モブせか・カーラ if ルート   作:julas

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7(23)修学旅行

 学園祭の興奮も未だ記憶に新しい中、学園ではまた新たな行事、修学旅行が催される。

 この修学旅行行き先は三通りあり、生徒は選択出来ず行き先は運任せになる。

 だがどうせなら婚約者達と一緒に過ごしたいリオンは教師達に一緒に回れるよう直談判したのだった。

 特にカーラは腹部を刺され重症を負い、回復魔法のお陰で傷も残らず治ったものの体力面の回復に未だ不安が残っていた。

 そんな彼女と旅行中離れ離れになることなど、想像しただけでも不安に押し潰されそうになる。

 常に傍で寄り添い見守る以外の選択など有り得ない。

 回復したとはいえ病み上がりの状態が、婚約者として心配だから常に寄り添いたいと力説。

 また身を挺して庇ってもらったアンジェも寄り添いたい想いを強調。

 更に、リオンのもう一人の婚約者で四人の中で唯一平民で特待生のリビアも貴族だらけの中一人には出来ない旨も。

 そうして力説した想いが通じてか、リオン達四人は同じグループに割り振られた。

 

 そして修学旅行初日、目的地の浮島に降りたち散策を楽しむ四人。

 そこは一言で言ってしまえばリオンの前世の日本を思わせる場所で、折りしもその日は祭りで賑わい、その様相もまた前世の縁日秋祭りの思わせるものだった。

 場所柄が日本風なだけあって浴衣の貸し出しも行われており、四人揃って浴衣に着替えて祭りを楽しむことに。

 居並ぶ屋台や提灯の明かりや祭囃子。

 それらはリオンにとっては前世を思い起こさせ何処か懐かしさを感じさせる。

 またリオン以外の三人も普段触れない異国の文化に興味津々と言った風で此方も楽しんでくれてるようだった。

 

 

「いやぁ、でも本当に良かったよ。修学旅行までにカーラの体調が戻ってくれて」

 

 感慨深げに呟くリオン。

 

「すみません。気を遣わせてしまって……」

 

 リオンに責めるような意図はないの分かっているが恐縮気味に口を開いたカーラ。

 

「何を言う。私を護ってくれての傷を負ってしまったんだ。カーラが気に病む必要など何処にもない。お前は私の誇りだ」

 

 言ってアンジェはカーラの肩を抱くと、リビアも次いで言葉を紡ぐ。

 

「そうですよカーラさん。でも本当に良かったです。こうして四人で一緒に回れて」

 

 回復魔法で傷自体は癒せたものの出血多量による体調不良は直ぐには治らず一時は修学旅行への参加も危ぶまれた。

 だが回復に専念し、またリオン達三人が代わる代わる介抱したのもあってか無事カーラも修学旅行に参加できたのだ。

 

 

「皆さんが介抱して下さったお陰です。本当にありがとうございました。こんなにも大切に思っていただいて……こんなにも素敵な人たちに囲まれて……」

 

 言いながら思わず涙ぐむ。

 そんなカーラの肩を抱いてたアンジェは、よりその身を寄せ、リビアはカーラの目元にハンカチを当て、リオンは優しく頭を撫でてあげるのであった。

 敬愛する主、無二の親友、愛しい婚約者、そしてそんな大切な人たちと共に過ごせる掛け替えのない今に、カーラは幸せな気持ちに満たされるのであった。

 

「それより体調は本当に大丈夫なんだな? しんどかったらすぐ言えよ?」

 

 心配そうにリオンがカーラの顔をのぞきこむとカーラは笑顔で返す。

 

「ありがとうございます。大丈夫です無理そうなら直ぐそう言いますから」

 

 

 修学旅行は今の所は大きな懸念もなく平穏無事に進行して行く。

 ただ小さな懸念は無い訳でもない。

 その一つがアンジェの"元"取り巻きや寄子達だ。

 見限ろうとしたかと思えば今度は逆に擦り寄ってきたり、あまりに目に余るのでアンジェは距離を置くことにしたのだ。

 今現時点で正式にアンジェが付き添うのを許し伴っている取り巻き寄子を任された付き人は、アンジェ自身が選んだカーラ唯一人。

 結果、それでも尚も擦り寄ってくるのをアンジェの前にカーラが立ち塞がり退けてる形になってる。

 寄子となって日が浅いが、暴漢の凶刃から身を挺して護った献身は早くも寄子の鑑として学園内に知れ渡っている。

 そんな彼女に接近を阻まれては元の取り巻き達も退くしかない。

 稀にそれでもしつこく擦り寄ろうとすれば、その時はリオンも立ち塞がるのだった。

 

 そうして今もまた元寄子達の視線に気付いたカーラが阻むように間に立つ。

 だが今回は一歩も近づこうともせず立ち去っていく。

 流石に何度も阻まれ諦めたのだろうか。

 だが去り際の元取巻き達の目つきにカーラは不穏なものを感じた。

 

 

「ご苦労さんカーラ。アンジェの寄子取り巻きも中々大変だな」

 

 そう言って肩を叩くのはリオンだった。

 

「いえ、誇りを持ってお勤めさせて頂いてますし全然大変なことないです」

 

 言って笑顔で応えるカーラ。

 

「頑張ってくれてるの嬉しいが病み上がりだしあまり無理はするな?」

 

 心配そうに見詰めてくるのはアンジェ。

 

「お気遣いありがとうございます。でも大丈夫ですから」

 

 その言葉にアンジェは労う様にカーラの肩を抱く。

 そうしてその後、歓談などしながら四人で景色を眺めつつ散策を続ける。

 だがカーラは先ほどの二人がどうにも気に掛かった。

 

 

「あれ? どうしたんですカーラさん」

 

 立ち止まり一団からはなれかけたカーラにリビアが声を掛ける。

 

「あ、ゴメン、ちょっと立ちくらみを……」

「何!? 大丈夫か!? 少し休むか!?」

 

 慌てて駆け寄り心配の声を上げるアンジェ。

 

「少し休めば大丈夫です。申し訳ありません御心配おかけして。そうですね。少し裏手の人通りの少ないところで休ませていただきます」

 

 カーラがそう言うとアンジェも共に付いて行こうとする。

 

「アンジェリカ様。お気使いは嬉しいですがどうぞ引き続き散策を楽しんでください」

 

 寄子として寄親に負担をかけるわけにはいかない。

 代わりにと言わんばかりにリオンが口を開く。

 

「でも一人っきりにするわけにはイカンだろ。俺がついて行くよ」

「そうですね。それじゃぁリオンさん一緒にお願いできますか?」

 

 カーラの言葉にリオンは「勿論だ」と頷く。

 

「そうだな婚約者には側に居てもらった方がいいだろう。リオン頼んだぞ」

 

 その言葉にリオンは笑顔で頷きカーラもまたアンジェとリビアに向かい頭を下げる。

 

「そう言うわけだからリビアさん、暫くアンジェリカ様のことお願いね」

「任せてください。カーラさんも気にせずゆっくり休んでくださいね」

 

 

 

 

 

 人気の少ない場所のベンチを見つけるとリオンはカーラを座らせる。

 

「大丈夫か? カーラ」

「ありがとうございます」

 

 言って腰掛けるとカーラは一息つき、そして緊張した真剣な面持ちになる。

 その雰囲気にリオンは問いかける。

 

「どうした?」

「リオンさん。ルクシオンさん居ますよね?」

 

 カーラの言葉にルクシオンが光学迷彩を解き姿を表す。

 

 

『何でしょうか』

 

 カーラは一度ルクシオンを見、そこからリオンに視線を移す。その視線は許可を求めているかのようだった。

 カーラの気持ちを察したリオンは頷くと、カーラはルクシオンに話しかける。

 

「ルクシオンさん、先ほど目が合いかけたアンジェリカ様の元寄子の女生徒二人……」

『此方ですか?』

 

 カーラの求めに応じるようにルクシオンのレンズから映像が照射され二人の顔写真が浮き上がる。

 

 

「こいつらがどうかしたのか?」

 

 見ながら疑問の声を上げるリオン

 

「ハイ。杞憂なら良いのですが、その、表情に、目付きに不穏なものを感じまして……」

 

 カーラは視線を再びリオンからルクシオンに移す。

 

「此方の二人に監視を付けていただくことは可能でしょうか?」

「なにやら穏やかじゃないな……カーラがそう言うんならよっぽどの事なんだろうな……ルクシオン」

『分かりました。この二人には監視を付けましょう』

「ありがとうございます」

 

 その言葉を聞きカーラは二人に向かい丁寧に頭を下げ礼を述べた。

 

 

「詳しく聞いてもいい?」

「言ってしまえば勘なんですが……蛇の道は蛇、と言いますよね。思い出したくもない過去ですが私が昔仕えさせられてた女……」

 

 カーラにとっては口に出すのもはばかられる忌まわしい相手ステファニー。

 

「アレを間近で見てきた私の勘が警鐘を鳴らすんですよ……」

 

 そう言ったカーラの顔は何処か後ろめたそうだった。

 本意ではないとは言えステファニーの元にいたことは彼女は人生の汚点と感じていた為、思いだすのも口に出すのも抵抗感があった。

 またどのような理由であれ人を疑い監視をつけるという行為にも抵抗感があった為。

 

 

「勿論私の勘違いで杞憂であってくれるのが一番良いんですが……」

 

 そんなカーラの頭にリオンは手を置くと優しく撫でる。

 

「気にするな。俺達やアンジェを思ってくれてのことだろ。ありがとうな。何もなければそれでいい。

逆に若しも何かあった時、あの時ああしてればなんて後悔するのが一番良くないからな」

 

 カーラがリオンの顔を見ればいつもの優しい笑顔だった。その笑顔に胸を撫で下ろす。

 

 

「そういえばアンジェの居ない場所で話そうとしたってことは……」

「はい。袂を別ったとは言え長らく一緒にいた方々が疑わしいだなんてアンジェリカ様のお耳に入れ、煩わせたくはなかったですから」

「アンジェも甘いところがあると言うか、根は優しいからな。そう言うところに気が付くカーラ、お前もな」

 

 そう言ってリオンはカーラの隣に座り肩を抱き寄せる。

 言われてカーラは照れくさそうに頬を染める。

 

「そんな私なんか……」

「謙遜するな。お前のそう言う優しい気の利くトコ、好きだぜ俺は」

「リオンさん……」

「さて、それじゃそろそろ二人のトコに戻るか」

 

 言ってリオンはベンチから立ち上がるとカーラの前に回り、手を引き立たせる。

 そして二人手をつなぎ連れ立って歩きだすのだった。

 

 

 

 

 

 屋台立ち並ぶ参道に戻った二人はルクシオンのお陰もあり直ぐに合流し、引き続き四人で散策を再開する。

 屋台の遊興を楽しんだり、普段食べない屋台の食べ物に舌鼓を打ったり、互いに違う食べ物を買ってシェアしたりと。

 そうして散策しながらリオンがふと参道から離れた場所に目をやる。視線の先にはこじんまりとした神社があった。

 

 

「どうしたんですかリオンさん?」

 

 そんなリオンに尋ねたのはリビア。

 

「ん? ああ、ちょっと人酔いしたみたいだ。少し休んでいかね?」

「そうだな。カーラも未だ本調子じゃないし」

「いえ、私はまだ大丈夫で……そうですね折角だからお言葉に甘えさせていただきます」

「歩きっぱなしも疲れますからね」

 

 リオンの言葉に三人とも同意を見せ、四人で一休みして行こうと意見の一致を見る。

 そうして一同神社に向かって歩を進めてると突然リオンが駆け出す。

 

 

「見つけたぞ! ソイツを残らず全部俺に売れえええ!」

「ひぃっ!? な、何なんですかアナタァッ!?」

 

 リオンが駆け出した先にはお面を被り胸に箱を抱えた男性。

 突然豹変したリオンに戸惑い取り残される三人。

 その中で真っ先に我に帰ったのはアンジェだった。

 

「リビア、カーラのことを頼む」

 

 アンジェは言ってリオンの元に駆け寄る。病み上がりのカーラに走らせる訳にいかないと一人駆け出す。

 

「オイ、リオン一体何をやってる!?」

「止めないでくれアンジェ! 俺には絶対必要なんだ! コラ! 逃げるな! 金ならいくらでも払うからそいつを売れ! 全部だ!」

「ひいぃっ!? だ、駄目です! コレを楽しみにしてる人達もいるんです! 一人でも多くの人達のために一人一個しか売れません!」

 

 そう言った男性の箱の中身をアンジェが覗き込みながら「コレは?」と尋ねる。

 

 

「あ、ハイ。ウチの婆ちゃんの手作りのお守りなんです。御利益があるって人気なんですよ」

 

 と、お面の男性が答える。

 

「全部同じなんですか?」

 

 尋ねるのは追いついてきたリビア。箱の中身は全て白い紙に包まれ一見どれも同じように見える。

 

「いえ、中身は何種類かに分かれます。色んな種類があってそれぞれ違うご利益があるんです」

 

 男性が答えると、同じく追いついてきたカーラがその言葉を確認するように呟く。

 

「何が当たるか買って開けるまで分からないわけですか?」

「ハイ。何が当たるかは運次第で――」

「だから! それじゃ狙ったモノが出るか分からないだろ! 金なら十倍でも二十倍でも払うから全部売れっつってんだよ!」

 

 男性の言葉を遮るようにリオンが声を張り上げる。

 その剣幕に男性は恐れ慄きアンジェの背後に隠れる。

 

「ですから! その何が当たるか運次第なのもひっくるめてのお守りなんですよ! 例外は認めません!」

「金なら払うって言ってんだろ! 十倍二十倍でも足りないなら百倍払う! これでどうだ!?」

 

 リオンの言葉に一瞬男性の動きが止まる。だが直後思い直したように再び声を上げる。

 

「駄目です! どんなにお金を積まれても譲れません!」

 

 その言葉にリオンは弓なりに目を細める。

 

「いい度胸だ。だったらお前が首を縦に振るまで値を吊り上げてや――」

「いい加減にせんか!」

 

 リオンの言葉を遮り声を上げたのはアンジェだった。その手はリオンの耳を掴んでいた。

 

 

「痛! 痛いですアンジェさん!」

 

 痛さのあまりか思わずさん付けになるリオン。

 

「さん付けはいらん呼び捨てにしろ! ……連れが迷惑をかけたな。今の内に行ってくれ」

 

 アンジェの言葉に男性は「ありがとうございます」と礼をいい立ち去ろうとする。

 

 

「待ってください!」

 

 そんな男性を呼びとめたのはカーラだった。

 

「一人一個なら良いんですよね?」

 

 カーラの言葉に男性は「ええ、一個だけなら」と答える。

 カーラはリビアの方を向くとリビアは察したように頷く。

 

「私達四人居ますので四つまでなら問題なく売って下さるんですよね? その中でリオンさんが欲しいのがあればリオンさんに差し上げます。

そう言うわけなのでアンジェリカ様も協力していただけませんか?」

 

 言ってカーラはアンジェに頭を下げる。次いでリビアもアンジェに頼み込む。

 

「お願いしますアンジェ。協力してもらえませんか?」

 

 カーラとリビアの頼みにアンジェは頷いてみせる。

 

 

「そうだなそこら辺が落としどころだろう。私もそれで構わんぞ。リオンもそれでいいな?」

「え? いやそれでも狙ったモノが出るとは……痛たた!」

 

 アンジェは耳を掴む手に更に力を込めると声を低くしてリオンに語りかける。

 

「選べ。ココで一個も手に入らないか、四つの中から選ぶか。返答は!?」

「わ、分かったよ……! 分かったから耳から手を離してくれ! 耳が千切れちまうよ!」

「駄目だ。事が済むまでこの手は放さん。お前には前科があるからな」

 

 思い出されるのはリビアとカーラ二人に共に告白された日の事。言われて流石にリオンは黙り込む。

 そうしてる間にカーラとリビアで男性に代金を払いお守りを受け取る。

 男性の姿が見えなくなるとやっとアンジェは耳から手を放しリオンは開放される。

 

 

「痛たた……アンジェももう少し手加減してくれたって……」

「駄目だ。さっきも言ったがお前には前科があったからな」

「あの……回復魔法かけましょうか?」

「リビアもリオンをあまり甘やかすな。そこまで強く掴んでない」

 

 アンジェの言葉にリオンは「十分痛ぇよ」と漏らすがアンジェに睨まれ黙り込む。

 

 

「そ、それより早速開けて確認しましょ?」

 

 言ってカーラが全員に御守りを配る。

 行き渡るとアンジェはさっさと開け始め、リビアもそれに倣うように開く。

 

「ちょっ! そんな簡単に!? もっと祈り念じながら慎重に……!」

 

 リオンの訴えに耳を貸すことなく袋を開いたアンジェは呆れた声を発する。

 

「念じながら開けても今更中身が変わるわけでもあるまい。っと白い玉がついた御守りだな」

 

 アンジェは手の平の御守りを見ながら呟いた。

 

「私のは赤です」

 

 続いて口を開いたのはリビア。

 二人が引いたのは其々白い玉と赤い玉に金属による装飾と赤い紐があしらわれたお守りだった。

 

 

「……どっちも俺の狙ってたのじゃない」

 

 残念そうにリオンが呟く。その声にアンジェとリビアは何となく申し訳無さそうな思いに駆られる。

 

「え、えっとリオン?」「リオンさん?」

「白は回復魔法、赤は炎系魔法の色だから二人で交換したら其々得意な魔法の色で丁度良いんじゃない?」

「そうなのか? それよりいいのか私達が貰っても?」

 

 言いながらアンジェは包み紙を見ると内側に【属性の加護・白】と記されていた。

 リビアの包み紙には同様に書いてあり此方は【属性の加護・赤】。

 魔法発動時に放つ光の色が回復魔法が白、火炎魔法が赤と宝玉の色と一致してるのでリオンの言うことと辻褄は合う。

 

「俺が持っててもしょうがないから二人が貰ってよ」

「で、ではありがとうございます」

「うむ、いただこう」

 

 そうして二人は互いの御守りを交換する。

 

 

「そういえばカーラのは?」

「あ、未だ開けてません。その、一緒に開けます?」

「そうだな。今度こそ……!」

 

 リオンは念じながら慎重に袋を開けていく。

 カーラもそれに合わせるようにゆっくりと。

 そしてリオンの袋から出てきたのは――

 

 

「ダブリかよぉぉぉ!」

 

 白い玉の御守りだった。

 そんなリオンの様子に、先に白い玉を引き当てたアンジェとその白い玉の御守りを交換したリビアは何処か気まずそうに苦笑を浮かべてる。

 

「これで四個中三個が期待してたのと違うヤツだった……っと最後の一個、カーラのは!?」

 

 言ってカーラの手元に視線を送ればその手の平に乗せられたのは剣と盾をあしらったアクセサリーだった。

 

「何かカッコイイの出てきましたけど、コレはリオンさんのお望みのモノなんでしょうか? 包み紙の内には【武運のお守り】って書いてました」

「ああ! それだよ! 俺が欲しかったの!」

 

 リオンは感極まって武運のお守りを、それを乗せたカーラの手ごと握りしめる。

 子供のように喜ぶリオンにカーラも顔を綻ばせる。

 

「じゃあ最初に言った通りコレはリオンさんに」

「ありがとうカーラ!」

 

 リオンは受け取ったお守りを手に、色々角度を変えながら満足そうに眺める。その顔は本当に嬉しそうだった。

 リオンの嬉しそうな顔にカーラも、そしてアンジェとリビアも満足気に微笑む。

 

 リオンがココまでお守りに固執したのは、前世の乙女ゲーでは魔力や戦闘能力の向上やステータス成長率向上などの恩恵があったから。

 なのでリオンはこのお守りにもゲーム同様の効果を期待して何が何でも手に入れようとしたのであった。

 四人一緒に行動できるように頼みこんだのは先に述べられたが、場所がココになるようにしたのはまた別途リオンが金を詰み頼みこんでいたのだ。

 ちなみにカーラが引き当てリオンが手にした剣と盾をあしらった【武運のお守り】は接近戦闘能力の向上とフィジカル系ステータスの向上率がアップ。

 アンジェとリビアが引き交換した宝玉【属性の加護】は魔法の威力効能アップで、色により恩恵が受けられる属性が変わり、赤と白は先に述べた通り。

 

 ひとしきり喜びを噛み締めたあとリオンは我に帰り、手元のもう一つの白い宝玉のお守りのことを思いだす。

 カーラが引き当てた武運のお守りを譲り受けたので代わりにコレを渡すのが筋であるのだが。

 

「俺が武運のお守り貰ったから、この属性の加護の白、カーラに、って言いたいんだけど回復魔法使えないもんな……」

「リオンさんから頂けるのですから勿論嬉しいですが、仰る通り私に回復魔法の適性ないので宝の持ち腐れになりそうで……」

 

 何処となく気まずい空気が流れる。

 リオン、アンジェ、リビアには其々適性に合ったお守りを手に出来た形だが、カーラだけが適切なお守りを得られなかった形に。

 

 

「でも四つの内、三つが当たりだったんですから上出来じゃないですか! 若し四つとも当たりだったらそれこそ出来すぎで怖いぐらいでしたし。

コレで良かったんですよ。でも折角の回復魔法に加護があるお守り、相応しい人に持ってもらった方が良いですし……。

そうだ、コレはマリエ様へのお土産ってことでどうでしょう?」

 

 マリエとリオン達、特にアンジェとは以前は色々因縁浅からぬ仲だったが、カーラの命の危機に尽力してくれたのもあって今はかなり良好な関係。

 呼び方に尊称の"様"がついてるのはカーラから見れば爵位が上の家柄で尚且つ命の恩人としての恩義と敬意ゆえとのこと。

 

 

「マリエか。確かにアイツも回復魔法の使い手だしな。それにお前の命の恩人で、俺にとっても恋人の恩人だからな。分かったよ。

あとカーラにはちゃんと埋め合わせはするよ。いや、させてくれ。あとで土産物屋ででも欲しいのあったら遠慮なく言ってくれ」

 

 リオンの言葉にアンジェは頷く。

 

「うむ、婚約者へのケアは大事だぞ。そう言うことだからカーラは欲しいモノがあったら遠慮せずリオンにねだれ」

「良かったですねカーラさん」

 

 アンジェに続きリビアも言葉を紡ぐ。

 

「じゃぁ……期待させていただきますねリオンさん」

 

 そう言ってカーラは笑顔で応えるのだった。

 

 その時空に大きな音が鳴り響いた。

 音のした方を見上げれば夜空に大輪の花火が咲き誇っていた。

 次々と打ち上がる花火に四人とも見入られその視線を釘付けにする。

 見上げる四人の顔は皆一様に幸せに満ちた満足気な笑みを浮かべてた。

 そうして修学旅行の楽しい時間は流れて行くのであった。




本編での修学旅行は行き先の浮島観光が残念で可哀想な感じだったので、この世界線では楽しい思い出作りになってくれるよう想いを込めて。
お守りの件ではこちらでも変わらず暴走してしまったリオンですがw

そして次回からは対公国戦編
お姫様も登場です……!

投稿始めてから今回で丁度三ヶ月。書き始めたころは公国戦にまで突入するとは思っていませんでした。
引き続きお付き合いいただければ幸いです。

評価、ブックマーク、感想などいただければ嬉しいです。

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