モブせか・カーラ if ルート   作:julas

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あけましておめでとうございます
新年最初の更新です


13(29)休息

 リオンの部屋

 

「よっぽどお疲れだったのね。ベッドに入ってすぐお休みになられて」

 

 ベッドに横たわるリオンを見詰めながら呟きを漏らしたのはカーラ。

 リビアもまたリオンを見詰めながら口を開く。

 

「ボロボロのアロガンツ見たときは正直心臓止まるかと思いましたもんね。それでコクピット開けたら…………右腕が血塗れで……」

 

 一瞬言葉が途切れたのはリオンが公国王女を膝の上に乗せてたのを思い出したからであろうか。

 リビアもカーラも気にはなってはいたが、満身創痍のリオンが何より心配だったし直ぐにでも治療と休養が必要と分かっていたので問いただすようなことはしなかった。

 もっともリオンが全快した後に問いたださない保証などありはしないが……。

 

 

「リビアさん、直ぐにリオンさんに回復魔法掛けてくれて本当にありがとう。船を護ってる時も一緒に戦ってる皆さんに回復魔法掛けててお疲れだったでしょうに」

 

 豪華客船が襲撃された際、敵飛行船はパルトナーが砲撃しさらに敵艦の砲撃もパルトナーのバリアで防いで見せた。

 鎧は殆どリオンに相対してて、モンスターも大型の部類はクリス達鎧を駆る者たちで対処した。

 だが小型のモンスター達までは対処しきれなかった。バリア展開の反対側から回り込むなどして船に近づき襲い掛かられ、それらは船に残った生徒たちで対処したのだった。

 その際、負傷した生徒たちにリビアは回復魔法で治療を施していたのだった。

 

 

「平気です。それよりカーラさんの方こそお疲れでしょ? 船を襲うモンスター達から私とアンジェ護ってくださって。私もカーラさんみたいに剣使えた方がいいのかな」

「使えるなんて大層なものじゃないわよ私の剣は。せいぜいアンジェリカ様とリビアさんを護るので手一杯でモンスターも殆ど倒せてないし。

凄いのは戦って何体もモンスターを倒してた他の生徒さんたちや、そんな生徒達を何人も癒したリビアさんの回復魔法、敵モンスターを何体もやっつけたアンジェリカ様の火炎魔法の方よ」

 

 冒険者を尊ぶ風習の根付く王国では、学園の実技授業でダンジョン探索がある。

 その為男子は勿論、女子でも武器を持って戦った経験のあるものは少なくない。

 そして剣の才を磨き高みに至り多くの者から称賛を受ける者もいる。

 だがそうして剣に身を捧ぐべく選ぶものだけではない。

 魔法などの才を持たぬが故に剣や槍などの武器しか選べなかった者もいる。

 特別な魔法などの才を持たないカーラもまた最小限の剣の手ほどきは受けていたが、彼女にとってそれは無才の証であり誇れるものではなかった。

 

 

「それでもカーラさんが護ってくださったから私も回復魔法に、アンジェも火炎魔法でのモンスターへの攻撃に専念出来たんです。

あの時のカーラさんまるで騎士様みたいで格好良かったですよ。ありがとうございました」

「そんな……大げさよ」

「大げさなんかじゃないです! だって私もアンジェも一つもモンスターからの攻撃受けずに済んだんですもの!

カーラさんのお陰です! 胸を張ってください! でも……あまり無茶もしないでください」

「そうね、私の怪我が増えるとリビアさんの回復魔法の負担も……」

「そういうことを言ってるんじゃありません! 私の回復魔法の負担なんか気にしなくてもいいんです!

女の子なんですからもっと自分の体もいたわってください! 腕なんか噛まれて骨折れたじゃないですか!」

 

 リビアの目にはうっすら涙が滲んでいた。

 

 

「ありがとう……リビアさん」

 

 カーラはそんなリビアに身を寄せ肩を抱く。

 リビアが先ほど騎士の様だと言ってくれた言葉。無茶をし怪我した自分を案じてくれた言葉。

 時に励ましの言葉を、時に優しい言葉を、リビアがかけてくれた言葉はいつも自分の胸を満たしてくれる。

 そんなリビアがあらためて好きだと、大切な無二の親友でこれからも大切にしたいと思うのだった。

 

 

「そういえば」と思い出したようにカーラは口を開く。

 

「不思議なのはモンスターに噛まれたりしても思ったより酷くなかったのよね。腕咬まれたときなんか食い千切られたかと思ったら服も破れてないし。

ねぇ、ルクシオンさんなら何か知ってるんじゃない?」

 

 カーラがそう言ってルクシオンに視線を向ける。

 常にリオンに寄り添ってるルクシオンは今この時もこの部屋で寝息を立ててるリオンを見守っていた。

 

 

『流石に気付かれましたか。実は例の刺された事件の後、マスターの指示で特殊な防刃繊維で織られた見た目そっくりの制服を用意しこっそり換えさせていただきました。

ちなみにオリヴィアとアンジェリカの制服もそうです』

 

 ルクシオンの言葉に「いつの間に……」とリビアが驚きの声を漏らし、カーラは「やっぱり」と、ある程度察してた様だった。

 

『防刃制服に変えるに辺りスリーサイズなども調べさせていただきましたが、それらの情報は機密事項としてマスターには漏らしてませんので御安心を』

 

 ルクシオンの言葉にリビアとカーラは苦笑いを浮かべる。

 

 

『出過ぎたことと思われるかもしれませんがマスターの気持ちも分かってあげてください』

「大丈夫ですよ怒っていませんから。むしろそのお陰で今回助かったんですから感謝してます。ルクシオンさんありがとう。リオンさんにも起きたらお礼言わなきゃ。

でも、出来たら事前に言って欲しかったです」

『言ったら、知ってたらまた余計に無茶するでしょう貴女は』

 

 言ってルクシオンは距離を詰めカーラの目の前に。カーラは思わず目を逸らし苦笑いを浮かべる。

 

『カーラ、貴女のそういう献身的な心意気をマスターは好ましく思ってます。ですが、心配もしてるのですよ。もう少し自重なさってください』

 

 言ってルクシオンは逃がさないと言わんばかりにカーラの顔を逸らした方に回り込み正面から見据える。

 ルクシオンの圧にカーラは身を引き乾いた笑みを浮かべる。

 

 

「そうですよ! ルク君の言う通りですよ!」

 

 言ってリビアも詰め寄る。

 

「カーラさんが怪我すれば何時だって何度だって直ぐに回復魔法掛けますよ。でもね、回復魔法にだって限界はあるんですから。

さっきも言いましたがもっと自分の体いたわってください! あんまり無茶しすぎちゃ、メッ!ですよ」

 

 鼻がくっ付きそうなほどリビアは顔を近づけ、間近に迫って来た。

 ルクシオンと二人合わせて詰め寄られて、二人の圧にカーラは苦笑いを浮かべ頷くのだった。

 

 その後リオンの寝顔を見守りつつ、時折睡眠の妨げにならない程度に小声で他愛無い話をしたりしながら穏やかな時間はゆったりと流れていった。

 

 

 

 

 そうしてどれくらいの時が流れただろうか。

 

 

 

 

 ベッドに横たわるリオンの意識が少しずつ覚醒していく。

 まどろみを抜け出し瞼を開き視界を巡らせればベッドの直ぐ傍で椅子に腰かけ船を漕いでるカーラと、ベッドの膝の辺り上半身を横たえるリビアの姿。

 そんなリオンに向かいルクシオンが声をかける。

 

『お目覚めですか、マスター』

「ルクシオン……」

 

 二人の声にカーラも目を覚ます。座ったまま寝入ってしまったことに気づき思わず慌てふためく。

 

「も、申し訳ありません。はしたない姿お見せしてしまって……!」

 

 リオンはベッドから身を起こし、カーラに手を伸ばすと優しく頭を撫でる。

 

「いいよいいよ。俺が寝てる間ずっと見守ってくれてたんだろ? ありがとな。あと、リビアも」

 

 言って未だ寝息を立ててるリビアの頭も優しく撫でる。

 

「ハイ。それにリビアさんはこの船を護る生徒さんたちの為に回復魔法使われたのもあってお疲れでしたので」

「そうか。公国の軍艦とモンスターの大型中型はパルトナーと鎧に乗ったクリスで対処出来てたけど、小型は残った生徒たち任せになっちまったからな。

正直心配だったんだけど、まぁ無事だったみたいだし……、無事だったんだよな?」

 

 微妙に視線を逸らすカーラにリオンが疑問を投げかける。

 戦闘中ルクシオンに豪華客船での生徒たちの奮戦振りを映してもらったが、目の前の戦闘もあってあまりじっくりとは見れなかった。

 ルクシオンが特に何も言わなかったので、カーラ達に危険は無かったと思っていたのだが、目の前のカーラの視線を逸らす仕草に不安を覚える。

 

 

「ア、ハイ。無事デシタヨ?」

「カーラ……。俺の目を真っすぐ見ろ」

 

 リオンは言いながらカーラの肩に手を伸ばし掴む。

 

「その……チョット危ない目にもあったかな~って……。で、でも制服のお陰で大怪我にならずに済みましたし!」

「制服……気付いたのか?」

 

 リオンは言いながらルクシオンに視線を向ける。

 

『ハイ、お気付きになられたので私から説明もしておきました』

 

 ルクシオンの答えを聞くとリオンは視線をカーラに戻す。

 

 

「すまんな勝手な真似しちまって……。どうしてもあの一件以来心配で」

「い、いえ。そのお陰で大事に至らず済んだんですし……むしろ感謝してます。ありがとうございました」

「でもそれに気づいたってことはやっぱ、元の制服のままだったら危なかったぐらいの目には合ったんだな……?」

「……ハイ」

 

 どこか申し訳なさそうにカーラは答えた。

 

 

「いや、怒ってないから……。いや少し怒ってるかな……俺自身の不甲斐無さに。結局危ない目に合わせちまって」

「そ、そんな……! あんなアロガンツがボロボロになり、中に乗ってたリオンさんまで大怪我負った程の激戦に比べれば私の怪我なんて掠り傷みたいなものですから!」

「掠り傷……そうなのか?」

 

 言いながらリオンが視線を向けたのはルクシオン。

 

『モンスターに腕を噛まれての骨折は、掠り傷と呼ぶには重症過ぎるかと』

「ル、ルクシオンさん!」

 

 言いながらカーラは思わずルクシオンの赤いレンズを両手で覆う。

 

 

「カーラ……」

 

 普段よりわずかに低いリオンの声にカーラの肩がびくりと震える。

 恐る恐る振り返って目にしたリオンの表情は眉間にしわを寄せ心配のあまり泣き出しそうでありながら怒りも混じったような形容しがたい表情。

 

「か、噛まれたと言ってもリビアさんの回復魔法のお陰で傷一つなく治りましたから!」

 

 言いながらカーラは袖を捲って見せる。

 

『防刃制服じゃなかったら食い千切られてたかもしれませんでしたがね』

「ルクシオンさん!?」

 

 ルクシオンの声にカーラが思わす其方に目をやった瞬間、リオンの両手がカーラに伸び、そして抱きしめる。

 突然の抱擁にカーラは驚きの声を上げる。

 

「リ、リオンさん!?」

「頼むから……無茶しないでくれよ……」

「……ごめんなさい」

 

 泣きそうな声を発しながら抱きしめるリオンに、カーラもそっと抱き返し謝罪の言葉を口にするのだった。

 

 

 そうしてしばらく抱き合ってた二人だったが、ややあってカーラはその手を解く。だがリオンは尚もカーラを抱きしめたまま。

 

「あ、あのリオンさん……?」

 

 カーラが呼びかけるも返事はない。愛する相手からの抱擁なのだ嫌なわけはなくむしろ嬉しいぐらいで。だが何時までもと言うと流石に恥ずかしくもなってくる。

 こんなとこ誰かに見られたらと思うと、そう思った時ふと視線を感じる。

 視線の主はルクシオンだった。

 

「あ、あの……ルクシオンさん?」

『ハイ』

「じっと見られてると……その、ちょっと恥ずかしいんですが……」

『………………』

 

 ルクシオンからの返事はない。尚も黙って視線を向けてくる。

 そして一言『映像録画中』とぼそりと呟く。

 

「ル、ルクシオンさん!?」

 

 抱きしめられてるところを、黙って見られ挙句録画中などと言われ羞恥心が刺激され、その事を自覚した途端自分の顔の温度がみるみる上昇していくのが解る。

 リオンに抱きしめられてる自身の身は苦しくはないが、だが強い力でしっかり抱きしめられ、それは振りほどくことを逃げることを許さないという意思を感じる。

 そうして何となく察する。これは無茶をし過ぎた自分に対するお仕置き的な意味合いが込められてるのでは、と。

 カーラはオロオロしながら視線を巡らせるとベッドに俯せてたリビアの姿が視界に入る。

 見ればリビアは既に目を覚ましており頬杖をつきながら此方を見詰めるその顔にはいたずらっぽい笑みを浮かべていた。

 そんなリビアを視界にとらえたカーラが口を開く前にリビアが声を発する。

 

「リオンさん、そろそろ勘弁してあげたらどうですか? カーラさんには既に私とルク君からキツく言っておいてありますから」

「そうなのか?」

 

 言ってリオンはリビアと、そしてルクシオンに視線を向ける。

 

『ハイ、私とオリヴィアとでしっかり言い聞かせておきましたので』

 

 そう言ってルクシオンは頷いてみせた。

 リビアとルクシオンの言葉にリオンは拘束、もとい抱きしめてた手を解くと、その手をカーラの頭の上に置きそしてその目を真っすぐ見詰める。

 カーラのことが心配で堪らないという気持ちが滲み出るようなその視線にカーラは再び

「ごめんなさい」と呟くとリオンは瞳を閉じ頷く。

 

 

「ところで……リビアさん、何時から起きてたの?」

 

 カーラはリオンに抱きしめられ拘束されてた自分を見詰めてたリビアの悪戯っぽい笑みを思い出しながら問う。

 

「え~っと、リオンさんが"無事だったんだよな?"って問いかけてた辺り?」

「それって、殆ど最初からじゃない!?」

 

 言ってカーラは顔を真っ赤にし両手で顔を覆ってしまった。

 

 

「そういう訳だからリオンさん、もういい加減にカーラさんを許してあげてください。何より私とアンジェを護るためにカーラさん凄く頑張ってくれたんですから」

「そうだな……。カーラ、二人を護ってくれてありがとう」

「そんな……当然のことをしたまでです」

「でも、無理無茶はダメですよ! いえ、これに関しては私とアンジェもカーラさんに頼りすぎてたのかもしれませんね……。ごめんなさい。

だから次からはカーラさんも私たちをもっと頼ってください! カーラさんに何かあったら私もアンジェも、リオンさんだって悲しいんですから!」

 

 そうしてリビアはカーラにしがみつくように抱き着く。

 

「うん。ありがとうリビアさん」

 

 カーラもまたリビアを抱き返す。そしてリオンもそんな二人を包み込むように抱きしめるのだった。

 

 

 そうして三人抱き合ってるとリオンの腹の虫が鳴る。

 空気を読まない腹の虫にリオンは顔を赤らめると、リビアとカーラの二人は思わず吹き出す。

 その顔にリオンも照れ笑いを浮かべる。

 

「激しい戦いを終え帰投してすぐお休みになられたんですもの。お腹も空きますよね。そう思って用意してもらったんです」

 

 言ってカーラは立ち上がると奥からサンドウィッチを載せたトレイを運んでくる。

 具材も分厚く切ったロ-ストビーフにたっぷりの野菜と食べ応えありそうであった。

 

「温かい飲み物もありますよ」

 

 次いでリビアがスープウォーマーを持ってきてボウルに温かいスープを注ぐ。

 

「こいつは美味そうだ。確かに戦いっぱなしで、帰投後直ぐ寝たんで腹も減ってたんだ。ありがたく頂かせてもらうよ」

「「ハイ、リオンさん。どうぞ召し上がってください」」

 

 そうしてリオンはリビアとカーラに勧められるままに、準備された食事を美味しそうに頬張るのであった。




カーラの剣に関しては、モンスターも倒せず自分と背後の人を護る程度の腕なら、原作のイメージ乖離も無いだろうと判断。
原作ではマリエに供してダンジョン行ってますが、魔法など使ってる描写なかったので此方でも魔法などは使えない方向で。
原作で豪華客船防戦時、魔法バリア張ってる女生徒多数いましたが、カーラもそれ使えるというソースは無かったので。
ルクシオン謹製の防刃制服はまぁこれぐらいなセーフでしょうと、と言うか無かったら大分ヤバかったのでは(汗

いつもお読みいただきありがとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
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