学園祭は進行して行く。様々なイベントで盛り上がりを見せその中でも目玉の一つがエアバイクレースだ。
リオンたちのクラスからは本来ジルクが出るのだが、周囲の選手からのラフプレーにより大怪我を負い決勝は出場断念となってしまった。
ちなみにジルクもまた先日の決闘でリオンが叩きのめした相手の一人である。
注目行事の棄権ともなれば学年代表のアンジェの面子に関わるとリオンが代理で出る事になる。
そしてレース当日
「想像以上に酷いな……」
観客席から試合を眺めていたアンジェは呆れた声で呟く。
試合に臨むリオンに向かい妨害ラフプレーが集中するだけでなく観客席からも罵声が飛び交う。
だからアンジェとリビアは自分たちだけでもリオンを応援してやろうと見守っていた。
そもそも何故こんなにもリオンに非難が集中するのか。それは遡ること一学期に起きた決闘騒動。
アンジェの当時の婚約者であったユリウス王子始め有望と目されていた五人の貴族令息達が揃ってマリエと言う一人の女子に篭絡された。
特に王位継承者であるユリウス王子が複数の男子を侍らす女に夢中など大問題。
アンジェがそれを諌めるも聞き入れられるどころか余計に反発され結果、アンジェとマリエの代理人を立てた決闘に。
マリエの決闘代理人が王子達五人に対しアンジェの味方をするものはなく、見かねたリオンが名乗りを上げた。
因みにこの五人、リオンの言うところの乙女ゲー世界における【攻略キャラ】とのこと。
なので本来この内の誰かと【主人公】が結ばれるべきはずなのにマリエに揃って篭絡されたのはリオンにとっても謎らしい。
その際大々的に賭け事が催され、殆どの生徒が王子達に賭けた。
先にも述べたが【攻略キャラ】だけありその強さは折り紙付きで故に多くの生徒たちが彼らに賭けたのも当然の成り行き。
だがそんな相手にリオンは圧勝を収めたのだった。
その番狂わせに多くの生徒が大損害を被ったためリオンは恨みを買っていたのだ。
そして賭けに負けた生徒達は今回のエアバイクレース、リオンの敗北を望み対抗選手に賭けており、それゆえの妨害に罵声。
孤軍奮闘するリオンを応援する二人に向かい背後から無粋な声が掛かる。
「あんたの取り巻き本当に嫌われてるわね」
ステファニーだった。彼女もまた決闘のとき王子達に賭け大損しリオンに逆恨みを募らせていた一人である。
模擬喫茶店への嫌がらせも、罠に嵌めて空賊に襲わせるのもそこに端を発していた。
また、王子達に婚約破棄された同士にもかかわらず、未だ引き摺る自分に対し、振り切ってる風に見えるアンジェに対しても苛立ちを募らせていた。
「リオンは私の取り巻きではない」
アンジェやリオンに対し逆恨みを重ねてたステファニーだったがアンジェの応対は冷ややかだった。
そんなアンジェに尚もネチネチと恨み言を重ねるステファニー。だがそんなステファニーに向かいアンジェは鼻で笑う。
「フン。恨むなら自分の浅はかさを恨んだらどうだ?」
アンジェの言葉にキレたステファニーが手を上げようとするとリビアが立ち塞がる。
「アンジェに手を出さないで下さい!」
リビアの健気な友情にアンジェは胸が温かくなる想いだった。だが――
「私達の会話に割り込むんじゃないわよ平民風情がァッ!」
アンジェを庇おうとしたリビアに向かいステファニーが怒鳴り声を上げた。
その恫喝にリビアが怯む。そこに畳み掛ける用に更なる暴言をステファニーが吐こうとすると間に割っては入る人影があった。
「お、お嬢様。そんなことよりレースの方見ましょうよ。お嬢様の嫌いなバルトファ……きゃっ!?」
カーラだった。だがそんなカーラに向かってステファニーはすかさず手の甲で叩きまくしたてる。
「やかましいっ! あんたも出しゃばるんじゃないわよ取り巻きの癖に!」
「だ、だってレースが……」
「空気読めっつってんのよ! この愚図が!」
宥めようとするカーラに向かいステファニーは益々激昂し、カーラに向かい暴言に加え手まで出る有様。
そんなカーラを助けようと駆け寄ろうとするリビアに向かいカーラが接近を阻むように手の平を付き出す。ステファニーには見えない角度で。
「行くぞリビア」
カーラの意図を察したアンジェはリビアの耳元に囁くと肩を掴みその場から共に立ち去ろうとする。
「で、でもカーラさんが……」
「そのカーラの好意を無駄にするなと言ってる……」
そう言ったアンジェのもう片方の手は爪が手の平に食い込む程きつく握られ震えていた。
そしてアンジェと、彼女に連れられリビアも去っていく。
ステファニーに罵倒され手を上げられながら、カーラはその場から遠ざかっていくリビアとアンジェの姿に安堵するのだった。
「あいたた……。相変わらず加減てものを知らない狂犬なんだからあの女……」
カーラは水道でハンカチを濡らしステファニーに殴られたところに当てていた。
「カーラさん!」
そんなカーラを見つけ駆け寄るのはリビアだった。後ろからアンジェも着いてくる。
「あ、オリヴィアさん大丈夫だった?」
「私より、カーラさんの方がボロボロじゃないですか……!」
リビアの言うとおりカーラの体にはあちこち痣や擦り傷が見える。
「大丈夫よこんなの日常茶飯事だから」
「こんなのが日常茶飯事なの自体が全然大丈夫じゃないです!」
言いながらリビアの眼には涙が滲んでした。
「まあね。でもこんな日々もあと数日。バルトファルト男爵があの女を家ごと叩き潰してくれるまでの辛抱。でしょ?」
「ハイ! リオンさんなら絶対やっつけてくれます! でも今はカーラさんの怪我を……」
そう言いながらリビアはカーラをそっと抱きしめる。
リビアに抱きしめられながらカーラは柔らかな温かさに包まれるように感じる。そして徐々に痛みが引いてくのを。
「痛みが引いていく……オリヴィアさん、これは」
「私、回復魔法が使えるんです。リオンさんからは内緒にするように言われてたんですが」
回復魔法の使い手は希少だ。なので面倒ごとを避ける為のリオンの指示だったのだろう。
「そ、そんな、だったら私なんかに……」
「私を守ろうとして大切な友達が怪我を負ってしまったんです。使うのは当然じゃないですか」
そう言ってリビアはカーラに優しく微笑みかける。
「オリヴィアさん……」
「リビアです。親しい友人は皆そう呼んでくれます。リオンさんもアンジェも。
だから、カーラさんにもそう呼んで欲しいんです」
「リビア……さん」
「ハイ!」
カーラの瞳からは歓喜の涙が流れる。
学園に入学して以来カーラに友達と呼べる存在は居なかった。
横暴な寄親は勿論のこと同じ立場の寄子の取り巻き仲間でさえその間に信頼も情も無かった。
リビアはそんなカーラにとって始めて本当の意味で友達と言える存在だった。
「カーラ……私からも礼を言わせてくれ。リビアと私を庇ってくれてありがとう。あと……すまなかった!」
言うとアンジェは頭を深く下げた
「あ、頭をお上げください! 上級貴族様が軽々しく準男爵の娘なんかに頭を下げられては」
アンジェリカの対応にカーラは戸惑いの声を上げたのも無理はない。
学園の貴族女子の、いや上級貴族のプライドの高さを思えば考えられない行動だった。
「いや、謝らせてくれ。私が軽々しくあの女の挑発に乗りさえしなければ……。それだけではない。
私は未だお前のことを疑い信用し切っていなかった。それなのにお前は私達のために体を張ってくれた」
アンジェの言葉にカーラの胸が熱くなる。
カーラと接点の有る上級貴族は殆ど寄親のステファニーだけだった。横暴で傲慢で軽蔑こそすれ尊敬とは程遠い醜悪な上級貴族。
だからこそそんな醜悪で傲慢な貴族ではなく、誇り高く清廉で尊敬に値する上級貴族への憧れと、同時にそんな上級貴族など夢物語にしかいないのではと言う諦めもあった。
そんなカーラにとって目の前のアンジェは正に夢見た上級貴族のそれに映った。
「アンジェリカ様……上級貴族の女性がみんなアンジェリカ様みたいだったらいいのに……」
憧れの体現の様なアンジェの姿に感激したカーラの口から感激の想いがこぼれる。
そんなカーラの言葉にアンジェはやや照れくさそうに、だがその想いに応えんと矜持を奮い立たせ言葉を紡ぐ。
「買い被りすぎだ。だがお前の期待に応えるべく、他の貴族の規範でありたいと心がけよう。
あと、侘びと言うわけでもないが、実家のレッドグレイブ家にも増援を頼み込んでおこう。
リオンなら心配無いとは思うが相手は伯爵家とも繋がりのある空賊だ。打てる手は打っておくに越したコトはないからな」
女の子の友情尊い、いいよねぇ。
カーラが身を挺して庇ったとこから回復魔法、"リビア呼び"承認の親友認定の流れ、我ながら気に入ってます。
あとカーラが割って入ってくれたお陰で原作正史のようにリビアとアンジェが気まずくならずに済みましたのも。
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