ナギのおじさんは慌てふためいた後に、既に一度渡したバッジは受け取れないと結論付けてクールに去っていった。そのキャラでいくのはもう遅いんじゃないかなって。
とりあえずホシノに渡しとくか。
「ええ……? 流石におじさんにソレを受け取る権利はないんじゃないかなあ……」
何言ってるんだ、俺とお前は2人で1人なんだから俺が受け取ったものはお前のものでもあるんだよ。
というか保管場所がねえんだよ。
「とりあえず預かっておくけど……返してほしくなったらいつでも言ってね? おじさんには荷が重いから」
俺にも重いわ、そもそもプレイヤーですら無いんだからなんで持ってるんだよって話になるだろ。
…………いや違う! 何を俺は冷静になってるんだ! 冷静になってる場合じゃないんだぞ!
ナギ!
「はいっ」
うわぁ眩しい笑顔…………じゃない! 俺の旅に同行するってどういうことかわかってるのか?
え? 次の街へ行って、その次の街へ行って、最後は別の地方へ?
わ、分かってるじゃん……おじさんと暫く会えなくなるかもしれないんだぞ?
ソレでも良い?
何が君をそこまで駆り立てるんですかね……
ん? どうしたホシノ。
……なんとなくこうなると思ってたあ!?
……レッドも!?
え、アイリも!?
お前らなんなんだよ!
俺だけ仲間はずれじゃん!
どっかでそんな話してたのか!?
……見てたら分かる?
んなわけあるかい!
2ヶ月つきっきりだった俺が分からなかったんだぞ!
……どしたんナギ。
これからは好きなだけ甘えて良い? ……ってなんの話?
別に良いけど、本当になんの話?
どわっ! いきなり抱きついてくるな、危ないだろ! 転んだらどうするんだ!
……叱られて何喜んでんだ、反省しろ!
やめろ! 4人でのしかかってくるな!
人間鏡餅を実現させようとするな!
俺じゃなかったら地面に倒れ込んでるぞ!
…………おいファンクラブども、ざまあみろ! お前らが散々嫌ったポケモントレーナーはナギを頂いていくぜ!
ガハハ! ブーブー鳴きやがって、お前らなんか油屋で一生働いてろや!
レッド、油屋が何って……この状況で説明しろと?
……油屋ってのは、湯婆婆っていう偉大なババアが経営してる温泉宿だよ。ナギが信仰してる神様とかも訪れて、穢れを祓っていくんだ。
人間は立ち入ることを許されていないから、誤ってそこに入ってしまったら豚にされて食われてしまう。
そういう場所だ。
……いや、実在はしないから。別にナギの神様が本当にそこに行ってるとかそういう話では無いから。
…………いや? この世界があるんだから、確実に存在するわ。
ごめんさっきの嘘、どっかにあるわ。
……一緒に行きたいって言われても、豚にされちまうから俺は勘弁したいかな。
ああ違う違う! 別に一緒に行くのが嫌とかそういうわけじゃねえよ!
そういうめんどくさい属性を伝播させるんじゃねえ!
良い加減控え室行くぞ!
ズリズリと4人を引き摺りながら、スタジアムを後にする。
控え室まで行くとようやく離れた4人娘を置いて部屋を出る。
顔でも洗ってこようかと思ったんだけど
「失礼、私はこういうものだが」
……刑事さんか何かで?
なんか警察手帳っぽいのに色々書いてあるけど、文字読めないんだよなあ……
「ウルトラビースト、聞き覚えは?」
ありますけど、あんた誰?
「む? こういうものだが……」
文字読めねえんだわ。
というか名乗ってくれよ。
ここに書いてあるから、じゃないんだわ。自分の口で名乗るのが礼儀って習わなかったのか?
「ソレは失礼した、私はハンサム、国際警察の捜査員と言えばわかるかな?」
ああなんかいたね、そういうのも……まあ何となくは分かりますよ。
国際的に捜査網を形成してる警察的なもので合ってるでしょ多分。
「私はウルトラビーストを追っていてね、危険な存在だとしたら殲滅しなければならないんだ」
待て、このイベントは覚えが……
「だが、私はパートナーがいない、バトルの才能が無いんだ。だから協力者を探している」
お、俺、ちょっとやることが……
背を向けると、ガシッと肩を掴まれた。
「そこで君を見つけたのだ! 強力なモンスターをパートナーにし、仲間達も実力者揃い! どうかな、私たち国際警察に協力してもらえないだろうか!」
……具体的には?
「ウルトラビーストは各地に出現し、その度に甚大な被害を起こしている。ソーマで時折不可解なノイズが発生するのは、奴らがこの世界に現れたときにウルトラホールから異常電波が放たれる為なんだ!」
ソーマ使えないからノイズとかはよく分からないっすね……
それにしても、ウツロイド以外にもウルトラビーストが現れてたんだな。ティアーズの総裁の部屋にあった映像資料を急いで観ただけだったからあんまり知らないんだよな。ウツロイド1匹でもあんなに厄介なんだから、他のやつもソレはもうやべえ奴ばっかなんだろうな。
「残念なことに、国際警察は万年人手不足でね……内部の人間だけでは対処に手が回らないんだ」
ハンサムはパートナーいないし、本体の国際警察は人手不足だし、同好会かよ。
もっとやる気出せ。
そもそも戦えないやつを現場に出すな、色々間違ってるだろ。
「本当にその通りだが……人手不足というのはそれだけ深刻なのだよ。ソレで、協力は頼めないか? 相応の謝礼は出すんだが」
…………コッソリ協力する→謝礼をもらう→散財する→俺が不自然にたくさんの金を持っていることに気付いたホシノに問い詰められる→白状する→バレる→キレられてお小遣いをカットされる、あとレッドがワンチャン泣く
……うん、謝礼はいらないかな!
「なんと! ジムリーダーですら謝礼を受け取っているというのに! 感動した! ファンになります!」
何だこいつ……ジムリーダーってことは、ナギもウルトラビーストの殲滅に協力してたり?
「いや、彼女は臨時に立った代理だからな。ウルトラビーストの事はなるべく秘匿しておきたいから協力は頼んでいない」
全然ウルトラビーストの動向追えてねえじゃん! だからナギがあんな目に遭ったのか! ハンサムさん、こんな所だとなんだ、あっちで話しましょうか。
「フードコートか……なるほど、確かにこうした環境なら何を話していようが気にするものはいないだろう」
なるほどじゃないが。
コソコソ動いてるくせに小技に造詣がなさすぎだろ。
「ソレで、ここで話したい事というのは?」
ウツロイドが引き起こした事件について説明する。ハンサムは驚きながらも納得していた。
「そんなことが……だからアラカゼ氏と連絡が取れなくなっていたのか」
国際警察は最初からダメなのかもしれんね……アラカゼさんと連絡が取れなくなったんならまずは応援にしろ偵察にしろ人を寄越すべきだ。
何で協力者をそんなに雑に扱える? 正直なところ国際警察を信用しきれないんだけど。
「ううむ困ったな……人手不足としか言いようがない。それに私はあくまで現場の人間だからな、指示を受けて捜査をする立場であり、好き勝手に動けるというものでも無いんだ」
俺だって好きに動けるってわけじゃない。仲間と約束しちまってるからな。
危ない事は極力控えるって。
「……ソレでも良い、既にウルトラビーストを下しているならば実力は十分という事だろう。……真面目な話だ、世界の為にも、我々に協力していただきたい。この通りだ!」
……旅の途中で現れたら対処ぐらいはする。だけど、ソレが精一杯だ。世界の危機は確かに重要かもしれないけど、俺にとっては仲間も大事なんだ。
「ソレでも良い! 本当に助かる!」
こうしてハンサムと出会った俺は、隙あらば盗撮されているという事を完全に忘れており、結果としてウルトラビーストという単語を市井に解き放ってしまった事を後に知った。
マジめんご。
「さっきの人、誰」
レッド、他の3人はどうしたんだ。
シャワーでも浴びてるのか?
「うん、私はもう浴びた」
いや、嗅がせようとしなくて良いから。この距離でも十分に分かるから。
良い匂いだから。
「それで?」
あの人は……ホシノたちが来てから説明するわ。
……どうした、こんな昼間から寄りかかってきて。疲れたのか?
「ううん」
じゃあなんだ?
のんびりしたい気分なのか?
「うん、お兄さんと2人きりになれてないから」
確かに、あの夜以降はレッドと2人きりになれてないような……
つってもまだ1ヶ月ぐらいじゃね?
「長すぎ」
はい……
レッドは2人きりの時は猫みたいに体を擦り寄せてくるけど、他のメンバーがいると若干距離が開くからな。
…………いや、レッドだけじゃねえ、全員そうだったわ。
「今度、あそぼう」
良いよ。ただ、またしばらくは旅になるから次の街に行ったらかな、多分。
「ピカチュウ?」
うん、どうやらこの街にもピカチュウやグズマはいないっぽいからな。
この街でできることはやり切った。
これ以上ここにいても時間が勿体無い。
「冒険は?」
それは期待されても困るというか、結局のところ巡り合わせでしか無いからな……
お前らが調べた伝承だったり逸話だったり、その中に、俺の持つ知識と合致するものがなきゃ、何にもなりゃしない。
「でも、結局いつも見つけてるよ」
うん……
まあ、レッドがいるからだとは思うよ? 俺は
「私?」
理屈は説明できないけどな。
……そ、そんな上目遣いされても俺は折れないぞ!
いくらレッドが妹みたいで可愛くて目に入れても痛くなくても絶対に折れない!
「何バカなことやってるの……」
お、ナギじゃん、他の2人は?
「まだ髪を乾かしてたわ」
そうか、それでどうするよ、この後すぐ飯食べるか?
……おい、なんか言えよ。
…………そっちの席空いてるのにわざわざこっち座る?
ボックス席なのに片方から埋めるとかそんな常識あるか?
「なに?」
……うん、なんでもない。とりあえず昼飯どうする?
フードコートでこのまま食べるか?
「どうしよっか?」
ナギはニコニコと嬉しそうにしながらこちらを見てくる。
こいつ全然質問に答えてくれないじゃん……
なんか突然、ボックス席の反対側の席に二人組が座り込んできた。
年齢は16、7歳くらいか、金髪と銀髪の少年2人だ。
「チョリース! 俺たち、ソーマで配信者やってるブラクラブラザーズって言います!」
「ちょっと相席良いっすかー?」
なんだこいつら!?
ブラクラ!?
意味分かってんのか!?
「今回は有名なポケモントレーナーさんをたまたまお見かけしたので話しかけてみましたー!」
有名……まあ盗撮されまくってるからな。
「そうなんすよねー……だから今回は、ちゃんと許可を取ってからお話しさせていただきたいなと思って!」
あれ、なんだろう。
迷惑系っぽいのに、これまで出会った子たちの中で一番まともな部類かもしれない。
ちょっと協力してあげても良いような気がしてきた。
具体的にどんな事を?
「あっ、ちょっと待ってくださいね! えーと、こういう資料なんですけど……」
資料まで準備!? たまたまじゃないの!?
「……こんな世界じゃないすか。だから、色んな人に会った時にその場で提案できるように作ってあるんですよね」
プロだ……すげえ……
でも悪いな。今、資料共有しようとしてくれてるんだろうけど、俺メガネ使わないから。
使えないとは言わない、だって恥ずかしいから。
「え……あんなにソーマで有名なのに!?」
うん、そんな事言われても全然嬉しく無いんだよね。盗撮で有名になるって経験してみなきゃわからないと思うけどさ。
「へええ……」
何やらメモしていく金髪君。
見た目と行動がここまで乖離してるやつら初めて見たな……
まあアレだよ、多少なら付き合っても良い。その代わり、ここの飯代奢ってくれ。
…………いや、やっぱちょっと待て、レッドとナギにも確認を……2人はツンとした表情でそっぽを向いていた。
……ダメみたいだわ、悪いな。
ブラクラ君たちは顔を見合わせて苦笑いをしていた。
「しょうがないな……また今度よろしくお願いしまーっす!」
「あじゃじゃーっす!」
ああ……協力してあげたかったな……
2人とも、どうしたんだ? そんな露骨に機嫌悪くするなんて。
「……四天王に負けた時の事を思い出すから嫌」
「忙しい時に押しかけてくるマスコミにはもううんざりなの」
そ、そうなんすね……有名税ってやつか。
良かった、一般人で。
……え? 一般人じゃない?
一般人だろ、お前らはそれぞれバッジ制覇の最年少記録保持者と元ジムリーダーだけど、俺の属性は記憶喪失だからな。
「あなたの場合は、記憶喪失とか関係なしに無茶苦茶すぎるというか……」
無茶苦茶なもんか、ポケモンとかいうわけのわからん存在がいるこの世界の方がよっぽど無茶苦茶だ。
俺がやってる事なんて誤差の範囲内だろ。
「あなたが言うところの誤差に助けられた人間もいるという事を、しっかりと覚えておいてほしいわね」
「うん」
誤差って事は俺がやってもやらなくても変わらないって事だから忘れてもヨシ!
……いててて! 頬が千切れる!
「素直に感謝ぐらい受け入れなさいよ!」
か、感謝してるなら頬を摘むな! 俺のほっぺちゃんが泣いてるぞ!
「あー! 師匠の隣、もう埋まっちゃってますよホシノさん!」
「うへ……大人気だね〜」
よお、2人も来たか。
飯はどうするよ。
「え? フードコートで食べるんじゃないんですか?」
俺がここに来たのは話をするためだったからな。別にここじゃなくても良いぞ。
「またここから移動なんてしたら、おじさんクタクタに疲れちゃうよ〜……」
それじゃあ好きなもの買ってくるか。
俺はせっかくなのでこの、たこ焼きっぽいのを売ってる列を選ぶぜ!
「あ! ドスニキだ!」
「ポケモントレーナーさん、ファンです!」
「あのリオレウスはいつから育ててたんですか?」
「4人とはどういう関係なんですか?」
「次はどの街に行くんですかー?」
「何で血流してたのー?」
「今日はアロハシャツ着てないんですねゴキブリさん」
…………ぶるぁぁぁぁあああああ!!! うるせえええええ!!!
たこ焼きにたどり着けねえよ! 列! 前に進んでるんだから進めよ! こんなところで団子になるんじゃねえ! うるさ過ぎて何も聞こえねえし!
でもゴキブリって言ったのは聞こえたぞ!
俺は……昼飯を食べるんだよお! 並んでねえなら退けオラぁ!
ん? どうした僕。
……サイン?
俺が書いたサインに一体何の価値が……
誰かと間違えてない?
しかもこっちの世界の文字だとまだクッソ汚くしか書けないし。
欲しいならあげるけど、日本語で書くわ。
…………これで良いか?
おう、それでポケモントレーナーだ。
ああ、じゃあな。
…………うおっ、何だ!? いつの間にこんなにたこ焼きの列が長くなってたのか……
えっ、サイン……?
……いや、これはサイン会じゃないですね。
これはたこ焼きの列です。
申し訳ないんだけど多分誰かと勘違いしてるんじゃないかと……
子供にサインをあげたのをきっかけに誰かのサイン会と勘違いされたのか、やたらと話しかけられて非常に迷惑した。
たこ焼きを持って席に戻るとアイリがニコニコとこちらを見ていた。
既に買い終えていたらしい。
「ししょー、こっちですよー」
隣の席をポンポン叩くので、言葉に従って座る。
アイリはハンバーグ定食か。
「はい! 師匠はオクタン焼きなんですね!」
オクタン焼き……まじ……?
「はい! あ、師匠は文字を読めないんでしたっけ……知らないで買ったんですか?」
この無邪気なチクチク言葉が一番心に来る……似たような食べ物を一応知っていたから、それを期待したんだけど。まあ、オクタンだし多分同じなんだろうな。
「そういえば師匠、サインなんていつの間に作っていたんですね!」
え? 知らないんだけど。
「でも師匠のサイン、ソーマに画像が載ってましたよ」
は? じゃあさっきのガキじゃん。いや、アレはいきなりせがまれたから勢いに負けたというか……
「ずるいです、私も欲しかったです!」
いつも一緒にいるアイリに自分のサインあげるの意味分からなくない?
「お父さんもさっき電話したら欲しがってました!」
お父さんにはあげようかな……
「えー! なんでですかー!」
グイグイと俺の左腕を引っ張って抗議をしてくるアイリを宥めていると3人が戻ってきた。
なんかやたらと早足で向かってきた。
俺の隣に汁物持ったまま3人で突っ込んでこようとしたから、ビビってアイリの方に詰めていたらナギが隣に座った。
てっきり、日頃の恨みを込めて汁物を俺にぶち撒けるつもりかと思って冷や汗出たわ。
それじゃあいただきます。
たこ焼きを突いてると、レッドが尋ねてきた。
「それで、さっきの人は?」
「なになに、何の話〜?」
アレは国際警察の捜査官だよ、ハンサムっていうコードネームだ。
何でもウルトラビーストの件で……ってなんだよ全員こっち見て。
「お兄さん、逮捕?」
ちがわい! 捜査協力だよ!
各地に現れるウルトラビーストの殲滅に協力して欲しいんだとさ。
「……ダメだからね」
ホシノがジロッと睨んできた。
分かってるよ、積極的には動かない。
……ただ、今回みたいに俺の道を邪魔するようなら叩き潰すだけだ。
「全然分かってないじゃん!」
そんな大声出さんでも……ほら、目立ってるからもうちょい抑えて……
「直接助けてもらっておいて偉そうに言うのも変な話なのだけど……あまり、今回みたいなのには関わって欲しくないわ」
本当に変な話だな……まあ、目の前で苦しんでなきゃわざわざ助けることもないだろ。
「お兄さんはさ〜、苦しんでる人を見つけ出すのが上手過ぎるんだよ〜」
何だその嫌な特技……全員頷いてるし、そうなのか?
「多分そういう星の元に生まれたんだろうね〜」
いや、それだけはない。
絶対にあり得ない。
「……やけに強く否定するわね」
ああ、俺がこの世界でそんな星の元に「生まれた」だなんて、何が起ころうと絶対にあり得ない。
「そうなの?」
レッド、アイリ、ホシノ、ナギ、覚えておいてくれ。
どんな星占いや運命があるとしても、俺はそれに縛られる事は無い。
それらすべては俺に関係が無い事だと考えて欲しい。
……おっと、真面目にし過ぎた。
今日の午後の予定でも考えるか。
「いつもその顔してれば良いのに」
どういう意味だレッドォ!
──────
次の旅に出るまでに、俺のパートナーランクを上げよう!
出立までは一週間設けた。
ナギもおじさんと積もる話があるだろうし、長めにな。
俺は結局、この街で一度も試練を受けてないせいでパートナーランクにも変動は無い。
低い、低すぎる……こんなんじゃポケモントレーナーなんてやりたくなくなっちまうよ……
そういうわけで、俺は1人でジムに来ていた。パートナーランク2で受けられるような試練では心配してくれないらしく、仲間はみんなハイハイって感じだった。冷てえよなあ……
もう字が読めないとかなりふり構っていられん!
パートナーランク2で受けられるのを聞いてみると比較的小さいモンスターの討伐とかキノコ採集とからしい。文字が読めないのでそこらへんにいた男の子に読んでもらった。
キノコとか薬草とかは俺には無理だけど、モンスターの討伐はランポスだのノズパスだのケルピーだのと、俺には簡単すぎる。
受付嬢に聞いてみたら、むしろ討伐の方が難易度は高めにしてあるらしい。
バランス調整しっかりしてくれ、採取系をもっと簡単にして俺みたいなやつにも配慮してくれよ。
というわけで、1人で受けるのはやめて先程掲示板の内容を読み上げてくれた男の子と一緒に試練を受けている。
なんでも、モンスター討伐をしたかったけど怖くて1人じゃ無理だったらしい。
パートナーはいないのかと聞いてみると、怖くて戦えないから仲間にできないらしい。
詰みじゃん。
マタナキタウンだと護衛をつけてやるのは割とポピュラーだったけど、そこら辺は地域差か。
そういえば自己紹介がまだだったな、名前を聞いても良いか?
ヒガン君って言うのか、俺はポケモントレーナーって名前だ、よろしくな。
……おっ、迷いなく握手をしてくれるとは、良い親御さんのもとで育ったらしいな。
ヒガン君は今10歳なのか?
12歳? へー……プレイヤーランクは2で合ってるのか?
……まだ1なのか。
あんまり知識がなくて悪いんだけど、二年もやってたら貢献度でプレイヤーランクって上がったりしないのか?
……あー、採取系は獲得できる貢献度が少ないんだな。
……そうか、ゲーム的に考えるからいけないんだ。人間だから休んだりしなきゃいけないし、そこまで頻度高く受けられるわけじゃない。採取と討伐に行ける回数ってのはそこまで差が無いのか。
モンスターは人間に直接の脅威となるから貢献度も高く設定して、できる奴にはどんどん危険なやつを倒してもらうと。
大人がやれよとは思うけど、逆に、大人になった時に誰もがある程度対処できるようにしておくって考えればそんなもんか。
それで、出来ないやつは危ないから上に行けないようにランクを抑えておく、と
……俺が試練を受ける頻度?
…………に、二ヶ月に一回とか……いや、ちょっとこの街では試練を受けてる場合じゃなかったんだわ。大人にはいろいろあるんだ、うん。
……フルオカタウン知ってる? テッセンって人がジムリーダーやってるんだけど。
そうそう、でんきタイプの街。
俺、あそこでは試練めっちゃ頑張ってたんだぜ! ホシノっていう俺のポケモン……相棒のプレイヤーがいるんだけど、あいつと一緒にババコンガとかイャンクックとか狩りまくってたから!
いやほんと、マジマジ! 嘘じゃないって!
なんかカードには記録されてるらしいし、メガネがあれば読み取れるんだろ? ほら、見てみろって! 俺はメガネ使わないから見れないけど、お前なら見れるっしょ。
え? 見ていいのかって……別に良いだろ、俺が良いって言ってんだから。
──────
ヒガンは、今の状況が信じられなかった。
掲示板に立っていたら突然後ろから話しかけられた。誰かと思ったら、つい昨日、ジムリーダーナギと全力でバトルをしていたポケモントレーナーだった。
なんでも、ランク2の試練を受けたいらしい。
何でそんな低ランクの試練を受けるのか聞いてみると
「パートナーランクが2だからだ、悪いかこんちくしょう!」
と怒っていた。
唖然とした。
マタナキタウンで二つ名持ちのドダイトスを捕まえてカムイを倒したのは誰もが知っている。
結果的に負けはしたけど、あんな、空の上でリオレウスを自在に操っていた人がパートナーランク2だなんて。
彼がプレイヤーで無い事は有名だったけど、ランクがたったの2だなんて、信じられなかった。
そんな彼に、試練の掲示板を読み上げてもらえないかと頼まれた。
断れる人なんているだろうか。
一つ一つ読み上げていくと、採取系は良いから討伐系だけ読んで欲しいと言われる。
なんでも、採取は苦手らしい。
それで、討伐が条件になっている試練を渡す。モンスター名を聞いたポケモントレーナーは怪訝な顔をして、受付のお姉さんに簡単過ぎないかと聞いていた。
そんなわけが無い。
コトリタウンの周辺にある湿地帯には強力なモンスターが群生しており、その影響で小型のモンスターも他の街よりは危険度が高いものが多い。
彼ほどのパートナーだと苦戦もしないという事だろうか。
ランクが2なのに……
あまりのチグハグさに混乱してしまった。
ポケモントレーナーは、受付のお姉さんに聞いた事を噛み締めるように頷くと、受け取った試練の紙、まとめて10枚を提出した。
ポケモントレーナーがいるという事で注目していた周囲にざわめきが広がる。
10件の試練を同時にこなすなんて、普通はあり得ない。
でも、受付のお姉さんは何の迷いもなくそれを承諾した。
……僕は、今しかないと考えた。
臆病のヒガン、なんてあだ名をつけられた僕が変わるなら、今だ。
ちっぽけな勇気を振り絞って、同行できないかお願いする。
周囲の視線が突き刺さっているのを感じた。同年代の、僕に臆病と名付けた奴らも見ていた。
ドキドキしていると、アッサリと了承されて、呆然としてしまった。来ないのか? と聞かれて慌てて着いて行った。
それで、自己紹介をして……ポケモントレーナーのこれまでの討伐歴を見る流れになった。普通、そういうのって見せないものなんだけど、拘りがないのかな?
恐る恐るカードを読み取って、討伐歴を見て……震えた。
イャンクック
ババコンガ
イャンクック
ババコンガ
ババコンガ
シビルドン
ババコンガ
ババコンガ
バルクモン
ババコンガ
イャンクック
ドスファンゴ
サンダーバード
イャンクック
シビルドン
シビルドン
ババコンガ
・
・
・
ドダイトス
ドダイトス
ドダイトス
ドダイトス
ドダイトス
ドダイトス
ドダイトス
ドダイトス
・
・
・
リオレウス
夥しい数のモンスターを討伐していた。
しかもランクマックスのプレイヤー・パートナーしか受けられない試練のモンスターも相当数いる。
震えながら再び返すと、何でもない顔をしていた。
倒せて当然という事だろうか。
そりゃあ、あんな小型のモンスターなんて片手間で倒せるだろう。
じゃあ、なんでまだパートナーランクがこんな低いのかと考えると……彼がその答えを教えてくれた。
マタナキタウンでは貢献度について知らなくて、受付で適当に返事をしていたらほとんど自身のプレイヤーに渡す事になっていたそうだ。プレイヤー以上のランクのポケモンに関しては試練と関係なく、そこにいたから倒したらしい。
ドダイトスは……? と聞いてみるとカムイ戦の練習だそうだ。
自分の常識が崩れていくのを感じた。
こんな人もいると、初めて知った。
もっと知りたいと思った。
──────
色々と教えて欲しいと言われた。
あと一週間しかいないことを伝えると、それでもいいと食い下がるので、まあ良いかと引き受ける。
とりあえず、一週間一緒に討伐系の試練を受ければいいんだろ?
ヒガン君はどんな武器を持ってるのか聞いてみると、背負っていた長い棒の布を外した。
長剣だった。
ええ……
どう考えても体格に合っていなかった。
振ってみろと言うと、完全に振り回されていた。
何のために買ったのん……?
なんでも、装備店で店員に聞いたらこれを買わされたらしい。
人死が出るぞそんなん……どこの装備店か判明したらアラカゼさんにチクっておくか。
俺の武器を聞かれたのでサバイバルナイフを取り出す。
ちっさ! とか言われた。
何だお前、先生に対して失礼だぞ!
これがあれば料理も戦闘もこなせるんだから問題ねえだろ!
……いや、もちろん比喩だからね? 料理は別のちゃんとした包丁でやってるから。
うん、だから戦闘はこれだって。
……信じろよ!
そういうわけで、現れたランポスでサバイバルナイフの強さを見せつけることにした。
ほら、危ないからそこにいな。
飛びかかってくるのを待っていると、ランポスは鼻をすんすんとさせ、くるっと振り向くといなくなった。
…………?
あっ!
もしかしてリオレウスの匂いが!?
どういう事かと聞いてくるヒガン君に、リオレウスの匂いがついているのかもしれないと伝える。
しょうがねえ……
ここら辺は湿原か、そうでないかというローランドのような植生なので、少し探せばあちこちに小さな水辺がある。そこで泥を掬って、全身にぶちまけた。
何驚いてんだ、匂い消すんだからこれが一番だろ。
ヒガン君は慌ててリュックを漁ると、匂い消しなるものを取り出した。
…………先に言って?
そう、俺は特殊部隊の一員……プレデターを狩るために泥を被ったのだ……
ヒガン君、準備は良いか?
匂い消しなんて無かった、いいね?
改めて現れたランポスは、今度こそ飛びかかってきてくれたので顎を掴んで固定し、喉からサバイバルナイフを突き入れて捻り、即死させた。
どうだヒガン君、サバイバルナイフ、強いだろ?
……あ、ちょっと刺激が強かったか。
大丈夫か? ほら、ここで吐いて良いから。
ぶちまけるヒガン君の背中を撫でて、水場で口を洗わせる。
「ごめんなさい……」
どうせ僕なんて……というシンジ君モードになったヒガン君を応援する。
諦めんなよ!
諦めんなよ、お前!!
どうしてそこでやめるんだ、そこで!!
もう少し頑張ってみろよ!
ダメダメダメ! 諦めたら!
周りのこと思えよ、応援してる人たちのこと思ってみろって!
あともうちょっとのところなんだから!
よしっ、これだけ応援すれば大丈夫だろ。
ヒガン君を見ると、ポカンと口を開けていた。
何だ?
「……ハハッ、僕のことを応援してくれる人なんて」
暗っ……
お前、親御さんはいるのか?
「僕、孤児なんです」
また孤児だあ!
「人付き合いが苦手で、話してくれる子もいなくて……」
そんな奴が同行を願い出たことに驚きだよ俺は……
「変われないかなって、思ったんです、けど……」
12歳、孤児、友達がいない。
や、やばい……こいつ、死ぬぞ。
……よしわかった! 俺が友達になってやる!
「え?」
俺が、ヒガン君の友達1号だ!
「とも、だち……」
ほら、友達できたんだから自慢するぞ。なんか仮想カメラとかいうやつで写真が撮れるんだろ? いや、動画でいいや。
起動してくれよ。
「は、はい」
──────
私は部屋でのんびりと、いちごミルクを飲みながらソーマを見ていた。
今日はお兄さんはいない。
いれば一緒に過ごしたかったけど、いないのでダラーっとしていた。
他にはホシノもいた。
グデーッとして私よりダラシない格好だけど、お兄さんが来るとなればすぐに髪を整え始めるので調子がいい人だと思う。
アイリはナギとどこかにお出かけして行った。
仮想ディスプレイをツツツーッとスワイプしていく。
お兄さんは何をしてても大体盗撮されているので、こうしていれば勝手に情報が入ってくるのだ。
すると、一つの動画が投稿された。
男の子と肩を組んでいる。
なんだろうと思って動画を開く。
『ウェーイw みんな見てるー? 俺は今ヒガン君と試練に来てまーすwそしてなんと、ヒガン君の友達1号になっちゃいましたーwあーあ、みんながもっとヒガン君と話していればヒガン君の友達1号になれたかもしれないのになーw残念でした、ヒガン君の友達は俺だけでーすwウェーイw』
いちごミルクを吹き出した。
寝っ転がっていたホシノの顔にかかった。
「ううわっ!? な、なになに!? どしたのレッドちゃん!」
ホシノに同じ動画を見させる。
ワナワナと肩を振るわせていた。
「な、何これ……」
「わかんない……」
なんだか、凄い嫌な気分になった。
あとで問い詰めよう、ホシノと目が合うと、そんな気持ちが通じたのか頷いていた。
──────
「ヒガン君」
動画を投稿し終えると、真剣な表情で話しかけてきた。
「俺がお前の友達だ。だから、そうだな……俺も頑張るから、お前もがんばれ」
少しだけ、嬉しかった。
こんな凄い人が僕の友達になってくれるって言ってくれて。
すると、ソーマに通知が一つ届いた。
何だろうと思い、通知を開くまでに次々と通知が更新される。
「どうした?」
「ちょっとソーマの通知が……」
「そうなんだ、見れば?」
「そうですね」
先ほどの動画に夥しい数のコメントが投稿されていた。
『脳が破壊された、許さん』
『脳が……』
『脳が壊された』
『みんなの脳が……消えていく……』
『の、脳が震える……』
『脳に深刻なダメージを食らった気分になった』
『脳が──』
『脳が──』
な、なんだこれ……
意味不明な文章ばかりで戦慄していると、メガネを取り上げられる。
「嫌なモンがあるなら見ないで良いから」
「嫌なものというか……」
コメントについて話すと、彼は納得していた。
「やはり脳にダメージを与えるにはこれが一番だな」
どうやら分かっていてやったらしい。
何の意味があるのだろうか。
「意味なんてねえよ」
「ええ……」
「良いだろ楽しければ。記憶喪失だろうが親が居なかろうが、今が楽しければそれで良いんだよ」
さらに続ける。
「本当に嫌なら、コメントなんて投稿してねえだろ。みんな楽しんでんだよ、そういうのをな」
「そうなんですか?」
「お前も、ソーマをもっと使った方がいい。簡単に人と繋がれるSNSの利点を最大限活用しろ」
確かに、これまでソーマに何かを投稿した事なんて無かった。
メガネを返してもらって、試しに
『ポケモントレーナーさんの友達です』
と投稿してみる。
すると、たくさんのコメントがついた。
『どうも、ヒガン君の友達2号です』
『3号です』
『コトリタウンの湿原だね』
『何でドスニキと一緒にいるんですか?』
心臓が早鐘を打っていた。
コメントをもらえるとこんなに嬉しいんだ……
「まあ、どう使うかは自分で決めな、ただ、危ない事はやめるんだぞ」
「は、はい!」
「それじゃあ時間も押してるし、巻きで行くか」
ストレッチを始めるポケモントレーナーさん。僕もつられてストレッチをすると、別にしなくても良いとのこと。
背中に乗れ、らしい。
恐れ多くてためらっていると、無理やりに載せられた。
「うわあああああ!!!」
速い! 速い! 速い!
木々の間を猛スピードで擦り抜け、見つけたモンスターをすれ違いざまに瞬殺して証明部分だけ切り取っていく。
途中、ランポスじゃなくてドスランポスもいたけど、彼は気付かずに全部殺していた。
あっという間に試練の対象を全部討伐し、袋の中には証明部分がどっさりになった。
血の匂いで気分が悪くなった僕に気遣ってくれたのか、匂い消しを丸ごとひとつ使って和らげてくれた。
何もしてないのにヘトヘトになって、背中で寝てしまった僕は結局最後までおんぶしてもらっていた。
誰かにおんぶしてもらったのなんて実は初めてで、凄い嬉しかった。
お父さんがいたらこんな感じなのかなって……畏れ多いからありえないけど。
──────
袋いっぱいに肉を詰め、少年をおんぶしたブラッディサンタと化した俺はジムに戻ってきていた。
ウェーイwヒガン君の友達1号でーすw
はいこれ、討伐証明!
ドサッと袋から出すと流石に受付嬢も顔が引き攣っていた。
「奥で調べますので、袋から出さないでいただいても……?」
はいよ。
裏に行き、ヒガン君をベンチに寝かせる。
「その、彼は?」
ああ、初めてモンスターと戦ったから疲れちゃったんだろうな。
頑張ってたよ。
トドメは俺が刺したから記録には残ってないと思うけど。
「……そうですか」
報酬も山分けでいい。
受付嬢は片眉を上げると、了承した。
「……ん、あれ……」
おはようヒガン君。
「ここは……」
ジムの裏だよ、討伐証明が多すぎたからここで観てもらった。
「ご、ごめんなさい、寝ちゃって」
子供は寝る時間だ、気にしなくていいよ。
そうだ、はいこれ報酬。
半分な。
「……う、受け取れません……だって僕は何もむぐっ……」
明日、武器を改めて買いに行こう。その時、金が無いと何も買えないぞ?
貯金は十分か?
「あ、あんまり……」
そうだな、その報酬は……俺と友達になってくれたお礼だ。
明日の足しにすればいい。
「…………うぐっ……ふぐっ……」
ヒガン君。
「あい……」
男は下を向かない。
上を向くんだ。
誰かに何かを言われたら、こう言ってやればいい。
雨が降ってきた、ってな。
「……ゔぁいっ……」
さあ、ご飯を食べに行こう。
今日は俺の奢りだ。
明日からは忙しくなるからな、家に帰ったら早めに寝るんだぞ?
──────
ヒガン君を送り届け、旅館に戻ると、レッドとホシノがなんか騒いでた。
お前らも脳破壊されてんのかよ。
まあ友達になったのは事実だから。
ホシノには
「男も女も見境なしとか、変態だよ〜!」
とか言われた。
お前だろ変態は、何を妄想してんだ、と返したら顔を真っ赤にして部屋に帰って行った。
レッドも
「私は友達?」
とか意味のわからん事を言ってきた。
友達っていうか一個上の仲間だろ。
そう返すと
「じゃあいい」
と言って部屋に帰って行った。
マジでエントランスで騒いだだけだった。
アイツらなかなかやべえな……
夕飯もすでに食べたし、今日は風呂に入って寝るか。
もうアイツらは風呂入ってるだろうし1人で家族風呂を占領するか、なんて考えたのがいけなかったのか。レッドが入ってこようとしてホシノに止めさせる、なんて一幕もあったが、なんとか防ぎ切った。
レッドの天然度合いが加速していってるような気がする。
──────
さてヒガン君、約束通り今日は武器を買いに行こう。
「はい!」
お前は小柄だから、長剣はいっっちばん合わない!
「そうなんですか!?」
俺はあんまり武器には詳しく無いけど、そこら辺はソーマで調べれば出てくるんじゃ無いか?
調べた事、無いの?
「思いつきもしなかったです……」
アレか、友達がいないからそこらへんの流れみたいなのが分かってないのか……
とりあえず、その長剣を買ったのとは別の装備店に行こうか。
そうして訪れた装備店で、ヒガン君は俺と同じようなサバイバルナイフを買った。
別にナイフに限らなくてもいいのに……
「いや、僕はこれがいいんです!」
だそうだ、お好きにどうぞ。
使えれば何でもいいからな。
はい、じゃあこれが今日受ける試練です。
「あの……全部持っていかれると流石に……」
ええ!? これじゃ足りない!? 分かった! ヒガン君、ランク1の討伐のやつぜーんぶ持ってきてくれ! あとアレだ、ランク3以上のやつも確認してくれ! 試練とか関係無く、全部狩り尽くしてくるぞ!
「は、はい! 今持ってきます!」
「……分かりました! 分かりましたから!」
素直にそうしろ。
場所は湿地帯、まずは増えすぎたポチエナの間引きだ。
イッヌに似ているポケモンを虐めるのは俺もあんまり気が進まないが、試練ってこんなモンだ。
ヒガン君、俺がポチエナを1匹捕まえてくるからそいつと戦うんだ。別に怪我してもいいぞ。
「け、怪我してもいい、ですか……」
一週間しか無いから荒めで行くわ。
結局ヒガン君はあちこち噛みつかれて、泣きながら、ズタボロになりながらようやくポチエナの首筋にナイフを突き立てることができた。
「〜〜っ……」
痛みで呻くことしかできないヒガン君に回復スプレーを吹きかける。
どっさり買い込んできたからな、ほれ。
「……こ、こんな高級品を!?」
命に代わる物なんてないんだから、無駄遣いとか考えずに使ってけ。
これぐらいの軽傷なら効くっぽいからな。俺は傷が深すぎて全然効かなかったけど。
「は、はい」
ヒガン君が治療しているのを尻目にポチエナを20匹ぐらい間引いて、次の獲物に向かう。
ホッパーの住処にやってきた。
温泉を掘り起こしてくれる彼らだが、地域住民にしてみればそこら中を穴だらけにしてしまう害悪でもあった。
ごめんな、ホッパー。
お前らには死んでもらう。
ヒガン君、アレが何かは分かるね?
「ええと、ホッパーです」
多分生態とかはヒガン君の方が詳しいから任せるけど、アレを間引きます。
「でも、穴を掘って地中に逃げちゃいますよ?」
地中に逃げちゃう、そんなポケモンにはこれ!
音爆弾!
潜ったところに使います!
では試しに、地中に潜らせるために石を投げつけてみましょう!
せいっ!
…………あれ、動かないな。
「……多分アレ、死んでるんじゃないかと」
なにっ? そうか、弱すぎて今の威力だと死んじまうか。
じゃあちょっと威力を抑えて……ほいっ。
…………アレは。
「死にましたね」
……このように、遠距離から石をぶつけて一撃で殺せば逃げる前に仕留めることができます。
さあ、ヒガン君もやってみましょう。
「音爆弾は!?」
ほら、この石なんてちょうどいい大きさだよ。
音爆弾のことは忘れよう、あんな高いだけのゴミ。
「じゃあ……それっ」
ポコンと頭に石が当たったホッパーは、周囲を怪訝そうに見回し、地中に消えて行こうとしている。
威力が弱すぎたみたいだ。
「ぼ、僕の腕だとアレが限界で……」
じゃあはい、これ音爆弾。
「それっ」
ギィィィィイイン!! という爆音が鳴り響き、穴の中を覗いてみると泡を吹いたホッパーがいた。
ほら今だ、仕留めな。
「……えいっ」
ホッパーは首を切り裂かれて死んだ。
ごめんな、人間のエゴで。
ヒガン君はまた吐いてた。
まあそのうち慣れるさ。
ほら、口元拭くぞ。
「き、汚いので大丈夫です……」
子供が気を使うな、よし、これで大体拭けたか。
じゃあ水場で口濯ぐか。
「……」
その日もどっさりと証明を持って帰り、報酬を山分けした。
ヒガン君はソーマに、夕飯と俺が写っている写真を投稿したらしい。
匂わせじゃん。
今度はナギとアイリが口やかましく騒いでいた。
交代制で騒ぐのやめろ。
あっそうだ、今日はヒガン君の家に泊まってくるから!
ナギとアイリは口を開けたまま何も喋らなくなってしまったので、ヒガン君の孤児院に行った。
孤児達には大歓迎してもらい、なかなか得難い体験だった。明日はお土産にケーキを買っていこう。
でも、院長さん的なそういうのいないの? って聞いてみたらたまに来るらしい。
たまにしか来ないのか……
正直ドン引きです……
ヒガン君と一緒に風呂に入り、クッソ小さいベッドで寝た。
寝辛いのねん……
朝、昨日の試練の際に燻製にして持って帰ってきた大量の肉を、ほぼ全部孤児院の食堂に放り込んでから今日の試練に出向く。
「今日は! 絶対に! だめです!」
受付嬢がわざわざ試練の掲示板の前に立って通せんぼをしてきた。
…………ふん、今日のところは諦めてやる。
ホッ、とした表情の受付嬢を後ろに、俺はヒガン君を連れて湿地に来た。
「試練は受けてないですけど……どうするんですか?」
何言ってんの? 元々試練なんて受ける必要ないんだよ?
「え……」
金も貢献度もいらないなら自己責任で狩ればいいんだから。
「で、でも、それじゃあ乱獲につながったり……」
その程度でモンスターの数が減るなら、とっくにこの世界は人類の物になってるから。
「じゃあ、何を討伐するんですか?」
なんか熊みたいなポケモンいないかなって。
少しデカ目のやつとの戦い方というかそういうのを見せたいから。
誘き寄せる方法は……燻製肉を焼いて、匂いで誘き寄せることにした。
「ほ、ほんとうにだいじょうぶなんですか? 凄いでっかいモンスターとか…………あ……」
燻製肉如きに誘き寄せられる巨大モンスター(笑)
「あ、あの……」
ん? 今薪足してるからちょっと待ってね。
「うし、ろ……」
ヒガン君を抱えて前に飛ぶ。
振り返ると、青いクマがいた。
「あお、あしら」
腰が抜けてしまったヒガン君を地面に下ろし、リュックから閃光玉を取り出す。
アオアシラとやらは、腕部に分厚い甲殻を備え、全身は剛毛で覆われているようだ。
一度切り付けてみると、パラパラと毛が落ちる。
この程度なら問題無く倒せはするんだろうけど、ヒガン君のお手本にならなきゃいけない。
ちゃんと見ておくんだぞ。
良いな?
「は、はひ」
ヒガン君、一瞬だけ目を閉じろ。
切り付けられて逆上し、突進を始めたアオアシラの顔面に閃光玉を投げつける。
眩い光が辺りを満たし、光が収まると顔面を掻きむしるアオアシラがいた。
白で染まった視界に混乱しているのだろう。
ナイフを右目に突き刺し、更に、毛並みに逆らわずに首にナイフを突き入れ、グリグリと左右に動かす。
引き抜いてすぐ退避する。
アオアシラがブンブンと腕を振り回して周囲にある物全てに当たり散らす。
腕が細い木に当たり、パァンという音とともに木が弾け飛んだ。
やがて、閃光玉の効果は回復したのか、頭を振るも視界は半分のまま。
口から息が漏れ、完全に怒っている。
じゃあ、ヒガン君やってみようか。
「え?」
ほら立って。
「む、むり……むりむりむり!」
いや、いずれ1人で倒さなきゃいけないんだから……
「いきなりアオアシラは無理ですって!」
そうなのか?
うーん、段階が分からん……
まあ分かった。
ドドドドと走ってきたアオアシラの首を20回ぐらい切り付けて息の根を止め、ヒガン君の言うところのちょうど良い相手を考える。
…………だめだ、全く思いつない。
知識が無さすぎて考える意味がねえや。
なんか良い案無い?
「ひいいいいいい!!」
何してんだ、アオアシラもう死んでるぞ。
「…………え!?」
びっくりしてるけど、もしかして俺、またなんかやっちゃいました?
「何したんですか!?」
首の動脈を完全に断った。
ポケモンも動物だから、こうすりゃ死ぬ。
「理屈はそうかもしれないけど……僕にこれはちょっと出来ない、かなあ……」
うーん、じゃあ武器を銃に変えるか? アレなら一撃の威力は高めだぞ。
「腕がもたないかもしれないです……」
あー……
じゃあ、ヒガン君にはとりあえず小型モンスターとの戦い方に慣れてもらう方向性がいいか……
「僕もそう思います」
熊は解体して、内臓だけ捨てて肉を燻製にし、皮はなめした。
凄い! 旅の最初は全然出来なかったのに、いつの間にか自然に出来るようになってるの自分で感動するわ!
ヒガン君には小型モンスターと戦ってもらい、倒したやつを一緒に解体した。
熊皮を持って旅館に行き、今日もヒガン君の家に泊まってくることを伝え、ついでに熊肉を女将に差し入れる。
4人は、今日も違う場所に泊まるのはずるいだのエコ贔屓だの言ってたけど、旅館に泊まってるくせに贅沢言うんじゃねえ。
子供の命の方が大事に決まってんだろ。
孤児院では子供達と一緒に料理をして、熊肉の鍋を作った。
あと、熊皮も記念にあげた。ぶっちゃけ邪魔。
売ってもいいよ。
最後にはケーキを食べて、全員で大広間で寝た。
ヒガン君も、自分で倒したポケモンの肉を美味しそうに食べていた。
小さい子に分けてあげてたし、仲が良い子がいないってなんだったんだよ。
──────
「もう、我慢の限界です!」
次の日、アイリと受付嬢が何故か、街の門でキレてた。
限界なんだ、ストレス発散しなね。
「師匠は私を放置しすぎです! もっと構うべきです!」
「乱獲反対! 乱獲反対! ジムの言うことを聞けー! 勝手にモンスターを狩るなー!」
なんだこいつら……アイリはともかく受付嬢は仕事しろ。
「ポケモントレーナー君」
あれ、アラカゼさんじゃないですか。奇遇ですね、こんなところで。
「ちょっと、うん、お願いがね……」
お願いですか。
「うん、その……若い子達の試練を、あんまり独占しないでほしいというか……」
(昨日は)してないですよ。
「あと、昨日アオアシラの試練を受けた子が、アオアシラなんていなかったって言っててね……君だろう?」
アオアシラなんていっぱいいるでしょ。
「暖簾に腕押しとはこのことか……なあ、頼むよ。その子に色々教えてからこの街を去ろうとしてるのは分かってる。でも、他の子が成長する機会を奪うのは……」
じゃあどうしろと?
「一個だけ試練を受ければいいでしょうが!」
受付嬢、キレる。
「師匠! その人と私と、どっちが大事なんですか!」
アイリは俺が守るから死なないけど、ヒガン君は死んじゃうから今はヒガン君だね。
「ししょー……」
トゥンク……って感じのアイリを見て、受付嬢がえぇ……って顔をしていた。
じゃあ試練一個だけ受けるからジムに行こうか、アイリはちゃんと帰るんだぞ。
「はーい」
素直でいい子だ。
「あの、さっきの子は……」
うん、俺の弟子。
……改めて言葉にすると違和感すげえな。
まあ、彼女が探しているものがあって、それを探す旅なんだよ。
「なるほど……」
ヒガン君は何か夢は無いの?
「僕は……チャンピオンになりたい、です。多分無理ですけど……」
良いじゃんチャンピオン、なっちゃえよ。
「そんな簡単に……」
逆算すればなれるよ。
チャンピオンになるにはチャンピオンを倒す必要があって、チャンピオンに挑むには四天王を倒す必要がある。四天王に挑むにはジムリーダーを全員倒す必要があって、ジムリーダーに挑むには良いパートナーと巡り会う必要がある。
それで、ヒガン君は今、パートナーと巡り会う一個前のところにいるわけだ。
つまり、パートナー、ジムリーダー、四天王、チャンピオン、この四工程を経れば君は晴れてチャンピオンだ、おめでとう!
「いやいや、そんな……」
じゃあ、最初から諦めるのか?
言い訳して諦めるのは簡単だけど、一回ぐらい挑んでみても良いんじゃ無い?
「…………」
まあ、今日はとりあえず試練を受けますか。
「あ……はい……」
結局この日、ズタボロになりながらヒガン君はポケモンを2匹倒した。
2匹目を倒したとき、ヒガン君は自分の手をにぎにぎしていた。
うんうん。
五日目、ヒガン君は俺が言うまでも無く自分で試練を決めて、受付嬢に渡しに行った。
なんだ、もう出来るじゃん。
選んだのは、ランポス一頭の討伐。
小型モンスターの中だと大きめのポケモンだ。
俺はとりあえず見るだけにしていたら、ボッコボコにされて危うく致命傷になるところだったので慌てて助けた。
……少し方向を修正しよう。
倒れているヒガン君に話しかける。
ヒガン君、あのポケモンに対して、怪我をしても良いという気持ちで突っ込んだな? 俺が前に言ったことを覚えていたんだと思うけど。
「は、はい…………」
あれは正確には、怪我を恐れるなって意味であって、怪我を負うような立ち回りをしろって言っているわけじゃないんだ。
「わ、わかり、ました……」
まあ、さっきの戦いで十分身に染みてるだろうし、これ以上言うことは無いよ。
惜しかったけど、ほぼ殺せていたしね。
あのままだったら相打ちだったけど。
次からは怪我に注意しようか。
動けないヒガン君をおんぶする。
帰り道の途中、ヒガン君はポツポツと話した。
「みんな、お腹いっぱい食べれて嬉しそうです……」
みんなとは、孤児院の子供達のことだろう。まあ、食糧事情はどこにも付き物だ。それも、たまにしか来ないやつが運営してるならそうもなるだろう。
ジムで報酬を受け取って孤児院に行くと、熊皮が無くなっていた。どうやら院長が持っていったらしい。
……よし、処すか。
警察に、孤児院に置いておいた熊皮が盗まれたと通報し、院長は普通に逮捕された。
誰が孤児院を経営してやってると思ってるんだとか言ってたけど、どうでも良いですね……
「ぼ、僕たちどこに行けば……」
アラカゼさんにここの運営者になってもらったから大丈夫だよ。
俺に恩を返したがっていたから、これでチャラだ。
じゃあ飯食べるか。
今日も肉あるぞー。
──────
六日目、ヒガン君は今度こそ、怪我もほとんど負わずに1人でランポスを倒すことができた。
うん、間に合わせたな。
俺にはもしかしたら指導者の才能があるのかも!?
最後なので、花火とか買ってきて孤児院の前で打ち上げる。
警察が来てごめんなさいしなきゃいけなくなったけど問題無い。
この日は孤児院には泊まらず、ホシノたちを連れてナギの家に行き、4人にボロクソに言われてから寝た。
アラカゼさんは苦笑しつつも助けてくれなかった。許せねえよなあ!?
七日目、出発日の前日は、ナギたちと街を回り、存分に楽しんだ。
そして出発の日、いつもの如く、大量の荷物を背負って門前に行く。
アラカゼさんと孤児院のメンバーが待っていた。
ガルルルと威嚇するアイリを抑え、挨拶をする。
「ヒガン君、おはよう」
「おはようございます」
「すげー短い期間だったけど、ヒガン君が成長するのを間近で見るのは楽しかったぞ」
「僕も……すごく、楽しかったです」
少しだけ、前より背筋が張っている気がするな。自信がついたのかもしれない。
「先に行ってるよ〜」
「そうね……私もおじさんに挨拶だけして行くわ」
「アイリ、行こう」
「ぬぬぬぬ……」
4人が行ったあと、俺に行かないで欲しいと泣きつく子供達を宥める。
飯を運ぶ人みたいな認識されてる気がする。
多分そのうちヒガン君がその立ち位置になるだろうな。
ヒガン君に、右拳を突き出す。
ヒガン君も拳を突き出し、コツンと合わせた。
しっかり見ててくれよ、お前の友達1号がどんな旅路を進むのかを。多分盗撮だけど。
「…………ふっ…………ぐっ……」
なんだ、泣いてるのか?
「……雨が……降ってきただけ……です……」
……そうだ、それで良い。
じゃあな!
──────
「なんというか、とにかく凄い男だったな……」
アラカゼは呟く。
とにかく最後まで何かしてないと気が済まない男なのだ、と理解した。
彼と一緒ならきっと、どこでも元気にやっていけるだろう。
そう信じるのも、親の役目だ。
ただし、しっかりと手綱を握っておくようにと、ナギには言い含めておいた。
二日前、夜のことを思い出す。
騒がしいリビングから離れ、1人縁側で酒を飲んでいたアラカゼの元に青年が来た。コップを持っていたので酒を注ぐ。
「なんであの状況で助けてくれないんすか……」
「はっはっは! 女の癇癪を受け止めるのも男の仕事だ!」
「1人なら分かるけどさあ……全員俺のことボロクソに貶しやがって」
「そりゃあ、この街で最後に君と思い出でも作りたかったんだろう」
「……なるほど、確かに悪いことをしたな」
「明日は、彼女たちのために時間を使ってみては?」
「そうします」
「…………なあ、ナギは俺の、最後の家族なんだ」
「はい」
「託すという事が、どういう事か分かるな?」
「もちろん……命に替えても」
「分かってるならいいさ、乾杯」
「乾杯」
次の日ナギは、本当に嬉しそうに出掛けて行った。待ち合わせるようで、彼が先に行って、4人で後から行くのだとか。
とんでもないな……
そんな事をしてるからソーマで色々言われるのでは、と思ったが当人達は至って楽しそうであった。
小さくなって行く背中を、惜しげに見つめる孤児院の子供達。
テッセンさんは色々と相談に乗ってくれたりするが、こういう事にも詳しかったりするのだろうか……
「さあみんな、そろそろ家に帰るぞ」
「アラカゼさん……」
「なんだい」
「僕、強くなります。強くなって……チャンピオンを目指します!」
「……そうか」
アラカゼは、その道の険しさをこの町の誰よりも知っていた。
だが、目指すというなら見せてもらおうじゃないか。
「まずは、パートナー探しからだな」
「はい!」
ポケモントレーナー
20歳
3人とも妹みたい……
かわええ〜^^
でも一緒のお風呂はいかんでしょ……
ポケモンって怖くね?
タカナシホシノ(原作:ブルーアーカイブ)
16歳
髪留めを大事にしている。
2人で出かける時は付けている。
一緒に寝ると、ここらへんがポカポカする……
破竹の勢い
バッジ保有数6
レッド(原作:ポケットモンスター)
13歳
温泉ってしゅごい……
歯を磨かれるのが好き、顔をずっと見ていられるから。
もう新しい女はいらない。
バッジ保有数8
アイリ(原作:ポケットモンスター)
10歳
温泉ってしゅごい……
ヒガンくんにポジションを取られそうになって焦った。
師匠の顔って普通だなあ。
バッジ保有数1
ナギ(原作:ポケットモンスター)
17歳
パートナー:無し
天津禍土を信仰する一族。
風の巫女として育てられてきた。
ある朝、起きたらすでに両親はいなかった。急かすチルットに着いて行き聖域の奥へ。
夥しい量の血が散乱するのみだった。
誰もいない。
見覚えのある服の切れ端、アクセサリー。
お母さん、お父さんと呼びかける彼女の前にアラカゼが出てきた。
悲しげな顔をしているアラカゼは血だらけで、パートナーのチルタリスも瀕死だった。
見るな、と抱きしめられ気を失った。
倒れた叔父の代わりにジムリーダー業を継いだ。
流石に無理だった。
才能はある。
コトリタウンの元ジムリーダー
バッジ保有数0
アラカゼ(原作:ナシ)
38歳
長髪オールバックのおっさん。
パートナー:チルタリスなど
コトリタウンのジムリーダー
ナギの父親の弟(叔父)
風とかよくわからないので覡に向いてない。
ヒガン君(原作:ナシ)
12歳
ボサボサ髪
パートナー:ナシ
孤児院に捨てられた。
常に下を向いているので同年代のプレイヤーに虐められていた。
前を見て、上を向く事を知った。
世界って360度あんねん。
お腹が満たされると心が満たされる事を知った。
ポケモントレーナーによるスパルタ教育を経て肉体派になった。
アレ以降、虐めてきたプレイヤーたちがちょっかいを出してきたのでやり返したら想像以上に弱くてボコボコにしてしまい、アラカゼにちょっとだけ叱られた。
力が欲しいか?に即答する子。
前はちょっとだけ苦手だった孤児院の子供達も、最近は少し可愛く見えて話せるようになった。