モブせか・カーラ if ルート   作:julas

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第一部完です、最後までお付き合いの程よろしくお願いします。


16、告白

「みんな集まってもらってすまないな」

 

 時刻は夜更け、夕食も済んで皆一息つき終わった後、一堂に集まる中声を発したのはアンジェだった。

 バルトファルト邸、最も家格の高いアンジェに一番広く豪勢な客間が宛がわれていた。

 その部屋にアンジェに加えリオン、カーラ、リビアが集っていた。

 

「別に構わないさ。それより俺にカーラやリビア、全員呼び付けてあらたまった話って」

「うむ、それなんだがな……」

 

 アンジェは視線を巡らせる。そして目を留めたのはカーラだった。

 

「カーラ。お前、私の寄子にならないか?」

「え? わ、私が、ですか?」

 

 アンジェの指名に戸惑い問い返すカーラにアンジェは微笑んで頷く。

 

「エアバイクレースの日、お前が言ってくれた言葉、覚えてるか。上級貴族の女性がみんな私の様であったなら、と。

あれは取りも直さず私に貴族としての理想を重ねてくれたと言うことだろう。

勿論私は貴族としてまだまだ未熟でとても理想像とは程遠い。

だが、そんな理想像を私に見出してくれる者がいるなら、その理想に応えようと励み高みを目指せる。

カーラ、お前の言葉は私に勇気と誇りを灯してくれた。そんなお前に側に居て欲しいんだ」

 

「アンジェリカ様……私などの言葉をそのように評していただけて、それこそ身に余る光栄です。

ですが、準男爵の娘の私では公爵家のお嬢様の寄子を務めるにはあまりにも……」

「それならばカーラの父君、ウェイン家の御当主コンラッド殿は近々男爵に陞爵される予定だ。これでお前も男爵令嬢で身分的には問題あるまい。

また、ウェイン家にも我がレッドグレイブの派閥に入ってもらう事になった」

 

 恐縮するカーラにアンジェは満面の笑顔で伝えた。

 

「え? あ、あのそれって……?」

 

 突然自分の家が陞爵すると言われてただただ戸惑いを隠せないカーラ。

 

 

「うむ、順を追って話そう。リオンに相談を受けてな。今回の空賊討伐の件、なるべく自分の手柄にしたくないので何かいい方法はないかと」

 

 アンジェの言葉にカーラは驚き戸惑いリオンの方を向く。

 

「て、手柄はいらない、ってどう言うことなんですかリオンさん!?」

「いや、だから俺って出世したくないんだよね。下手に出世なんかしたらそれに伴う責任も重くなるしさ~」

 

 軽い口調で答えるリオンの言葉にカーラは尚も戸惑いリオンとアンジェの顔を交互に見つめる。

 呆れ混じりにアンジェが口を開く。

 

「こういうヤツなんだよリオンは。それで相談して決めたのだ。元々カーラの、つまりウェイン家からの救援要請と言う体だったからな。

ウェイン家が空賊討伐の主導と言うことにして、リオンが助けたと言うことに。

また、今回の件でオフリー家が取り潰しになればその領地を新たに治める者も必要になり、その一部をウェイン家の預かりにしてもらう。

それら全てを総括した上での男爵位への陞爵と言うわけだ。分ってもらえたか?」

「え……あ、はい」

 

 未だ事態を把握し切れず、受け入れ切りきれず戸惑いながらカーラは答える。

 

「で、でも本当に私なんかがお側でよろしいんですか……?」

 

 カーラの言葉にアンジェはどこか疲れた笑みを浮かべる。

 

「私の寄子たちがな、長年私に仕えてくれた者達なんだが、最近目に余る行動も多く正直信頼できなくなってしまってな」

 

 アンジェの信頼を損なったかっての寄子達の行動。

 それはアンジェの為と言いつつ勝手に独断で先走り、当時アンジェの婚約者であったユリウスに近づくマリエに酷い嫌がらせをしたこと。

 アンジェの全く与り知らぬ行動であったにもかかわらず、アンジェの仕業とユリウスの不興を買うことに至ったこと。

 決闘騒ぎではアンジェが負けると決めつけ、見限ろうとし、その後決闘代理人を買って出たリオンが予想を覆し勝てば手の平を返す。

 そんな寄子たちの行動にアンジェはすっかり辟易してた。

 

 

「で、でも世間から見れば私って裏切り者ですし。そんな女をお側に置いたらアンジェリカ様の評判に瑕が」

 

 詳細はどうあれ、良く知らぬ者達が上辺だけで見ればカーラは寄親のステファニーを裏切ったのは事実。

 

「今更落ちる評判もあるまい。それに裏切りと言うがな、そもそもステファニーとヤツの家オフリー家の空賊と手を組む行為こそ王家への裏切りだ。

それを踏まえた上で見ればあれは裏切りなどではなく国を思っての行動。

何も恥じることはない。

勿論裏切る前に諌めるのが筋だろう。だが諫言を聞き入れて貰えないような信頼関係もない主だったから裏切るしかなかった。

だが主との間に信頼関係が築けてれば……。そんな信頼関係が築けてれば裏切ったりなどせず直接諌めただろ。

カーラ、願わくば私はお前とそのような信頼関係を築きたいと思っている。そして若し私が道を踏み外しそうになったときには、諌めてくれるな?」

 

 真剣な瞳でアンジェはカーラを真っ直ぐ見つめ手を差し出す。

 その眼差しに応えようとカーラも覚悟を決め手を取る。

 

 

「こんな私に勿体無い過分なお言葉。そこまで信頼してくださるならこのカーラ・フォウ・ウェイン、身命を賭してお仕えさせていただきます」

 

 

 そうしてカーラは片膝をつきアンジェに誓いを立てるのだった。

 

「ありがとうカーラ。私の頼みを受け入れてくれて」

 

 そう言ってアンジェはカーラの手を引き立たせる。

 

 

 

 

「さてそうなるとカーラの身の振り方安全にも気を配らないといかんな。

新たに私の寄子になったことをやっかんだり、口さがない連中は裏切り者などと心無い言葉を向けてくるだろう。

そうしたものから身を守る後ろ盾として、リオン、カーラと婚約してくれないか」

「は!? ちょ、ちょっと待て一体どういう」

「ア、アンジェリカ様!?」

 

 突然話を振られ戸惑いの声を上げるリオンとカーラ。

 

「何、簡単な話だ。ダンジョンを攻略し、ロストアイテムを手に入れ、殿下たち五人を打ち破ったリオンの勇名を知らぬものは居るまい。

そしてその婚約者に手を出すような馬鹿者もな」

 

「い、いやでもその前にカーラの気持ちが……」

「ま、先ずはリオンさんの気持ちを確かめてから……」

 

 ほぼ同時に声を上げた二人にアンジェはクスリと笑みを零す。

 

「それこそ確認するまでも無いだろう? 私がパルトナーに乗船させてもらってから密に二人の距離を観察させてもらってたのだがな。

ただの友達以上の近しい距離に見えたぞ? お前達二人は憎からず想いあっているの一目瞭然だろう。

それに今お前達が言った言葉、相手が望むなら受け入れる、そう言う意味に聞こえたぞ?」

 

 その言葉に応えるようにリオンとカーラの顔が朱に染まる。その顔が何よりもその答えを雄弁に物語ってるようであった。

 

 

「とは言え大事なことだ。明確に言葉にした方が良いな。なっ、カーラ?」

 

 そう言ってアンジェはカーラに視線を向ける。

 未だ戸惑いを隠せないカーラであったがアンジェの視線に覚悟を決め頷く。

 そして意を決し言葉を紡ごうとして、だが直後思いなおしたように口を噤んだ。

 告白しようとリオンを見詰めてたが、その視界の隅に佇むリビアの姿が映る。彼女のその、どこか寂しげな微笑みが。

 

 

 

「アンジェリカ様! 私の想いを伝えるよりも先に大事なことがあります」

 

 カーラはアンジェに向き直りそう告げるとアンジェは一瞬驚いたような、そして感心したように瞠目し、微笑んで頷く。

 そしてカーラはリビアを見詰めそこからリオンに視線を移す。

 

「リオンさん! リオンさん好きですよねリビアさんのこと」

 

 そう言って視線をリオンに向けるとリオンは驚きの声を上げる。

 

「な……! 突然何言いだすん……」

「リオンさん、学園祭初日のこと覚えてますよね。リビアさんにもあの女が手を出そうとしてるって伝えた時のこと」

「あ、ああ。あの時はカーラに怖い思いさせちまって悪かったな」

「いえ、それは良いんです。で、あの時のリオンさん、完全に『俺の女に手を出すな』って反応でしたよ?」

 

 カーラの言葉にリオンは「え? そんな顔してた?」と困惑の表情。

 その対応に思わずジト目で見つめるカーラ。

 

 

「アンジェリカ様……」

 

 そしてアンジェに視線を送るとアンジェは同意だと言わんばかりに頷いてみせる。

 それでも尚もリオンは戸惑った表情。

 そんな様子にカーラはこめかみに人差し指を当て目を瞑り悩ましげな表情を浮かべる。

 ややあって小さく貯め息を吐くと自分の両頬を軽く叩き気合を入れて「よし」と呟く。

 そしてカーラは次にリビアに歩み寄る。

 

「リビアさん!」

「は、はい!」

「リビアさんも、リオンさんのこと好きよね?」

「え……あ、あの」

「リビアさんがリオンさんのこと語ってる時って、完全に恋する乙女の顔だったわよ? まさかリビアさんまで自覚無いなんて言わないわよね!?」

 

 そう言ってカーラがリビアを見つめるとリビアの顔が見る見る赤く染まって行く。

 その反応にカーラは安心したように頷く。

 

「分かるもん……同じ人を好きになった同士だからね」

 

 そう言ってカーラはリビアの背後に回ると両肩を掴みリオンの方向に向き直らせた。

 そうしてリオンとリビアは互いに正面から顔を見つめ合う形に。

 リビアは戸惑いながらもリオンを真っ直ぐ見つめる。

 対するリオンはリビアの視線に対し己の視線を逸らせようとすると、アンジェに肩をがしっと掴まれた。逃がさないと言わんばかりに。

 アンジェは口元に涼やかな笑みを浮かべつつも瞳はリオンを射すくめる様に強い輝きを放っていた。

 そうやって二人無言で向き合っているとカーラがリビアにそっと囁く。

 

「リビアさん……勇気を出して」

 

 その言葉にリビアは意を決して口を開く。

 

「リオンさん! 私は……私はリオンさんが好きです!」

 

 そうしてリビアは内に秘め続けた想いを口にし告白した。

 だが直後俯き、俯いたまま言葉を続ける。

 

「でも……私は平民だから……リオンさんとは釣り合わないですよね……」

「ちょっ! リビアさん!?」

「ありがとうカーラさん。告白……出来て良かった。ずっと仕舞っておくつもりだったけど言えて、良かった。

叶わない恋でも、この思い出を胸に抱いて生きて行けます。

カーラさん。カーラさんならリオンさんとも貴族同士ですからお似合いで……」

「リビアさん! 話を聞いてぇ!」

 

 カーラはリビアの正面に回るとその両肩に手を置く。

 リビアが顔を上げると、カーラは正面からリビアの肩を掴み肩で息をしてた。

 

 

「リビアさん……貴族と平民が結婚できないのはあくまで一夫一妻や正室としてって話よ? 側室としてなら平民でも結婚出来るのよ?」

 

 その言葉にリビアは「え?」と驚きの表情を見せカーラを見つめる。

 そして視線を巡らせアンジェの方に向ける。

 

「カーラの言う通りだ。側室としてなら何の問題も無い。まぁ貴族の子女の中には側室を嫌がったり認めても平民を置くのは許さないと言うものも多い。

だが……」

 

 言いながらアンジェはカーラに視線を向ける。

 

「ハイ! 私なら気にしません! むしろコチラからお願いしてリビアさんにも一緒になって欲しいんです!」

「そういうことだ。それにカーラの人柄なら私よりお前の方が良く知ってるだろう」

 

 連休始まって直ぐからパルトナーで共に過ごした分カーラと共に過ごした時間は、リビアはアンジェよりもより長かった。

 

 

 

「ねぇ、リビアさん。側室じゃイヤ? リオンさんと二人きりになれないくらいなら、結婚なんかしたくなんかない?」

「そんなことないです! リオンさんのお側に居られるなら! でも……カーラさんはそれでいいんですか?

リオンさんと思いが通じ合ってるなら二人きりになれるのにわざわざ私なんか」

「私なんか、なんて言わないで。リビアさんだから一緒にリオンさんを支えて欲しいの。私、リビアさんにはとっても感謝してるの」

 

 そう言ってカーラはリビアをそっと抱きしめる。

 

 

「リビアさん。私が心細い時、くじけそうな時こうして何度も抱きしめてくれたよね。

リビアさんが何度も励まして支えてくれなかったら私は今ここに居なかったかもしれない。リビアさんは私にとってかけがえのない親友で恩人よ……。

それなのにリビアさんを差し置いて私だけ幸せになんてなれない。リビアさんも幸せじゃなきゃ私も幸せになんてなれない。

だからリビアさん……」

 

 カーラは真っ直ぐにリビアの瞳を見詰める。リビアはその意図を察し頷くと二人揃ってリオンを見詰める。

 

 

「「リオンさん!」」

 

 

 二人は揃って口を開いた。

 

「私が困ってるとどんなときでも助けてくれたリオンさんが好きです! 大好きです!」

「空賊もろとも伯爵家を潰すと言ってくださり、誰にも解ってもらえなかった私の胸の内を解って下さったリオンさんが大好きです!」

「「だから! 私達と結婚してください!!」」

 

 

 

 リオンは困惑してた。

 好きか嫌いかで言えば二人とも大好きだ。

 リビアとは入学直後から親交があった

 最初はゲームの主人公の保護程度の気持ちだったが、一緒の時間が増える程ゲームキャラではない一人の女性としての魅力に気付かされ惹かれてた。

 カーラは出会って未だ日が浅い。

 だが同じような苦しさを共有した共感、長年苦しみ絶えてきた境遇による不憫さに庇護欲を掻き立てられ何時しか一人の女性として心惹かれていた。

 そんな二人に不満などあろう筈無くむしろ結婚相手としてはこの上ない。

 

 そして、カーラについては受け入れる気で――むしろリオンから婚約を持ちかける気でいた。

 リオンも貴族である以上、結婚は互いの身分が釣り合わねば叶わず、そうして選んだ相手に心が通い合う関係を求めるのは諦めてるつもりだった。

 そんな中でカーラは身分的にも近く、それでいて気持ちも通じ合える始めての相手だった。

 厳密には少々釣りあわなかった身分問題もアンジェに根回しを頼むことで解決を見た。

 カーラの家、ウェイン家の男爵への陞爵はリオンにとっても望ましいものだったのだ。

 正直始めて出会った時はゲームイベントの一期一会程度だと思ってたのに気付けば互いに胸の内を晒し心許せる存在に。

 心の内の弱い部分に何度も触れ、その度に心揺さぶられ、胸の内で大きな存在になっていった。

 ただ、折を見て婚約を切り出すつもりだったのが不意打ち気味にアンジェから婚約を提案されたので面食らってしまったのだった。

 

 だがリビアは解決せねばならぬ問題が多く――いや、その一つである平民と言う身分問題も側室に迎えると言う方法で解決を見出せてた。

 それでもゲームの主人公である彼女には攻略対象の五人の誰かと付くのが最適解のはず――マリエに五人揃ってたぶらかされるような男が?

 あの五人がリオン以上にリビアを守り通せるのか? 決闘で揃ってリオンに敗けた男達が?

 最早結婚出来ない理由を探してるのか結婚出来る理由を探してるのか。

 

 

 

「オイ、リオン。何時まで黙ってるつもりだ。女が覚悟を決めて告白してくれたんだぞ。それを応えてやらんで……」

「アタタタ……ちょっ、アンジェ強く掴みすぎだよ。爪食い込んじまうって」

「む、スマン強すぎたか」

 

 言ってアンジェが手の力を緩めた瞬間リオンはその手を振り払い駆けだした。

 

「な!? リオン! この後に及んで逃げる気か!?」

 

 だが、逃げ出したリオンが何かにぶつかったかのように尻餅をつく。

 リオンの前の空間が揺らぎ鈍色の球体が姿を表す。

 

「ルクシオン!? 何で邪魔する!? と言うか姿まで表してどういうつもりだ!?」

 

 進路を塞ぎ、リオン以外の前には決して姿を表さなかったのに、姿まで表したルクシオンにリオンは声を上げる

 

「リ、リオン! な、何だその丸いのは!?」

 

 突然の見慣れない球体の出現にアンジェは驚きの声を上げる。

 

 

『お初にお目に掛かりますお嬢様方。私はルクシオン。そこで尻餅付いてるヘタレ……失礼、マスターにお仕えしサポート承ってる人工知能です』

「仕える? サポート? 使い魔の様なものか?」

 

 アンジェは突然のルクシオンの出現に驚くが、リオンとの会話の様子から害ある存在ではないと捉える。

 

『私は魔に関するモノではなく科学の結晶です。まぁこれに関しては後ほど詳しく説明させていただくとして……』

 

 ルクシオンは使い魔という言葉に否定的意見を示すも、この場ではそれより重要な事項があるとの判断からか流す。

 そしてアンジェからリオンに視線を移す。

 

『マスター。アンジェリカの言う通りです。女性が意を決して告白したのに逃げるとは何事ですか。

告白を受け入れるにせよ断るにせよマスターには答える義務があります。逃げるなど言語道断です』

 

 気付けばリオンはルクシオン含めた四人に囲まれていた。

 

 

 

「リオンさん……」

 

 リオンが声のした方を振り向けば追いついて来てたカーラがいた。その顔は俯いていた。

 直ぐ側にはリビアもいる。

 

「ごめんなさいリオンさん。私リオンさんの優しさを勘違いしてしまったみたいで……。

私がリオンさん大好きだからリオンさんも同じ気持ちだなんて思い違いして……」

 

 その言葉はリオンの逃走を拒絶と受け止めショックを受けてるようであった。

 言いながらカーラの瞳に涙が滲む。

 隣に立つリビアも目を伏せカーラの肩を抱き寄り添う。

 その姿はリビアもまた拒絶されたと思い込み互いに慰めあうようで。

 カーラの言葉と涙に、リビアの沈んだ表情にリオンは罪悪感で胸が締め付けられる。

 その衝動に突き動かされるようにカーラとリビアに駆け寄り二人同時に抱きしめる。

 

「違う! 勘違いや思い違いじゃない! 俺もカーラのこと……リビアも……二人とも大好きだ!」

「リオンさん……、私、拒絶され……」

「しないよ! カーラのこと拒絶なんて!」

「リオンさん、私も側にいても……」

「リビアも側に居てくれ!」

 

 リオンが二人を抱きしめると二人もまた抱き返す。

 

 

 

「でも……二人とも本当に俺なんかでいいの? 二人なら俺なんかよりもっといい相手が」

 

 リオンは告白を受け入れると言った直後なのに弱気な発言を零す。

 

「リオンさん以外考えられません! リオンさんだけです! 学園で孤立してた私に手を差し伸べてくれたの! 愛してます! 誰よりも!」

 

「私も! 誰にも頼ることも助けを求めることも出来なかった私をあの女の魔の手から救ってくださって! そんなリオンさんを誰より愛してます!」

 

 だが二人から、リビアとカーラから返ってきた返事は一途に力強くリオンを求め恋い慕うものだった。

 そんな二人の告白にリオンも覚悟を決める。

 

 

「リビア……カーラ。俺も二人とも愛してる。婚約しよう。そして卒業したら結婚しよう……」

「「ハイ!! リオンさん!!」」

 

 

 

 

 

 固く抱きあい互いの将来を誓い合う三人。そんな三人を満足げに微笑んで眺めていたアンジェはその場をそっと離れテラスへ向かう。

 テラスで手すりに手をかけ夜空を見上げるアンジェ。

 そうして一人佇んでいると、カーラもテラスにやってくる。

 

「アンジェリカ様」

「カーラ、リオンたちと一緒に居なくて良いのか?」

「ハイ。リオンさんに想いを伝えて、応えてくださって……何よりこのお膳立てをしてくださったアンジェリカ様に御礼申し上げたく。

この度は本当にありがとうございました」

 

 言ってカーラは深々と頭を下げる。

 

 

「そう畏まらんで良い。カ-ラ、お前が私の寄子になり、そしてリオンと婚約してくれたのはレッドグレイブ家に、いや私にとって望ましいことだった。

私の父と兄はリオンのことを高く評価してくれていてな。そのこと自体は喜ばしいのだが、そのため我が家の派閥の娘との婚姻も視野に入れていてな。

そうして選ばれるであろう娘達は私にとって顔は知ってる程度の仲。若しそんな娘と結ばれたのならリオンと今のような関係継続は難しいだろう。

お前のようにリビアを受け入れてくれるとも思えん。

私とリオンと、そしてリビアとも、今までに近い状態の仲を維持するにはリオンとお前との婚約以上に良い手は浮かばなかった。

言わばお前を利用したような形……。失望させてしまったかな?」

 

 そう言ってアンジェはどこか不安気で寂しげな笑みを浮かべる。

 

 

「いいえ! アンジェリカ様のお取り計らいのお陰で私は恋い慕うリオンさんと添い遂げられたのです!

感謝こそすれどうして失望などしましょうか!」

 

 カーラはそんなアンジェの寂しさも不安も吹き飛ばすような力強い返事で返す。

 

「ありがとうカーラ。あと、よくリビアを受け入れてくれた。まるで私の意図を汲み取ってくれたように」

 

 実はアンジェはリオンとカーラの婚約にリビアも側室として迎え入れてもらうよう頼むつもりだった。

 だがそれを口にする前にカーラも同じことを感じ提案してくれたことに内心甚く感心し、感謝してたのだった

 

 

「アンジェリカ様にとってリビアさんが大事な親友な様に、同時に私にとっても大事な親友ですから。

リビアさんにも言いましたが、彼女を差し置いて私だけ幸せになんて考えられませんでした」

 

 カーラの言葉にアンジェは満足そうに目を閉じ頷く。

 

「つくづくこの縁に感謝してる。カーラ、お前に出会えて、知り合えて良かった、と」

「そんな、私こそアンジェリカ様に、リビアさんに……何よりリオンさんに出会えて幸せです。ただ……一つだけお尋ねしてもよろしいでしょうか」

「どうした? 何でも聞いてみろ」

 

 カーラの言葉にアンジェは笑顔で応じる。

 

 

「アンジェリカ様は、リオンさんのことどう思ってらっしゃるのですか?」

「私の気持ち、か。どうなのだろうな。リオンと共に過ごす時間は楽しいよ。正直このまま何時までもこの時間が続けばよいと思えるほどに」

「で、ではアンジェリカ様もリオンさんのこと……!」

 

 カーラの声が弾む。その声色には期待の色が見て取れる。

 

「まぁ待て落ち着け。そうだな確かにリオンのことは好ましく思ってる。リオンの元へ嫁げるならそれは魅力的な選択肢だと思うよ。

だが、これが恋なのかは私自身にも判らん。果たして私にお前達のようにリオンを激しく恋い慕う衝動があるのか……。

あんな風に真っ直ぐ熱い思いを抱きぶつけらるお前達が羨ましいよ。

それに、情けない話だが未だ殿下のことも引き摺っててな。以前に比べれば大分振り切ったつもりだが。

何よりリオンとは爵位があまりに離れすぎてる」

「公爵様ですからねアンジェリカ様の御実家は。ただリオンさんなら今は男爵でも、若しかしてこの先子爵、更には伯爵への陞爵も夢ではないのでは」

 

 カーラの言葉にアンジェは一瞬瞠目する。

 

 

「リオンが伯爵に……? それはまた突拍子もない話を……。だが、不思議とアイツならやってのけてしまいそうに思えてしまうな。

しかし、それほど迄の陞爵の功績となると、それこそ大戦での大きな武功でもなければ叶わぬだろう。

この国は周辺国と小競り合いが絶えないし、そう言う意味では武功を立てる機会もあるだろう。

だが私はリオンに武功のために戦場へなど赴いて危ない目にあって欲しくない。お前だってそうだろカーラ」

「そう、ですね。申し訳ありません軽率な発言でした」

 

 カーラは己の発言を恥じるように俯く。

 

 

「そんな顔をするなカーラ。先程のお前の言葉、若しリオンが伯爵にまで陞爵すれば……、その後に続けたかった言葉は私もリオンの妻に。

そういうことだろう? お前達の輪の中に私も居て欲しいと言う気持ち嬉しく思うよ。そうなれば何時までも四人一緒だ。

確かにそれは魅力的だろう。だがな、私は今のままでも十分幸せで満足してるよ。強がりでも虚勢でもなく」

 

 そう言ってアンジェは微笑む。それはとても穏やかで優しい笑みだった。

 

 

「そうだな、なにも戦の武功だけが陞爵ではないからな。現にリオンが最初に立てた功績は未踏のダンジョンの踏破にロストアイテムの発見だった。

またそうした発見や功績を立てないとも限らん。まぁ出世したくないアイツにそれを求めるのも酷な気もするが」

 

 そう言ってアンジェは苦笑する。

 

「だが、それでも若しアイツがそうして功績を立て陞爵を果たしたら、その時には私も告白してみるかな、お前達に倣って」

 

 そう言って浮かべたアンジェの笑みは先程のような苦笑ではなく穏やかで優しい笑みだった。

 アンジェのその言葉に込められた想いは勿論リオンへの好意や愛情あってのものだろう。

 だがそれだけでなくカーラへの気遣いもあったのだろう。

 カーラはそのアンジェの気持ちが嬉しかった。

 

 

「さてそろそろ部屋に戻るとするかな」

「そうですね。夜風は体に障りますしね」

 

 そうしてアンジェがテラスを後にするとカーラもそれに付いていく。

 部屋に戻ればリオンとリビアが笑顔で迎えてくれた。

 

 リオン、リビア、アンジェ、そして自分自身がこの場に共に居られることにカーラはこの上ない幸せをかみしめる。

 

 そして願う。何時までもこの幸せが続く事を。




一つの大きな締めくくりです。
此処までお付き合いくださった方々ありがとうございます。

カーラとリビア、二人同時に婚約してしまいました。アンジェは……未来に向けてフラグを建て希望を繋いだ感じでしょうか。

続編第二部も連載中ですので、引き続きよろしくお願いします

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