空賊の頭は降伏し船も白旗を上げた。だが未だリオンにとっては終わりではない。
リオンはアロガンツのコンテナのハッチを開ける。中から無数の浮遊ロボットやドローンが出てくる。
「伯爵家との繋がりを示す証拠が、書類などがあるはずだそいつを見つけ出せ。必ずだ!」
リオンの言葉に応える様にロボット達は空賊船の中へと入って行った。
『あとはロボット達に任せれば問題ありません。マスターは一度パルトナーに戻りませんか?』
だがリオンはルクシオンの提言に首を振る。
「そいつは証拠を見つけてからだ。もう、カーラにぬか喜びさせて失望なんかさせたくないからな……」
そう言ってリオンは腕を組みコクピットのシートに身を預け、アロガンツの中で証拠の書類発見の報告を待つことにする。
『マスター』
「見つかったか?」
『いえ、それとは別で気になる事が。空賊頭の鎧から謎のエネルギー反応があります』
言われてリオンは目を見開き、何かを思い出した表情を見せる。
アロガンツを空賊頭の鎧へ進める。
その姿に気付いた空賊頭が何かを喚き始めた。だが何も出来ないよう縄で縛り拘束してあるので無視する。
むしろリオンは空賊頭のその反応に自分の推測に確信を抱く。
鎧のハッチを強引にこじ開けコクピット内をまさぐるとそれは見つかった。
聖なる首飾り。この先リビアが聖女になった時に必要になるアイテム。
「そういやゲームじゃこれがイベント報酬だったんだよな。すっかり忘れてたわ」
言いながらリオンは自嘲する。この世界の乙女ゲーシナリオ的には重要なことだった筈なのに。
逆に言えば今の自分にとってそれより重要なもの。
それは――
『証拠の書類を見つけました』
報告を聞いたリオンはアロガンツから降りて船内へ向かおうとする。だが――
「なんだハッチが開かない? ルクシオン!」
『落ち着いてください。焦らずともロボットが持ってきますよ。気になるのでしたら書面をスキャンさせといたので見れます。
ご覧になりますか?』
「……見せろ」
その声に応じ、コクピット内のモニターに数点の書類が映し出される。
内容は想像どおり空賊とオフリー伯爵家との内密の取引が書かれていた。
そして書類を更に丹念に注視する。
「ウェイン家の、カーラの実家のコトは書いて無い……な」
そう言ってリオンは安堵の息を吐く。
『私の方でも確認しました。これらの書類でウェイン家に累が及ぶ心配はありません』
空賊と繋がっていたのがオフリー伯爵家だけとは限らない。
伯爵家と繋がりのある家や取り巻く寄子の家の名も記されてる可能性も十分ある。
懸念事項はそこにウェイン家の文字の有無。
カーラを救う為に空賊諸共その繋がりのあるオフリー家を叩く。
だがそれでウェイン家まで累が及んでは本末転倒であるのだから。
だから、そうならずに済んだ事にリオンは心の底から安堵する。
最悪の場合ルクシオンに書類を改ざんさせる事まで考えていたので、そうせずに済んだのにも胸を撫で下ろす。
ややあって捜索に行かせたロボット達が手に書類を持って戻ってくる。
ハッチを開け受け取るとやっと実感が湧いてくる。
『もう十分でしょうマスター。拿捕した空賊船の扱いなどに関しては私がロボットに指示を出しておきます。
ブラッドとグレッグの二人にも丁度良いから働いてもらいましょう』
「そうだなパルトナーに帰るか。カーラとリビアの顔も見たいし」
そしてアロガンツは空賊船から飛び立つのだった。
「「リオンさん!」」
パルトナーの甲板に降り立つとリオンを向かえるべく待っていたカーラとリビアが歓声を上げる。
そんな二人の前にリオンはアロガンツから降り立つ。
「ただいま」
「おかえりなさいリオンさん」
カーラがリビアより一足早く駆け寄ってくる。
そして心配そうにリオンとアロガンツを見比べてる。
その様子にリオンは思い出す。アロガンツがボス鎧の大鉈の一撃を左手に受けてたのを。
アレを見ていたのかも、とリオンは思った。
「大丈夫どこも怪我してないよ。コイツの、お守りのお陰かもな。ありがとな貸してくれて」
そう言ってリオンは胸ポケットから取り出したもの。それはエアバイクレースでカーラがリオンに賭けた札。
験担ぎの意味もこめてカーラが買いそして見事当てた札。リオンもそれにあやかる意味で借りたのだ。
いや、それより、単純に戦場に置いても繋がりが欲しかったから。
こうして必ず無事帰り手渡す。その想いを胸に刻んでおきたかったから。
カーラはリオンから札を受け取ると胸に抱く。
「いえ、私こそ、私の想いも一緒に連れてってもらえたみたいで嬉しかったです」
そしてカーラの言葉もまたその想いを知り、そして無事に帰ってきて欲しいと言う願いを託して渡したのだろう。
そんな想いを確かめ合うように気付けば二人は見つめあっていた。
「リオンさんとカーラさん。まるで御伽噺の勇者様とお姫様みたいですね~」
リオンとカーラは驚き同時に声の方を振り向くとそこにはリビアがいたずらっぽい笑みを浮かべていた。いつぞやの意趣返しであろうか。
カーラの顔は見る見る間に真っ赤になりそして恥ずかしそうに両手で顔を覆ってしまった。
リオンも顔を赤くし頬をかきながら視線をさ迷わせてる。
気恥ずかしい思いで何か話題を変え逸らせようと想いを巡らせ大事な事を思い出す。
そしてアロガンツのコクピットに上半身だけ潜りこませあるものを取り出しカーラに渡す。
「これは……?」
「空賊の船で見つけたヤツらとオフリー伯爵家との密約を交わした証拠書類さ」
「あ……と言うコトはこれで……」
カーラが視線を向けるとリオンは頷く。
「あ、ありがとうございます……!」
書類を手にカーラの瞳から涙が溢れる。
「あーほら泣かないで。出来れば笑って欲しいかな。折角の新しい人生の門出だ」
門出、望まぬ主との悪縁を断ち切りまさに今始まる新たな一歩。それを祝福するリオンの餞。
「はい! リオンさん本当にありがとうございました……!」
そう言ったカーラは眼に涙を浮かべながらもとても晴れやかな笑顔だった。
そしてその笑顔を見つめるリオンもまた自分の頑張りが報われ満たされた想いだった。
ふとリオンが思い返すは五人の王子達との決闘。
痛快感爽快感はあった。気に食わない王子達をぶっ飛ばしてすっきりしたし観客のブーイングすら心地よかった。
そして味方であるリビアやアンジェにまで引かれたり窘められたりしたが、平気だった。
結局アンジェとユリウスの仲は元に戻らず彼女の望みを果たすという目標は半分も果たせなかっただろうか。
所詮モブの自分が主人公達の様に振舞うなど無理な話、と。
だが目の前で喜びと感謝を露にするカーラを見てるとこんな自分がまるで主人公の様、と。
そして主人公の真似事も悪くないな、と思うのだった。
次回アンジェとレッドグレイブ家の艦隊と合流
なんですが現在執筆中で毎日更新はここまでになります
次回はコミックス発売日の8日を目標にしてます
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