「悪いな待たせちまって」
カーラを伴う形で現れたリオンはアンジェに声をかけながら向かいの椅子に座る。次いでカーラもその隣に座る。
「構わん。空賊相手に大立ち周りを演じたのだろう。休養も必要さ。そんな戦いの後の割に顔色も思ったより良いようだ。
ゆっくり休んだようだな。安心したぞ」
「そう言ってもらえると助かる」
「それに、リビアが相手してくれたお陰で退屈せずに済んだからな」
そう言ってアンジェは隣に座るリビアの肩に手をやり抱きよせる。リビアは照れ臭そうな嬉しそうな表情で満更でもない感じか。
そんな二人を見つめるリオンは微笑ましげに目を細める。
「あの、リオンさん」
二人に見とれてたリオンはカーラに袖を引かれ我に帰る。
「おっと、そうそう本題。こいつを見てくれ。空賊船から押収した、ヤツらとオフリー伯爵家の繋がりを示す書類だ」
そう言ってリオンは真剣な面持ちで書類を手渡す。
「拝見しよう」
アンジェもまた真剣な表情で受け取り目を通す。
そうしてアンジェが書類に目を通してる間、カーラは固唾を飲んで返答を待つ。
膝の上に乗せられた手は緊張のあまり硬く握られていた。
そんなカーラの手を優しく包むようにリオンは自らの手を重ねる。
カーラはリオンの方を向くとリオンは優しく微笑んで頷く。
その笑顔にカーラは張り詰めていた緊張をほぐすのであった。
「出来そうか? アンジェ」
アンジェが最後の書類に目を通し終わったのを見計らいリオンは声をかける。
「うむ、これならオフリー伯爵家を潰すのに十分だ。レッドグレイブの名に賭けて叩き潰すと確約しよう」
そう言ってアンジェは受け取った書類を、背後に控える同伴して来たレッドグレイブ家付きのメイドに渡す。
メイドは恭しく受け取ると頑丈そうな書類ケースに仕舞う。
書類を受け渡したアンジェはリオンと、そしてカーラに視線を向け微笑む。
「ありがとうございますアンジェリカ様! くれぐれも、よろしくお願いします」
カーラは謝意を示し深く頭を下げた。
「さて、空賊問題もこれで本当に一段落、かな。連休も未だ残ってるし残りは実家に帰ってすごすかね。
実家といえば、この辺りってカーラの実家の、ウェイン家の領地の近くなんだよな。折角だしこのまま帰省する? 送るよ?」
「そう……ですね。丁度良いですし送っていいただいても……」
リオンの提案にカーラは頷くもその返答は歯切れも悪く表情も沈んで見えた。
何か失敗したか、とリオンは焦りを覚える。
「リオンさん鈍いですよ。カーラさん、リオンさんともっと一緒に居たいんですよ」
そうやって耳打ちしたのはリビアだった。その言葉にリオンはやっと気付いた表情を見せ気まずそうにしながらも口を開く。
「……カーラも俺の実家、領地に来るか? リビアも一緒に来て欲しいみたいだし」
その言葉にカーラは表情を明るくする
「いいんですか!? ハイ是非御一緒させていただきます!」
その表情にリオンは胸を撫で下ろす。
『ここで自分が、ではなくオリヴィアの名前を出す辺り流石マスター、安定のヘタレっぷりですね』
ルクシオンが姿を消したままリオンにだけ聞こえる様にそっと囁く。
リオンは「うるさいよ」と思いつつも声には出さず聞き流す。
「リオンの実家か。私もそれが良いと思うぞ」
アンジェも同意してみせる。そして言葉を続ける。
「今は未だカーラは実家に戻るには時期尚早かもしれん。オフリー家が艦隊を率いて空賊を取り戻しにくる可能性があるしな」
オフリー家にしてみれば捕らえられた空賊との繋がりが明るみに出ればお家断絶。もっとも実際リオンたちはそれが目的だったのだが。
オフリー家の名を聞いてカーラの顔がこわばる。
アンジェはそんなカーラに微笑みかける。
「安心しろ。お前はリオンの側に居ればいい。オフリー家がお前の実家の近くまで来る可能性だが、其方はレッドグレイブの艦隊で対処しよう。
ウェイン家には、お前の家族に手は出させん。空賊討伐には間に合わなかったからな。それぐらいはしよう」
その言葉にカーラは安堵の息を漏らす。
「重ね重ねありがとうございますアンジェリカ様」
その言葉にアンジェは微笑みで返す。
そんな二人を見つめながらリオンはルクシオンに周りに聴こえないよう小声で話しかける。
「来てるのか? ヤツ等」
『未だ大分距離がありますが近づいては来てます。引き続き索敵哨戒を行ってます』
ルクシオンの回答に警戒しつつも、アンジェの対応にリオンはひとまず胸を撫で下ろす。
カーラとアンジェの方に視線を送れば引き続き話してるようだ。
「そういえばカーラ、今回の一件、実家の方はご存知か?」
「今回の一件は実家には伝えてありません。ウチの実家もオフリー家の寄親寄子の関係なので返り討ちする計画などが漏れる危険性も考慮しまして」
ウェイン家からオフリー家に伝わる可能性だけでなく、オフリーの関係者がウェイン家に居ないとも限らなかったと言うのもあるのだろう。
「うむ、妥当な判断だな。とは言えこれからの事を考えると何も伝えないわけには行くまい。リオン」
「そうだな、事情伝える為にもカーラの実家に向かう必要あるな、ってことで。カーラもそれでいいかな?」
「ええ、それでお願いします」
アンジェとリオンの提案にカーラも頷く。
「じゃ、話は纏まったし、これからカーラの親父さんに挨拶行くか。連絡入れといてくれるか?」
「ハイ。此方の船の通信機使わせていただいてよろしいでしょうか」
「あぁ、構わんよ。ってあの通信機は? って、あぁ……」
「ハイ、アレは……あの女に持たせられたものですから」
「だよなぁ……もう使いたくねぇよなぁ。分った。通信室に案内するよ」
そう言ってリオンは通信室へ向かうとカーラも着いて行くのだった。
「ただいま、お父様」
ウェイン領の浮島に到着するとカーラの父親――コンラッド準男爵が出迎えに現れる。
「おかえり、カーラ。元気にしてたか? オフリー家のお嬢様とは上手くやれてるか?」
「そのことでお話が。それと……」
カーラが視線を送ると準男爵もそちらを見る。
「ん? そちらの方々は?」
「立ち話もなんですから先ずは屋敷にご案内しましょ」
そうしてカーラと準男爵を先頭にリオン達もそれに続き屋敷へ向かって行った。
ウェイン家の屋敷の応接間。
「なんとレッドグレイブ公爵家のお嬢様に、今噂のバルトファルト男爵でしたか。このような辺鄙なところまでようこそおいでくださいました。
大したもてなしも出来なくて申し訳ありません。ところで今日はどんな御用件で」
「お父様それに付いては私から……」
そうしてカーラは話した。学園でのオフリー伯爵令嬢の取り巻きとしての辛かった日々。
そして伯爵令嬢がオフリー家と繋がりのある空賊を使ってリオンを罠にはめ襲撃しようとしたこと。
その企みを、罠を事前に伝え逆にリオンは見事返り討ちにし空賊の一団を纏めて討伐したこと。
伯爵家と賊の繋がりの書類も押収しこのまま行けば取りつぶしも確実なこと。
書類にはウェイン家の文字はなく累が及ぶコトはないこと。
オフリーの艦隊が空賊を取り戻しに来る可能性があること。
それにはレッドグレイブ家の艦隊が対応してくれること、等々。
「そうか……あのお嬢様がそんな。カーラ、すまなかった。お前には辛い思いをさせたようだ」
「もういいんですお父様。リオンさんが空賊をやっつけてくれたお陰で無事解決しそうですから」
「リオンさん……? バルトファルト男爵とは随分親しいのかね?」
「え……あ、はい」
そう言ってカーラは照れくさそうにはにかむ。
そんな娘の様子に準男爵は一瞬瞠目し、そして目を瞑り「そうか」と呟く。
「バルトファルト男爵。この度は本当にありがとうございました。そして今後とも娘の事をよろしくお願いします」
そういって深々と頭を下げた。その丁寧な謝辞にリオンは戸惑いながら応じる。
そして必要なことを伝え終わるとおいとますることにする。
折角の里帰り、本来ならもう少しゆっくりしたいとこだが予定通り早々に引き上げに。
ルクシオンの報告にあった通り、オフリーの艦隊が迫ってる現状あまり長くは止まっていられないから。
例の伯爵令嬢が乗ってるとは限らないが、それでもリオンはカーラに艦隊に遭遇させたくはなかったので。
これ以上オフリー伯爵家とは関わらせたくなかったから。
その後、準男爵は船の前まで見送りに来てくれて、最後に出航の時まで重ね重ね「娘をよろしくお願いします」と頭を下げていた。
その姿にリオンは思う。
(なんか勘違いさせちゃってる? いや、勘違い……なのかな?)
リオンが疑問を投げかけるのは準男爵に対してか、或いは自分の心の内にか……。
プロット的にはあと2~3話で一段落、第一部完、的な予定です。
そこから先は話が降りてきたら書いてみたいと思いますが現状未定。
あと、挿絵も描きたいですし。
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