俺はポケモントレーナー   作:goldMg

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1_フルオカタウン(人物紹介あり)

 目が覚めたらポケモンの世界にいた。人間がモンスターを育成して戦わせる世界だ。

 なんか明らかに人型のポケモンとか見たことのないポケモンとかいっぱいいるけど。

 ポケモンの世界が現実になったらそりゃ数百万種に分岐するよな。

 俺の相棒はこいつ、人型のポケモンであるホシノだ。

 フルネームはタカナシホシノと言うらしい。

 目覚めた森で助けてくれた縁で仲間になった。

 

「おじさんはね──」

 

 だの

 

「うへ〜今日はどこ行く〜? おじさんはあそこのカフェが良いな〜」

 

 だの、一人称がおじさんな事と、銃火器を背負っている事、頭の上に変な輪っかが浮かんでいるのが特徴的なポケモンだ。

 最初は「おじさんじゃねえだろ……」とか思ってたけどそのうち慣れた。まあピカチュウだって「ピカ!」とか言うしそういう鳴き声みたいなもんでしょ。よく考えたら何だよピカって。

 

 そんな事はどうでも良いんだ。

 俺はホシノと数多の試練を乗り越えてきた。

 

 まず最初の街、フルオカタウン。

 そこから? と思うかもしれないが、俺には身分証が無いし。なんなら常識も無かった。

 街に入ろうとしたら警報が鳴り響いて警備に取り囲まれ、それぞれが連れていたポケモンに、俺自身がポケモンとして討伐されそうになった。

 いや、どういうことなのん? ってツッコミたかったけどその時は必死すぎた。

 

 指示を出してモンスターに技を繰り出させる警備を見て、ああもうこれはポケモンだわ、とその時理解した俺はホシノにすぐさま指示を出した。

 見た目少女を戦わせる事に一瞬の躊躇もあったが、どうやら俺にはポケモントレーナーの素質があったらしい。

 なんとか勝つ事が出来た。

 これはアレだな、チート特典って奴だな。

 神様も粋なことするぜ。

 

 トレーナーレベル1の状態で何とか警備を叩きのめしたわけだったけど、さあ全て解決、これで安心して街に入れる! 

 わけがなかった。

 むしろヤベエやつとして見られていた。

 街の入り口で立ちぼうけの俺の元へ、更なる試練が訪れた。

 もう明らかに風格が違う奴だった。

 あ、これはこの街のジムリーダーだわ。

 またもや一瞬で理解した俺は、権力者の介入による闘争の強制終結を願った。

 

 最初はポケモンの言う事なんて聞く耳持たんって感じだった。でも、ポケモンを連れてるんだから俺はトレーナーだよって事を懇切丁寧に説明すると、ちょっと挙動不審になったジムリーダーは、身分証を持たない奴はポケモンなんだけど……みたいな事を言ってきた。

 ここだ、と思った。

 

 自分には記憶が無いこと。

 身分証も一応免許証なら持っていること。

 ホシノを連れているから俺はポケモントレーナーであること。

 免許証でダメなら身分証を発行してほしいこと。

 

 それを改めて必死に伝えた。

 するとジムリーダーは一回溜息を吐いた後、免許証を預からせろと言ってきた。

 大人しく差し出し、街の中に入っていったジムリーダーを待つこと1時間。

 ホシノからハッキリしないながらもこの世界について色々と聞いていた。

 

 聞いた事をまとめると、

 色々な地方があり、各地に特色のあるモンスターがいる。

 モンスターボールは無い。

 各街にはジムリーダーあるいはソレに近い存在がいて、街をポケモンの襲撃から守っている。

 10歳になると旅に出る慣習があり、その地方の街を周ってなんかする。

 ジムリーダーを束ねるチャンピオンがおり、その年の年間王者が次年度のチャンピオンに就任する。

 らしい。

 やっぱりポケモンだこれ! 

 ボールは無いけど! 

 それにしても詳しいなホシノ! 

 

 完全に理解した俺は、ホシノに満面の笑みを向けて自らの解釈を伝える。

 ホシノも笑ってくれたので合っているのだろう。

 ポケモンとはいえ可愛い女の子が笑うのを見ていると勝手に時間が過ぎてしまうもので、ジムリーダーが戻ってきた。

 片手にはカードのような物を持っている。

 免許証と引き換えにソレをくれるらしい。

 

 でも免許証は俺のアイデンティティというか、アレが無いと俺が俺である証明ができないというか……

 すげえ悲しいのでなんとか返してもらえないか粘ってみたけどダメらしい。

 なんかどうにかすれば取り返せるとか言ってたけどよく覚えてねえや。

 とりあえず街に入れる状態にはなったらしい。

 まずは飯屋を探そう。正直腹が減ってたのでマトモな飯を食べたかった。外にいた時は食事がワイルドすぎた。

 

 第二の試練だ。

 

 文字が読めねえ。

 言葉が通じるのに!? と思ったけど、ポケモンの世界だし任天堂なんだからそりゃ言葉は通じるわ。多分あのレジ系の点字文字から発展してるんだろうなあ……と何となく察した。

 どうやらホシノは文字が読めるらしく、トレーナーがポケモンに注文を任せるという逆転した立場になってしまった。

 メニュー表を読みながらチラチラ見てくるホシノに、いや俺は野生児とかじゃ無いから……ちょっとこことは環境が……と弁明したらニヤニヤして脇腹を突いてきた。

 

 出されたのは何の動物かわからない肉と何かわからない野菜。何かを煮込んだスープだった。

 もしかして:ポケモン

 現実だったらサジェスト汚染が始まりそうな食事だったけど、食べてみれば至って普通の食事だった。

 知っている肉である牛、豚、鶏、羊、どれでも無い味だったけどまあそんなもんだろう。

 

 腹を満たした俺に対してホシノがお金は持っているのかと聞いてきた。

 従業員に聞かれてすごい目をしていたが全く問題無い。先ほど倒した警備が気絶している間に財布からもらっておいたから。

 ポケモンバトルで勝ったらお金を貰える。そんな世界でよかったわ本当。

 そう伝えるとなぜか微妙な空気になっていた。まあホシノもトレーナーありのバトルは初めてっぽいしあんまり分かってないんだろう。

 

 ふと、ホシノに携帯電話があるのかを聞いてみる。

 すると持っているらしく、どんなものか見せてもらう。何で野良ポケモンなのに携帯持ってんの……

 どうやらメガネ型のデバイスがこの世界では普及しているらしく、ソレを差し出してくれた。

 俺の頭の方がホシノより大きいしメガネのフレームが歪んだりしないか不安になって恐る恐る装着した。ホシノは気にしなくて良いよーと言ってくれたがお金あんまねえんだから弁償もできないんだよ……

 

 起動するとメガネに文字が浮かび上がる。

 当然読めない。

 

『Sight Newral Link 確立中……』

 

 ホシノ曰くそういう意味のことが書いてあるらしく、初めて使うメガネでやる時は初期設定として必要な事らしい。

 ドキドキしながら待つとさほど時間がかからずピピッという音がした。

 しかし視界は何も変わらない。

 ん? と思ってホシノに聞いてみると

 

『確立失敗……原因不明……こちらにお問い合わせください──―』

 

 どうやら視界から神経のハックを行うのが失敗したらしい。

 しきりに首をひねるホシノはカスタマーセンターに電話をかけようとしていたが、出来ないなら出来ないで良いし、なんか怖いから別に良い事を伝える。

 

 街を散歩するとポケモンを回復する事ができるとかいう店を見つける事が出来た。

 すげえポケモンっぽい! と思って興奮して入店したら様々なポケモンがいた。

 ホシノの肩を叩いてポケモンがいる興奮を伝えると若干引かれたけど、この感動はこの世界の存在には伝わらないだろう。

 ……リ、リザードンだあああああ!!! 

 連れているトレーナーの女の子は赤い帽子をかぶっていた。女の子にリザードンに触って良いか尋ねると、リザードンに聞いてほしいと言われた。

 確かに、こういうのは本人の意思が大事だよな。

 興奮そのままリザードンに聞いてみると少し照れたようにしながらも頷いてくれたので思う存分モフる。

 

 ──んほおおおおお!! 温かくて毛並みがサラサラでしゅごいのほおおおおおおお!! 

 ちょっと嗅がせてね! お、お日様のかほりがしゅる! 

 これがかえんぽけもん! 

 

 しばらくハスハスしていると後頭部にチョップを喰らった。

 堪能している邪魔をするのは誰だ、と振り返ると呆れ顔のホシノがいた。

 

 ホシノ! ホシノもモフモフしよう! な!? 

 そう迫るとちょっと近いと言われて、自分が興奮していることに気付いた。

 リザードンを見ると己の体を抱えて俺の事をチラチラ見ていた。

 トレーナーの女の子も少し顔を赤くしていた。

 ホシノも顔を赤くしている。

 

 まさかここは、性癖の坩堝アメリカ!? 

 

 そんなわけはなく、青年がリザードンに性的に興奮していると思われているだけだった。

 

 真顔で否定する。俺はノーマルであり、可愛い女の子が好きである。でも物語に出てくる伝説の動物が出てきたら誰だって興奮するだろう? 

 そう伝えると怪訝な顔をしていたので、己のいた地方ではリザードンは伝説のポケモンだったと続ける。

 

 何となく腑に落ちないような顔をしつつも納得してくれたのでヨシ! 

 ホシノに怪我をしてないかと尋ねる。せっかくポケモンセンターに来たのだから回復していけば良い。

 しかしホシノは大丈夫、おじさんは元気だよーとむん! みたいな感じだったのでポケモンセンターを後にする。

 

 次に向かったのはフレンドリィショップ、みたいな店だ。色々なアイテムを扱っているようだが、やはりモンスターボールは売っていなかった。そのかわりいくつか回復アイテムを買っていく。

 店員はなんか上裸で刺青だらけの甘栗頭がやっていた。

 客の話によると優秀なトレーナーらしい。

 キャラ濃いな……

 

 次の場所、ジムに向かおうとするとホシノに止められた。

 

 もう疲れちゃって……全然動けなくてェ……だそうだ。

 

 そういうわけで宿探しをする事になった。

 ペット同伴可の宿なんてすぐ見つかるのか? と思って聞いてみるとどうやら人型ポケモンには人権があるらしい。

 あと、あんまりペットとか言わない方がいいらしい。

 ポリコレの影響かもしれねえな。

 

 

 ──────

 

 

 ホシノは、自身を助けた青年が自室に入っていくのを見届ける。

 

 ババコンガに襲われて逃げていたところに、空が突然真っ暗になり、覆われた太陽から青年は落ちてきた。

 困惑する二者の目の前で立ち上がるとホシノの武装を確認してすぐさま指示を出し、かすり傷すら負わせずにババコンガを撤退に追い込んだ。

 攻撃が青年に及んだ際は驚異的な反応で攻撃を全て避け、常に立ち位置をホシノの後ろに直した。

 

 己の事をポケモントレーナーと名乗った青年はどうやら記憶喪失らしく、常識を全く分かっていなかった。

 行く宛がないと言うので街まで連れていく事になったのだけどIDを持っていないらしく、そのせいで街に入る時にまたもや戦闘になってしまった。

 

 衛兵達のパートナーは屈強なモンスターであり私では到底敵わないはずだったけど、青年が指揮すると自身の能力が何倍にも膨れ上がるような全能感があった。見えていなかったところが見えるような、相手の隙が全て見えるようなそんな感覚に陥った。

 しかも、指揮されている間は自然と彼に従うように行動してしまうので戦う必要はないんじゃないか、とかそういう忠告すらできなかった。

 しかも私に戦わせるだけでなく衛兵達本人と白兵戦を行い一方的に気絶せしめていた。

 本人も冷や汗をかいているあたり不味い事をしている自覚はあるようだったけど。

 

 何とかなるよー、と励ましはしたけど内心どうしようかと考えているとジムリーダーのテッセンさんがやってきた。

 

「この騒ぎは何だ?」

 

「おっ、話が分かりそうな人が来た! いやー困ってたんですよ。なんかこの人たちいきなり襲いかかってくるし、ちゃんとポケモン持ってるポケモントレーナーだよって説明しても全然理解してくれねんだわ」

 

「…………何を言っているのかね?」

 

「いや、だからさ。身分証明書が無いから警報に引っ掛かっちゃったんだけど、ほら、ポケモンのホシノもいるし! ちゃんと人間でしょ?」

 

「まだ続けるというならワシが相手になろう」

 

「やらないやらない!」

 

 訳のわからない事を言う青年に対してテッセンはシビレを切らしたけど、青年も戦うのは不本意のようですぐさま否定した。というか私もこれ以上はちょっと……

 

「はあ……いいか? IDを持たない人間なんかいる訳ないだろう? それにポケ……とはなんだ?」

 

「だからポケモンだって! 知ってんだろ!? ともかく、身分証明書みたいなのは……この街の規格にあってるかは分からないけど免許証ならあるんだって! ちょっと記憶喪失で生まれ故郷とかは分からんけども!」

 

 そして彼が見せたのは何やら外国の文字で書いてあるカードだった。

 テッセンはこれを受け取ってどうしろと……みたいな顔をしていた。

 

「ほら、俺の名前書いてあるじゃん」

 

「うむむ……」

 

「もしそれが使えないなら、新しい身分証発行して貰えないかなー、なんて……」

 

 青年は、どうやら本気でそれを身分証明書だと言ってる様子だった。

 

「あのー、ちょっとおじさんからも伝えたい事が……」

 

「おお、そうか」

 

 テッセンさんに森の中での出来事を伝える。

 

「うむむ、そんな事が……あい分かった! ワシが何とかしてみよう!」

 

「うへ〜ありがとうございます〜」

 

「その代わり、君は彼をパートナーとしてしっかり導くんだぞ?」

 

 彼と共に戦った時のことを思い出す。

 このまま一人でいてもどうせ何も変わらないので、ちょうど良いのかもしれないと承諾した。

 

 そこから街の中でまた彼の常識の無さを思い知らされた。まさか、衛兵達の財布から金を盗んでいたとは。

 しかもポケモンとやらはペットの類らしく、私のことをペット呼ばわりするものだからすこーしだけ頭に来てしまった。

 とんでもないパートナーを拾ったな、と思いながらその日は戦闘の疲れもありすぐに眠りに落ちた。

 

 

 ──────

 

 

 朝、宿の飯を食べているとホシノがうへーとか言いながら隣の席に着いた。

 うつらうつらしていて、見てておっかないので餌付けする感覚でご飯を口に運ぶ。

 これが真のポケモンだったらポロックとかで良いんだろうけど、人型ポケモンであるホシノはちゃんと人間と同じご飯を食べないといけないらしい。

 しかし今日の予定であるジム挑戦を伝えると、カッと目を見開いた。

 

 おお……1日いただけでもあんまりしない表情であろう事が分かるぞ。

 なんでも、ジムというのはそれはそれは権威ある機関であり、ポッと出の若造がいきなり挑めるものではないらしい。

 それなりの実績が無いと挑むことさえ出来ないとか。

 じゃあ10歳になって旅に出た時には実績どうやって作るんだよ。そもそも実績作りのためのジムじゃねえのかよ。

 と聞き返すとどうやら試練は別にあって、それをクリアしたものだけが挑めるらしい。

 誰でも彼でも挑めるようにしていたら手が足りないからだとか。

 たしかに? 

 

 じゃあ今日はどうすっかな……と思案しながら餌付けをしていた為、ホシノの口に限界まで飯が詰め込まれて窒息しそうになっていた。

 ジト目のホシノに謝り思案を続けると、性急すぎると言われた。

 そもそも街に来てすぐに何かしようとか考えるものじゃ無いと。

 まずは街のことをゆっくり知っていけと言われた。

 でもなあ……まあ良いか、何とかなるだろ。

 これどっちがトレーナーか分からねえな、そう冗談混じりに笑いかけると真顔でそうだよ、と返された。

 このおじさんあんまり冗談通じないかも……

 

 

 ──────

 

 

 そういうわけで一旦別行動、街に繰り出す事にした。

 自販機に売っているものを確かめたり、歩行人のファッション、機械のレベルなどを見て、俺のいた世界とどれほどの乖離があるのかを観察した。

 結果としては、自販機──サイダーなど清涼飲料水、ファッション──生地の種類は綿や絹などの生体由来がほぼ全て、機械──テレビや液晶に加え、ニューラルリンクを用いた携帯の操作が可能なほど発展、と、どうやら歪な差となっているようだ。

 とは言え大した差は無い為、問題なく生活することは可能に思える。

 あとは職業なども調べるか──そう思って地図を見ると、この街に隣接した街は存在しなかった。それどころか、通りがかりのマダムに聞いてみると街と街が隣接しているなんてのはあり得ないらしい。この世界には多くのモンスターが存在する為、人類の文化圏というのは集落と集落を道で繋ぐサテライト型の形態だとの事。

 江戸時代かな? 

 兎も角、ある程度の情報は集まったので一旦休憩するためにカフェに入ろうとして、もう金が無い事に気付いた。

 明日からホームレス生活? 俺が? 異世界生活二日目で? 

 これも試練か……カフェの前で失意のままに立ち尽くしていると後ろに気配を感じた。

 あれ、昨日のリザードンの子じゃん。

 何か用かと尋ねるとどうやら彼女も甘味を食べに来たらしい。

 これもう運命だろ。

 彼女に頼み込んで出世払いでお金を貸してもらう事になった。

 同じテーブルに座り、あらためて名前を名乗る。

 彼女の名前はレッドというらしい。

 ──レッド!? 君が!!!??? 

 思わず三度見した。

 ちょっと帽子を外してもらっても? 

 そう尋ねるとあっさりと外して顔を見せてくれた。

 なるほど、確かにpixivや公式絵で散々見たレッドのような精悍さを残した可愛い顔立ちをしている。

 

 ちなみにポケモントレーナーになってから何年目? 

 3年目? へー……13歳かあ、ジムはもう周ってるの? 

 あ、もう全部手に入れた? じゃあチャンピオン達にはもう挑んだのか? ……負けた? はえー、本当にレベル高いんだなあ。あのレッドが3年で8個のバッジだけか……ちなみにジムは全部で8個で合ってる? ……だよな。

 連れてる仲間は全部で6匹? ……5匹なんだ。

 

 やっぱりここはポケモンの世界なんだな、すげえ実感が湧いてきて少し感動してしまった。

 

 ──ところで、仲間にピカチュウがいたりしない? 

 

 その質問をしたところ、彼女は少し顔を強張らせ、驚いたような表情を見せた。

 ん? 答え辛い事聞いたか、ごめんな。

 

 注文したサンドイッチも届いたし食べることにした。

 コメダ珈琲と同じ規模感のサンドイッチに四苦八苦しているとレッドはどこかに行ってしまっていた。

 しっかりとお金は頂いていたので代金を支払い、店の扉をくぐるとホシノが待っていた。

 おやおや、こんな可愛い子に出迎えしてもらえるなんて贅沢だな俺は。

 こんなおじさんにそんな事言って何が楽しいのさー、と軽く流された。

 好感度が足りねえな。

 

 本日の成果を話しながら帰路に着く。

 1番反応が大きかったのはレッドからお金を借りた所だった。

 まあ悪い意味でだけど。

 年下の女の子からお金借りるのはちょっと……みたいなことを言われたけど、そんな事気にしてたら餓死するじゃん。

 そんで今日一日調べて分かったのは、この世界で俺はマトモな定職につけなさそうという事だけだった。

 一般的なルートが10歳でポケモントレーナー→色々やって実績作り→就職

 という事なので、実績作りまでの過程を全て吹っ飛ばした俺にはちと厳しい。

 割と就職までのモラトリアム期間はあるけど、20超えて本当に何の実績も無いやつとか能力面もそうだし素性がヤバいでしょ。怪し過ぎる。

 ホシノは15歳らしい。ホシノみたいな人型の野良ポケは就職とかすんのか? 

 そう聞いてみると、あはは〜みたいな感じで誤魔化していた。

 おう、キリキリ吐け。これもコミュニケーションだ。

 うへ〜って言いながらスタコラと逃走してしまった。

 まあ良いか。

 突然、ビルの隙間から溢れた夕焼けの逆光で人々のシルエットが視界いっぱいに広がる。

 足を止めてそれを眺めると、影はさまざまな形をしていた。

 人間以外が当たり前に存在するこの世界だからこそ見れる光景。

 本当に……何て面白くて、素晴らしい世界なんだ。

 

 

 ──────

 

 

 次の日、ようやく金策をする手番になった。

 なんでも街の周りに出現するモンスターを追い払ったり野生の薬草などを収集する仕事があるらしい。

 本当にポケモンか? 

 というか実績作りってもしかしてこれ? 

 ホシノは少しビビっているようだった。

 多分初日に出会した桃色ゴリラにこれまで虐げられて生きてきたんだな、可哀想に……

 微妙な顔をしている、やっぱりそうなんだ……

 

 ホシノに連れられてジムにやってきた。

 何? ここで受けられるの? 

 子供ばっかで俺みたいなのがいるとすげえ場違いなんだけど。なんか小学校に迷い込んだ気分だわ。俺がここに入ってきただけでちょっとザワッとしたし。

 挙動不審にしてると一人の生意気そうな男の子が近寄ってきた。

 

「なーなー! おじさん何してるのー?」

 

 おじさんだとお!? そんなことを言う口はこれかー! と、気を紛らわす為にくすぐり攻撃を仕掛ける事にした。

 わーきゃー言いながら方々に駆ける子供達と戯れていると、ホシノがいつの間にか混ざっていた。

 二人目のおじさん!? 

 

 ホシノが持ってきたのは薬草採取だった。

 まあホシノも俺のポケモンになりたてだしな、簡単なのが良いだろ。

 

「ホシノねーちゃん! 遊んでくれてありがとなー!」

 

「お〜、おじさんも楽しかったよー」

 

 何故かチラッとこちらを見るガキンチョども。

 いや、俺はおじさんじゃないぞ(笑)

 ホシノも意地悪そうな笑みを浮かべてこちらを見ていた。

 おら! さっさと行くぞ! 

 お前らもちゃんと試練こなすんだぞ! 

 

 

 ──────

 

 

 フルオカタウンに最も近い154番街道沿いの森に行く。

 街道て、お前本当に江戸時代じゃねえか……

 ホシノ曰く、ここら辺は薬草採取の穴場らしい。

 へー……やっぱり野生ポケモンだった時の名残とか? 

 そうだよ〜、との事だった。

 俺としては穴場より本場の方が良かった、王道知らずして邪道には辿り着けないからな。というのは胸に留め置いて素直に感心したフリをする。

 多分、メインの採取場所は子供が多いから気を遣ってくれたんだろうな。

 礼を言うといいんだよぉ〜と機嫌よさそうに答えてくれた。

 ホシノは優しいなあ。

 ところで採取場所に来たは良いけど、俺にはタンポポとひまわり以外の草は全部同じに見えるんだ。

 そう伝えるとホシノがバッ、と振り向いた。

 その顔には、何ができるんだこいつ……って書いてあった。

 俺に出来るのはポケモンの指揮だけだなあ……

 結局、ホシノが草を見つけて俺がそれをカゴに入れて持っている分業となった。

 次々と見つけてむしり取っていくホシノのおかげでカゴはすぐ満杯になり、予定の時間よりも早く終える事ができた。

 そこで、薬草の見分けかたについて教えてもらう事にした。さすが野生で生きてきただけあってさまざまな薬草に詳しい。葉の裏や形、根っこなども見る必要があるらしい。

 ホシノは教え方が上手いようで、俺みたいなバカでもすんなり理解する事ができた。

 その事を褒めると何やらモニョっていた。

 

 さて、やることはやり尽くした。そろそろ街に帰るか。

 ジムに行くとホシノがカゴを寄越せと言うので渡した。彼女はとてとてと受付に近付いて行き、カゴをカウンターに下ろした。

 何やらこちらを見ながら受付嬢と話し込んでいるようだけど、俺としてはいくらになるのかが気になって仕方なかった。

 今日の夕飯代すらおぼつかないんだもん。

 

 話し終えたホシノが戻ってきた。

 いくらになったのか聞いてみると後でね〜との事で、一旦宿に戻ることにした。

 

 風呂に入り、サッパリしたところでホシノの部屋に向かう。

 

「は〜い、入っていいよ〜」

 

 お許しも出たところで中に入るとベッドの上でダラーっとするホシノの姿があった。

 

 というわけで、昼間そのままお金を渡してくれなかったわけを聞いてみた。

 どうやら、俺には常識が足りてない。無駄金を使い過ぎ、薬草採取すらできない、ということでホシノがお金を管理することになったらしい。

 ポケモンにお金管理されるのかあ……

 

 特に反論する理由もなかったので了承して部屋を出ようとすると呼び止められた。

 不満は無いのか、とか。

 何言ってんだこの子は。

 出会ったばかりの俺に優しくしてくれて、薬草の知識すら教えてくれた子が俺のためを思って管理してくれるってんだからそれで良いじゃん。

 ありがとう、とだけ言い残して自室に戻って寝た。

 

 

 ──────

 

 

 んー! いい天気だ! 

 というわけで次の日はいよいよモンスターとの戦闘試練を受けることになった。

 チートの影響で薬草採取よりは得意だ。1日ぶりのポケモンバトル、張り切っていくぜ! 

 ホシノが選んだのはイャンクックとかいうモンスターらしい。

 子供達と一通り戯れた後で、最初に出会った時みたいに重装備をしたホシノについて行く。

 どうやら今度は154番街道の少し奥、155番街道に行くらしい。

 別に運動不足では無いはずなのだけど結構な距離だった為、一度休息を取ることになった。

 ホシノは味噌汁を水筒に入れてきてくれてた。

 嫁ポケモンじゃん。

 そんな休息をとっている人間のことなどお構いなしにモンスターは現れる。

 特徴的な赤い身体を見た瞬間、意識がいつもより明瞭になるのを感じた。

 ホシノもすぐさま武器を構え、油断無くイャンクックに相対する。

 その武装とイャンクックを比較し、近接戦が良いと判断。

 頭と尻尾の先端に気をつけつつ足元に取り付いて武器をお見舞いするように指示を出す。

 ホシノはこんな大雑把な指示でも最適な動きで足元まで辿り着き、無事倒してくれた。

 ……ポケモンって倒していいのか? 

 ホシノ曰くどうやら良いらしい。

 結構アレね、シビアな世界ね……

 

 尻尾の先端を証明として持ち帰ることに決め、ナイフで切り取って雑嚢に放り込んだ。

 素材が勿体無いと騒ぐホシノにドン引きしながら帰路に就いた。

 なんか武器とか防具が作れるとか言ってたけどホシノは十分良い武器持ってるじゃん……

 え、俺? そもそも俺はトレーナーだから戦わないし、いらないじゃん。

 あ、金になるのね。それなら確かにもったいなかったかな。

 

 フルオカジムの受付でイャンクックの尻尾を受付台に置く。

 これで討伐証明が完了らしいんだけどちょっと管理が甘くねえか? だって尻尾だけ切って帰ってくれば誤魔化せちゃうじゃん。

 受付嬢は椅子に座っているケーシィを指差し、エスパーの能力で嘘か本当かわかるようになっていると説明してくれた。

 アナログだねえ……

 報酬金をホシノに渡して街に繰り出す。昼飯代と少しのお小遣いだけもらってるから問題ねえやな。

 ホシノは動いたから風呂入ったりしたいだろうしゆっくりしててな。

 

 

 ──────

 

 

 2ヶ月ほどフルオカタウンで金策とか実績作り? をしていたら、休日、またレッドに会った。

 今回はリザードンを連れていた。

 ポケモンにわかの俺でも知っている、ポケモンマスターに最も近い存在、だったかな。

 まあまだ四天王たちに勝っていないらしいし、ここからドンドンと成長して行くんだろう。

 この前は悪かったな、金返すよ。

 封筒に入れた金を渡し、ポンと軽く頭に手を乗せてからカフェに向かう。

 あんま俺と顔合わせたくねえだろうしさっさといなくなるが吉だね。

 

 と思ったら何故かついてきた。

 どしたん? 

 え? 何でピカチュウのことを知っていたの? って……

 それは何、あのー哲学的な話? ごめん俺あんまり頭良く無いから……

 難しい話が始まるかと思って流そうとしたけど、よくよく話を聞いてみるとピカチュウが昔、故郷の近くに住んでいてよく遊んだらしい。それで、トレーナーになったら迎えに行く約束をしていたのだが見つからず、今に至るとか。

 ……説明できねえや。

 黙っていたら、何かを知っていると勘違いしたのか知っていることを教えろと服をユサユサされた。

 

 ……うるせえ! 俺はカフェに行くんだ! 

 

 レッドを脇に抱えてカフェに向かう。のしのしとついてくるリザードンも相まってとてもシュールな絵面だったに違いない。

 

 レッドを席に座らせ、俺も対面に座る。

 メロンソーダを頼んで、まず落ち着くように言う。

 届いたメロンソーダを見つめる彼女がピカチュウへの思いを吐き出している最中になんとか適当な理由を見つけ出し、それっぽいことを言って誤魔化した。

 だけど誤魔化せた代わりに、ピカチュウを探す旅に同行して欲しいと頼まれてしまった。

 ポロポロと涙をこぼしながら頼まれるとすごい断り辛い……ホシノに相談しなきゃな。

 

 

 ──────

 

 

 少し目を離しただけで凄いなあ……

 ホシノはその行動力に呆れていた。

 レッド、結構有名な少女の頭に手を載せながら、その相棒のピカチュウなるモンスターを探す旅に出ようと青年が頼んできたのだ。

 最近は結構良い感じだけど、この街のバッジは手に入れられそうもないし、次の街に行くのも悪く無いかな。

 諦めるのも、仕方ないよね……? 

 

「おじさんにまかせなさ〜い」

 

 レッドちゃんに笑いかけると、ぱあっと花が開くような笑みを見せてくれた。

 

「ありがとうございます!」

 

「うんうんそうだよな……えっ」

 

 青年が驚いたような声を出したけど、何か変なことでもあったかな。

 

「いやいや、何でも無いよ。そうだな、じゃあ次に行くところはどこにしようか?」

 

「おじさんとしてはマタナキタウンがいいかなあ」

 

「マタナキタウン」

 

 くさタイプのジムリーダー:カムイがいる街であり、街全体が木で造られているマタナキタウン。

 カムイの実力はジムリーダーの中でもトップ層。

 私も過去に惨敗してバッジは手に入れていない。

 

「レッドはもうバッジ持ってるんだっけ?」

 

「うん」

 

「見せてもらっても良いか?」

 

「ちょっと待って」

 

 淡々とした口調のレッドだけど根が素直なのか、青年の頼みにもすんなり頷いてバッグをゴソゴソと漁っていた。

 この娘いつか騙されそう……

 

「これ」

 

「おー……触っても良いか?」

 

「うん」

 

「おじさんにも見せてー」

 

 ウッドバッジ、私より2歳も歳下の女の子が先に手に入れているなんてなー、こりゃあ負けてられないよー…………なんてね。

 

 

 ──────

 

 

 予想と違ってホシノはレッドを手伝うのに乗り気だった。

 俺の予想としては「おじさんはこの街でやりたいことがあるからさ〜」とか言って断るもんだと思ってんだけどな。

 まあ決まっちまった以上は仕方ねえ。別にどこ行ったってやることは同じだ。

 よし、最後にガキンチョどもに挨拶してから行くか! 

 

 そういうわけで一人でフルオカジムにやってきた。ちょうどジムリーダーのおっさんが受付の前で仁王立ちしてるし挨拶してくか。

 おーいテッセンさーん、俺たち別の街に行くからさー。

 ……何でそんな驚いてんだよ。

 え? ホシノがランクアップ? 

 ランクって何? レベルみたいなもんか? 

 実績が溜まると上がってくの? え、何で俺のランクじゃないの? トレーナーじゃなくてポケモンのランクが上がるシステムなの? 

 ……というかそもそも俺のランクってあるの? 

 …………

 

【悲報】俺氏、ジム名簿に登録されてない

 

 ジム名簿ってなんだよ、何で教えてくれないの? 

 え? パートナーで一つ? 

 そしたら普通トレーナーの俺名義になったりするもんじゃないの? 

 

 おかしいだろこれ。

 出発しようとしたら衝撃の事実が知らされてそれどころじゃなくなりそうだ。

 とりあえずホシノを連れてくる必要があるな。

 ちょっと待ってろよ、おっさん。

 

 おーいホシノ、出発前に一回ジム行くぞ。

 え? 何でって……お前のランクが上がったからだろがい! (半ギレ)

 俺じゃなくてお前のランクがなあ! 

 何驚いてんだよ、嘘? 嘘じゃねえよ、喜べよオラ。

 ……うん、じゃねえよ。ボケーっとすんな、さっさとジム行くぞ! 

 

 おーい、ホシノ連れてきたぞ。

 ……何でお前さっきから上の空なの? 

 そういやなんか貰えるんだっけ? 

 え、な、何? エレクトロバッジ? 

 …………え? 

 バッジってジムリーダーに勝ったら貰えるんじゃ無いの!? 

 入手方法の一つでしか無いの? 実績ってそういう事なの? 

 おい良かったじゃんホシノ。

 よくわからんけど貰えるらしいぞ。

 あれ……泣いてる……

 ご、ごめん、うるさかったか……? 

 

 背中をさすると首を横に振るのでどうしたもんかと途方に暮れる。

 とりあえず褒めるか。

 ホシノ、お前の頑張りが認められたんだぞ。胸を張れ、そして早くバッジを受け取れ。俺が嫉妬でバッジを叩き壊す前に。

 お……いや、ありがとうって言われても……お金稼いでただけじゃん俺。

 え、テッセンさん、本当にアレが実績なの? 

 じゃあやっぱり俺にもバッジを受け取る資格があると思うんですけど? 

 いや、しっしっ、じゃなくて。野良犬みたいな扱いすんな。

 

 お、ガキども! 

 怪我してねえか? ……あれ、ちょっと擦りむいてんじゃん。ほら、絆創膏貼るから動くな。

 ん? 今日? 今日は何にもやらねえよ。

 別の街に行くからな。

 えー、って言われてもな……まあまたいつか会えるっしょ。俺がポケモントレーナーである限りな。

 

 おっ、そうそう、分かってんじゃん。

『つよいポケモン よわいポケモン そんなの ひとの かって ほんとうに つよい トレーナーなら すきなポケモンで かてるように がんばるべき』

 ムンモン、大事にしろよ? 

 お前が信じれば、そいつはどこまでも応えてくれる。

 ほら、ホシノを見てみろ。あいつはちんまいが、モンスターと相対すると滅茶苦茶頼りになる。

 ムンモンはどうだ? ……小さい、そうだな。

 でもお前の親友だ、そうだろ? 

 ……おい、いきなり泣き出すな、いきなり鼻水を垂らすな。結構良い事言ってたのに流れをぶった斬るな。

 チーンしろ、チーン。

 この世界の住民は涙脆すぎる(確信)

 ん、嬢ちゃんどうした? ……花、くれるのか? 

 サンキュー、押し花にでもしとくわ。

 ……なんて花だろこれ。

 

 あ、ホシノ──お、おいお前……顔面べちゃべちゃじゃねえか! 

 ほら、お前も拭け。

 なんでみんな鼻水垂らしてるの……? 

 

 

 ──────

 

 

「……まさに嵐、だな」

 

「ええ、最初はどうなることかと思いましたけど、信じて正解でしたね」

 

 テッセンと受付嬢が話していた。

 青年──名を名乗らず、ただポケモントレーナーだと主張した彼は、この街に新しい風を齎した。

 誰もその言葉の意味は分からなかったが、彼は関係無いとばかりにポケモンという単語をゴリ押ししていた。

 

「まさか、ホシノがバッジを受け取る日が来るとは……」

 

「本当に驚きました。まさか彼女がこの街の規定に到達するとは」

 

 バッジを受け取る方法はジムリーダーおよびそのパートナーに勝つだけでは無い。その街での実績が規定値に到達する事でも受け取ることができる。

 子供達は当然ジムリーダーと戦うことを選ぶ。何故なら、そちらの方がカッコいい気がするからだ。

 だからこそみんな、パートナーを探すのだ。より強いパートナーを。より速くて、より大きいパートナーを。

 

 かつて、苛烈で、勢いのあったホシノもパートナーと共に旅をしていた。

 しかしその最中、そのパートナーを失った。

 普通の子なら少し悲しんで、次のパートナーを探すだろう。

 だけど彼女は、立ち直れなかった。さりとて失くしたパートナーの無念を思うと旅を辞めることも出来なかった。

 だから、彼女は一人で走り始めた。

 苛烈な性格は鳴りを潜め、一人称を変え、戦法を変え、己一人で試練を受け始めた。

 しかし、野生は優しく無い。パートナーを失くした? だからなんだ、弱ければ死ねとばかりにその牙を剥く。

 ホシノは強いが、野生もそれに負けないぐらい強かった。

 バッジを3つ揃えるだけの実力はある為、少しずつ、着実に実績を積みつつあったが、一人だ。

 怪我をしたら休まなければならない。大型のモンスターを倒すなんてもってのほか、地味な依頼をコツコツやっていくのだろうと誰もが思っていた。

 

 そこに突然現れたのが彼だ。

 言っている事のうち半分は本当に意味が分からないが、これも運命なのかもしれないと思い、ホシノに押し付け、もといホシノと行動を共にさせた。

 扱いとしてはパートナーだが、彼はどうも自分がホシノのポケモントレーナー? だと思っているらしく、戦闘時は主に後ろに立って彼女に指示を出しているらしかった。

 いわゆる寄生虫というやつかと思い、彼女に押し付けた責任はある為テッセンはコッソリと依頼の様子を見に行った事があった。

 まさに異質、見たことの無い光景があった。

 

『10時の方向、礫が飛んでくるぞ!』

 

『……!』

 

『右の大振りに飛び込んで腹に叩き込め!』

 

『はい!』

 

『今だ! 罠を足元に投げろ!』

 

 それは、戦闘というよりは教導だった。彼が言った通りに来る攻撃に対して言われた通りに対応するだけでモンスターの身体は傷だらけになり、一方のホシノは全く傷を負っていなかった。

 パートナーが指示を出すなど常識ではあり得ない事だが、確かにこれならば成立するだろう。

 そして、ホシノが倒した事のなかったババコンガはあっさりと討伐され、彼女は満面の笑みで青年と笑い合っていた。

 

 テッセンはこれなら問題無いだろうと確信してその場を離れた。

 しかし、たったの1ヶ月半で規定に到達するほどの快進撃を見せるとは全くの予想外だった。

 彼と戦ってみたい。

 プレイヤーとしての自分がウズウズしているのが分かる。

 

「ダメですよ?」

 

「はあー……分かってるとも」

 

 涙でグシャグシャになったホシノの顔をティッシュでそっと拭いている青年を見る。レッドも傍に立って一緒に拭いていた。

 どうやら今度はあのレッドを巻き込むらしい。

 

「レッドさん……全バッジ獲得の最年少記録保持者……四天王に挑んで負けてからはあまり話を聞きませんが……」

 

「彼にとってはあまり意味の無い事なんだろうさ、リザードンの方がよほど興味の対象らしいな」

 

 彼はプレイヤー達のパートナーの中でも特定のパートナーを見ると興奮してモフり出すという奇行がしばしば確認されていた。

 

「じゃあ、テッセンさん! これまでクソお世話になりました!」

 

「ああ、ワシも中々楽しませてもらったぞ!」

 

「さあ、ホシノ、レッド、行くぞ! ああ、ワクワクするなあ! 新しい冒険だ!」

 

「──ポケモントレーナー! 受け取れ!」

 

「!」

 

 彼から預かっていたメンキョショウなるカードを投げて渡す。

 彼は振り向きざまにカードを空中でキャッチし、ニヤリと笑うと胸ポケットにしまった。

 彼は今度こそ振り返らずに二人を連れて外に出て行った。

 

「さて、報告書を書くとするかの……」

 

「他の町にいても噂が流れてくるでしょうね」

 

「間違いないわい!」

 




フルオカタウン キャラ紹介

ポケモントレーナー
20歳
気が付いたらポケモンの世界にいた
服と免許証だけ持ってた
本名不詳住所不定無職
ポケモンを操るチートを手に入れたらしい

タカナシホシノ(原作:ブルーアーカイブ)
15歳
パートナー:ポケモントレーナー
ショットガンを愛用
過去にパートナーを失った事で気力を失っていた
バッジ保有数4

レッド(原作:ポケットモンスターシリーズ)
13歳
パートナー:リザードン、他4体
赤い帽子と黒い髪が特徴的
ホシノより小さい
ポケモンバトルが強い
親友のピカチュウを探している
バッジ保有数8

テッセン(原作:ポケットモンスターシリーズ)
60歳
パートナー:???
ずっとジムリーダーやってるせいでストレスがえぐい
フルオカタウンのジムリーダー

ショップの店員(原作:???)
優秀らしい
刺青上裸の店員
子供に怖がられている
バッジ保有数0
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