俺はポケモントレーナー   作:goldMg

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17_結局、主人公はいるのか?

 良い飯屋に着いた。

 名前? 知らね。

 なんかこの街で一番美味いところらしい。

 そこまで求めてなかったんだけど俺は。

 

 ユカリを元気づけようとしてただけだから、一緒に見て周って、本人が気に入ったところにしようと思ってた。

 ロマンチックな事しようとすんなって……友達を元気付けて何が悪い! なあ? ユカリ。

 ほら、ユカリもそうだそうだと頷いております。

 え? 頷いてない? いーや、俺の心の中のユカリは頷いてたね。

 

 というか最高級の料亭……ホシノ、お金は大丈夫だよな? 

 ……今確認すんのかよ。

 いつ見ても空中でなんかイジってる絵面には慣れないな。

 どうだ? 

 まだいける……その顔はもう無理なやつでは? 

 え? 奢り? マジかよリン、いや、リン様! 

 お前もしかして結構稼いでる? 

 ……サイコジェットレーサーってそんな稼げるの? 

 でもさ、サイコエネルギーってオールドタウン周辺じゃないと使えないって聞いたんだけど、そんな頻繁に大会開かれてんの? 

 モンスターレース? また知らない単語が出てきたな。

 へー、そのモンスターレースで稼いでんだ。どこでやってんの? 

 ……どこでもやってる? 俺見た事無いぞ。

 ホシノ、どうなんだ。

 目の前でやってても気付いてなかった? 意味が分からん。

 普通にモンスターが飛んでるとしか認識してなかったって、街中でやってんの? それは気付かないでしょ。

 常識無いんだから教えてくれよ。

 教えたらハマるから教えなかった? 

 グヘヘ……次の街では期待に応えてやるとするか……いてっ、ごめんて。

 冗談だよ。

 でもそうか、サイコジェットレースと棲み分けはちゃんとされてるんだな。

 

 さて、みんな座ったし……リンの奢りで呑みまくろうかな! 

 ……嘘! 嘘だから! リザードン待て! 

 まったく……お座敷でメシを食うのも久しぶりだな。

 ああいやこっちの話。

 それでここでは何が出るんだ? 

 フグ刺しとか? 

 ……フグをご存知でない!? 

 いないのか……フグ……

 じゃあハリーセンを食うしかないって事か。

 というか予約とかしてないけど、良くもまあ入れたな。

 ……あぇ? 俺の名前を使って宣伝して良いって条件で? 

 お前ら悪魔か? 

 いや、何でヒーホー君が反応してんだよ。ヒーホー君一番関係ないでしょ。

 タブレットを渡されても……見ろって? 

 ──マジで宣伝してるじゃん。

 おい、何だこの意味わからん技術。何で俺がニッコニコの笑顔でこの店の話をしてるんだ。

 俺に記憶に存在しない映像をつくるんじゃねえ。

 コ、コメントは……

 

『誰だよこいつ』

 

『ドスニキはこんな顔しない』

 

『オールドタウンか……』

 

『悪の研究所を壊滅させた後に料亭の宣伝するとか何がしたいねん』

 

『うちの宣伝もしてくれ』

 

『くたばれハーレム野郎』

 

 読み上げ機能でコメントを聞いてみれば、あまり悪い事も言われていなかったのでホッとする。

 俺の顔を勝手に使われた挙句に店の評判落ちるとか洒落にならん。

 美味い飯が食えそうだ。

 

「君って、本当に有名人なんだね」

 

 度々有名人って言われるけど、少し違う。盗撮の被害者が面白がられてネットミームにされてるだけだ。規模がでかいから見逃されてるけど普通に俺は犯罪だと思ってる。

 ぜんっぜんうれしくない。

 リン、お前どう思うよ。

 ソーマに投稿されてる自分の情報だけで、その日の行動履歴ほぼバレるんだぞ。俺は今から役目をお前と替わっても良いんだが。

 お前のアカウントで宣言してやる。

 今日からポケモントレーナーの名前はお前にあげるって。

 

「え、遠慮します……」

 

 まあそのおかげでアイリを喜ばせられたし、悪い事ばかりじゃないみたいだけどな。ファンだって言ってたし。

 でもリンだってプロのスポーツプレイヤーだし、ナギは元ジムリーダーだし、レッドは言わずもがなだし、俺も相対的には大した事無い。

 そのうちみんな飽きるだろ、多分。

 俺とアイリだけ一般ピープルだからな。

 アイリいぇーい。

 

「いぇーい!」

 

 可愛い。

 

 最初に届いたのは何かの肉をくっそ煮込んだやつだった。

 ふーん……なんだろうこの肉。

 巣篭もり前のツンベアー? 

 なんかそんなのいたような……

 確かに味はクマだな。

 お、おいユカリ、大丈夫か。

 久しぶりに味が濃いもの食べたから咽せちゃったのか。ほら、お手拭きあるから拭くぞ。

 あ、自分で拭けるか? ごめんごめん、そうだよな。

 俺の服についた? 良いよ別にそんなの気にしなくて。

 ……ああ、ありがとう。

 え、お茶も注いでくれるの? 

 なんかアレだな、ユカリは大和撫子さんなんだな。

 ……あれ、大和撫子って言葉無いのか。

 大和撫子ってのは、端的に言えば美しくて清楚でお淑やかな女性って事だよ。

 そうそう褒めてる。

 ……いや冗談じゃ無いから。

 そんな失礼なことするわけないじゃん。

 

 

 ──────

 

 

「結局、サイコエネルギーって何に使ってんだ?」

 

「何の話?」

 

「だって、サイコエネルギーが使われてるのって今のところサイコジェットレースだけじゃね? リンならそこらへん知ってるだろうから聞こうと思って」

 

「何で私がそんなことを……」

 

「良いじゃん、どうせ次の料理が来るまで暇なんだし」

 

「君が食べるの早いだけでしょ……基本的には、この街を浮かすのに使われてるよね」

 

「確かに、この街浮いてるもんな。昼間も浮かせるってことは莫大な量のエネルギーを使ってるって事か」

 

「あとは、この街に遠くから電気を供給するのにサイコエネルギーの性質を使ってるみたいだね」

 

「性質?」

 

「サイコエネルギーは時間と空間を無視して動けるらしいからね」

 

「しゅごい……でも言うほどテクノロジーとして活用してるか?」

 

「ほら、次の料理きたから食べなよ」

 

「おいおい、もう少しお話ししようぜリンちゃんよお」

 

「きしょっ……」

 

「がーん! ……ところでモンスターレースってどんな感じでやるんだ?」

 

「え? なに、興味あるの?」

 

「そりゃあるよ、箒には乗れないけどポケモンには乗れるからな」

 

「へー……じゃあ今度教えてあげる」

 

「マジ? 俺のポケモン、ホシノなんだけどそれでいけるタイプのレース?」

 

「いけるわけないじゃん、頭おかしいんじゃないの? というかポケモンって何なの本当に」

 

「いけないかー……おっ、ちゃんと魚もあるじゃん。イワナとかか?」

 

「えーと、小金魚だね」

 

「……金魚?」

 

「小金魚」

 

「つまり金魚では?」

 

「美味しいらしいよ」

 

「…………確かに美味い、リンの貯金はこんな味がするんだな」

 

「あはは、ちょっとやめてよ変なこと言うの」

 

「奢りで食べる飯が一番美味いからな」

 

「キメ顔でダサいこと言わないで?」

 

 

 ──────

 

 

「アイリ、美味しいか?」

 

「あ、師匠……すごい美味しいんですけど……」

 

「どうした?」

 

「本当に食べて良いのかなって……」

 

「良いんだよ、アイリが食べないなら……ほら、俺の箸が近付いていくぞー」

 

「だめですー!」

 

「遠慮しないでいいよ。こういう時は破産させるまで食べてやるのが礼儀だ」

 

「……わかりました!」

 

「アイリは良い仕事してくれたしな」

 

「そうでふか?」

 

「ああ、俺が研究所に入る時に援護してくれただろ?」

 

「ふぁい、ふぃーふぉーくんとのれんふぇいもぶぁっちしでふ!」

 

「うん、一旦飲み込もうか」

 

「………………んぐっ、美味しいです!」

 

「アイリには励ましてもらったしな、俺からも何かお礼をあげたいけど……」

 

「……じゃ、じゃあ!」

 

「何でしょう」

 

「師匠を一日中独り占めしてみたいです!」

 

「……いつも思うけど、言ってくれればいつでも相手するんだけどな。そんなのでお礼になるのか?」

 

「はい!」

 

「じゃあそうしよっか、この街にいる間に?」

 

「うーんと……」

 

「別にいつだって良いからゆっくり考えてな」

 

「あ、はい!」

 

 

 ──────

 

 

「よっ」

 

「……よっ」

 

「昨日一番仕事したのはレッドだな」

 

「……」

 

「まだちょっと疲れてる? 今日も色々警察に聞かれたもんな」

 

「うん……」

 

「ご飯は食べられそうか?」

 

「眠い……」

 

「じゃあ寝てても良いぞ」

 

「置いていかない?」

 

「もちろんだ、ほら、ここに横になりな」

 

「うん……」

 

「良い子だ」

 

「……子供扱いしないで」

 

 

 ──────

 

 

「おじさん、こんな美味しいもの食べた事無いよ〜」

 

「旅をしてればこの先いくらでも食えるだろうさ」

 

「……本当になりそうだから怖いね〜」

 

「本当もなにも無いだろ? 世界中旅するんだからもっとすごいものだって食える」

 

「うへぇ……想像できないよー」

 

「俺のポケモンになっちまったからにはそんぐらい覚悟してるもんだと思ってたがな!」

 

「こんな旅を覚悟できる人なんていないよ〜」

 

「がはは! コトリタウンでは神を見たけど、そのうちルギアとかも見てみたいなあ!」

 

「ルギアって?」

 

「ああ!」

 

「……いや、ルギアってなに?」

 

「ごめん、つい条件反射で。ルギアだよな、ええと確かオレンジ……列島……みたいなところにいる神様だな。他に三体の神様がいて、そいつらになんかすると呼び出せるんだよ」

 

「どんな神様なの?」

 

「深海の神様だったと思う。他にカイオーガとかマナフィとか似たようなポケモンがいるけどな」

 

「ふーん、オレンジ列島かー」

 

「聞いたことないか」

 

「うん、調べても出てこないねえ〜」

 

「まあそんなもんだ」

 

「……はい、あーん」

 

「あーん」

 

「美味しい?」

 

「いや美味しいけど、突然どうした」

 

「あーん」

 

「あーん……これに一体何の意味が」

 

「んふふ〜、あーん」

 

「あーん…………なんだこれ」

 

 

 ──────

 

 

「それで私は最後ってわけね?」

 

「いつも甘えてばっかで悪いな、俺は好きなものを後の方に残しとくタイプだから許してくれ。そもそも嫌いな食べ物が無いけど」

 

「……調子の良いことね」

 

「それでどうだった、初めての旅は。いや、ジムのある街に辿り着いてないからまだ終わってないけど」

 

「あの子達が言ってた事の意味が、早速分かったって感じね」

 

「……なんて言ってたんだ」

 

「意味の分からない事に突然巻き込まれるって」

 

「意味の分からない事……あったっけ」

 

「事件に巻き込まれるのが普通なわけないでしょ!」

 

「いや普通だろ、ポケモンだし」

 

「何なのその判断基準……」

 

「そもそもナギ、巻き込まれるもなにもお前も当事者だろ」

 

「おじさんはウツロイドに操られていたけど……私は直接の被害者では無いから、よく分からないのよね……」

 

「……こんな程度で驚いてたらサトシの旅についていけないぞ」

 

「誰よそれ」

 

「世界の中心みたいな……説明がむずいから詳しいことは省くけど」

 

「あなたまだ何か隠してるの?」

 

「隠してるっていうか説明する意味が無いっていうか……」

 

「今回は、あなたが説明しないせいで心配させられたんですけど?」

 

「そ、その件に関しては誠に面目なく……」

 

「……ん」

 

「なんでしょうか」

 

「……ん!」

 

「……良く頑張った、パートナーがいないのにあいつらを引っ張ってくれて助かったよ」

 

「ふふ」

 

「やれやれ……とか言えばいいのかな、こういう時は」

 

 

 ──────

 

 

「みな……さんと……仲が……良いん……ですね」

 

「仲間とのコミュニケーションを取らないやつなんて、ポケモントレーナーとしてやっていけねえよ」

 

「だから、そのポケモントレーナーって何なのさ」

 

「ポケモンのトレーナー」

 

「あのさ……分かっててやってる?」

 

「別にそんな深い意味無いんだって」

 

「ふう……けっこ、う……食べました……ね……」

 

「なんだかんだコース形式で出てくる料理ってボリュームあるよな」

 

「はい……でも……とても……美味し……かった……です」

 

「私の奢りだからね! 君のおかげじゃないからね!」

 

「もちろん、この借りはいつか返す」

 

「……それはおかしいけど」

 

「縁は繋いでおけ、どこかで役に立つ。知らんけど」

 

「リン……あんまり……失礼な……ことは……」

 

「お姉ちゃんそっち側なの!?」

 

「ふふ……」

 

 そういや、右手のサイコエネルギーは出したり消したり、ある程度なら好きに使えるようになったな……

 

「んー……多少は操れるようになったけど、オールドタウン限定なのかが知りてえな……」

 

 これ以降も使えるようなら本格的に俺はルカリオ枠になるんだが、この街限定なら考慮に値しないしな。

 

「ちょっと! 燃えてるよ! 水、水!」

 

「だい……じょうぶ……だよ……ゴホッ」

 

 アレか、喉がまだ完全には治ってないのか。

 そういやリンには見せてなかったな。

 あんまユカリに喋らせるのもアレだし消そう。

 

「消えた……今のって何?」

 

 正直良くわかってないところはあるけど、多分サイコエネルギー。

 なんか使えるようになったんだよね。

 

「……頭が痛くなってきた」

 

 休んだ方が良いよ、気圧の変化とかかもしれない。

 

「君のせいなんだけど」

 

 俺だって蓋然性が無さすぎてどう扱ったら良いか困ってるよ。コイツをこれからの戦術に組み込んで良いのか分からないんだから。

 

「何で当たり前に受け入れてるのか理解出来ないんだけど」

 

 やっぱりあんまりこういう事例って無いのか。

 

「聞いた事も無いよ……」

 

 

 ──────

 

 

 宿の屋上で、宙に浮いているスタジアムをヒーホーくんと眺める。

 四人はもう全員寝た。二人は別室だから知らない。

 一段落ついた感がすげえ。

 ヒーホーくんも今回はだいぶ頑張ってくれたんじゃないか? 

 うん、うん、そうかそうか。雪玉がね。

 

 そういえばヒーホーくんって進化するのかね。

 なんか知らない? 自分の種族のこと。

 ……北になんかあるのか。

 じゃあそのうち北にも行くか。

 ポケモン世界って北極とか南極の話ってあったっけ……デオキシスの発掘場所? 

 明言はされてなかった気がするけど、地球の極部分って隕石見つかりやすいみたいな話あるし、そうなのかな。

 

 ヒーホーくんは夢とかあるか? アイリと一緒にチャンピオンを目指すとか。

 強くなりたい……ほー、男らしいな! 

 どうせなら最強でも目指すか!? それならもっといろいろ経験を積まないといけないけど。

 ヒーホーくんは技の威力はすごいけど少し反応が遅いから、アイリに補ってもらって強くなっていくんだな! 

 アイリはこれからどんどん強くなっていく。お前も置いていかれるなよ? 

 

 おーすげえ、ヒーホーくん見ろよ。今日もレーサーは練習してるんだな。

 ……ああ、その高さだと見えないか。

 ほい、俺の頭の上なら見えるだろ。

 

「ヒホ……」

 

 ヒーホーくんもあんな感じで氷の道作って移動できないのか? 

 アイススケートみたいな感じで。

 野生にいる時に試してダメだった? 気力が持たない? 

 ああ〜……PP切れの問題もあるか。

 ……俺ってサイコエネルギーを素で操れるっぽいし、もしかしてユカリみたいな事出来ないかな。

 ちょっと下ろすぞ。

 ひたすら撒き散らして、ここら辺に存在する粒子の濃度を上げて……右手に纏わせた状態でぶん殴れば干渉とか起きて浮けないかな。

 ていっ! 

 あ、やべっ。

 屋上のコンクリート砕けた……絶対怒られるだろこれ。

 ……やべっ! 誰か上がってくる! 

 ヒーホーくん逃げるぞ! 

 

「ホーーーーー!!!」

 

 屋上から飛び降りて逃走や! 1時間ぐらい経ったら戻ればええやろ! 

 近くのバーで時間潰すぞ! 

 

『あー! 屋上が壊れてる! 誰だこんなことしたやつ!』

 

 ……ぜ、ぜんぶヒーホーくんが悪い! 

 止めてくれればよかったんだ! 

 

「ホ!?」

 

 いてて! いて! やめろお! 髪を引っ張るな! 

 はははは! 

 

 

 ──────

 

 

 バーで時間を潰すつもりが、一杯だけなら良いかと酒を頼んで、結局ヒーホーくんと呑み明かしてた。

 なんか楽しくなっちゃったんだよね。

 朝起きたら、レジェンドシリーズの開始地点の広場にある噴水のそばだった。

 何故か酒瓶を抱いたまま寝てたし、ヒーホーくんは花壇に顔を突っ込んで死んでた。

 自転車も転がってる。

 何故か知らんやつらも酔い潰れてる。

 もしかして盗んだバイク(自転車)で走り出してしまった……? 

 

「すいません、あなたがポケモントレーナーさんですよね?」

 

 やべえ……頭痛え……

 ウコン……ウコンの力……

 

「一昨日の、アイズカンパニー拉致被害者の救出についてちょっと聞きたいんですけど」

 

 ヒ、ヒーホーくん……おい、起きろ……

 

「ホヘェェェェェ」

 

 だ、ダメだ……ヒーホーくんもアルコール混じりの氷吐いてる……俺たちはここで死ぬ……ホシノ、あとは頼んだ……

 

「ちょっと! 聞いてますか!?」

 

 うるせえ……頭痛えんだよ……

 誰だよてめえら……盗撮なら勝手にしてくれ……

 み、水……喉が……噴水ので良いや……

 

「うわっ、噴水の水を飲み始めた……」

 

「評判通りの人ではあるんですね……」

 

 噴水の水も悪くねえな。

 それで、君たちはどこの誰だい? 

 ふんふん、アイズカンパニーの社長を探している。

 ……ちょっと場所を移すか、そこのカフェでいいだろ。

 

 すいませーん、オニオンスープ三つと冷製スープひとつくださーい。

 ……おお、すぐ出てきた。

 それで? 話の続きをどうぞ。

 故郷で大事件を起こした真犯人があの社長で、手がかりを追ってここまで来た。

 放っておいたらとんでもない事になる……

 なるほど、それ以上は説明しなくて良い。

 何故なら俺は社長の居場所なんて知らないからだ。

 研究所で見たから顔は知ってるけど。

 どこって……いや、ごめんだけどメガネ使わないから情報共有できないや。

 地図があれば教えられるけど。

 ……あ、でもあそこって研究者区画だから普通は出入りできないんだけど……まあ君たちならどうにかするよね多分。

 紙の地図とか無い? 

 無いよな、当たり前だわ。

 うーん……じゃあ、このあと連れて行ってあげるよ。本当に連れて行くだけな? 

 ヒーホーくんはどうする? 

 

「ホヘ…………」

 

 ソファにうつ伏せだし無理そう。

 まさにグロッキーだな。

 でも……お、俺も吐きそ……トイレ……ちょっと待ってて……

 

 ふう、すっきりした。

 すいません店員さん、ヒーホーくん……あのうつ伏せのやつなんですけど、ちょっとここに置いといてほしくて。一万円払うんで。

 はい、すみませんよろしくお願いします。

 

「ああああああああ!!!」

 

「きゃああああああ!!!」

 

 君たちもヒガンくんみたいな反応するんだね。旅慣れてそうだけど、ポケモンの背に乗って行動したこととか無いの? 空中のリオレウスとかとんでもなく速いよ? 

 

「ちょ、ちょっと、速すぎて道が覚えられないです!」

 

 なるほど、じゃあ少しゆっくりにするか。

 これならどうだよ。スタジアムのあの部分を覚えとけば大丈夫っしょ。

 え? 怖くて見てられない? 

 馬鹿野郎! とんでもなく危ないやつを追いかけてるくせにこの程度で怖がるんじゃねえ! 

 それはそれ、これはこれ? 

 良い台詞だ。俺も好きだぞ、だが無意味だ。

 そもそもメガネの位置情報でマッピングできるじゃん! やっぱ速度戻すわ。

 

 さて、研究所の前にある建物の屋上にこっそりと到着した。

 

「はあ……はあ……死ぬかと思った……」

 

「頭が……ぐわんぐわんします……」

 

 見てみろ、警察がウヨウヨだ。

 もう少し日にちが経てば分かんねえけど、現状だととてもあの中を調べるなんて出来やしねえ。

 俺は一応解決した立場だからワンチャンあるけど、昨日バイクとか盗んだかもしれないしあんまり顔見せたく無いな……

 ハンサムさんがいたら一発なんだけど。

 

「ハンサムさんを知ってるんですか……!?」

 

 知ってるよ、君たちはどこで知り合ったんだ? 

 

「えと……」

 

 足がかりを追ってる時に出会って、関わるなって言われた? 子供が首を突っ込む問題じゃ無い? 

 なるほど……

 あの人もたまには良いこと言うな! なんだよハンサムさん、やればできるんじゃん! 

 やっぱり国際警察とかいうドブラック組織で世界を救うために奔走するような人は人格も素晴らしいですねえ! 

 ……何で俺が救援要請出しても応えねえんだよ! 俺に対してもその優しさを見せつけろ! 

 

 んんっ、それで、なんでまだその親玉を追ってるんだ? わざわざ注意までされたのに。

 ……自分たちの故郷のことだから自分たちで決着を着けたい? 

 何だその黄金の精神。俺なんて君たちぐらいの歳の時は授業サボってゲーセンで永遠に格ゲーやってたぞ。

 村社会だとやっぱそういうの大事なのかな。

 止めないのかって? 別に保護者じゃ無いからな。

 それにそういう流れっぽいし。

 

 ところで、君のパートナーはずっとついてきてたあのポケモンで良いんだよな? 

 それで、そっちの子のパートナーはそのバッグに入ってる子で良いのかな? 

 ああやっぱりそうなんだ。別に見せなくても良いよ。

 俺のパートナー? ホシノなら今は宿で寝てるんじゃね? いや、時間的に起きてるかな。まあ、パートナーは俺だけどさ。

 あ、人間のパートナーですどうも。

 そんなジロジロ見ても別に羽とか生えたりしてねえから。俺は普通の人間だよ。

 ていうかソーマで散々見てるんじゃねえの? 

 そうでしょ? やっぱり。

 

 じゃあ、帰るかな。

 ……え? いや、もう案内はしたから帰ろうかなって、朝だし。

 どうやって下にって、そのポケモンにでも降ろして貰えばいいのでは? 

 別にロッククライミングが使えないと昇り降りできないなんて事も無いんだから。

 そもそもあそこには入れないし、中にももう何も残ってないでしょ。警察だって無能じゃ無い。証拠品なんかはちゃんと集めてるはずだよ。君たちだってニュースとか見て来たんだったら分かってるんじゃないの? 

 秘密の抜け穴があるかも? よく分かんないけど探したら良いのでは? 

 いやごめん、まじで仲間に怒られるから帰るね。

 

 

 ──────

 

 

 ヒーホーくーん……あ、いた。あれ、可愛いチャンネーたちに可愛がられてる。

 おーい、ヒーホーくーん帰るぞー。

 あれ、あいつ無視したよな今。

 一丁前に生意気な…………まあいいか、一昨日ヒーホーくんは頑張ってたからな。

 あっちの席で朝飯でも優雅にいただきますか。

 店員さーん、このウルトラCセットくださーい。……ああ、その節はどうも。ヒーホーくんはなんか絡まれてるっぽいので俺は俺で飯を食おうと思って。流石に置いては帰れないので。

 注文後、ボケーっとしてたら入り口から見覚えのあるピンク髪が入ってきた。

 

「いたいた、も〜朝から目立たないでよ〜」

 

 ホシノ、良くここが分かったな。

 

「あれだけ騒いでおいて分かるも何も無いよ〜」

 

 やっぱりなんかやってたか、正直記憶が無いんだよな。酔っ払ってたから。

 

「うへ〜本当に酒臭い……ヒーホーくんはどしたのー?」

 

 ああ、そこで絡まれてるよ。ご満悦っぽいし、飽きるまでは俺もここで食べてようかなって。

 

「よくお酒なんて呑めるね〜? おじさんもちょっとだけ舐めた事あるけど、ぜーんぜん美味しく無かったよー?」

 

 ジュースとか飲みすぎて飽きて、味変で途中から酒に切り替わってただけだよ。俺も普段はあんまり呑まない。知ってるだろ? 

 

「まあ一緒にいるからね〜」

 

 ホシノはもう朝飯食べたのか? 

 

「うん、それにしてもお兄さんがお酒くさいのなんて初めてだね?」

 

 まあ、たまにはな。

 ……もしかしてみんな怒ってたり? 

 

「いや? リンちゃんだけプンプンしてたけどね」

 

 何であいつが怒ってんだよ。

 一番怒る意味無いだろ。

 お、朝食届いた。

 いただきまーす。

 ……何だよおでこ触って。

 

「頭とか痛く無いの〜?」

 

 ああ二日酔いの話か、アルコールはさっき走って抜いてきた。なんか道案内して欲しいってやつがいたから連れて行ってやったんだよ。

 

「どんな人達なの?」

 

 え? あー……二人組だったな。長めの黒髪の男の子と、ナギぐらい長い金髪の女の子だった。

 特徴……赤い猫をパートナーにしてた。

 

「それじゃあ全然分かんないよ〜……」

 

 だってもうほとんど関わる事無さそうだったし、あんまり覚えようと思ってなかったんだよ……服とかも正直覚えてない。

 

「……お兄さんにしては珍しく無い?」

 

 巡り合わせって言えば良いのかな、放っといても話は進みそうだったし俺が関わる事も減るかなって。

 

「おじさんにも分かるように言って〜」

 

 今回の事件に関して、これ以降はあの子達が解決してくれそうってこと。

 

「そうなの?」

 

 勘だから分かんねえけどな。

 おっ、なんのウィンナーだろこれ。

 

「あっ! ねえねえガオガエンだよ、珍しいね〜。別の地方のモンスターだよね確か」

 

 ガオガエン? 

 …………あ

 

「あっちの二人はプレイヤーかな、警察の人に連行されてるけど何したんだろうね」

 

 どうせこっそり忍び込もうとして普通に見つかったんだろうなあ、他人のふりしとこ……やっぱり順序を飛ばしちゃダメだよ。ちゃんとギミックを解かないと。

 

「アレ、なんかこっち見てるけど……どうしたの、そんなに縮こまって」

 

 ナンデモナイヨー。

 

「なんだろう、警察から逃げてこっちに走って近付いてくるね〜……ん? 長めの黒髪の男の子と金髪の女の子?」

 

 俺には関係ないからトイレ行っとこうかな。

 

「ポケモントレーナーさん! 助けてください!」

 

「警察の方に説明してください! 私たちは不審者じゃないって!」

 

「待ちなさい! こんなところに逃げ込んでどうする気だ!」

 

「……お兄さんって、生きてるだけでこういうのに巻き込まれるんだね〜」

 

 いや……そんな人間じゃなかったんだけど……

 

 

 ──────

 

 

「あの二人、規制線を超えてこっそり中に入ってきてたんだけど、分かってる? あんな危険な事件があった場所なんだよ?」

 

「あなた有名人なんだから、やったらいけない事ぐらいさ……年下の二人が危ない事しようとしてたら止めなきゃいけないって分からない?」

 

「事件を解決してくれたのはありがたいけど、友達? がそこに踏み込もうとしたんならせめて止めようとかさ? ね?」

 

「あの二人が言う秘密の抜け穴とか……はあ、そんなのあるわけないでしょ。ちゃんとスキャンして内部に構造物が」

 

「おい、それは」

 

「あっ、んん……ともかく保護者なら、ちゃんと言って聞かせるのが役目ですよね?」

 

 何で俺が警察に囲まれなきゃいけないんですかねえ……しかも今回はまじで俺悪くないし。

 

「お兄さんが白目剥いてる〜珍し〜」

 

「た、たすかった……」

 

「ヨウさん、汗が」

 

「ありがとうリーリエ」

 

 がんばリーリエじゃねえぞゴラァ! ストーリー進行早めてやろうとしたら仇で返しやがって! 

 こんな事ならガン無視で朝飯食えば良かったぞ! 

 どうせ最終的には辿り着いてたんだろうしよ! 

 ヒーホーくんはチヤホヤされてるのに何で俺だけこんな目に遭ってんだ! 

 

「真面目に聞いてます?」

 

「せっかく口頭で注意して済ませようとしてるんだから、分かりますよね?」

 

 ……ツレが、申し訳ありませんでした。

 

「はあ……じゃあ、そういうことなんでちゃんとして下さいね? ……事件解決に関しては本当に、心の底から感謝しております。それでは」

 

「失礼します」

 

「失礼します」

 

 はい、はい……

 はあ……君たち、結局あそこに侵入したんだ? 

 

「ごめんなさい……」

 

「どうしても調べたくて……」

 

 ……まあいいや、ほら、好きなところ行きな。

 別に怒ってないから。

 ホシノが肘でつついてきた。

 

「私たちの気持ち分かった〜? 突飛なことをされて驚く気持ちがさー」

 

 十分に分かったわ、少し自重しようかな。

 

「そこで自重しようって言い切れないのがお兄さんだよね〜」

 

「あの……」

 

 どうした? 

 

「もう手掛かりが無くて、どうしたら良いか……」

 

 悪いけど、俺も手掛かりは持ってないよ。なんせ、今回の件で俺は何もしてないからな。

 ほとんど調べたのはこいつだ。

 

「そうなんですか!?」

 

「あっ! 押し付けたね!」

 

 じゃあ朝飯食べようかな。

 ちょっ、揺らすな……箸が定まらない……

 

「にーげーるーなー!」

 

「えーと……ホシノさんお願いです、僕たちに何か手掛かりを教えてもらえませんか?」

 

「私からも……お願いします」

 

「……はぁ〜お兄さん恨むよ?」

 

 ホシノが二人とやり取りをして情報交換をしている間に俺はウルトラCセットの残りを食った。

 なかなかのボリュームで、俺の胃袋もかなり満足してくれたようだ。

 話し合い的には、ホシノの持っている情報には一般的なモノもかなり含まれているので、大した手掛かりにはならなかったようだ。まあ、メガネが使えない俺の100倍ぐらい情報持ってたけど。そもそも俺はアイズカンパニーとか言われてもピンとこないし。

 

「ごめんねー期待させちゃって、でもおじさんも一般的な事しか分からないんだよね〜。この事件の中で知った事も被害者の子達を助ける以上の事には繋がらないし……この人はその一般的な事すら知らないからアレだけど」

 

 アレで悪かったな。

 

「でも、この人放っとおくと勝手に事件に巻き込まれて勝手に解決し始めるんだよね〜」

 

「じゃあ、今回の騒動も……」

 

 あっ、こいつ! 

 

「このお兄さんが始めました〜」

 

 ドヤ顔すんな可愛いなこんちくしょう。

 とはいえ、俺から言えることなんて無い。好きにやってればそのうち解決できるんじゃね? 

 

「そ、そんな……」

 

 急いでも結果変わんなくない? 

 なくなくない? 

 アイツはすぐって言ってたぞ。

 

「!」

 

「やっぱり……なにかを?」

 

 どうせすぐだから今は戦わないで良いやって言われただけだよ。

 

「すぐ……」

 

「この近くに……いるんでしょうか……」

 

 まあ警察にも教えてあるしある程度は対処してくれるだろうな。

 さーて、飯も食ったし行きますか! 

 有望な若者が現れてくれて俺は嬉しい! 宿に戻るぞホシノ! 

 

「え……この空気で?」

 

 そもそもホシノたちが言ったんじゃん。危ない事に関わるなって。

 俺に出来る事なんて無いし、この子達もそれなりの修羅場を潜ってきてるだろうからあとは任せて大丈夫でしょ。

 おいヒーホーくん、良い加減行くぞー。

 ……あんまりわがまま言うとアイリに言い付けるぞ。

 すいませーん、勘定お願いしまーす。

 

「……じゃ、じゃあおじさんも行くね?」

 

 

 ──────

 

 

 いやー収穫だった! 

 まさか主人公格っぽい二人に出会えるとは! これならあの社長もボッコボコにのされてお終いだろうな! 

 何でホシノはそんなに暗い顔してんの? 放っといてもどうせ解決するから大丈夫だって。

 危ない事に関わらないで良いし、悪いこと無いじゃん。

 

「うん……」

 

 ヒーホーくんは人間のメスにチヤホヤされるのってそんな良い気分だったか? 種族違うのに。

 ……猫カフェみたいなもんか。

 

「ねえ……本当にこれで良いのかな……」

 

 うーん……仮にとんでもないことが起こるとして、何をするんだ? 

 俺たちって雑魚相手にはそこそこ戦えるけど、ナバルデウスみたいなバケモンが出てきた時の対抗策とか無いぞ? 

 あるとしたら、俺のこの右手から放出するやつだけど。死ぬ気で一発デカいの撃てば多少はダメージ入るかもな。

 あとはレッドのパートナーを全員揃えるとか。

 

「私も分かってはいるけどさ……」

 

 そうじゃないとしたら、未然にあの社長の企みを阻止するって事だけど。

 

「そう、だね」

 

 アイツはもう間違いなく厄介だぞ〜、一番相手したくないタイプだ。しかも、タイムリミットがいつかも分からないし居場所も分からない。手段も分からないときた。

 どうせこの街になんか仕掛けてるけど。

 

「そうなの?」

 

 わざわざサイコエネルギーを集めて、他の街でなんかやるって非効率じゃないか? 集めたサイコエネルギーを解き放つとなんか起きるなら知らないけど。

 今はアイズカンパニーの本社も警察とかに抑えられてるだろうし、織り込み済みで動いてるんじゃないか? 

 

「……そこまで考えてるなら、何で助けてあげないの?」

 

 お前らとの約束ってのを抜きにするなら、あの二人を信じているからだな。

 

「初対面だよね?」

 

 初対面だよ。

 まあ、色々と思うところはあるわけですよ。やっぱ子供だなあとか、ハンサム何してんだよとか。

 でも、彼らなら何とかしてくれるんじゃないかなあ……的な!? 

 期待してるわけだ、俺はあの子たちに。

 

 それにユカリ達の事もある。二人を故郷に届けなきゃ行けないからな。

 

「あっ」

 

 何かやらないといけない事が二つあって、二つが並立できないなら先にやってきた方が優先でしょそりゃ。

 まあ、あくまで俺はそうする。

 

「……難しいね」

 

 

 ──────

 

 

 宿に戻るとロビーに全員いた。

 アイリ達が4人であーだのこーだのとなんか話し合っている最中、俺はリンから激詰めされていた。

 壁際に追い詰められてガミガミと言われている。

 どうして……

 

「もうホント昨日の夜大変だったんだから、反省して!?」

 

 一体俺は何をしたんだ。

 

「ちゃんと証拠も録画してあるから!」

 

 タブレットを渡される。

 用意周到ですね。

 再生を開始する。

 なんか部屋の中だ、多分リンの部屋だろうか。

 扉をドンドン叩く音が聞こえる。

 

『お〜いリン! 俺だ! 開けてくれ!』

 

『何なのもう、うるさいなあ……なに?』

 

『ハッピーバースデー!!』

 

『バースデーだホ!!』

 

『酒臭っ!! 君たちお酒飲んできたの!?』

 

『酒ぇ? これのことか?』

 

『何で一升瓶丸々持ってんの……?』

 

『ヒーホーくんと二人で呑んでたんだよ、なあ?』

 

『オイラ達はスーパーブラザーズだホ!』

 

『そもそも私誕生日じゃないし、何しにきたの?』

 

『何ってお前……一緒に呑みにきたんじゃろがい!』

 

『ちょっ……入ってくんな! お姉ちゃんもいるんだよ!? 仲間達のところ行けばいいじゃん』

 

『そんな事したら怒られるでしょうが!』

 

『知らないよ! メロエッタ、追い出すの手伝って!』

 

『ランラー……?』

 

『メロエッタ……? おい、メロエッタがいるのか!? 俺にも見せろ!』

 

『ホー!! ホー!!』

 

『ラ……』

 

『ちょっ、メロエッタ隠れないで!』

 

『騒いでると聞いて来たんですが……おい、何してるんだお前!』

 

『た、たすけて……!』

 

『その娘から離れなさい! コラ! 暴れるな!』

 

『離せ! 俺は今から酒を呑むんだ! ングッ……ングッ……ぶはあ。不味い、もう一杯!』

 

『オイラにも飲ませるんだホ!!』

 

『何なんだお前らは! 警察呼ぶぞ!』

 

『警察ゥ!? 汚職警官など恐るるに足らず! バイクだ! バイクに乗るぞ!』

 

 俺とヒーホーくんは非常用進入口をぶち破って逃走した。

 酔っている間にこんなことが。

 多分このあと自転車盗んだんだろうな……

 

「いや……ごめん、マジで」

 

「本当に怖かったんだからね!」

 

「マジでなんでも言うこと聞きます……」

 

「じゃあ、ちゃんとあの窓ガラス弁償してね!?」

 

 今もぶっ壊れたままらしい画面の中の進入口を指差す。

 いやホント……酒は呑んでも呑まれるなって事ですね……

 

 

 ──────

 

 

 フロントに行って、窓ガラスはちゃんと弁償する旨を話す。ガッチガチに両脇固められて念書を書かされ、解放された。

 温情があって助かったけど普通に逮捕されるところだった。

 ……屋上は、まあ良いか。

 窓の弁償代はデイリーバトルで稼ごう。

 四人の元へ帰ると、何かの方針が決まったらしい。旅か? 

 俺抜きで旅の方針決められるの結構理不尽だよな。良いけど別に。

 

「この街を出るまではあの子達に協力してあげようって話になったんだ〜」

 

 へー、すごいじゃん。

 まあ偶にはそういうのをやってみるのも良いんじゃないか? 

 俺はデイリーバトルで稼がないといけないけど。

 弁償代がね。

 レッドがトコトコと近付いてきて宣言した。

 

「お兄さん、お酒は禁止」

 

 しゃあない。

 

 そういうわけで、俺は四人と別行動。ユカリとリンとともに、デイリーバトルのためにスタジアムに来ている。四人はあの二人を探しに行った。

 こうしてちゃんと決めて別行動するの初めてか? 

 ナギ達も、自分たちくらいの年齢の子供が奔走しているのを知って思うところがあったのかもしれないな。

 なんか寂しい、これが親の気持ち?

 ところで、なんでリンも来たんだ? レースの練習とかしとけば良いのに。

 

「君がちゃんとお金稼ぐのか監視するの! それに、君がバトルに参加してたらその間にお姉ちゃん一人でしょ!」

 

「リン……心配……しすぎ……だよ……」

 

「誘拐されてたのに心配しすぎも何もないでしょ!」

 

 確かに。

 

『参加するのはルカリオ選手と、サイキッカーのエマ選手! ルカリオ選手は、前回は生身で参加しましたが、今回はフワンテをバトルに出すようです! エマ選手はそれをチャーレムで迎え撃ちます!』

 

『ルカリオさん、よろしくお願いします!』

 

『おなしゃーっすルカ』

 

「ちゃんと挨拶しろー!」

 

「それでもポケモントレーナーかー!」

 

『何を言っているかわからないルカ……俺はルカリオルカ……』

 

「ちゃんと顔バレ動画上がってるんだぞー!」

 

『うるせえ! 邪魔すんな! ……ルカ』

 

「ふふ……変なの……」

 

「お姉ちゃん……変じゃ済まないでしょアレは」

 

「ふふ……」

 

『さあ、バトルスタート!』

 

『チャーレム、ほのおのパンチ!!』

 

『接近されたらキツイからな、ちいさくなる』

 

 チャーレムはひとまわり小さい姿になったフワンテに対してほのおのパンチを放ったが、漂う木の葉のように避けられた。

 

『フワンテ、かぜおこしで距離を取れ!』

 

 ぶっちゃけ、接近されると打てる手が極端に少なくなるので、チャーレムを巻き上げてミドルレンジに持ち込む。体術に優れたポケモンにこういう技でダメージが入ることは少ない。実際、チャーレムには難なく着地された。

 そこに着地狩りの一撃を放つ。

 

『シャドーボール』

 

『チャーレム! サイケこうせんで迎え撃って!』

 

 直撃は免れたようだが、わざが衝突した際の爆発によってチャーレムの姿が覆い隠される。

 オールドタウンのスタジアムには箒が無数に漂っており、それもいくつか爆発によって弾け飛んだ。

 奴さんの姿は土煙でよく見えないので、範囲技を浴びせる事にした。

 

『かみなりで薙ぎ払え! ……ルカ』

 

 そういやルカリオの設定忘れてたわ。バトル始まるとどうでも良いこと忘れちゃうんだよな。

 あと、自然現象系の技は大抵範囲攻撃になるのは良い事だ。

 

『かみなりなんてどこで覚えさせたの!?』

 

「ボンボンがよお!」

 

「女に金出させてんだろ!」

 

 なんとこの世界、わざマシンが高級品なのだ。普通のフレンドリィショップだと売ってなくて、お高い店に行かないと手に入らない。

 それでフワンテなんだけど、別にかみなりとか覚えさせてないんだ。

 チート持ちでごめんねえ。

 

『フワンテが放ったかみなりは土煙の中にいるチャーレムに当たったのか! 煙が晴れていきます!』

 

 しかし、煙が晴れきる前にチャーレムは突っ込んできた。流石かくとうタイプ、指示を出されずとも自前の判断もできるってわけだな。

 まあ既に置きスピードスターを放ってあるわけだが。

 そこにチャーレムは自分から突っ込んで、食らいながらも気合で抜けてきた。マジか、すげえな。

 

『チャーレム! しねんのずつき!』

 

『みがわりで受けろ』

 

 とフワンテの身体から青白い姿が滲み出る。

 あんな見た目なんだな。

 みがわりはフワンテが距離を開ける動きに追従していく。

 ……まあ、そろそろ終わりでしょ。

 

『ゴーストダイブ』

 

 みがわりをその場に残してトプンと影に潜ったフワンテを警戒して、チャーレムは跳び回る。

 空に浮かぶ太陽に従い、フィールドに浮いている箒の影がそこら中に出来る。

 ただ、宙に浮いている箒を足場にチャーレムは移動し続けているので、箒の影からチャーレムを狙うのは結構難しいだろう。

 

『チャーレム! 自分の影にも気を付けて!』

 

 そうなんだよな、どれだけ逃げても自分の影からだけは逃れられないんだよなあ。

 ……別に、そこから出てくるとも限らないけどな。

 残していたみがわりの影からヌッと顔を出したフワンテに、最後の指示を出す。

 

『シャドーボールルカ!』

 

『…………!?』

 

 シャドーボールの直撃を喰らったチャーレムは縦回転しながら吹き飛んでいき、壁に激突した。

 地面に落ち、目を回しているようだ。

 

『勝者フワンテ! あ、いやルカリオ!』

 

 おい、どっちがどっちか間違えるな。

 

「良かったぞフワンテー!」

 

「ナイスファイト、フワンテ! エマちゃんも相性不利なのに頑張った!」

 

『みなさん、ありがとうございます!』

 

『いや、俺俺、俺は?』

 

「すっこんでろルカリオ!」

 

「調子乗ってんじゃねえぞ!」

 

 ポケモントレーナーってバレてからみんな冷たくて悲しい。ルカリオだった時はあんなにチヤホヤしてくれたのに……

 

「いつまでランク2にいるつもりだよ!」

 

 しょうがねえだろ! 結局コトリタウンだと大した試練受けられなかったんだし! 

 あ、ユカリが手振ってくれてる。

 やったぞー。

 

 

 ──────

 

 

「君って、普通にしてればちゃんとすごいプレイヤーなんだね」

 

 いや、パートナーだけど。大会の規定にプレイヤーじゃないと出てはいけないって書いてないから出てるだけだよ。

 

「……」

 

「リンは……素直じゃ……ないん……です……褒めて……るんです……」

 

 まあそれはわかる。

 

「失礼じゃない?」

 

 だって、レースであんなにヤバいジェット噴かしてる時点でお前の感情の高まりヤバいよ。多分天元突破できるよお前。

 

「てん……何?」

 

 そこは置いといて、リンの気の強さは筋金入りだろうなって。

 

「アレはお姉ちゃんに届いて欲しかったから……」

 

 ええ!? 

 

「な、なにさ……」

 

 良く考えたら、ユカリは見つけたしあのジェットってもう見れないの!? いや、苦しんでるのは伝わってきてたから良いことなのかもしれないけど。

 

「伝わってた? どういうこと?」

 

 予選第一レースで、最後の直線の近くの建物で見ていた時のことを伝えた。

 

「サイコエネルギーから人の感情を読み取れるの……?」

 

 なんか感じ取れた。リンぐらいエネルギーを高濃度で撒き散らせば起こる現象なのかは分からない。

 

「お姉ちゃん、聞いたことある?」

 

「ううん……無いかな……」

 

 へー、まあなんでも良いよな。

 リンはどうすんの? 決勝のレース。

 

「舐めないで、私はプロだよ?」

 

 かっけえ……

 そういえばちゃんと賞金もらってきたぞ、ほら。

 

「結構貰えるんだね」

 

 ああ、前に勝ちまくったからレートが上がってるんだよな。

 どうする、他の試合も観戦していくか? 

 

「じゃあ……もうすこし……だけ……いいで……すか?」

 

 良いよ。

 ……そうだ、折角だしスタジアム背景に写真撮ろうぜ! 

 テッセンさんに送りつけよう! 

 ほら、カメラ起動して。

 

「待って、テッセンってあのテッセン?」

 

 ジムリーダーのテッセンだよ。

 

「超大物じゃん……」

 

 そうなの? 恩人なんだわ。

 とりあえず忙しそうにしてるイメージあるし、送りつけたろ!

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