、シロコちゃんが危ないところだったよ?」
安堵からかいつもの調子を取り戻しながら言うホシノを見遣り、
「よく言うだろ。ヒーローは遅れてやってくるってな」
英寿は自信ありげに言った。
それから圧倒的な物量の怪物たち──ポーンジャマトの群れを見据える。
『やっと戻って来れた……何やってるんだ! マニュアルは最初に読んどけって言っただろ!』
『だから読んだって──痛ッ!』
『痛ッ!!』
同刻、いなくなっていたヘルメットの飛行船が戻ってきた。だだ漏れの会話を聞くに消えたのは手違いだったらしい。赤ヘルメットは腹立ち紛れに部下を殴りつける。彼女もヘルメットをかぶっていたので、強化プラスチック製のそれが両者の拳と頭をそれぞれ痛めつけた。
「ホシノ」
そんな彼女らをよそに、英寿は高らかに言った。
「こんな世界は終わらせよう」
コートを薙ぐ。
その腰には、
《DESIRE DRIVER》
箱の中にあった、願いを叶える機械。
ずっと空いていた中央のソケットには、狐を象ったと思しき紋様のコアが嵌め込まれていた。
「シロコを頼む」
そう言って彼は右の懐から取り出す。
願いを叶えるための力を。
勾玉模様のシリンダーと赤いトリガーを備えた奇妙な形状のそれを、
《SET》
ドライバーの右側に装填した。
見たこともない奇妙なエフェクトが彼の隣に出現する。
『……!?』
『あれは……?』
その場にいた全員の視線が集まる中、彼は右手で作った狐と見つめ合い、それを前に突き出して指を鳴らした。
「変身」
独特なポーズを取ったのち、ベルトのシリンダーを回してトリガーを引く。
エフェクトから数発の弾丸が放たれる。やがて戻ってきたそれは白い装甲を形成し、
《MAGNUM》
英寿を新たな姿へと変貌させた。
「あれは……」
「キツネ……?」
この世の──否、この世をもはや超越した獣を模して作られた純白の仮面。その真紅の双眸から放たれるは、撃ち抜くような鋭い視線。漆黒の身体に白い鎧を纏った戦士の圧倒的な存在感に、誰もが目を奪われる。傷を負って倒れた銀髪の少女、彼女を介抱する対策委員会委員長と金髪の少女、未だ多く残る怪物たち、そして上空を悠々と飛ぶ飛行船さえも。
『お前は──』
──お前は何者だ?
この場のほぼ全員が疑問を抱いていたが、それを口にする暇は与えられなかった。
口にするより早く動き出す者たちがいたからだ。
大勢のジャマトが一斉に白き戦士へと襲いかかる。多勢に無勢、とても戦士に勝機があるとは思えない。
しかし当の彼はアリの群れでも見るかのような余裕さで、右手に持った銃を構える。
《READY……FIGHT》
「さあ、ここからが──ハイライトだ」
バカほど更新遅くなってしまった、スマソ
サイバー攻撃やらなんやらで大変なご時世ではありますが、のんびりと更新していく予定です。
それにしても思ったより生徒が強くて吹いた。生身でジャマトライダーとか倒せちゃうんじゃね?てかブーストと普通に殴り合えるだろ(トリニティピンクゴリラを見ながら)