空賊の鎧の一体がアロガンツに向かって斬りかかる。
だがアロガンツはその刃を避けようともしない。避ける必要が無いのである。
並の鎧の攻撃ごときではアロガッツの装甲は傷一つつかない。
驚きで硬直する鎧の腕を掴むと力任せに放り投げる。
そのまま別の鎧に当たり二体は縺れながらそのまま落下して行く。
この場所は下が海なので鎧に乗ってれば問題無いだろう。
先に先遣隊を撃破し鹵獲したその鎧を調べた際、それらにはバリュートのような装備が全ての鎧に備わっていた。
今向き合う本隊の鎧にも同様の装備は備わってるだろう、落下し着水すれば命の危険は無いとの判断。
リオン駆るアロガンツに向かい更に二体の鎧が一気に襲い掛かる。
リオンはそれらも左右の手で其々捕まえそのまま鎧と鎧をぶつける。そしてその二体もそのまま落下して行く。
瞬く間に四体の鎧を叩き落としたリオン。
だがそれでも空賊の鎧は数を頼みにひっきりなしに襲い掛かる。
勿論それらもアロガンツに敵うわけもなく次々叩き落とされていく。
そんな中アロガンツに向かわず別行動を取る鎧も現れる。
アロガンツに敵わないと諦め、代わりにパルトーナーを押さえようと言う腹だろう。
だがそれらの鎧は宙を舞う刃に襲われその足を止められる。
ブラッドの鎧が操るスピアだった。
足を止めた鎧に向かいグレッグの鎧が襲いかかる。手にした槍を振り回し次々と鎧を叩き落としていく。
『中々やりますね彼らも』
「そうじゃないと困る。間違ってもカーラとリビアに……パルトナーに抜けさせるわけにはいかねぇからな」
最悪の場合空賊の鎧をパルトナーの主砲で討つのもやむなしの覚悟であった。
この場所はパルトナーからはかなり離れてる。少なくとも空賊船の砲撃も届かないほどには。
それでも時間を与えればパルトナーへの接近を許す事になる。それは到底見過ごせるものではない。
ブラッドとグレッグには若し二人を抜きパルトナーに迫る鎧があったらその鎧を撃ち落とすと言い含めてあった。
例え空賊相手でも人は殺したくない。だがそれでも大切な人が危険にさらされればその限りではない。
リオンの人を殺めたくないと言う思い。だが大切な人を守る為ならそれも破る覚悟。
二人もその覚悟を受け、敵の鎧を一歩も通さぬ覚悟で戦いに臨んだのであった。
『射線開きました。撃ちますか?』
「やれ」
直後パルトナーの主砲が放たれる。
空を切り裂く砲火が目の前の空賊船側面を大きく抉る。
直撃ではない。だが戦闘能力を奪い航行不能にするには十分な一撃。
空賊船の砲撃の射程の遥か外から放たれた一撃は見事に空賊船の一隻を戦闘不能にしたのだった。
空賊の鎧が多数居る中撃てば砲火に巻き込まれた鎧の操主の命はないだろう。
だから主砲を撃つ前に空賊の鎧を叩き落とし排除してから砲撃を放った。
こんな面倒な事せず問答無用で撃てば簡単であろうとルクシオンは思う。
だがあえてそれを口にしないのは彼なりの気遣いだろうか。
何はともあれ先ずは一隻。
数の上では未だ空賊の方が上ではあるが、圧倒的数の差をものともせず射程外からの航行不能に至らせる強烈な砲撃を受けたのだ。
空賊たちが受けた動揺は想像以上で、一気に浮き足立った空賊の鎧は次々とリオンに落とされていく。
そうしてまた一隻の空賊船に向けパルトナーからの一撃が放たれ戦闘不能に。
戦況はリオンたちに極めて有利に進んでいる。だが気を緩めるつもりはない。
油断すればそこからどんな不測の事態が起きるとも限らないから。
十分気を引き締めたつもりでも何が起こるか分らないのが戦場というもの。
目の前の鎧を殴り飛ばした直後、背後に殺気を感じ振り返ると猛烈な勢いで迫る一体の鎧。
他の通常サイズのと比べ大柄なそれはアロガンツに迫るほどの大型の鎧だった。
巨大な鉈状の武器を振りかぶる敵の大型鎧に対しとっさに腕でガードする。
コクピットのリオンにまで響くような強烈な衝撃。
見ればガードした腕に僅かに傷が見られる。他の空賊鎧が傷すら付けられなかった事を思えばこの大型鎧が別格なのは明らかだった。
「ようやくボスのお出ましか」
リオンが不敵に呟く。
他の雑魚鎧とは別格の空賊首領が操る大型鎧。こいつを討ち取りこの戦いの幕としよう。
そう思いボスに向かい合った直後背後に攻撃を受ける。振り返れば複数の鎧が群がってきていた。
アロガンツの装甲の前にその攻撃はほとんどダメージは無かった。だが不意の攻撃はリオンの神経を逆なでするには十分だった。
「邪魔くせぇ! だったらお前らから片付けてやる!」
だがそれらの鎧もまた、それまでの雑魚鎧とは違っていた。
アロガンツの脅威となるような攻撃力は無いが、その代わり死角から攻撃したり紙一重で攻撃を避わしたり、更には連携にも秀でていた。
「クソッ! コイツ等足止めが目的か!? ハッ!? アイツは、ボスは!?」
リオンは咄嗟にボスを探すとそれは直ぐに見つかる。その姿はリオンに背を向けパルトナーに向かおうとしてた。
その姿に思わず頭に血が上る。
「行かせるかっ! がっ!?」
リオンはまとわりつく重さを感じた。見れば両足と背面に鎧がしがみついていた。
「クッ……コイツら!」
パルトナーに向かうボス鎧と身にまとわりつく鎧を見ながら逡巡する。
殺さず戦い抜くにはここが限界なのかと、覚悟を決めなければならないのかと。
次の瞬間アロガンツのボディに衝撃が。正確にはまとわりついていた鎧が受けた攻撃の衝撃の余波がアロガンツン伝わったもの。
見れば敵鎧にはスピアが突き刺さっていた。攻撃を受けた事により鎧による拘束が一瞬緩まる。
その機をリオンは逃さない。瞬時に鎧を振り払い捕まえると鎧同士をぶつけ纏めて破壊し叩き落とす。
「ブラッドか!? 助かった!」
そしてボス鎧の方にも視線を向ければそちらにはグレッグの鎧が立ち塞がり切り結んでいた。
ブラッドもそうだがグレッグにも済んでのところで助けられた形である。
やはり腐っても攻略対象キャラと言うことか。
ボス相手にグレッグはかなり善戦していた。一対一では無理でもブラッドとも共闘させれば勝ち筋は十分見える。
ゲーム的な路線への軌道修正を重要視するならそれが正解かもしれない。だがリオンは一刻も早くこの戦を終わらせたかった。
それはパルトナーで待つ――。
リオンは胸ポケットの上に手を置く。ポケットの中を確かめるように。そして軽く目を瞑り、開く。
「グレッグ下がれ。ソイツは俺がやる」
「な!? そりゃないぜバルトファル……」
「グレッグ!」
ブラッドの声だった。
反論の声を上げかけたグレッグだったが引く事を受けいれる。
それはブラッドにたしなめられたからともう一つ。
アロガンツの手に巨大な戦斧が握られていたのもあるだろうか。
リオン駆るアロガンツが一気にボス鎧の元へ飛ぶ。
向かって来るリオンに向けボス鎧が大鉈を振り下ろす。アロガンツの戦斧と衝突し火花を散らす。そして――
ボス鎧の大鉈が砕け散る。
「ウソだろ……!」
驚きの声を漏らしたのはグレッグ。
グレッグが自分には過ぎた業物と評したリオンから渡された槍。その槍と打ちあってもビクともしなかった大鉈が砕け散ったのだ。
大鉈を砕いたアロガンツはそのまま斬撃を続け様に放ちボス鎧の両手両足を破壊する。
そしてボス鎧の頭を掴むと空賊の旗艦目掛けて飛翔し甲板に叩きつけた。
鎧の両手両足を失い甲板に叩き付けられ、ころがされたボスはアロガンツを見上げながら恐怖に震える。
完全に戦意喪失したボスは降伏を宣言した。
決着だった。
ストックが尽きかけようとしてます。明日の分は多分投稿できそうですが、その先は毎日投稿継続出切るか現状不明となってます。
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