俺はポケモントレーナー   作:goldMg

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13_レベル不足

 機嫌良さげに鼻歌を唄うナギは、巫女の修行のせいで旅をした事がなかったらしい。

 それどころか、コトリタウン以外の街に行ったことすら無かったとか。

 一応旅の基本みたいなのは学んでるそうなので、そこら辺は心配しなくて良いのかもしれないけど、歩いてるだけで楽しそうなのはなんでだ? 

 ……何にも縛られずに街の外に出るのが初めて、か……

 そうか、そりゃあ連れ出した甲斐があるな。

 

 ……なんだよ、いきなり人を指差して。

 ジム戦のあと、一緒に旅に出るって言ったのに何日も放置するなんてひどい? 

 いや、悪いと思ったから昨日コトリタウンを一緒に見て回ったじゃん。

 足りない、ですか。

 じゃあこの旅の間にその分を埋めようと思うんだけど何すれば良いの? 

 ……構ってって言われても……まあ分かったよ。

 

 言う通り数日にわたって構い倒していたらレッドが突撃して来て、アイリがひっついて、ホシノがずっとニコニコ笑いながら見てくるようになった。

 なんだこいつら……

 気にするなって言われても無理だろ。

 すれ違ったプレイヤーも怪訝な顔してたぞ。

 俺は見逃さなかったけどな、メガネをクイってしてたの。絶対撮られてる。

 

 なんかナギが、自分の番だから3人は大人しくしてろ的なこと言ったら、ピキった3人が順番がどうだの長過ぎるだの出会ったのが先だの言い始めた。

 順番ってなんだよ、終わったら誰かを構うの決定してるの? 

 ……してるのかよ! 

 旅なんだからもっと全員とバランス良く話そうと思ってたんだけど……それじゃいかんのか? 

 え? コトリタウンでの濃度が薄すぎたからもっと一人一人を濃くしろ? 

 お前らエスプレッソとか好きそうだな(笑)

 あいたっ。

 

 …………思い出してみれば、確かにほとんどナギと一緒にいたな。

 ホシノとデートはしたけど、アイリとレッドはもっと構えって言ってたような……

 ごめん2人とも、反省したわ。

 ん、なんだホシノ。

 ……デート一回じゃ少な過ぎる? いや、そもそもあれってやどりぎビルのレストランで食う為に、ホシノからお金もらう時の条件だったじゃん。

 …………すげえクズみたいな発言したな俺。

 あ、みたいじゃなくてクズですかそうですか。

 そんなクズと仲間のお前たちが心配よ俺は。

 ……レッドはずっと一緒にいてくれるのか〜、良い子だなレッドは〜。

 いでっ! いででっ! なんだお前ら、レッドを見習え! 俺の腕の中でこんなに大人しくしてるんだぞ! 

 ……お前らなんでそんなにレッドを見て……いってえええ!! 

 おいリザードン! お前自分のプレイヤーもいるのに俺に尻尾叩きつけてくるとか正気か! 

 ヒーホー君もなんでそんな事するんだ! 

 信じてたのに! 

 ……レッド、怖いからあっち行こうなー

 

 

 ──────

 

 

「師匠のバカ──!」

 

「……完全にやられたね〜」

 

「レッドさん……意外と強かよね」

 

 残された3人は、レッドを侮っていたことを悟った。

 いつも、一番ぽやーっとしているレッドだが、ご飯を食べる時はしれっとポケモントレーナーの隣を確保していることが多い。

 まさか、こんな時にその強かさを使ってくるとは思わなかった。

 青年を糾弾する方向で進んでいた場の空気の中で、いつのまにか青年の腕の中に収まり、あまり動かない表情でも他人に分かる程度には勝ち誇った顔をしていた。

 今は、青年と手を繋いで楽しそうに話しながら先へ進んでいる。

 リザードンとジャックフロストは顔を見合わせ、肩をすくめた。

 あいつ本当ダメだな、そんな感情が一致していた。

 

 そんなことをポケモンたちに思われている青年は、レッドと次の街について話をしていた。

 

「次ってどんな街なんだ? お前らに言われた通り調べずに来たんだけど」

 

 青年は実は! なんと! コトリタウンにいる時に、次の街について調べようとしていたのだ! 

 いつまでも頼り切ってちゃ流石に俺の株が……とか今更過ぎることを考えていたわけだがその目論見はあっさりバレて、調べるのは禁止と言い渡されたのだ。

 お小遣いの紐を握られている青年に逆らう術はなく、またしても何にも知らないで旅を始めるのであった。

 

「次はオールドタウンだよ」

 

「オールドタウン……古そうだな」

 

 本当に何も知らないので小学生並みの感想しか出てこないけど、この世界は古ぼけた街しかないのか? 

 

「古くないよ、新しい」

 

「なんだよそれ、逆張りかよ」

 

 オールドタウン、技術者が集まる街。過去に偶然生み出されたエネルギーが存在し、それを用いたテクノロジーが街の周辺だけでは使えるので、他の街と全く雰囲気が違うらしい。

 へー……どんなテクノロジーなんだろうな。

 答えは街に入るまで楽しみに取っておくか。

 

「私が案内する」

 

 そうか、そんじゃあ期待しておくぞ。

 

「うん」

 

 ちなみにタイプはなんなんだ? ソレぐらいなら教えてくれても良いんじゃ無いかー? 

 

「…………」

 

 レッドはチラッと3人の方を伺って、ちょっと考えたあと耳を寄せろと言うので従う。

 

「な、い、しょ」

 

 ははは、こやつめ。

 

 

 ──────

 

 

 夜、ダラダラーッとしてるとナギがテントに入って来た。どうした? 

 

「暇してるみたいね」

 

 そりゃあもう死ぬほど退屈だよ。なんせ暇つぶしがない。本さえ無い。

 1人でじゃんけんするか、寝袋の中でジタバタするしかやる事が無いから、そろそろ寝ようと思ってたんだけど。

 何しに来たんだ? 

 

「これ持って来たから、一緒に見ましょう」

 

 ナギはどうやらタブレットを持って来ていたようだ。見るっつっても何を見るんだよ。

 

「なんでも良いわよ、ほら、そっち詰めて」

 

 寝袋に詰めるもクソも無いが。

 と思っていたらジッパーを開けられて寝袋はただの布になった。

 な、何をするだ──!! 

 無視の上、グイグイと押されて退かされ、ナギは隣にゆっくりと横たわった。

 タブレットを渡されたので、ナギを抱き寄せる。

 

「あ、ちょ……ちょっと……」

 

 この方が2人で見やすいだろ。

 ほら、腕枕ってやつだ。

 

「……ほんとタラシよね」

 

 訳のわからんUIに振り回されながら面白そうな動画を探す。

 しかし、どうしても聞きたいことがあった。

 

 ……ナギ、一つ聞きたい事があるんだけど

 

「な、何よ改まって」

 

 いや……なんつーか、俺から聞くのも変だと思って今まで聞かないでおいたんだけどさ。

 お前、神様に会ったんだよな、あの日。

 

「……」

 

 何か感じる事はあったのかと思ってさ。

 ……いやっ! やっぱ答えなくても良い! 余計な事だったな、忘れてくれ

 

「ううん、そうね……空の上で、確かに私は神様に会ったわ」

 

 だよな、俺も感じてたよ、来てたのは。

 あんな気配はそう簡単に忘れないからな。

 

「気配って……あなたそんなの感じ取れるの?」

 

 俺のことは良いよ、それで? 

 

「……私は子供の頃から、神様について聞かされてたから色々想像してたの。神様は優しくて、神々しくて、いつか現れた時、遍く全てを救ってくれる、そんな存在なのかなって」

 

 …………

 

「でもあの姿を目にしたら、どうでも良くなっちゃった」

 

 それはつまり……

 

「神様はね、わたしにウィンクしてくれたの」

 

 そうなの? 

 

「私たちの一族は勝手に、荘厳で、居もしない神様を作り上げてたけど、神様ってあんなにお茶目なんだって分かった」

 

 お茶目、それはそうだろう。あの古い写真を撮影するときに、わざわざ画角を気にして後ろの方に下がっていたのだから。

 

「そしたらね、なんか一気に、巫女とかどうでも良くなっちゃった……おかしいかな?」

 

 全然おかしく無いぞ。

 

「そう? 良かったあ……」

 

 あの神様は義理堅いし、巫女がどうとか言わないでも、これからもずっとコトリタウンを見守ってくれるだろうな。もちろん、メインはあの廃墟だろうけど。

 

「ねえ……」

 

 ん? 

 

「レッドさんとは、ピカチュウを見つけた後も旅を続けるって約束してるんでしょ?」

 

 何でいきなりそんな話を……

 約束っていうか、普通にするもんだと思ってた、仲間だしな。

 レッドが言ってたのか? 

 

「嬉しそうに言ってたわよ」

 

 そっか。

 俺も楽しみにしてるんだ、アルトマーレに行くの。

 

「……私は?」

 

 少し不安げに瞳を揺らしながら尋ねてくる。

 お前は今の話で一体何を聞いてたんだよ。

 言ってんじゃん、仲間なんだから旅は一緒だぞって。

 

「……そう」

 

 素っ気ないな! なんか反応しろよせっかく答えたんだからさ。

 そう抗議したら今度は俺の上にのしかかってきた。ティアーズのビルに突っ込んだ次の日の朝もこんな感じだったな。

 それよりこの体勢だとナギはタブレット見えないのでは……? 

 

「別に良いわよ、そんなのどうでも」

 

 そか、じゃあ俺はやっと見つけたこのナギの巫女服の取材動画みたいなサムネのやつでも見るか。

 ……あっ、取られた。

 

「見せるわけないでしょ!」

 

 なんだよ別に見せてくれても良いじゃん、ナギが巫女の服着てるとこ見た事無いんだし。

 

「いやよ恥ずかしい」

 

 意味が分からん。

 そもそも巫女って大勢の前で舞を踊ったりするんじゃないのかよ。

 動画に撮ったのを見る程度で恥ずかしいとか言ってたらどうやって巫女の仕事するんだよ。

 

「あなたには絶対見せないから」

 

 ……ひどくない? 

 あれか、信頼度が足りてないのか? 

 もっと親密にならないと解除されないスチル的な。

 

「……信頼はしてるわよ」

 

 ……まあ良いかなんでも、それよりそろそろ寝るか? 結局タブレット使ってないけど。

 明日からもまだ旅は続くわけだし、あんま夜更かししても身体に悪いからな。

 ぶっちゃけ俺は全然体力問題無いけど、ナギはまだ慣れてないんだし早めに寝たほうがいいだろ。

 

「そうね」

 

 …………うん、テントはあっちだよ? 

 いつまで乗っかってんだ。こんなところで寝ても寝袋一個しかないし風邪引くかもしれないから良くないぞ。

 ちゃんと戻って寝な。

 

「……ダメ?」

 

 良いよ。

 でもちゃんと寝袋は持ってきな。

 

「レッドさんから聞いた通り……本当にちょろいのね」

 

 俺はもうキレたぞ! お前は強制的におれの枕で寝させてやる! 

 他人の枕で寝ると如何に寝にくいかを教え込んでやるからな! 

 待ってろ今お前の寝袋持ってくるから! 

 

 ギャーギャー言いながらテントから一旦出て行った背中を見つめる。

 なんて分かりやすいんだろう、あんな怒ったフリなんてして。

 私達が何かワガママを言った時に、あーだーこーだと反論しても、最終的には認めてくれる。

 彼は、理屈っぽいところを持ってはいるけど、実際は人の気持ちを判断基準にしているようだった。

 その判断は彼自身に対しても、他者に対しても同様に向いていた。

 判断が一貫している、ソレが彼の強さの秘訣なのだろうか。

 ……いや、本当はもう、強いとか弱いとかそんな事はどうでも良かった。

 なにせ私は彼の仲間で、彼が守るべき対象で、彼が最後まで面倒を見てくれるのだから。

 倒すべき対象だったジムリーダーの時とは違う。目の前からいなくなったりしないし、どれだけ甘えても受け止めてくれる。

 だからこうして、神様じゃ無くても私の全てを解放してくれた彼が帰ってくるのを待たずに、寝袋のジッパーを閉めて先に寝てしまっても良いんだ。

 

 おいこらナギィ! 寝袋持ってきたぞ! 

 ……あれ、寝てる。

 あの短時間で眠りに落ちれるとか寝付きいいなこいつ。

 しかも枕は俺のやつなのに。

 ……アラカゼさんが入院してる時は隣にいないと眠れなかったのに、だいぶ改善してるんだな。

 まさか俺には本当に医者の才能が……? 

 とりあえず俺も寝ようと寝袋を敷き、隣に横たわる。規則正しく上下する胸と穏やかな顔に、ちゃんとナギが寝ているのを確認しながら、他人の枕のせいで眠れない夜を過ごすのであった。

 

 

 ──────

 

 

 昨夜、慣れない枕に四苦八苦しながらやっとこさ寝ることが出来た俺が目覚めると、目の前にはホシノがいた。

 クソびびったわ。

 

「昨夜はお楽しみだったんだ〜?」

 

 ち、違うぞホシノ……いや、確かに楽しかったけどやましい事は無いぞ! 

 パートナーの言うことを信じないのか? ……いや、俺はトレーナー様だぞ!? 嘘を吐くわけがないだろう! 

 …………いや、嘘ですごめんなさい。

 そんな悲しそうな顔されると……ほら、こっちおいで。

 

 ホシノが入ったことでギュウギュウになった寝袋の中で、本人はイタズラに笑った。

 

「あんまり放っておくと、おじさんも浮気しちゃうよー? ……あ」

 

 ホシノがいなくなったら、俺はこの世界でどう生きていけばいいか分からない。

 だから、お願いだからいなくならないでくれ。

 

「……ふふ、嘘だよー」

 

 嘘を吐いた罰としてしばらく抱きしめたままデース! 

 

「……えへへ」

 

 腹が減ったから飯を作れと呼びにきたレッドが俺たちを見て、ぐわしとホシノを掴んで引き剥がすまでは一緒に寝てた。

 

 ナギ、お前もいい加減起きろ。

 ……あれ、起きてんじゃん。

 バレないようにしてた? いや、バレてるに決まってる……と言うか悪いことしてるわけでもないのに何を隠れる必要があるんだ? 

 ……クールな大人の印象? 

 お前は何を言ってるんだ。

 ナギ、お前は最初から今まで変わらず不思議ちゃんです! 

 そんなに俺をポコポコ叩いても何も変わらんぞ! あの茶屋で出会った時からお前の印象は不思議ちゃんで固定されてるんだ! 正直なところを言うとあの時は電波系かとまで思ったぞ! 

 電波系が何かって? 

 説明しよう! 電波系とは妄言とか意味不明な主張を撒き散らす輩のことだ! 

 ……何驚いてんだ、相席した俺をナンパ野郎かと勘違いしたり、事情を知らない俺に対して風がどうとか、どう考えてもヤバいやつだったでしょうが! 

 あれは俺のことを知らなかったから? 

 そうでしょうとも、だから不思議ちゃんで良いんだよ。

 なんでそんな適当そうなのかって? 

 何故って俺は今、ものすごく腹が減っているからさ! 

 

 

 ──────

 

 

 全員で一緒に朝飯を食べる。

 まさに旅の醍醐味だ。

 俺とアイリが魚を取りがてら水遊びをして、ホシノとナギとレッドが山菜を取る。リザードンは肉を取ってソレら全てをヒーホー君が冷凍させる。

 今、旅の食糧事情を最も左右させるのはヒーホー君だった。

 食材を凍らせているところを崇めていたら照れたヒーホー君に危うく氷漬けにされそうだったけど、アイリが止めてくれたおかげで助かったぜ、へへ。

 そして料理は全部俺。

 バターとかあればいいんだけど、そこになければ無いのでリザードンがし止めたやつの脂で焼いてる。

 

 さーて、飯もできたしいただきましょうかねえ。

 お腹ぺこぺこだよ俺は。

 アイリは何やってんの? 

 

「バッジを磨いてます!」

 

 どうやらコトリバッジを磨いているようだ。

 もう綺麗に見えるんだけど……それ以上磨いて、なんかあるのか? 

 

「……! 師匠、教えてあげましょう!」

 

 はい、お願いします。

 

「ジムリーダーで手に入るバッジにはポリシュタイトという鉱石が使われています!」

 

 ポリシュタイト。

 

「ポリシュタイトっていうのはこの、専用のけんまざい? で磨けば磨くだけ、すごく綺麗になっていくんです!」

 

 そうなんだ、今はどれくらい? 

 

「はい、これくらいです!」

 

 ……もう鏡面仕上げになってるんだけど。

 

「はい! まだまだなので、これからも磨こうと思います!」

 

 どうなっちゃうの? それ以上磨いたらもう反射が綺麗すぎて見えなくなっちゃったりしない? 

 

「あははは! そんなわけないじゃないですか!」

 

 普通にバカにされたぞ今。

 どうなってんだよ! 敬意はどこいったんだ! 

 最初に出会った時の高飛車お嬢様だったアイリがちょっと帰ってきてるだろこれ! 

 

「自分から光り始めるんだからちゃんと見えますよ〜」

 

 マジかよすげえな。

 逆に大丈夫? それ放射線とか出てない? 

 というか今はバッジ一個だから良いけど、今後集めていったら手が回らなくなったり……

 

「バッジって、そんな簡単に手に入るものじゃないよ〜」

 

 ホシノが横からそんな事を言ってきた。

 そうなの? 

 ホシノは何かを思い出すように、目を瞑って俺の疑問に答える。

 

「何度も挑んで、パートナーと一緒に強くなって……ソレで、ようやく手に入れるんだよ」

 

 そうだよな。

 俺もゲームやってる時は、何回かやられてポケモンセンター送りになったりしてたからな。

 

「あれ、意外と納得してるんだね。おじさんはてっきり、お兄さんが驚くかと思ってたよ」

 

 なんでだよ、驚く要素どっかにあったか? 

 まさか全部嘘なのか? 

 本当は裏金でバッジを手に入れるのが正しいとか。

 

「いつも一回で突破してるから」

 

 レッド、その認識は普通に間違ってるだろ。そもそも2回しかジムで戦ってない上にナギに負けたし。三つの街を廻って俺がちゃんと自分の力ありきで手に入れたのはマタナキの一つだけだぞ。

 

「うーん……常識が無いからか分かんないけど強情だよね〜。ジムリーダーに認められたら貰えるんだからさ、素直に受け入れなよー?」

 

 無理です。

 俺にとってバッジって言うのは、ポケモンを操って、ジムのトレーナーを倒して、そのままジムリーダーに行くのはちょっと不安だからポケモンセンターに行って、ソレで挑んで、一回やられて2回目で倒す。

 そんな感じだから、俺にとって実力で勝ち取ったバッジって言うのはホシノと2人でとったマタナキバッジだけだ。

 そもそも、ジムリーダーが満足したからってバッジを渡すんじゃねえ! こちとら消化不足だぞゴラァ! 

 負けたのにバッジがもらえちゃったらゲームが成り立たねえだろうが! 

 しかもフルオカに関しては俺なんかマジでなんもしてねえんだぞ! ホシノがバッジもらった時の気持ち教えてやろうか! 

 レベリングしてたら、何もしてないのに街で起きるはずのイベントが全部終わってた、だよ! 

 どうせならテッセンさんと戦ってバッジ貰いたかったぞ! 

 

「私はフルオカでバッジを手に入れちゃダメだったってこと〜?」

 

「それとも……私に負けたのがそんなに不満?」

 

 2人とも、そういうことじゃない! ホシノと2人で試練をこなしていた期間も、ナギとの空中戦もどっちも楽しかったけど、俺は何もしてないんだよ! 

 ソレなのにバッジを貰っちゃったからテッセンさんともアラカゼさんとも戦う機会が無いじゃん! 

 

「嘘でも偽りでもなく、あなたはバッジを受け取るのに相応しかったわよ?」

 

「そうですよ! あんなに凄いことをしたのに師匠がバッジを貰えなかったら私なんてどうなっちゃうんですか!」

 

「おじさんも、お兄さんがいなかったらバッジは貰えなかったし、そんな事言わないで欲しいな〜」

 

 ……まあ、フルオカに関してはホシノと二人三脚で頑張ったからな。

 でも凄いことってなんだよ。コトリタウンでは俺とリオレウスは呆気なく空中で気絶しておねんねしてたんだけど……

 

「私を助けてくれたでしょ」

 

 あぁそっちね……

 いや、それはバッジと関係無いから。

 誰かを助けただけでバッジが貰えるならポケモンの主人公達はジムリーダーと戦う必要すら無くなっちゃうじゃん。あいつらいつだって誰かを助けてるんだから。

 

「これはおじさんには説得しきれないよ〜」

 

「偏屈極まれりね……」

 

「バカ」

 

「師匠は頭がカチカチです……」

 

 頭突きで石が割れるぐらいにはカチカチだからな、俺の頭は。

 

 

 ──────

 

 

 どうやら今回の旅では大した情報は無いらしく、ずっと普通に旅をしていた。

 みんなソーマとかで一生懸命昔の話とか探してるけど全然見つからないとか。

 退屈しないように、アイリと遊んでレッドと遊んでホシノと遊んでナギと遊んで、旅の暇を潰す。

 今は4人で何かを話している。

 俺は空を眺めて何かいねえかなと探していた。

 空を風船が浮かんでいた。というかフワンテだった。

 フワンテいるんだ……

 何だっけ、風力発電がある場所に現れるとか言われてたっけ。

 

「あ、フワンテだ! オールドタウンもだいぶ近くになってきたのかもね〜」

 

 ホシノがそんな事を言っていた。

 つまり、オールドタウンは風力発電所のある街ってこと? 

 エネルギーって風力発電のことなのか? 

 なあレッド。

 

「内緒」

 

 何だよケチだな。

 なあアイリ、どうなんだあいてっ……レッド、良いローキックだ。

 

「あはは……レッドさんがダメって言ってるなら私もやめておきますね」

 

 師匠の優先順位低いな……

 は〜あ、アイリも独り立ちで俺もそろそろ師匠のお役目ごめんかなあ。

 

「えっ!? ち、ちがいますよ! いやです! 絶対いやです!」

 

 えっ、じょ、冗談だから、そんな涙目でしがみつかんでも……

 やめろお前ら、そんな目で俺を見るな。

 ごめんなアイリ、冗談が過ぎた。

 

「イヤです……」

 

 うん、俺はずっとアイリの師匠だからさ、二度とあんな事言わないよ。

 

「……ほんとですか?」

 

 ああ、ほんと。

 

「ししょーはバカです……」

 

 どうもバカです。

 

「私のことも大事にしてくれなきゃイヤです……」

 

 じゃあ今度なんか埋め合わせするからさ。

 ほら、歩けないから一旦離れよう? 

 

「イヤです……」

 

 愚地独歩です……

 アイリがイヤですロボになってしまったのでおんぶしようとしたら拒否られた。

 少し考えて、お姫様抱っこにしたら大人しくしてくれた。

 今は俺の方を向いてにへーッとしてる。

 よく分からん……

 

 

 ──────

 

 

 あったよ! 風力発電所! 

 カフェも併設してるらしいので寄ってみることになった。

 ……ちょっと待てい! 発電所にカフェが併設ってどういう事だ! 

 そんなの許されるのか? 

 だけど実際、クソデカ風車の下にカフェが……一体どうなってんだこれは!? 

 あれか? 管理会社とか特に無い感じか? 

 カフェの店員さんに聞いてみると、あの風車一個でこのカフェの電力を賄っているらしい。

 どういう事!? 

 過多だよ過多! 

 一体このカフェのどこがそんな電気食ってんだよ! 

 え? サイコエネルギーへの変換? 

 ……何言ってんの? 

 ちょっと、何だお前ら、何で俺の耳を塞ぐんだよ。

 分かったよ、聞かなきゃ良いんだろ聞かなきゃ。

 とりあえずサンドイッチとモーモーミルクください。

 店員さん、カフェがあるって事はここら辺に観光スポット的な場所があるんですか? 

 有名な恐怖スポットがある……廃墟とかじゃないですよね? 

 ……へー、橋なんだ。

 せっかくだし行ってみようかな。

 え? こんな荷物持ってたら橋が抜ける? 

 そういう意味での恐怖なの? 

 

 やってきたのは吊り橋だった。

 確かに吊り橋は怖いけど……なんか崖の下が霧で満ちてるな。風が通ってないのか? 

 流石に橋が抜けるのはイヤなので荷物は置いておく。

 とりあえず恐怖とやらを確かめるために1人で行ってくるからお前らは荷物見といて。

 

 橋桁に足を乗せ、まずは抜けないか確かめる。

 まあ当然大丈夫だよな。

 そんじゃあ行ってくるわ。

 

 

 ──────

 

 

 青年が橋に足を踏み込んですぐ、4人からその姿を覆い隠すように霧が満ちた。

 

「本当に大丈夫なんでしょうか……」

 

「私は詳しくないんだけど、どんな場所なの?」

 

「えっと……最近、正体不明のモンスター達によって怪奇現象が起きている場所で、行方不明者も出てるので調査も進んでないらしいですね……」

 

「本当に大丈夫かな……おじさんも心配になってきたよ」

 

「大丈夫だよ」

 

 レッドは何か確信を持っているようで、特に心配していないようだった。

 3人はその理由を聞いたが、レッドはお兄さんだからとしか言わなかった。

 

 

 ──────

 

 

 ふーん……周囲は全く見えないんだ。

 この霧は特別なポケモンが引き起こしてそうだな、一番奥まで行けば出会えたりして。

 ちょっとワクワクしてきたな。

 ポケモンだと霧はあんまり重要なイベントとして出てなかったような気がするし、俺が知らない何かがいるのかもしれない。

 どうしようなあ、すげえ強いポケモンだったら。

 強くても仲間にはしないけど。

 オールドタウンではホシノと2人でやろうって決めてあるんだ。

 今回こそ俺とホシノだけでジム戦に勝つぞ。

 橋はかなーり長いようで、端に着く気配は無い。

 それより、風が強くなってきたような気が……気のせいだな。

 

「!」

 

 おお、ゲンガーだ。

 ちゃんとこの世界にもいたんだな! 

 ちょっともふらせろ! 前から気になってたんだよ、ゲンガーの体の表面は体毛なのか怨念的なウニョウニョなのか。

 捕まえて触ってみると、スカスカしてる。

 これはあれか、俺がノーマルタイプの人間だからか。

 一応触ってる感触はあるんだけど、気を抜けばすぐ身体を通り抜けて逃げられる予感。

 原子間の距離とか操ってそうな感じだ。

 ゴーストタイプは物理的な現象の可能性が微レ存……? 

 ……ゲンガーだけじゃないのか。

 ヨマワル、ヒトモシ、ヌリカベ、猫みたいなやつ、シンプルに火の玉、巨大な骸骨……

 俺の知らないたくさんのゴーストタイプが空中、橋の下、至る所にいた。

 すげえ感動してると、振動音が聞こえてきた。

 なんか今までの雰囲気とは違う。シンプルに揺れてる感じだ。

 何がって、大気が。

 奥でなんかやってんのか? 

 音が聞こえ始めてしばらく経つと、ようやく橋の末端に着いた。

 ゴーストタイプだらけだし、ぶっちゃけ端とか無いんじゃないかと思ってたけど、ただひたすらに長いだけだった。

 最後の橋桁を踏み越えて、地面に足がついた。柔らかい芝生が生えている。

 こんな日の届かない霧の下で芝生が生えてんのすげえな。

 それにしても、橋は別に大した事無かったな。ゴーストタイプのポケモンがいっぱいいたぐらいだ。

 

 振動音の元に近付くと、それが大砲を発射するような異常な音である事に気付いた。

 音、デカ過ぎない? 

 流石に大砲は死ねるから身構えて近付いていくと、突然男の声が響いた。

 

「む……誰だ!」

 

 むしろ誰!? 

 ……俺はポケモントレーナーって言います! 

 なんかここがとんでも心霊スポットって聞いたので寄ってみました! 

 

「とんでも……? よく分からないが、ここまで来れたという事は君には一応の資格があるという事だな!」

 

 え、なに? 何が始まるんです? 

 混乱している俺の前に男は現れた。

 正直、男の姿はよく見えない。霧を常に纏った状態になっており、ぼやぁっとした輪郭しか分からなかった。

 

「さあ! 一手参る!」

 

 なんで!? 

 

 ……手も足も出ずにノックダウンされました。

 動き自体は読めるんだけど、対応した動きをしたらその瞬間に手が変わって、さらに対応しようとした瞬間に別の角度から攻撃が飛んでくる。

 なんか、この世界で俺の能力が全く意味を成さない相手って初めてだわ。

 戦闘力が明らかに負けてる。

 あと、ルカリオが波導を使う時の青いオーラみたいなやつを使ってた。

 多分ポケモンだこの人。

 

「どうやら借り物の力のようだな。どこで手に入れたかは知らないが、体が追い付いていない」

 

 すげえ見破るじゃん……

 

「だが……邪悪な存在では無いらしい。自分の手を見てみろ」

 

 ……うわっ! なんか俺の手にも青いオーラが! 

 何これ、俺死ぬの!? 

 

「いいや、死なない。そして、この先に訪れる試練でソレをどう使うかは君次第だ」

 

 そうなんですか……そういえば、あなたの名前は? 

 

「俺か? 俺は──だ」

 

 え? 良く聞こえないんですけど……

 もしかしてこの空間がそういう特殊な効果を? 

 

「そうだな、もし君が聞き取れないというのならまだその資格は無いという事だろう」

 

 結局、何だか良く分からなかったけどすげえ強い人にボコボコにされただけだった。

 恐怖ってこういう事? 

 

 4人の元に戻ってその話をすると、全員で渡っていき、お化けが出ただの何だの言って楽しそうに逃げ帰ってきた。

 何だこいつら……お化けなんかいなかっただろ。

 しかしよくよく聞いてみるとゲンガーとか火の玉とかの事をお化けと言っているらしい。

 いや、ポケモンじゃん。

 ここにいるポケモンのことをお化けって表現したら、他のポケモンも怪物とかそんな感じになっちゃうだろ。

 どうしたホシノそんな興奮して。

 

「あのね、女の人の首がブワーって伸びて、こっちまで向かってきたんだよ! びっくりした〜」

 

 そりゃあ、ろくろっ首だな。

 ……まぁろくろっ首は確かにお化けの範疇だけど、この世界ならポケモンカウントしても問題無いだろ。

 ナッシーみたいなもんだ。

 

「ちょっと! 何なのよあの黒い球体! 意味分からないんだけど!」

 

 ナギはゴースに完全にビビってた。どうせなら捕まえてくればよかったのに。

 

「あんなのパートナーにするわけないでしょ!」

 

「ししょー……怖かったです……」

 

 ヨシヨシ、見た目的にはヒーホーくんもここのポケモンも大差無いとは思うけど怖いものは怖いよな。

 

「!?」

 

 4人の中でレッドだけは別に何も感じてないようだった。

 

「ゴーストタイプは、あんな感じ」

 

 そうだよな! いやーさすがポケモンマスターに最も近いだけあるな、よくわかってるわ! 

 

「ふふん」

 

 ドヤ顔レッドは良いぞ。

 

 

 ──────

 

 

 夜、またいつものように焚き火を囲んでいると、空がやけに青白いのに気付いた。

 月も出てないのになぜ……

 

「おっ、見れるみたいだね〜」

 

「アレがそうなの?」

 

 なになに、俺にだけ分からない会話しないでもらって良い? 

 しばらく眺めていると、箒に乗った人間が通り過ぎていった。

 …………!? 

 お、おい! あれなんだ! おい! 

 なんか今、人間が箒に乗って! 

 

「イェーイ!」

 

「サプライズ成功です!」

 

 何だよサプライズって、確かにめっちゃ驚いたけど。

 ……すげえ! 次々に飛んでくぞ!? 

 なんだ!? 何が起こってるんだ!? 

 

「いつも私たちが驚かされてばかりだったからね〜、今回は驚かす番だよ〜」

 

 大成功してるよ! 

 何だあれ! 

 おい、すげえぞ! みんな箒で空飛んでる! 

 ずるい! 俺もやりてえぞ! 

 

「師匠が子供みたいで、なんだか可愛いですね!」

 

 馬鹿野郎! 男の子はいつだってああいうのが大好きなんだよ! 

 くっそー! 俺も乗せろー! 

 …………まさか、オールドタウンのエネルギーってアレか!? 

 どういう事だ! まるでわけがわからんぞ! 

 

「サイコジェットレースだよ」

 

 サイコジェットレース!? レッド、知っているのか! 

 ……エネルギーの効果が高まる夜に、街から放出された余分なエネルギーが道となって空を駆け巡る事ができる!? 

 くそ、何言ってるか全然分からねえ! 

 ちなみにアレはオールドタウンに行けば俺もできるのか!? 

 ……許可登録がいる? 

 しかもメガネがあるの前提!? 

 う、うそだ、こんな、夢を目の前にして……もう目ん玉くり抜いてメガネ埋め込むか……

 

「何言ってるの……本当に……」

 

 ナギにガチでドン引きされてた。

 つらたにえん……

 届かぬ夢を前にボーッとしてると、いつの間にか誰もいなくなっていた。というかテントの中に入っていた。リザードンとヒーホーくんだけがペターッと座り込んでこちらを見ていた。

 

 そうしている間も夜空を駆け回っているのは箒だけでは無くて、カーペットで飛んだり、中には身一つで飛んでいる人もいる。薪を囲んで俺は何をやっているんだ……と忸怩たる思いが湧いていた。

 本当なら俺もあそこで飛んでたのになあ。

 ふと、右腕を見ると青く燃えていた。

 なにごと!? 

 ……いやこれアレだ。

 俺をボコボコにしたあの人のオーラだ。

 何でこのタイミングで? 

 ああ大丈夫だよリザードン、これは別に害があるものじゃ無いから。

 ほら、触っても熱くないだろ? 

 不思議そうな顔してるリザードン可愛え〜。

 ヒーホーくんも一瞬だけ手を通過させて、本当に熱くないか確認したりしてた。

 触っても移ったりしないんだよなあ、何なんだろこれ。

 色々観察してると消えた。

 本当に何なんだよ……

 ガッカリしながらヒーホーくんと一緒に寝た。

 興奮して火照った体には、ヒーホーくんの低い体温がちょうど良く感じた。

 

 次の日起きると、もう空には箒は飛んでいなかった。

 あーあ、と少し残念な気持ちで空を眺めているとナギに早くご飯を作りましょうと言われた。

 そう、最近はナギと一緒にご飯を作っているのだ。

 休んでて良いぞと言ってもやるの一点張りで、そんなにやりたいなら任せた方が良いかと判断して休もうとしたら、貴方もやりなさいと言ってきた。

 よく分からないけど分かったので、2人でやる事にしている。

 とは言え、取れる食材に多少の差はあれど、そこまで変わらないので作れる料理もそこまで違いは無い。

 そう思っていた時期が俺にもありました。

 ドン! ドン! ドン! とテーブルもとい切り株の上にお出しされるのはポトフ、小魚の香草焼き、野草のおひたしだ。

 おかしい、俺が作ったら大体は焼いただけになるんだが……

 やはり俺はいらないのでは? 

 

「いるわよ」

 

 そうなのか。

 ……いてっ、何だリザードン。今の俺のどこに叩くポイントがあったんだ。

 まあ良いや、いただきます。

 ……ナギも休んでて良いんだけどなあ。

 

「何でそんなに私たちを休ませたがるのよ」

 

 だって俺の体力とお前らの体力の差が大きすぎるんだもん。

 俺のペースで動いてるとお前らが疲れちゃうからバランス取ろうかと思って。特にナギは旅なんてした事ないし。

 

「……はぁ」

 

 ため息だ。

 こういう時は大抵なんか言われる。

 

「歩くペースだって十分考えてくれてるんだから大丈夫よ。ソレとも何? 私が遅れたらそのまま置いてくの?」

 

 おいおい、冗談だろ。そんな事したらアラカゼさんに殺されちまうよ。それでなくても仲間を置いてくわけないだろ。

 

「その言葉には信憑性無いかな〜」

 

 ホシノにそんなことを言われてしまった。

 俺は仲間を置いて行きがちだとか。

 そんなことないだろ! 

 つんつんと脇腹を突くレッドも口の中のものを飲み込んでから言い放った。

 

「約束」

 

 僕はみんなを置いて危ないところへ行くカスです……

 泣かせちゃった子には勝てません。

 

 

 ──────

 

 

 オールドタウンに近付くにつれ、野生のエスパータイプのポケモンが増えてきた。それだけで無く、サイコキネシスっぽいのを使えるプレイヤーもいて、ちらほらと戦いを挑んでくるのでホシノと一緒に倒して行った。

 久しぶりにホシノと一緒にプレイヤーを倒したのでテンションが上がって高い高いをしてしまった。

 

「あははは! 久しぶりに一緒にバトル出来たね〜!」

 

 そして人が増えてくると、同様に増えるのが盗撮で、レッド曰くソーマに投稿される動画が増えてきたとか。

 自分で言ってておかしいと思うんだけど、人が増えたからって普通、盗撮って増えないよな? 

 

「あ、ポケモントレーナーだ」

 

「本当にジムリーダーと一緒に旅してるんだ」

 

「4人も女の子を侍らせて、なんていやらしい……」

 

「ポケモントレーナー、勝負してくれ」

 

 なんと無く俺の最近のソーマでの評判が見えてきた。

 まず、ドスニキの汚名は消えたと考えて良いだろうな。普通にポケモントレーナーと呼ばれる事が前より増えた。

 だが、女の子を侍らせるゴミカスハーレム野郎みたいに見られているっぽい事も判明した。

 誠に遺憾である。

 

「逆に、これまでそういう噂にならなかったのがおかしいと思うんだよね〜」

 

「どういうことだよ……」

 

「だって、女の子と男の子が旅してたら普通はそういう話も出るんじゃないかな〜」

 

「仲間だろ」

 

「仲間だけど……そういうのがあっても良いんじゃ、ない……かな?」

 

 少しだけドキドキしながらホシノは尋ねた。

 

「あってもいいけど旅には関係無いからなあ」

 

 旅ができれば何でもいいんだこの人、とホシノは察した。

 もうソーマの話題は忘れたのか、スンッとした顔で歩くポケモントレーナー。

 

「おにーいさん!」

 

「どしたん、楽しそうにして」

 

「おじさんはずっと一緒だからね〜」

 

「それは嬉しいけど、言葉にするとホント酷いな……」

 

「なんだとー!」

 

「うそうそ、ありがとな」

 

「うへへ〜」

 

「…………!?」

 

「どうしたの?」

 

「なんだあれ……なんかまた浮いてないか?」

 

「あ、ほんとだ〜実は私も来るのは初めてなんだよね〜あれが「アレがオールドタウン」」

 

 いつのまにか側にいたレッドが、ホシノの言葉に被せるようにして横槍を挟む。

 

「…………」

 

「…………」

 

「オールドタウンはサイコエネルギーによって浮いてる街でね〜ソレを支えるために常に電力をサイコエネルギーに変換してるんだってさー」

 

「オールドタウンは空を飛んでるから、下にあるタクシーを利用して運んでもらわないといけない」

 

「…………」

 

「…………」

 

 なぜか同時にオールドタウンの説明を始めたホシノとレッドに混ざってアイリとナギも話し始め、しっちゃかめっちゃかになった場を収める。

 お前ら順番に説明しろ! 

 4人分聞き取れるわけねえだろ! 

 ……やめろやめろ! 何でまた一斉に話し始めるんだ! 

 耳元で騒ぐな! 

 

 ……オールドタウン、空中浮遊都市か。

 エスパータイプの町っぽい雰囲気はあるけど、実際のところはどうなのやら。

 4人で話してるもんだから全然説明聞こえないし。

 でもなんかコトリタウンよりもひこうっぽさはあるな。

 オールドタウンに向かって、ひこうタイプのポケモンがあちこちから飛んでいってる。

 でも、フワンテを見つけた時に、ホシノはオールドタウンに近づいてきたとか言ってたし、ゴーストタイプの街なのか? 

 さて、どんなジムリーダーが待ち受けているやら。

 

「お兄さんがちゃんと探さなかったから冒険できなかったじゃーん!」

 

「師匠! 反省してください!」

 

「私も冒険したかったのに……」

 

「怠慢」

 

 何で俺を責める方向で話が進んでるんだよ! 

 

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