モブせか・カーラ if ルート   作:julas

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9(25)公国艦隊襲来【後】

「ええ、貴方には敵いません、ですが他の皆はどうでしょう。豪華客船に乗った他の生徒たちはどうなったのでしょうね?」

 

 圧倒的数の優位を誇る筈の公国軍相手に、たった一機でそれを圧倒するアロガンツを駆るリオン。

 そんなリオンを嘲る様にヘルトルーデは言葉を発した。

 だがそんなヘルトルーデの言葉にリオンは微塵も動揺した様子を見せない。

 

「お前こそ分かってねぇ様だな。ルクシオン見せてやれ」

 

 リオンが言うとコクピット内のサブモニターの一つの画面が切り替わる。

 

「な!? これは!?」

 

 そこに映された映像にヘルトルーデは目を見開いた。

 

 ヘルトルーデが目の当たりにしたもの。

 それを語るに当たり、リオンが出撃する前にまで話は遡る。

 

 

 

 

 

 迫りくる公国艦隊に対しリオンが選んだ選択は単機突撃による奇襲。

 だがそれに辺り婚約者たちが乗る豪華客船からは離れることになる。

 そこに不安を感じない訳はなかった。

 奇襲が成功すれば問題ないが、若しイレギュラーが発生ししくじれば最悪彼女たちが乗る豪華客船を危険に晒すことになる。

 安全面を考えれば彼女たちだけパルトナーに乗せてしまうのが一番。

 だが彼女たちはそれを良しとしないだろう。

 特に貴族としての誇り矜持を強く胸に抱き清廉であろうとするアンジェは。

 アンジェが残るのに彼女の親友であり、リオンの婚約者でもあるリビアとカーラが共に残らないわけがない。

 

 

「みんなは?」

『例によってアンジェリカの部屋に三人とも集ってます』

「相変わらず仲良いよな。一所に集まってくれてるのは助かる。と、その前に今回あの五人でここに居るのってクリスだったな。何処に居るか分かるか?」

『少々お待ちを――見つけました此方です』

 

 ルクシオンが先導に立つとリオンもそれに着いていく。

 

 

 

「クリス。話がある」

 

 リオンの声に目の前の青い髪を短髪に切りそろえ眼鏡をかけた精悍な少年、クリス・フィア・アークライトが振り返る。

 彼もまたリオンがかって決闘で叩きのめした相手の一人だが、純粋な剣技においては五人の中で随一。

 この国を、いや世界を見渡しても彼以上の剣は彼の父含め数名しかいないだろう。

 

「公国の艦隊が迫って来ている。一戦交える事になる可能性が高い。お前にも協力してもらいたい」

「公国だと!? 一体どういう事だ!?」

「時間がない。歩きながら話す付いて来てくれ」

「いいだろう」

 

 リオンが歩き出すとクリスもその後を追いついていく。

 

 

「やけに物分かりがいいな。いや助かるが」

「マリエから言われていてな。バルトファルトとは手打ちで和解したと。また、今回行き先が一緒になったと伝えたら何かあったら力になれとも言われててな」

「そうか……この戦いが終わったら報酬弾んでやるから土産も弾んでやれ」

 

 カーラの救命から聖女のアイテムなどの件を経て関係改善の方向に進めたのはやはり正解だったな、と思いながらリオンはクリスと連れ立って歩を進めていく。

 

 

 

 

 

「俺だ、リオンだ」

 

 言いながらリオンは豪華客船のアンジェにあてがわれた部屋の扉をノックする。

 リオンの声にすぐにカーラが出迎えてくれる。

 

「いらっしゃいリオンさん。っと、どうしたんですか? 険しい顔なさって」

「カーラ、お前の勘が当たっちまったみたいだ」

 

 リオンの言葉にカーラはその瞳を見開き思わず口元に手を当てる。そして俯き顔を曇らせる。

 

「そんな顔するな……。気持ちは分かるがお前が悪いんじゃない。むしろお前のお陰で最悪を回避出来そうなんだから感謝してるくらいさ」

 

 そう言ってリオンはカーラの肩を抱き寄せる。

 

 

「それとスマン。折角お前が気を使ってくれたのにアンジェに全て話すことになりそうだ」

「……! 分かりました。一先ず中へどうぞ。アンジェリカ様!」

「リオンか。いいぞ中に入ってもらえ……っとカーラも二人ともどうした!?」

 

 アンジェはリオンとカーラの剣呑な様子に声を上げた。

 

「今から詳しい事話す。あと、コイツにも話を聞いてもらう」

 

 リオンが言うとその後ろからクリスが顔を覗かせる。

 

「クリスか……。分かった」

 

 そうしてリオンとクリスは部屋に通される。

 

 

 

「単刀直入に言う。公国の艦隊が迫って来ている。このまま接触すれば恐らく交戦になるだろう」

「なっ……!? 確かなのか!?」

「ああ。裏切者がいた。ソイツがこの船の位置を公国に教えやがった」

「裏切者!? 一体誰が……」

「アンジェ、お前のよく知ってるやつらだよ。ルクシオン」

『ハイ、マスター』

 

 リオンの言葉に応じルクシオンが中央の赤いレンズから映像を投射する。

 映し出されたのはアンジェの元の寄子の二人。

 見知った顔が映し出されアンジェの顔が驚きに歪む。

 

 

「あと、コレがその二人の部屋から出てきた。ちなみに公国製だ。ご丁寧に説明書までありやがった」

 

 リオンが言うと投射された映像が切り替わり例の発煙筒が映し出される。

 

「あの馬鹿者どもが何という真似を……!」

 

 アンジェは額を抑え崩れ落ちそうになるのをカーラが支える。

 

「アンジェリカ様! 私は絶対アンジェリカ様を裏切ったりしません! ずっとお側で支え続けます!」

「私もアンジェの友達です! いつまでもずっと……!」

 

 リビアも寄り添いアンジェの手を握る。

 

「カーラ……リビア……。そうだな私にはこんな素晴らしい親友達がいるんだ。あの二人のことは諦めたつもりだったのに情けない……。

大丈夫だもう振り切った。過去よりも大切なのは今だからな」

 

 気を取り直したアンジェにリオンは安心したように頷く。

 

 

「一応聞いておく。三人ともパルトナーに避難する気はないか?」

「気持ちはありがたいがそれは出来ん。そんな他の生徒や乗員を見捨てる様な真似は断じて受け入れられん。スマンな折角の好意」

「リオンさん、私もお受けすることは出来ません。申し訳ありません。一緒に残ってアンジェリカ様をお支えします」

「いや、カーラ。お前とリビアはリオンの言う通りパルトナーに……」

「出来ません! アンジェリカ様が御自身の誇りを持っておられるように、私にもアンジェリカ様をお支えする者としての誇りがあります。こればかりは絶対譲れません!」

「私も残ります! アンジェとカーラさんを置いて逃げるなんて出来ません!」

「二人とも……ありがとう。そして……すまないリオン。お前の婚約者たちを巻き込んでしまって」

 

 アンジェが申し訳なさそうに言うとリオンは少し苦笑気味な笑みを浮かべていた。

 

 

「気にするな分かってたことだ。俺の婚約者たちと親友は他の奴らを見捨てられるような人間じゃないってこと」

 

 言ってリオンはカーラとリビアに手を伸ばすと優しく頭を撫でてやるのだった。

 

「そういう事だからクリス。俺の婚約者たちと親友、あとついでにこの船を護ってやってくれないか。俺は単機で奴らの旗艦に突撃する」

 

 リオンが口にした単機突撃の言葉にクリスは驚きを露にする。

 

 

「なっ!? 馬鹿な、無茶すぎる! 公国の艦隊を侮っているのか!?」

「そっちこそ俺とアロガンツを侮って貰っちゃ困る」

「アロガンツ? お前の鎧か? 今ここにあるのか?」

 

 クリスの顔が若干引きつる。自分たち五人を圧倒した鎧でありその強さは嫌と言うほど身に染みている。苦手意識は否めない反面、その強さには信頼を置いてた。

 

「俺の船、パルトナーと共にもう直ぐ到着する」

「バルトファルトの船? ブラッドとグレッグが言ってたヤツか? とんでもない砲を積んでると聞いたが」

 

 空賊船を射程外から正確に打ち抜き次々と沈黙させたその威力は相対した空賊はもとより、リオンと共に戦ったブラッドとグレッグの度肝をも抜いていた。

 

 

「聞いてるのなら話が早い。パルトナーがいれば公国の艦隊ごとき束になろうと問題じゃねぇ。あとお前には鎧を貸してやるから存分に働け。

敵も鎧を出して来たらそいつ等まではパルトナーも手が回らんだろうからな。あとモンスターも従えてるらしいからそっちも頼む」

「鎧……それも二人が言ってたな。なんでも空賊から鹵獲した鎧をカスタムしたやつだとか」

「安心しろ今回はあんなガラクタ紛いじぇねぇ。アロガンツほどじゃねぇが王国は勿論公国の鎧にだって負けねえヤツだ。期待してるぞ剣豪としてのお前の腕」

「剣豪……か。所詮父の剣聖に及ばない出来損ないだがな」

「今はそういう劣等感にかまってる暇はねえんだ。お前も男なら察しろ。本当ならお前に任せず俺が側に居てあの二人……いや三人を護ってやりたいんだ」

 

 言われて真顔になるクリス。彼の思い人であるマリエの顔でも思い浮かべたのだろうか。

 

 

「そうだな。大事な女を護りたいという気持ちは私もお前も同じだからな……。ただ、旗艦への突撃を私に任せられないのは、やはり私では力不足という事だろうか」

「コイツはアロガンツじゃねぇと務まらない。アロガンツに俺以外のヤツを乗せるつもりはないからな。もしアロガンツ級の鎧がもう一機あったら迷わずお前に譲っていたさ」

「その言葉だけで十分報われる。分かった命がけでこの任を全うしよう。アンジェリカに特待生……それとカーラと言ったか? マリエが助けたという女生徒だろう?

マリエが助けた命、ここで散らせたりはしない」

「頼んだぞ」

 

 そう言ったリオンはクリスから視線をリビアとカーラに向ける。

 

 

「リビア、カーラ……」

「「リオンさん!!」」

 

 リオンが二人を見詰め声をかけると二人は同時にリオンの胸に飛び込んできた。

 

「絶対に……帰ってきてくださいね」

「必ず……無事に戻ってきてください」

「ああ、約束する……。必ず二人の元へ生きて帰る」

 

 そう言って二人を抱きしめる。

 

 

「リオン……」

 

 アンジェもまたリオンに歩み寄る。そして拳を突き出すとリオンの胸に軽く充てる。

 

「必ず帰って来いよ。私の大切な親友たちを、お前自身の大切な婚約者達を間違っても泣かせるなよ」

 

 アンジェもまたリオンの無事を願い声をかけるとリオンは力強く頷きその思いに応えるのだった。

 

 

 

 そうしてリオンは婚約者達と親友が残る豪華客船の護りをパルトナーとクリスに託し単機突撃による奇襲を敢行したのだった。

 

 

 

 そして今に至る。

 

 

 

 アロガンツのコクピット内のサブモニターに映し出された映像にヘルトルーデは驚きで目を見開く。

 それは数で圧倒するはずの公国の艦隊とモンスターの群れが、たった一隻の艦――リオンのパルトナーの砲撃により次々と無力化させられる様。

 パルトナーに備わってる二連装の砲門はたった二門で砲口は合計四つ。だが威力も速射性も命中精度も桁外れ。

 この世界は砲撃に対する防御として魔法によるバリアを張る技術も確立しており、公国の艦もまたパルトナーの砲撃を防ぐべくバリアを張った。

 だがパルトナーの砲撃はそれらのバリアも易々と貫通する。

 パルトナーが撃つ度に機関部などを撃ち抜かれた公国の軍艦が次々と戦闘不能に陥いり、大型モンスター達は黒い煙に変わり消えていく。

 艦に対砲撃用のバリアを展開するのはなにも公国の艦だけではない。パルトナーも当然展開する。

 そして公国のバリアがパルトナーの砲撃を防げなかったのに対し、逆に公国の砲撃はパルトナーのバリアを破れずにいた。

 

 更には鎧を駆るクリスの奮戦。その活躍ぶりは凄まじく流石は乙女ゲーの攻略キャラと感心せざるを得ない。

 彼の駆る鎧が空を駆け抜ける度にモンスターが次々と斬り裂かれ黒い煙に変わって消えていく。

 クリス以外にも鎧はいたが、それらの鎧全て合わせた戦力より彼一人の方が上回っていたほどだ。

 

 クリスにはアロガンツほどではないにせよ、ルクシオンで作られたこの世界最高クラスのカスタムメイドの鎧とブレードを託されていた。

 この船にも鎧は積まれていたがそれらとは比べ物にならない高性能機。

 空賊退治でブラッドとグレッグに鹵獲した鎧で戦わせたとき、彼らはそんな鎧でも十分戦ってくれた。

 だがこの先また彼ら攻略キャラの力を借りる時があったとき、果たしてその時もこの程度の鎧で足りるだろうか?

 そう思い準備しておいたのだ。何時か必ず必要になると思い。

 尤もその何時かがこんなにも早いのは想定外であったが。

 そんな高性能の鎧を駆るとはいえ圧倒的数の不利。それを覆し逆に圧倒するその強さは"剣豪"の称号を賜るだけのことはある。

 

 

「やるじゃねぇかクリスの野郎。流石は剣豪。いやもう未来の剣聖様と言っても差し支えないんじゃねぇのか?」

「剣豪ですって!? ロストアイテムに加えそんな者まで……!?」

 

 目算違いにも程があると言わんばかりにヘルトルーデは悔しさに震えていた。

 更には豪華客船に乗る生徒たちの奮闘ぶり。

 パルトナーとクリスの駆る鎧の活躍により公国の艦隊と大型モンスター達は豪華客船に全く手を出せずにいたが、小型のモンスター達はその網をかいくぐり襲い掛かっていた。

 だがそれらのモンスター達も生徒たちの奮戦の前に討ち取られていく。

 冒険者が尊ばれる王国の学園では、生徒たちも実技授業で鍛えられていた。

 実技授業だけではない。学園の生徒たちは冒険者としてダンジョンに自主的に潜り切磋琢磨してたのだ。

 大型中型ならまだしも小型のモンスターの群れごときには遅れは取らないのだった。

 結果数で勝ってた筈の公国艦隊は逆に返り討ちに合い今や風前の灯火。

 

 

「分かるか? 俺が豪華客船に大事な婚約者達を残してここで戦っていられたのもそっちの護りも万全だったからだよ」

 

 リオンの言葉にヘルトルーデは益々悔しそうに顔を歪めるのだった。

 

 

『マスター、目の前の敵も忘れないでください』

「おっと、そうだったな」

 

 言いながら襲い来る鎧を操手を殺すことなく無力化させる。

 

「しかし何十体居やがるんだよコイツ等。若しかしてこの艦隊の鎧の殆どこっちに来てるんじゃねぇのか?」

『かもしれませんね。お陰で生徒たちの船を襲うのはほとんどモンスターの群れでした』

「そういやクリスが斬り伏せてた敵もモンスターが殆どだったな。鎧に向かわれてたら一寸ヤバかったかもしれないからな」

 

 撫で斬るようにモンスター達を次々と斬り伏せてたクリスであったが、これが鎧相手で敵操手の命を奪わないようにだったなら状況は違ってたかもしれない。

 クリスはリオン程敵の命を奪うことに忌避感はないが、ブラッドとグレッグからリオンの話を聞かされてたのもあってリオンに倣っていそうだったので。

 そうこうしてる内に公国の残りの軍艦はパルトナーの砲撃に残らず戦闘不能になりモンスター達も粗方消えた。

 リオンが未だ戦ってるのに気付いてかクリスの鎧が此方に向かってくる。助太刀してくれるつもりだろうか。

 

 

「おっ? 剣豪様の助太刀か? 有り難いねぇ。と言いたいがもうほとんど敵の鎧も残っちゃいねぇか」

『そうですね。いえ、タイミングが良いというべきでしょうか、丁度敵の増援も来たようですし』

「増援?」

『機体はブラック。精鋭部隊のようです』

 

「ブラック!? 黒騎士か!?」

 

 ルクシオンの報にリオンの顔に緊張の色が浮かび上がる。




サブタイトルは【後】ですが対公国戦は未だ続きます。

次回、最強の敵、黒騎士です。

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